今日は深夜から作業、しかしおれ、朝早く起きて、天気も良いし出かけようなんて思ったことないのに気まぐれて荒川沿いを自転車で疾走。
日差しや気温が「春ですね」も「夏ですね」も相応しくないこの時期は季節特有の名前がついた精神病を誘発するらしいが、月月火水木金金、バンドマンは全て休日であるから何も関係がない。それでも身体を動かすと鬱の予防にはなるのでみんな死にたくなったらエクササイズしような。
インドア派バンドマンとして名を馳せているワテクシ、でも自転車漕いでまわるのは好き。
でも普段は夜しか外に出ない。人がいるから。夜は他人がより他人化して極上。バイパスを走る。街灯のあかりがぽとぽとと落ちてる場所をひとつずつ渡っていく。
自転車の良いところはひとりぼっちになるところだ。部屋とかは、なんだかさみしくなることもある。他人とスペースを共有しないから良い。近くにいてもヒュンと過ぎて行くからひとりで鼻歌歌ったりしながら走る。
でも今日は真昼間に走って行くおれ。どこに?わざわざ遠く荒川沿いに。
江戸川区ついて、ア、行きたいところがあったんだった、と思って走って辿り着いた。
金字塔。
ワーイ、デカいなー。
ここがあのアルバムのジャケットのアレか〜。どっから撮ったのか、あのマンション当時なかったんだろうな、とか思いながら。
東京はきれいで、でももうどこにでも思い出があって、ひとりで走るとなんだかさみしくなる。どんな場所の思い出も、どこかの誰かとの思い出だったりする。
そのときにいた誰かとか、そのときそのひとの言葉とか、やりきれない気持ちを抱えてひたすら歩いたとき綺麗にみえた景色とか、感情がまくをはって無機物どもが喋りかけてくる気持ちになったり。
「色んな思い出を手繰り寄せてくうちにここに着いちゃったのかしらん」
自転車に乗ってると気にせず独り言も言うヤバい奴になるから注意だ。
「せめて天気が良い日に来てよかった」
あったかもしれない未来とか、夢とか、そういうのを手放して今ここにいる。
そのことについて間違っていたかどうかなんて、きっといつまでも判断しようがない。こうして何かを探すようにどこかを求めること自体がタラレバを追いかけてるみたいで惨めだ。
持ってたものを捨てて、できるだけ身軽になる。軽くなった分遠くへ行ける。置いてきたアレはどうなったろう。振り向かず、いち・に・さんで漕ぎ続けて、今日初めて着いた金字塔が、ゴミが行き着く場所ってのは随分な皮肉だね。
江戸川清掃工場のアレは空に向かって無言で突っ立ってた。どっちが前とか知らない。それは見た人それぞれに思うところがあるんだろう。
南下。
あそこもここも、思い出ばかり。
さてどこにいこう。右も左も自由だ。知らない場所にも思い出があるかもしれない。排水溝からシャンプーのにおいが、家庭から夕飯のハヤシライスのかおりが、学校帰りの小学生が、すずむしが、たとえば、ずっと会いたかったひとに会ったりしたらどんなことを考えたりするんだろう。
帰りみち、隕石か人工衛星が落ちてくるのをみた。
これを天使と勘違いしてるって歌を作ったけど、これはロマンチックじゃないから隕石であってほしいなぁ、なんて考えていると、ア、
なんというか、へっぽこな軌道で落ちてくもんだな、と思って、これが天使だったらいいね、とかってぼくも思ったりしました。
おわり。