[マスクの下 こころとからだ 子どもたちの今](4) 増える肥満(中)
「勝ったぁ。勝てると思わなかった」。はしゃぐ友達を横目に、息子=当時(6)=は無言で下を向いていた。
親として、どんな言葉をかけるべきだったのか。「今も正解は分からない」。ユウタさん(40)=仮名、本島南部=は苦い記憶を引きずる。
2020年夏、新型コロナウイルスの感染拡大で2カ月延期された小学校の入学式からしばらくした頃。友達との駆けっこの勝負で、息子が負けた。
走るのが得意で、保育園や習い事の仲間内ではいつもトップ。足が遅い方のこの友達は、以前なら相手にならなかった。
思いつく限りの慰めの言葉をかけたが、息子は固く口を結んだまま。臨時休校中に家で過ごした2カ月間を境に増えた体重が、足を鈍らせたのは明らかだった。
翌年。息子は2歳下の妹にも後れを取った。
兄として「負けるはずがない」と、妹の誘いに応じたはずだったのに。
それから、妹への攻撃的な態度が目に付き出した。
外遊びや体を動かすことをますます避けるようになり、体重の増加を気にしてユウタさんがウオーキングに連れ出しても「嫌だ、テレビを見たい」と激しく抵抗する。大好きだった鉄棒や雲梯(うんてい)にも、近寄らなくなった。
「足の速さが何よりの自慢だったはずが、たった数カ月で苦手になってしまった。その戸惑いが尾を引いて、息子の自己肯定感を下げているのではないか」。最近、ちょっとしたことでも劣等感を口にするようになったように見える。8歳になった今、駆けっこはクラスで下から数えた方が早い。
コロナ禍の3年間は、保護者の間でも感染対策への考え方が分かれ、気軽に友達と家を行き来しづらい雰囲気があった。
「学校の休み時間は何しているの」
息子に尋ねると「一人で本を読んでいる」と返ってくる。放課後に友達と遊ぶこともめっきり減った。
息子の肥満度は「+49・5%」。日本学校保健会の標準体重に照らすと「中等度肥満」に当たり、「高度肥満」(50%以上)は目の前だ。
少しくらい太っていてもいい。外で遊ばなくたって、一人で過ごすのだっていい。息子が、自分らしく過ごせるならば-。
でも、それが本来の姿ではないように親の目には映るからこそ、ユウタさんの不安はくすぶり続ける。
(「子どもたちの今」取材班・篠原知恵)

沖縄NGOセンター代表理事。沖縄県SDGsアドバイザリーボード座長。RBCiラジオアップコメンテーター、つなごう+SDGs解説出演中。SDGs、若者と選挙、ジェンダー平等、ワークショップで対話の時間をつくることを大切にしています。家族でリュックを背負ってアジアを歩くのが好きです。