司法試験は独学で合格することができるのでしょうか?
まず、司法試験を受験する場合、法科大学院を修了しているか、予備試験に合格している必要があります。
すなわち、司法試験に独学で合格しようとする場合まず予備試験に独学で合格する必要があるということです。
では、予備試験に独学で合格することは可能なのでしょうか?
司法試験に独学で合格した人はいる?
法務省は司法試験・予備試験の合格者について各種のデータを公開しているのですが、独学者の合格率というデータは公開していません。
したがって、独学で合格できるかについてはっきりしたことは分からないのですが、予備試験の職業別の合格者数というデータを法務省は公開しているので、そのデータをもとに考察していきたいと思います。
以下の表を見てください。
平成28年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院生・大学生 |
受験者数 | 10,442 | 5,950 | 4,492 |
合格者数 | 405 | 74 | 331 |
合格率 | 3.88% | 1.24% | 7.37% |
平成29年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院生・大学生 |
受験者数 | 10,743 | 6,331 | 4,412 |
合格者数 | 444 | 123 | 321 |
合格率 | 4.13% | 1.94% | 7.28% |
平成30年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院生・大学生 |
受験者数 | 11,136 | 6,671 | 4,465 |
合格者数 | 433 | 115 | 318 |
合格率 | 3.89% | 1.72% | 7.12% |
令和元年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院生・大学生 |
受験者数 | 11,780 | 7,175 | 4,605 |
合格者数 | 476 | 111 | 365 |
合格率 | 4.04% | 1.55% | 7.93% |
令和2年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院生・大学生 |
受験者数 | 10,608 | 6,403 | 4,205 |
合格者数 | 442 | 104 | 338 |
合格率 | 4.17% | 1.62% | 8.04% |
令和3年 | 総数 | 法科大学院生・大学生以外 | 法科大学院性・大学生 |
受験者数 | 11,717 | 7,151 | 4,566 |
合格者数 | 467 | 116 | 351 |
合格率 | 3.99% | 1.62% | 7.69% |
※出典:司法試験予備試験の結果について
ここでは、「独学者」を大学・大学院で法律を学ぶ者または受験指導予備校で法律を学ぶ者以外の者と定義します。
そうだとすると、まず上記の表のうち、法科大学院生・大学生は「独学者」には含まれません。
このことを前提としたうえで、法科大学院生・大学生以外の合格率を見てみると、どの年も2%を下回っています。
そして、この中には予備校で学習をしている者も含まれているので、純粋な「独学者」の合格率はこれよりも低いということになります。
すなわち、独学で予備試験・司法試験に合格することは極めて困難といえるでしょう。
※関連コラム:司法試験・予備試験に独学で合格するのが難しい4つの理由
なぜ独学で合格することが難しい?
では、なぜ独学で合格することが難しいのでしょうか。
理由のひとつとして、独学では試験に必要な知識を効率よく習得することが難しいことが挙げられます。
たしかに、現在では市販の入門書や基本書で法律を学ぶことは可能です。
しかし、法律という学問は非常に奥が深いもので、「法律を学ぶこと」と「司法試験に合格するための勉強」というのは、必ずしも一致しません。
司法試験に合格することを目標にするならば、効率よく必要な知識を身に付ける必要があります。
独学者はこの点遠回りした勉強をしがちなので、なかなか合格が難しくなってしまいます。
また、司法試験は独特のテクニック・ノウハウを必要とする試験であるということも、独学での合格を難しくする理由です。
司法試験・予備試験は全10科目もの法律論文を書かなければなりません。
そして、法律論文には書き方の作法というものがあります。
それは実際に答案を書き、プロにチェックしてもらうという経験を積み重ねなければ習得することが難しいのです。
独学では本を読んで知識を仕入れることはできますが、なかなかこうした実践的な学習を行うことができません。
したがって、独学での司法試験合格は難しいのです。