日本共産党が、「党首公選制」導入を求めている現役党員で、かつて政策委員会で安保外交部長も務めたことがある、ジャーナリストの松竹伸幸さん(68)を「除名」処分とすることがわかった。
松竹さんは1月に出版した新書『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(文春新書)で、党首公選制の導入を求め、党首選が実施されれば自ら立候補するなどと主張している。党本部はこうした松竹さんの言動を問題視したという。
松竹さんはなぜ処分されなければならなかったのか。「日本共産党が党首公選を実施すれば日本の政治がマシになる」と語る松竹さんが、1月19日に記者会見した際の記事を再公開する。(初出:2023年1月20日。肩書・年齢は当時のまま)
◆◆◆
日本の主要政党で党首公選が行われていないのは、共産党と公明党のみである。こうした状況のなか、共産党に「党首公選制」の導入を呼びかける党員がいる。
48年間にわたって共産党員として活動し、政策委員会で安保外交部長も務めたことのある松竹伸幸さん(67)だ。さらに、党首公選が実施されたあかつきには自ら立候補すると宣言している。
そんな松竹さんが、共産党の現状を批判し、党首公選をはじめとして「もっとオープンな議論を」と呼びかける新著『シン・日本共産党宣言 ヒラ党員が党首公選を求め立候補する理由』(文春新書)を1月19日に刊行し、同時に記者会見を行った。
一般人の会見にメディア12社が駆けつけた理由書籍が上梓されたとはいえ、松竹さんは政治家などではなく一般人である。にもかかわらず刊行前から新聞などのメディアで取り上げられ、この日の会見には新聞、テレビ、ネットメディア計12社が取材に訪れた。さらに、会見は質疑応答を中心に約1時間半にも及んだ。ある政治部記者は駆け付けた理由をこう語る。
「『民主集中制』という名の上意下達システムを維持してきた共産党内で、一党員が執行部批判をするのは極めて異例。それだけでもニュースです。ただ最近、党内では、小池晃書記局長が田村智子政策委員長に対してパワハラをしたとして批判が巻き起こるなど、体制側に対して現場レベルで“No”を突き付け始めました。昨年100周年を迎えた共産党の潮目が変わるのではと感じさせる流れが生まれています。何より、在任期間が20年を超える志位和夫委員長が代わることがあれば歴史的ニュースです」
松竹さん自身は「私が志位さんに退陣を求めたことはこれまで一度もありません」と語るが、ではなぜ松竹さんはこのような主張をするのか。
「共産党が野党と共闘して自公政権の対立軸になるためには、『共産党は怖い』という国民の不安を和らげる必要があります。そのためには、より議論をオープンにしていかなければなりません。その第一歩としての党首公選制なんです。
さらに、野党共闘成立のカギの一つは、他の政党が懸念している安保・防衛政策に共産党がどのような態度を取るのかどうか。しかし、共産党のなかでは、その懸案事項を抜本的に見直す動きが見えません。
もし、共産党が党員投票による党首選挙を実施できるほどに変化すれば、野党共闘の障害となっている安保・防衛政策を全党的に議論するきっかけになります。そのような議論が公開されることによって、共産党とは異論の存在を許さない『怖い』政党だという認識に変化が生まれ、共産党を含む政権共闘への国民の不安感も和らぐのではないでしょうか」 (松竹さん)
「日本共産党が党首公選を実施すれば日本の政治がマシになる」こうしたステップを松竹さんは「日本共産党が党首公選を実施すれば日本の政治がマシになる」と説く。「風が吹けば桶屋がもうかる」という諺をもじったスローガンだ。その理屈は次の通りだという。
〈《共産党が党員投票の党首選挙を実施する
↓
共産党には自由も個性もあることが国民に知られ、共産党への国民の抵抗感
が和らぐ
↓
党首公選を通じて安保・防衛政策で他の野党と「共通の土俵」が生まれる
↓
野党の間で安保・防衛政策はもちろん経済政策も含めて自民党との対抗軸と
なるような議論が開始される
↓
野党の政権共闘が確立し自民党政権を脅かすような存在として次の国政選挙
(2025年予定)に臨む
↓
政権交代可能性が現実のものとなり、自民党政権が存続する場合も野党の存
在と主張を無視できない政治状況が誕生する》 〉
果たして共産党はこうした批判、提言をどのように受け止めるのか。そして、共産党は党首公選制に踏み切れるのか。松竹さんはこう語った。
「実現できるのかと問われれば、難しいと思う」「実現できるのかと問われれば、難しいとは思います。ただ、メディアが取り上げてくれた記事がツイッターでたくさんリツイートされているところを見ていると、みんな、私の主張がリアルになることを望んでいるのではと感じますね」
新著では、松竹さんの主張や政策と、共産党の体質や意思決定システムなど外からは知ることのできない党の内情が十全に語られている。
コメント