時が止まったような、凛として美しい縁側に囲まれた家。
宮大工が建てたという本格的な数寄屋造りの建物は、画家だった貸主さんのお父様が一目惚れし、戦後に大田区雪谷からこの場所に移築されてきました。
朝日の降り注ぐ縁側で、ロッキングチェアに揺られながらまどろむ時間はなんて贅沢なことでしょう・・
竹や杉などの建材は全て建築当時のもので、中には宮内庁から授かった日光東照宮や伊勢神宮の御神木に準ずる木なども使用されているとの事。精巧な組子細工や、床板に使用された縮杢(ちぢみもく)の桜など、貴重な素材と職人の技術が随所に散りばめられています。
6畳と8畳が二間並んだ和室と、寝室、水回りという間取り。和室を囲む縁側の窓はこれまた美しい木サッシで、その先の庭には梅、柿、杏、金柑、椿など、様々な木や花が植えられています。夏には緑一色、春には鮮やかな赤や黄色に染まり、今の時期は間もなく花開きそうな椿の蕾と、夏みかんがたくさんなっていました。
足を踏み入れた瞬間思わず息をのんでしまう、作品のような家ですが、なにしろ戦前に建築された可能性のある建物です。生活面でのリアルを申し上げると、当然新しい建物のように機密性が高くない為、寒い、暑いもありますし、緑に囲まれているので虫も多いです。「手をかけずとも快適でスマート」といった暮らしを求めている方には向かないと思います。
例えば、とても風が良く通る全体の造りですが、夏、サッシを網戸にしたい時はまず窓の一部を取り外して、網戸をはめ込む必要があります。(その間完全に戸締りしたい時は雨戸を閉めます)木々に溢れた庭も、大きな木は貸主さんがたまに剪定に入りますが、きちんと維持しようとすると日常的な手入れが必要になるでしょう。暮らしに手間と工夫を加えることが豊かと思える方であれば、きっと楽しんで暮らせるかと思います。
とはいえ、水周りの設備は7年程前に新しく入れ替えられていてウォシュレットや追いだきつき。キッチンもシステムキッチンで、バランス良く現代の利便性も取り入れられています。
山奥にひっそり建っていそうな雰囲気ですが、スーパーも近いし駅までは石神井川沿いを歩いて約6分です。ちなみに近くの城北公園は、桜が綺麗でテニスコートや運動場もある大きな公園。お散歩やランニングもできて、私のお気に入りスポットです。
なお注意点としては、当時のものをできるだけそのまま残していきたいという貸主さんの意向で床、壁、建具、その他造作に穴を空けたり手を加えることは一切できません。
この家のこのままを楽しみながら、大切に住んでいただける方にご紹介できたらうれしいです。
※写真中の家具も、ご希望であればそのままお使いいただけます。 |