「犬神家の一族」のロケ地、売ります 佐久市の井出野屋旅館 高齢の夫妻、腰を痛めながらも営業中
市川崑監督(1915~2008年)の映画「犬神家の一族」(1976年公開)のロケ地になった井出野屋(いでのや)旅館(佐久市望月)が売りに出されている。経営する井出忠昭さん(81)、勝子(しょうこ)さん(79)夫妻が、高齢のため経営を続けるのは難しいと決断した。土地と合わせた販売価格は1880万円。買い手が見つかるまで営業を続ける予定だ。
旅館は旧中山道望月宿の一角にあり、昭和初期に料理屋として創業。4代目の忠昭さんが20代の時に旅館にした。木造3階建て延べ約590平方メートルで、使っていない客室を含め10部屋ある。
同作品は大町市の青木湖と上田市の旧北国街道柳町でも撮影が行われた。忠昭さんによると、井出野屋旅館は市川監督が玄関を開けてすぐ階段がある旅館を探していたことがきっかけで選ばれ、2階の8畳と6畳に分かれた202号室などでロケが行われた。忠昭さんは、金田一耕助を演じる石坂浩二さんに「大変ですね」と声をかけたのが印象深い―と振り返る。
旅館は夫妻で切り盛りするが、忠昭さんが昨年春から腰を痛め、料理の準備や配膳に苦労するように。勝子さんも腰を痛めていることもあり、ミヤモリ不動産(佐久市)に相談して売却を決意した。同社によると、問い合わせはあるものの、買い手はまだ付いていない。忠昭さんは「寂しい気持ちはあるが仕方ない」と話している。