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COLUMN 2022.04.24

教えて! 風俗考証・佐多芳彦さん

~兜の前立は獅子がお好き?~

以前、烏帽子えぼしの記事でお話しいただきましたが、烏帽子がかぶとの上部にある穴から出ていますね。

はい、これです。「鎌倉殿の13人」の美術スタッフにはこだわりの強い人が多く、「烏帽子を兜の鉢の天辺の穴から出すのは、絶対やらなきゃ!」という話になり、実現しました。このようにつまみ出すと、烏帽子が型崩れするじゃないですか。なので、これまではなかなか実現できなかったんですね、烏帽子の個数の問題もあるので。すごく力を入れてくださり、感謝しています。

源義経や梶原景時らの兜の前立は獅子ししでしょうか?

はい。獅子噛ししがみともいわれています。源義経梶原景時は作りが違うでしょう? 梶原景時の兜の前立は、金属を削り出して作った立体的で豪華なものです。獅子をかたどるようになってから、削り出す技法の前立が増えていったんですね。対して、源義経の兜の前立はちょっと古風なもので、そこに至る前の状態です。毛彫りといって、板状の金属の表面に図柄が彫ってあります。

源範頼も獅子の前立ですが、この時代は獅子ばかりなのでしょうか? 後世になりますが、武田信玄の兜も獅子ですよね。

獅子の前立は多いですね。ただ、ほかの形の前立もあって、例えば龍の全体像がのたうち回るようにびっしり彫ってある前立も現存しています。

なぜ獅子の前立は多くの武士に好まれたのでしょうか?

一つには、獅子は後退しない、前へ向かって突き進んでいくという点が挙げられます。狛犬もそうですが、聖なるものを守ってくれる守護神みたいなところがあるわけですよ。勇敢な獅子にあやかり、自分をより勇ましく見せたいと考えていたのだと思います。ただそれ以上に、やっぱり戦いは怖かったんだと思いますね。だから、自分を守ってくれるようなものを身に着けていたいって考えていたのではないでしょうか。

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