【声明「北海道大学総長の軍学共同容認に反対し、責任ある説明を求める」 9月22日、道政記者クラブで記者発表】
=北海道の大学・高専関係者有志アピールの会=
当会は9月22日午前、道政記者クラブで「声明 北海道大学総長の軍学共同容認に反対し、責任ある説明を求める―防衛装備庁『安全保障技術研究推進制度』申請についての法人文書開示を受けて―」を発表しました。(写真)
出席者は、共同代表の唐渡興宣・北海道大学名誉教授(経済学)、姉崎洋一・北海道大学名誉教授(教育学)、加藤幾芳・北海道大学名誉教授(原子核物理学)、事務局次長の山形定・北海道大学大学院工学研究院助教ら6人。朝日新聞、毎日新聞が取材し、翌日9月23日の各朝刊で報じました。
9月27日、当会代表が総長秘書室職員に「声明」を手交。名和豊春総長に「声明」を渡し、面談するよう要請しました。
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2016年度防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」に北海道の大学で初めて、北海道大学大学院工学研究院教授の研究課題が採択されました。
当会は2016年12月5日および2017年1月20日、二度にわたり北海道大学山口佳三総長(当時)に文書にて「北海道大学における防衛省研究予算受け入れに対する面談」を申し入れました。しかし、いずれの文書に対しても回答はなく、当会からの問い合わせに対し、事務担当者が電話で「面会できない、理由は言えない」と答えるだけの不誠実な態度を取り続けました。防衛省研究予算受け入れについては社会的に関心が高まっています。北海道大学の研究者の申請を大学が認めるに至った経緯は全く不明のままです。
当会は大学に関わるものとして、北海道大学がこのような態度を取り続けることの問題を率直に指摘し、開かれた議論を行なうために、2017年3月22日、次の各項目を北海道大学総長に質し、かつ広く社会に公開することといたしました。本公開質問状について、2017年3月30日までに、当会あて書面にて回答されるよう申し入れました。
(1)北海道大学において2016年度防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」に採択された研究課題の申請に至る全プロセスを明らかにされたい、(2)申請に当たって、北海道大学へ防衛省から直接・間接的な働きかけがなかったか、その有無を明らかにされたい、(3)当該研究の申請を北海道大学が承認した根拠について説明されたい、(4)2016年総長選挙において北海道大学教職員組合が行なったアンケートに対する「科学技術に関する平和主義を貫く」との表明と防衛省研究費受け入れの整合性を明らかにされたい、(5)2015年2月以降公開されていない研究戦略室および同室幹事会の議事録を公開されたい。
当会は面談要請や公開質問状送付を何度も行いましたが、回答を得ることはできませんでした。そこで、どのような経緯で申請許可を出すに至ったのかを明らかにするために2017年5月31日、法人文書開示請求を行いました。開示を求めた文書は、北海道大学における2016年度防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」への申請手続き過程に関する文書と、防衛装備庁との契約に関する文書です。
北海道大学名和豊春総長名で2017年6月16日付法人文書開示決定通知および開示決定等の期限の延長通知、7月21日付法人文書開示決定通知があり、それぞれ7月4日、7月31日開示実施を行いました。
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【声明「北海道大学総長の軍学共同容認に反対し、責任ある説明を求める―防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」申請についての法人文書開示を受け―」】
昨年、北海道大学の申請許可の下、2016年度防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」へ北海道大学大学院工学研究院の教員が申請した研究課題が採択された。この制度が軍事研究推進制度であり、その制度の廃止を要求してきた当会は、2016年9月26日に「軍学共同・軍産学複合体づくりにNOといえる大学の自治と自由を」との声明を公表した。これは、北海道大学総長が軍学共同容認をトップダウンで決定したことに抗議するとともに、防衛省による競争的資金提供の制度化を日本国憲法第9条・第23条に反するものとして反対することを表明するものであった。また、北海道大学が2016年度防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度」への申請許可をどのような経緯で出したのか、面談要請や公開質問状送付を何度も行ったが、回答を得ることはできなかった。そこで、どのような経緯で申請許可を出すに至ったのかを明らかにするために法人文書開示請求を行った。
開示を求めた文書は、北海道大学における申請手続き過程に関する文書と、防衛装備庁との契約に関する文書である。北海道大学における申請手続き過程に関する文書では、2016年4月19日の段階で研究推進部研究振興企画課が工学系事務部研究支援担当に申請可と回答していることが明らかになった。しかし、工学系事務部研究支援担当からの確認の伺から申請可との回答までにどのような経緯があったのかについては、「当該法人文書を作成及び取得していない」ことによる「文書不存在」を理由に開示されなかった。このことは、科学者に「社会に対する説明責任を果たす」(「北海道大学における科学者の行動規範」)ことを要請している北海道大学の姿勢に反するものである。
また、防衛装備庁との契約に関する文書では、研究採択後に防衛装備庁との間で契約が可能であることを確認する「研究課題申請承諾書」を2016年5月9日付で、名和豊春工学研究院長(当時)名義で防衛装備庁に発出していることが明らかになった。北海道大学教職員組合が行った、2016年12月の総長選挙に向けての候補者へのアンケートの回答において、名和院長(当時)は自らの責任には一切触れていないが、申請において責任ある立場であったことは明確である。山口佳三前総長及び名和現総長の責任は重大である。
日本学術会議は「軍事的安全保障研究に関する声明」において、「軍事的安全保障研究では、研究の期間内及び期間後に、研究の方向性や秘密性の保持をめぐって、政府による研究者の活動への介入が強まる懸念がある」と述べる。また、同制度は「政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と指摘している。これを受けて北見工大や室蘭工大等道内の大学も軍学共同研究に応募しないと明言した。さらに、日本学術会議は大学等の各研究機関には「軍事的安全保障研究と見なされる可能性のある研究について、その適切性を目的、方法、応用の妥当性の観点から技術的・倫理的に審査する制度を設けるべき」とも指摘している。
われわれは改めて、北海道大学総長(前・現)の軍学共同容認に反対を表明する。そして、北海道大学名和総長に対しては、以下のことをつよく要求する。
①2016年度防衛装備庁「安全保障技術推進制度」への申請の許可を出すに至ったすべての経過の責任ある説明、②日本学術会議声明の趣旨に則り学内の議論を踏まえた「技術的・倫理的に審査する制度を設ける」こと、③当会との面談。
2017年9月22日
集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に反対する―戦争をさせない、若者を再び戦場に送らないために―北海道の大学・高専関係者有志アピール運動をすすめる会(略称:北海道の大学・高専関係者有志アピールの会)
【呼びかけ人共同代表】唐渡興宣・北海道大学名誉教授(経済学)/姉崎洋一・北海道大学名誉教授(教育学)/荒木肇・北海道大学北方生物圏フィールド科学センター教授(農業生産学)/大屋定晴・北海学園大学経済学部教授(社会経済学)/加藤幾芳・北海道大学名誉教授(原子核物理学)/笹谷春美・北海道教育大学名誉教授(社会学)/山口博教・北星学園大学経済学部特任教授(経済学)