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 2020年秋に「しばらく立ち止まる」との表現で、開発中断を発表して3年。すでにマスコミの興味がなくなり、新たなニュースも見かけなくなってきました。地元中日新聞による回想録シリーズもすでに3回。こちらもそろそろ打ち止め感が漂っています。

 三菱重工がすでに多くの社員を配置転換し、資金も引き揚げてしまっている現状を踏まえると、三菱スペースジェットが大空を飛ぶためには、何か新たなピースが必要なのではと思われます。それはおそらく三菱重工がいくらがんばっても自力では入手できない何かなのでしょう。

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★延期繰り返し「売り」を失ったスペースジェット、なぜ国は支援できなったのか

  

延期繰り返し「売り」を失ったスペースジェット、なぜ国は支援できなったのか
【後編】頓挫した「日本の翼」、どう出直せばいいのか

 頓挫した「日本の翼」、どう出直せばいいのかの後編が公開されました。後編は杉江元CAPの実経験をもとにMRJ開発の問題点、もっと言えばMRJの欠点を述べられたもの。これは以前から杉江元CAPが何度も指摘していたことをあらためてまとめられたもので、杉江元CAPの一貫した見解でもあります。

 いくつか挙げると巡航速度がライバル機であるエンブラエルより遅いこと、自動着陸装置が装備されていないなどなどで、杉江元CAPはこれらを三菱航空機のテストパイロットが航空自衛隊の出身者で、ラインのパイロットを経験したことがないからだと指摘しています。そのため設計段階で民間航空の空の実態をよく理解していなかったと述べられています。これも杉江元CAPが以前から指摘されていたことで、実際にエンブラエルのCAPをされた方が言われるのですから説得力があります。

 そして6度の納入延期で最大の「売り」が消滅とのサブタイトルで、納期延期を繰り返しているうちに、GTFエンジンによる燃費のよさがライバル機にも導入されてしまい、アドバンテージを失ったことを挙げられています。これは当然の指摘ですね。

 これも杉江元CAPが何度も指摘されていますが、三菱航空機の生産拠点から数百メートルしか離れていない名古屋空港ビルには、当時杉江元CAPらが勤めていたジェイエアの本社もあったのです。それなのに三菱航空機は杉江元CAPを含め同僚のエンブラエル機を操縦するパイロットには誰ひとりとして接触しなかった。杉江元CAP自身、初の国産ジェットへの期待もあり、日本国民の1人として成功を願い、何か聞かれれば協力したいと考えていた。杉江元CAPはこのことが残念でならないのでしょう。

 最後に国土交通省の責任について述べられています。多額の公費を補助金として投入しながら事業全体を三菱重工に任せ、適切な協力や指導が行われなかったのはどうしたことか。特に耐空証明を得られるようにサポートすべきであったのに、できなかったことは残念だ。その原因が国土交通省の能力の問題だとしたら今後、職員のスキルをどう向上させていくのか。

 もしかしたら国産旅客機が大空に舞い上がる日は永遠に来ないかもしれません。




★「塩漬け」にされた国産ジェット旅客機開発、三菱重工に欠けていた視点とは

  

「塩漬け」にされた国産ジェット旅客機開発、三菱重工に欠けていた視点とは
【前編】頓挫した「日本の翼」、どう出直せばいいのか

 開発の中止を新型コロナのせいにしているが、事実関係を見ても、新型コロナの発生以前に納入延期を6度も繰り返しており、これでは正しい総括もできないだろう。

 三菱重工は補助金などで約500億円もの公費が投入されている手前、引くに引けない状況であると言われているが、それは逆ではないのか。血税が使われているからこそ一刻も早く失敗を認め、返済方法の協議に入るべきであろう。

 すごい辛口の記事と思ったら、元JALのグレートキャプテンで航空評論家の「杉江 弘」さんの投稿記事でした。普段から杉江元CAPの言っていることはほぼ全部当たっているし正論です。おまけに杉江元CAPは当初からMRJの開発方法に否定的だったので、塩漬け状態になったまま放置されているのを「何たるざまだ」との想いで見ているのでしょう。




★増やせテストパイロット~スペースジェット携わった安村さんが初の民間スクール開校

  

中日新聞1月11日朝刊:「増やせテストパイロット」

 中日新聞1月11日朝刊に、元三菱航空機のチーフテストパイロットだった安村さんの近況を伝える記事がありました。安村さんは民間のテストパイロット養成スクール「ジャパンテストパイロットスクール」を開設、航空機産業の底上げを目指し、飛行試験の経験や知識を伝えていきたいとの意気込みを述べられたようです。

 テストパイロットとしての需要が日本国内にどのくらいあるのか疑問ですが、今後は空飛ぶクルマの開発が進むと操縦するテストパイロットが必要になるとの目論みと思われます。安村さんの経験と足跡が、後世に引き継がれることを祈っています。




★なぜ国産旅客機「MRJ」は失敗したのか

  

メルクマール:なぜ国産旅客機「MRJ」は失敗したのか 現場技術者に非はなかった? 知られざる問題の本質とは

 メルクマールというあまり聞き慣れないサイトが、「なぜ国産旅客機「MRJ」は失敗したのか 現場技術者に非はなかった? 知られざる問題の本質とは」という記事を掲載。ちょっと興味があったので読んでみました。

 記事の前段はスペースジェットの現状で始まり、開発プロジェクトが実質的な国家プロジェクトであったこと、型式証明を取得するために翻弄した原因を解説。そしてしばらく読み進んでいくと、この記事の言わんとしている核心部になります。その一部を以下に掲載します。

 JCABはMRJの審査を行う航空機技術審査センターを2004年に名古屋に設置し、FAA職員を招いた講習も受けたといわれるが、膨大なノウハウが必要な審査能力が一時の研修で体得できるわけもない。FAAに助言を求めても、FAAは外国当局の審査には関与しない。あくまでJCABが製造国の責任として型式証明を発行しなければいけないし、FAAは輸入された機体を米国の基準で審査することになる。つまり、MRJが挫折した理由の根本は、「日本という国家が、航空機の安全を国際的に担保する能力に欠けている」ことだ。

 難航するMRJの傍らで小型ジェット機ホンダジェットの成功が各所で報じられたため、「なぜ自動車メーカーのホンダが成功したのか」という声も多く聞かれた。しかしホンダジェットは日本の国産機ではない。製造会社は米国のノースカロライナにあるHonda Aircraft Companyという会社であり、米国で設計開発された正真正銘米国製の飛行機なのだ。

 日本で開発したのでは外国で売る航空機はつくれないことを、ホンダは知っていた。また、ホンダが日本で航空機を製造するなら、JCABから航空機製造事業者の認定が新規に必要で、この審査に合格するのも大変だ。つまり、「日本製ではない」ことがホンダジェットの一番大きな成功理由だ。

 経産省/NEDOは市場や基礎研究だけを見て絵を描き、三菱はそれを足掛かりにして事業に取り組んだが、肝心の型式証明を手掛ける国交省は蚊帳の外という、驚くべき体制ができあがった。これは「誰が悪い」という問題ではなく、国家プロジェクトのあり方や行政機関の整備方針など、日本という国の力が改めて問われるべき事例ではないだろうか。

 この記事は航空機製造には国を挙げて取り組まなければならないのに、日本にはその体制も風土もなかったことが失敗の原因であるとしているようです。そしてこれではいくら金と時間を掛けても、いつまで経っても型式証明は取得できないと三菱重工が判断したということが言いたいのでしょう。
  

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