摘む
早めに帰ったら、娘の友達が遊びにきていた。
帰るというので、散歩がてら送って行った。
光がきれいで春を思わせたが、まだ寒かった。
空き地でつくしを見つけたので、摘んで帰った。
つくしがあると僕が言うと、「あーほんとだ!」と宝物でも見つけたように飛びつく子どもたち。
嬉々として。黙々と。活き活きと。まるで内からの強い要請が働いているかのように。
摘みながら、力強い明るさをグングンと発生させていた。
鳥が飛び方を知っているように。蝉が木に登るように。僕らも生き物だから、必要なことは命が知っているはずだ。
つまり僕にはそういう風に見えた。
今つくしを摘むことがぜひとも必要だと、小さな体の中にある命が言っているように。
摘むことによって、小さな命が春になろうとしているように見えた。
そして僕もまた、嬉々としていく子ども達を、まるで春でも吸い込むかのように見ていた。