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INTERVIEW 2022.12.11

後鳥羽上皇役・尾上松也さんインタビュー

~天才ゆえの闇と誇り~

放送中のドラマをご覧になった感想を教えてください。また、後鳥羽上皇が登場してからの反響はいかがですか。

それぞれの武将の描かれ方が、どことなくこれまで僕が思い描いていたキャラクター像とは違いますが、演じる役者さんの力も相まってとてもリアルに感じるなと思います。脚本と演出と演技の力がすごくて、「本当はこういう人だったかもしれない」と思わせてくれる、見ていて想像力が膨らむ作品という印象です。
役についてはたくさんの方から「ラスボス感があってすごくいい」というお声をいただいてとてもうれしいです。大河ドラマファンの方は、以前「おんな城主 直虎」(2017年)に出演させていただいたときの今川氏真がよぎるようなのですが…また蹴鞠しゅうきくをやっていますからね(笑)。「最近大河ドラマに出ると蹴鞠ばかりやっているなぁ」と思いつつ、喜んでいただけているのはうれしいです。前回は今川氏真という人物をどう覚えていただくか、印象に残すか、ということを考えて演じていましたので、皆さんが忘れずに、氏真といえば僕だと思ってくださっている証拠ですから、ありがたいことだなと思います。そして今回は、「後鳥羽上皇といえば尾上松也」と思っていただけるように頑張りたいですね。

「鎌倉殿の13人」で描かれる後鳥羽上皇はどのような人物だと思いますか。

後鳥羽上皇は非常に文武両道だった方だと史実でもわかっておりますし、文化に対してもとても誠実だった人物という印象です。とても頭が良い方なのだろうなというのもありましたので、ある意味、承久の乱が起こるまでは挫折や苦難などをあまり経験されてないのではないかと思います。そういう失敗を知らない恐ろしさがあり、しかも天才肌。天才ゆえの闇と誇りがあると台本を読んでいて思いました。もちろんあれだけの地位と才能があれば誰でも自意識過剰になると思いますので、その大きさとやんちゃさを出せるように意識しています。

彼は、早い段階から朝廷と武士たちとの関係性のバランスに危機感と違和感を覚えていたような気がします。基本的に鎌倉にいる方たちのことは誰も信頼していないですしね。「彼らをいつかどうにかしよう」ということを頭に置いたうえで接していますが、最初は様子見をしているような雰囲気から徐々にアクセルを踏んで近づいていって、承久の乱に持っていかれたのかなと。自分の才能に対して自信のあった方だと思うので、最初はいい子にしておいて、少しずつ才能を発揮していこうと思っていたのではないでしょうか。鎌倉を掌握できる気配も感じていたけれども、どうやら武士たちは自分が思っている以上に自分たちのことをまったくリスペクトしていないと感じることも多々あり、どんどん思いが加速していくような、そんなイメージです。

後鳥羽上皇が率いる京チームの雰囲気はいかがですか。

全員ゆったりとした雰囲気だなと感じます。僕が後鳥羽上皇として余裕を持って話すように意識しているからかもしれませんが、慈円僧正も兼子さんもゆったりしていて、序盤は特にみやびな感じになっていたような気がしますし、逆にそれが何を考えているのかわからない不気味な感じにもなっている気がします。

それから個人的な話なのですが、源仲章役の生田斗真くんとは中学生のときから知り合いですので、仲が良過ぎるだけに仕事場で一緒になるのは恥ずかしかったですね。役者仲間である以前に高校の同級生でもあるので、最初は特に恥ずかしくて…(笑)。ですが大河ドラマで共演するというのは初めてですし、高校時代はお互いにいいお役をいただいて大河ドラマで共演できるなんて夢にも思っていませんでしたので、そういう意味では感慨深かったです。しかも僕のほうが立場が上でしたからね、気持ちよかったですね(笑)。僕の命令に対して、「かしこまりました」なんて言ってくれて。ふだんは逆ですから、できれば今後もああいうシーンをいっぱいやりたいです(笑)。

先ほど鎌倉に対しては「いつかどうにかしよう」と考えていたとおっしゃっていましたが、そのまつりごとを行う三代鎌倉殿・実朝のことはどう思っていたのでしょうか。

実際の後鳥羽上皇はどうだったのかはわかりませんが、この物語の中では“駒”としか思っていなかったと思います。ある種、冷徹な部分があるというか、人に対する愛情があまりないというイメージで今回僕は役をつくっているので、実朝に限らず誰に関しても「自分と鎌倉をつなぐ駒」としか基本的には思っていない。そして自分がどこまでこの才能を開花させ、すべてを掌握できるかという勝負にしか興味がないのではないかと思います。ですので実朝が和歌を送ってきたりすることも計算と計画の中の一部だったのかなと。そしてこちらとしては「実朝は自分の配下」というつもりでいろいろ接しているのに、それを義時がことごとく潰してくるじゃないですか。なので、鎌倉や武士に対する怒りというよりは、ピンポイントで義時の自分を敬ってこない態度に怒りと野望を募らせていくというのが肝かなと思います。

最終回を待つ視聴者の皆さんに向けて、見どころやメッセージをお願いします。

義時にとって最後の戦いとなる承久の乱に決着がつきます。結果は歴史が物語っているのでご存じの方も多いとは思いますが、僕は演じながらふと、「この戦い、勝敗が違ったらどうなっていたのだろう」なんて考えたりして、そういうことを考えるのも歴史のおもしろさだなと思うんですよね。ですので、歴史的にたいへんキーポイントとなる承久の乱がどういういくさだったのかと考えながら、また、どうあるべきだったのかということや、「上皇が違う動きをしていたらこういうふうになっていたかもしれない」など、いろいろな想像をしながら最終回を楽しんでいただけたらとてもおもしろいかなと思います。なによりこの「鎌倉殿の13人」のフィナーレですから、これまで義時が行ってきたことのすべての意味が皆さんに届けばいいなと思っています。

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