2022年12月30日掲載
ワンポイント:テシア=ラヴィーンはカナダ出身で米国のスタンフォード大学(Stanford University)・学長になった生命科学界の権力者である。多数の日本人が論文の共著者になっている。2015年(55歳)と2018年(58歳)にネカトと指摘されたが、当時所属のロックフェラー大学とスタンフォード大学は指摘を無視した。つまり、本件は、「大学のネカト対応怠慢・不作為」事件でもある。2022年11月(62歳)、テオ・ベイカー(Theo Baker)がスタンフォード大学の学生新聞「スタンフォード・デイリー(Stanford Daily)」にテシア=ラヴィーンのネカト疑惑を記事にし、今度は大騒動になった。2022年12月29日現在、17報の論文が疑念視されている。撤回論文は0報である。スタンフォード大学・理事会はネカト調査を始めたが、委員の1人は利益相反で辞任したが、他の委員も利益相反者である。テシア=ラヴィーンは学長を辞任していない。研究公正局は無言である。本件は、「大学のネカト調査不正」事件でもある。国民の損害額(推定)は20億円(大雑把)。
ーーーーーーー
目次(クリックすると内部リンク先に飛びます)
1.概略
2.経歴と経過
3.動画
5.不正発覚の経緯と内容
6.論文数と撤回論文とパブピア
7.白楽の感想
9.主要情報源
10.コメント
ーーーーーーー
●1.【概略】
マーク・テシア=ラヴィーン(マーク・テシエ=ラヴィーン、マーク・テシェール=ラヴィーン、Marc Tessier-Lavigne、ORCID iD:?、写真出典)は、カナダ出身で米国のスタンフォード大学(Stanford University)・学長になった。医師免許は所持していない。専門は神経発生学である。
テシア=ラヴィーン論文にねつ造・改ざん画像があると、2015年(55歳)と2018年(58歳)に「パブピア(PubPeer)」が指摘した。
しかし、2015年当時所属のロックフェラー大学、2018年当時所属のスタンフォード大学、の両大学はネカト指摘を無視した。つまり、「大学のネカト対応怠慢・不作為」だった。
この時は大騒動にならなかった。
2022年11月29日(62歳)、テオ・ベイカー(Theo Baker)がネカトハンターのチェシャー(Cheshire、またの告発名をActinopolyspora biskrensis)の通報を受け、さらに、エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)にも相談し、マーク・テシア=ラヴィーン学長(Marc Tessier-Lavigne)のネカトをスタンフォード大学の学生新聞「スタンフォード・デイリー(Stanford Daily)」の記事として発表した。
この記事が契機となって、多数のメディアが、テシア=ラヴィーン学長のネカト論文事件を記事にした。
今度は大騒動になった。
それで、白楽ブログで記事に取り上げた。
2022年12月29日現在、しかし、スタンフォード大学・ネカト調査委員会は発足したばかりで、調査結果については何も発表していない。もちろん、研究公正局も何も発表していない。
17報の論文が疑念視されているが、撤回論文は0報である。
テシア=ラヴィーン学長自身がネカト者ではなく、共著者がネカト者の可能性が高い。しかし、本記事では、テシア=ラヴィーン学長を主役として記事にした。
なお、疑念論文の共著者になっている日本人が何人もいる。
スタンフォード大学(Stanford University)。動画出典:https://www.youtube.com/watch?v=74rNgExnHfA
- 国:米国
- 成長国:カナダ
- 医師免許(MD)取得:なし
- 研究博士号(PhD)取得:英国のユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン
- 男女:男性
- 生年月日:1959年12月18日
- 現在の年齢:63 歳
- 分野:神経発生学
- 不正論文発表:1999~2019年(39~59歳)の21年間
- ネカト行為時の地位:カリフォルニア大学サンフランシスコ校・教員~スタンフォード大学・学長
- 発覚年:最初は2015年(55歳)だが、実質は2022年(62歳)
- 発覚時地位:スタンフォード大学・学長
- ステップ1(発覚):第一次追及者はスタンフォード大学の学生新聞「Stanford Daily」のテオ・ベイカー(Theo Baker)記者
- ステップ2(メディア):「パブピア(PubPeer)」、「Stanford Daily」、「Science」
- ステップ3(調査・処分、当局:オーソリティ):①スタンフォード大学・調査委員会
- 大学・調査報告書のウェブ上での公表:なし。調査中
- 大学の透明性:調査中(ー)
- 不正:ねつ造・改ざん
- 不正論文数:17報の論文が疑念視されているが、撤回論文は0報
- 時期:研究キャリアの初期から
- 職:事件後に研究職(または発覚時の地位)を続けた(〇)
- 処分:なし
- 日本人の弟子・友人: 西山 真(東京大学・生物生産工学研究センター・教授)、1999年共著論文あり。他に日本人の弟子が数人いる。
【国民の損害額】
国民の損害額:総額(推定)は20億円(大雑把)。
●2.【経歴と経過】
- 1959年12月18日:カナダのオンタリオ州のトレントン(Trenton)で生まれる
- 1980年(20歳):カナダのマギル大学(McGill University)で学士号取得:物理学
- 1982年(22歳):英国のオックスフォード大学(University of Oxford)で学士号取得:哲学と生理学
- 1987年(27歳):英国のユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London)で研究博士号(PhD)を取得:生理学
- 1991~2001年(31~41歳):米国のカリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)・教員(準教授?)
- 1999~2019年(39~59歳):後で「パブピア(PubPeer)」で問題視される17論文を出版
- 2001~2003年(41~43歳):米国のスタンフォード大学(Stanford University)・教員(教授?)
- 2003~2011年(43~51歳):ジェネンテック社(Genentech inc.)・研究創薬担当上級副社長(senior vice president of Research Drug Discovery)
- 2011~2016年(51~56歳):ロックフェラー大学(Rockefeller University)・学長
- 2015年4月(55歳):「パブピア(PubPeer)」で論文ネカトが指摘された
- 2016年(56歳):米国のスタンフォード大学(Stanford University)・学長
- 2022年11月(62歳):ネカト大騒動の契機となる「スタンフォード・デイリー(Stanford Daily)」新聞の不正論文追求記事の掲載
- 2022年12月29日(63歳)現在:スタンフォード大学・学長職を維持
●3.【動画】
以下は事件の動画ではない。
【動画1】
「マーク・テシア=ラヴィーン」と紹介。
新学長紹介動画:「A Conversation with Marc Tessier-Lavigne – YouTube」(英語)10分48秒。
Stanford(チャンネル登録者数 176万人)が2016/02/05 に公開
●5.【不正発覚の経緯と内容】
★研究人生
マーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)はカナダ出身で、米国のカリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)・教員、スタンフォード大学(Stanford University)・教員(教授?)を経て、バイオテク企業のジェネンテック社(Genentech inc.)・研究創薬担当上級副社長(senior vice president of Research Drug Discovery)になった。
2011~2016年(51~56歳)、ロックフェラー大学(Rockefeller University)・学長を務めたが、バイオテク企業の重役が有力大学の学長に就任するのは珍しい。
ロックフェラー大学・学長から、2016年(56歳)、米国のスタンフォード大学(Stanford University)・学長に移籍した。
2022年12月29日現在「パブピア(PubPeer)」で問題視されている17論文は、1999~2019年(39~59歳)に出版した。
つまり、カリフォルニア大学サンフランシスコ校・教員時代、スタンフォード大学・教員時代、ジェネンテック社時代、ロックフェラー大学時代、それにロックフェラー大学時代の約21年間の論文が問題視されている。
2021年のマーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)の公式所得は、スタンフォード大学から1,555,296 ドル(約1億5553万円)で、リジェネロン医薬社(Regeneron Pharmaceuticals)の取締役として700,000ドル(約7000万円)だった。
これらの経歴から推察できると思うが、テシア=ラヴィーンは米国の生命科学界で巨大な権力を握っている。仲間・友人に財界、学術界の有力な人物が多数いる。
★獲得研究費
マーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)の獲得研究費を調べた:Grantome: Search:”Marc Tessier-Lavigne”
カリフォルニア大学サンフランシスコ校時代、1997~2005年の11件のグラント。
ジェネンテック社時代、企業なのでグラント受給なし。
ロックフェラー大学時代、2014~2016年の6件のグラント。
スタンフォード大学時代、2002~2003年の2件のグラント、2017~2018年の4件のグラント。
★ネカト指摘:2015年
2015年4月(55歳)、「パブピア(PubPeer)」で「2001年3月のScience」論文のデータに疑念が示された。この論文は700回以上も引用されている重要な論文である。
- Hierarchical organization of guidance receptors: silencing of netrin attraction by slit through a Robo/DCC receptor complex.
Stein E, Tessier-Lavigne M.
Science. 2001 Mar 9;291(5510):1928-38. doi: 10.1126/science.1058445. Epub 2001 Feb 8.
以下のパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/BFCF07AC5A957DB7E8950B448CB6CB
論文の図2Dの顕微鏡写真が同じ写真を使っていた。
ここでは省略するが、この論文では、他の図にもネカトが指摘されている。
この「2001年3月のScience」論文は著者が2人で、第一著者はテシア=ラヴィーンのポスドクだったエルク・スタイン(Elke Stein、2011年に来日した時の写真出典)である。
テシア=ラヴィーンがネカト者でなければ、エルク・スタインがネカト者となる。
なお、エルク・スタインは、その後も疑念論文の共著者として何度も登場する。
エルク・スタインはその後、イェール大学(Yale University)・準教授になるが、2013年に静かに辞めざるを得ない状況になったらしいと、レオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)が書いている。
イェール大学を辞めて科学コンサルティング会社を起業したが、失敗した。
エルク・スタインは師のテシア=ラヴィーンのお気に入りだったらしく、その後、2022年12月29日現在まで、テシア=ラヴィーンがスタンフォード大学の職を与えている。
★ネカト指摘:2018年
2018年9月、「パブピア(PubPeer)」で「2008年6月のMBO J.」論文のデータが異常だと指摘された。
テシア=ラヴィーンは、この論文では11人の著者の内の9番目の著者だった。第一著者と連絡著者はフランスのリヨン大学(Université de Lyon)に所属している。
9番目の著者なので、テシア=ラヴィーンは論文で(データのねつ造・改ざんを含め)重要な働きはしていないと思われる。と言っても著者の1人なので、責任はある。
- FAK-MAPK-dependent adhesion disassembly downstream of L1 contributes to semaphorin3A-induced collapse.
Bechara A, Nawabi H, Moret F, Yaron A, Weaver E, Bozon M, Abouzid K, Guan JL, Tessier-Lavigne M, Lemmon V, Castellani V.
EMBO J. 2008 Jun 4;27(11):1549-62. doi: 10.1038/emboj.2008.86. Epub 2008 May 8.
図4Aの一段目と3段目の画像が同じと指摘された。
以下の2つのパブピアの図の出典:https://pubpeer.com/publications/8C77E3B128C13A22B1768AEA0272DA
2022年11月、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)も加わり、図3にも画像の重複使用があると指摘した。
ここでは省略するが、この論文では、他の図にもネカトが指摘されている。
★ネカト告発は無視された
上記のようにマーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)の論文は、2015年、そして、2018年に「パブピア(PubPeer)」でデータねつ造・改ざんが指摘された。さらに、上記の2論文以外にも、ネカトが指摘された。
しかし、2015年当時所属のロックフェラー大学、2018年当時所属のスタンフォード大学はネカト指摘を無視した。つまり、「大学のネカト対応怠慢・不作為」だった。
また、2015年当時、そして2018年当時も、テシア=ラヴィーンのネカトは大騒動にならなかった。
テシア=ラヴィーンは、
2015年当時、ロックフェラー大学(Rockefeller University)・学長だった。
そして、2018年当時、スタンフォード大学(Stanford University)・学長だった。
前述した様に、テシア=ラヴィーンは米国の生命科学界で巨大な権力を握っている。財界、学術界の有力な人物が友達である。
「猫の首に鈴を付ける」人はいなかったのだ。
そして、それから7年、または4年が経ち、2022年11月になった。
★テオ・ベイカー(Theo Baker)の学生新聞「スタンフォード・デイリー(Stanford Daily)」
2022年11月29日(62歳)、スタンフォード大学インターネット観測所(Stanford Internet Observatory:SIO)のテオ・ベイカー(Theo Baker、写真出典)記者が、ネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik)の話を聞き、マーク・テシア=ラヴィーン学長(Marc Tessier-Lavigne)のネカトをスタンフォード大学の学生新聞「スタンフォード・デイリー(Stanford Daily)」の記事として発表した。
2022年10月4日、ベイカーの記事の約2か月前、実は、ネカトハンターのチェシャー(Cheshire、またの告発名をActinopolyspora biskrensis)が、「2008年6月のMBO J.」論文のデータ疑念を、「パブピア(PubPeer)」で指摘した。
チェシャーは、スタンフォード大学の倫理告発窓口、学生新聞「スタンフォード・デイリー(Stanford Daily)」、学術誌「MBO J.」などにも通報した。
ベイカーの「スタンフォード・デイリー」記事はチェシャーの通報に触発されたと思われる。
なお、珍しいことだが、学術誌「MBO J.」はチェシャーの疑念に対して、問題を把握していると、「パブピア(PubPeer)」で返事をした。
エリザベス・ビック(Elisabeth Bik)は、「スタンフォード・デイリー」記事をツイートした。
★ネカト大騒動
ベイカーの「スタンフォード・デイリー」記事は、掲載されると直ぐに、主要メディアが記事に取り上げた。それで、2022年12月、テシア=ラヴィーン学長の盗用事件でメディアは大騒動になった。
適当に並べると以下のようだが、2桁数の記事がメディアで報道された(保存版)。
「スタンフォード・デイリー」記事では、ビック以外の2人のネカト研究者もテシア=ラヴィーン学長の4論文にネカト画像があると認めた。
これら4論文を含めた複数の論文に対して、パブピアでは、7年前から繰り返し、テシア=ラヴィーン学長の論文ネカトが指摘されていた。2022年12月29日現在、17報の論文が疑念視されている。
スタンフォード大学のディー・モストフィ広報担当(Dee Mostofi、写真出典)は、論文に「問題」があることをスタンフォード大学は認めたが、2022年11月28(月)夜、「画像操作は、論文のデータ、結果、解釈に影響を与えていないので、不正行為の可能性は低いと考えている」と発表し、事態の鎮静化に動きだした。
ビックは、「これらの画像操作がデータや結果に影響を与えていないという声明には同意できません」と、大学の声明に納得できないことを「スタンフォード・デイリー」新聞にメールした。
大学の声明によると、テシア=ラヴィーン学長は2015年後半に論文のいくつかの誤りに気付いた。それで、2015年のネカト疑惑が指摘されたその日に、テシア=ラヴィーン学長は、2つの学術誌の編集者に3論文について警告したと弁解している。
ただ、「スタンフォード・デイリー」新聞が、「テシエ・ラヴィーンは、何をどのように警告したのか?」と尋ねると、モストフィ広報担当は答えなかった。
直接答えなかったが、モストフィ広報担当は、テシア=ラヴィーン学長は「Science」誌に自発的に訂正を提案したが、「Science」誌はその訂正を行なわなかった、と述べている。
「スタンフォード・デイリー」が、提案された訂正文書のコピーを要求し、「Science」誌が訂正を行なわなかった理由を質問した。すると今度も、モストフィ広報担当もテシア=ラヴィーン学長も、答えなかった。
それならと、「スタンフォード・デイリー」新聞は、学術誌「Science」と学術誌「Nature」に連絡を取り、データ改ざんに関するコメントを求めた。学術誌「Science」のホールデン・ソープ編集長(Holden Thorp)は、対応すると返事してきたが、白楽は、その後の対応の内容を把握していない。
白楽は、「訂正の提案」はまともなものではなかったので、訂正文書のコピーを公開しないと思う(推測です)。
★ネカト調査委員の利益相反
2022年12月2日、スタンフォード大学の理事会(Board of Trustees)のジェリー・ヤン理事長(Jerry Yang、Yahoo! の元・CEO)はテシア=ラヴィーン学長のネカト調査(予備調査)をすると発表した。 → 2022年12月2日記事:Statement from Stanford Board Chair – Stanford Report
ネカト調査委員会は5人の委員で構成され、委員長は元連邦検事(Former U.S. attorney)のキャロル・ラム理事(Carol Lam、(保存版))である。
他の委員は、フェリックス・ベイカー(Felix Baker)、ジェームズ・コールター(James Coulter)、ジェフリー・ストーン(Jeffrey Stone)と、ジェリー・ヤン理事長(Jerry Yang)だった。
2022年12月5日、調査を発表した3日後、お粗末なことに、生物科学のバックグラウンドを持つ唯一の委員のフェリックス・ベイカー(Felix Baker)の利益相反が発覚した。
「スタンフォード・デイリー」新聞が以下を暴露した。 → 2022年12月5日、「スタンフォード・デイリー」新聞:Conflict of interest in investigation of Stanford president
フェリックス・ベイカー(Felix Baker、写真出典)と彼の兄弟が共同設立した投資会社は、テシア=ラヴィーン学長のバイオテクノロジー企業であるデナリ医薬品社(Denali Therapeutics)の株式を1,800万ドル(約18億円)も持っていたのだ。
同時に、テシア=ラヴィーン学長はデナリ医薬品社の株を、現在、5,000万ドル(約50億円)以上も持っていたのだ。
2022年12月3日(土曜日)、「スタンフォード・デイリー」新聞は、電子メールでフェリックス・ベイカーに連絡し、利益相反についてコメントを求めた。同紙はまた、スタンフォード大学にもコメントを求めた。しかし、両者とも返答してこなかった。
2022年12月4日(日曜日)の午後、世界最大の広報会社エデルマン社(Edelman)のエイダン・ライアン(Aidan Ryan)は、理事会を代表して、フェリックス・ベイカーは利益相反の疑いを避けるため、委員を辞任したと同紙に連絡してきた。
「スタンフォード・デイリー」新聞は、フェリックス・ベイカーが委員に選出された理由、理事長がネカト委員会のメンバーだと発表する前にフェリックス・ベイカーは自分の投資情報を開示したかどうかについて質問したが、エイダン・ライアンは回答してこなかった。
★リチャード・スミス(Richard Smith)の意見
英国医学協会(British Medicine Association)・会長を20年以上務めたネカトウオッチャーのリチャード・スミス(Richard Smith、写真出典)は、「スタンフォード・デイリー」新聞に次のような意見を述べた。
ネカト調査が進行している間、テシア=ラヴィーン学長は学長を辞任すべきである。
著名な地位を辞任することは良くあることで、それは罪を認めることとは次元が異なる。学長の仕事を十分に遂行するには学内外の人々からの信頼が必要です。ネカトとの疑念がある時、その信頼は得にくく、学長の職務に差しつかえる、ということです。
また、学内の委員会では利益相反が強い委員ばかりが委員になりがちである。そのような利益相反が強い委員会の調査結果を多くの人は信じませんし、受け入れません。
フェリックス・ベイカーが委員を辞任しても、テシア=ラヴィーン学長と直接関係がある委員ばかりです。その委員会のネカト調査では大きな利益相反があります。
利益相反を最小限に抑えるためにどのような措置を講じても、どのような弁解をしても、内部委員会は常に利益相反の疑いがあります。
内部委員会ではなく、外部機関に調査を依頼すべきです。
★ネカト論文疑惑が増えていく
テシア=ラヴィーン論文の疑惑を指摘したネカトハンターのエリザベス・ビック(Elisabeth Bik、写真出典)は、フェリックス・ベイカー委員の利益相反について、既に、そうだろうと予測していた。そして、他の委員たちもお互いをよく知っている仲間たちで、利害関係者だろうと述べている。
また、委員会のネカト調査は、「スタンフォード・デイリー」新聞が最初に指摘した4論文から増え続けることになると、エリザベス・ビックは指摘している。
というのは、エリザベス・ビック自身がテシア=ラヴィーンの論文にさらに多くのネカトを見つけたからだ。
他の人たちも、テシエ ラヴィーンの論文を調べ、ねつ造・改ざんと思われる画像操作を見つけている。
2022年12月29日現在、「パブピア(PubPeer)」では、テシア=ラヴィーンの 17論文が疑念視されている。
例えば、ブライオン・ヒューソン(Bryon Hughson)はテシア=ラヴィーンの「2003年7月のNature」論文の画像にネカト疑惑を指摘した。話はズレるが、この論文の最後から3番目の著者「Masahiko Taniguchi」は日本人だと思われる。
- Class 3 semaphorins control vascular morphogenesis by inhibiting integrin function.
Serini G, Valdembri D, Zanivan S, Morterra G, Burkhardt C, Caccavari F, Zammataro L, Primo L, Tamagnone L, Logan M, Tessier-Lavigne M, Taniguchi M, Püschel AW, Bussolino F.
Nature. 2003 Jul 24;424(6947):391-7. doi: 10.1038/nature01784.
下図に示すように、バンド1と2を複製し、上方にずらしてバンド9と10、に使用している。「パブピア(PubPeer)」で指摘されているが、下図は「スタンフォード・デイリー」新聞が出典である。
バンド1と2、バンド9と10の画像内にある特徴的なゴミが全く同じなので、複製は明白である。
このような複製は、「ウッカリ間違えた」では起こらない。読者を欺く意図的操作なのは明らかだ。
匿名希望の著名な研究者は、「スタンフォード・デイリー」新聞に「この指摘は非常に重要です。論文は撤回されるべきです」と語っている。
エリザベス・ビックは、テシア=ラヴィーンの「2009年11月のGenesis」論文でも画像の複製再使用があると指摘している。
- Generation of an OMgp allelic series in mice.
Lee JK, Case LC, Chan AF, Zhu Y, Tessier-Lavigne M, Zheng B.
Genesis. 2009 Nov;47(11):751-6. doi: 10.1002/dvg.20557.
「2009年11月のGenesis」論文の不正疑惑画像は省略するが、ネカト疑念論文は増える一方である。
★スタンフォード大学はテシア=ラヴィーンをかばう
これだけ明白なネカト疑惑の中で、スタンフォード大学はテシア=ラヴィーン学長を擁護し、「疑問視された画像の作成と掲載に彼は一切関与していませんでした」という声明を発表している。
ネカトウオッチャーのリチャード・スミス(Richard Smith)は、「年長者は不正行為とは何の関係もないと言って、不正行為から逃げようとするケースが多数あります。では、なぜ彼らはその論文の著者だったのですか?」と、大学の声明に異議を唱えている。
「撤回監視(Retraction Watch)」共同設立者のアダム・マーカス(Adam Marcus)とアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)もリチャード・スミスの指摘に同意している。
疑惑政治家が良く使う戦略と同じで、大学はネカト問題が無視できなくなるまで無視し、無視できなくなると声明を発表するが、なるべく少ししか説明をしない。
ネカト調査が始まる前に、容疑者(今回はテシア=ラヴィーン学長)は、疑念論文とはほとんど関係がないと大学は発表する。
そして、世間が問題を忘れてくれることをひたすら望んでいる。 → 2022年12月2日のアダム・マーカス(Adam Marcus)とアイヴァン・オランスキー(Ivan Oransky)の「STAT」記事:Image altering, alleged in Stanford leader’s work, hardly rare – STAT
★学生たちの反応
一方、スタンフォード大学の学生(学部生と院生)はテシア=ラヴィーン学長のネカト疑惑をどう思っているのだろう?
正規のスタンフォード大学のメール・アカウン「stanford.edu」を持つ人だけがアクセスできる匿名の社交メディア「Fizz」では、テシア=ラヴィーン学長が「詐欺師」であると思うかどうかを学生に尋ねている。
738人が「そう思う」と答え、319人が「そう思わない」と答えた。
テシア=ラヴィーン学長の辞任を望んでいるかどうかを尋ねると、858人が「はい」、836人が「いいえ」、1,077が「棄権」と答えた。
スタンフォード大学の教授たちがテシア=ラヴィーン学長のネカト疑惑をどう思っているのか?
残念ながら知る手段はない。
★テシア=ラヴィーン学長の学内教員向け手紙
テシア=ラヴィーン学長はスタンフォード大学の教員・同僚あてに以下の2通の手紙を発表した。
自分は誠実で公正だと釈明していると想像できるので、内容は省く。
以下は2022年12月5日のテシア=ラヴィーン学長の学内教員向け手紙の冒頭部分(出典:同)。全文(1ページ)は → https://tessier-lavigne-lab.stanford.edu/news/letter-faculty-regarding-scientific-papers、(保存版)
以下は2022年12月13日のテシア=ラヴィーン学長の学内教員向け手紙の冒頭部分(出典:同)。全文(1ページ)は → https://tessier-lavigne-lab.stanford.edu/news/letter-stanford-colleagues、(保存版)
内容を省くと書いたが、
「私は、データが正しく、また、正確に記載されていると強く思えない論文を投稿したことは一度もありません。このことを、もう一度、はっきり断言したいと思います」と結論している。
マー、いいけど。「よく言うよ」と白楽は思いました。
★7人の著名教授の意見
2022 年 12 月 24 日、スタンフォード大学の生命科学系の7人の著名教授が「スタンフォード・デイリー」新聞に「意見」を発表した。 → 2022 年 12 月 24 日記事:Opinion | Some faculty urge caution in rushing to judgment on MTL case
スタンフォード大学・教授、そして生物学研究者として、私たちは研修生(院生やポスドク)と緊密に協力して実験を行ない、発表した研究成果の正確さを保証しています。しかし、科学研究の最前線では、多様な専門知識をもつ大規模な研究者の協同研究チームが必要です。
人生のすべての領域と同様に、科学研究でも、間違い(errors)は避けられません。私たちは、研修生や研修生同士の間違いを罰するのではなく、批判を奨励し、著者に間違いを修正する機会を提供する研究文化を構築するよう努めています。私たちの研究成果は、最終的には、私たちの発見をを新しい領域に拡張する同僚によってテストされます。
3 つの論文 (1999 年と 2001 年に出版された論文)については、正式な調査が適切であると考えます。理事会とその分野の専門家がこれらの論文に関する疑問を解決し、エラーに対処するための適切な行動方針を特定できることを願っています。
他の論文に関しては、問題の図はテシア=ラヴィーン学長の研究室ではなく、他の研究室が作成したものです。連絡著者のうち 6 人は、問題の図は自分の研究室が作成した図で、誤りの責任も自分の研究室が負っていると、「パブピア(PubPeer)」 で述べている。そのうちの 5 報の論文の著者は、これらの誤りについてすでに説明した。1論文では、図の変更は、著者ではなく、出版社が印刷の都合で行なった。
そのまま受け取ると、「まともな」意見をを述べていると思える。
7人の著名教授は以下の7人で、「名・姓」順で、英語のママ示した。
- Aaron D. Gitler (遺伝学教授)
- Liqun Luo (生物学教授、全米科学アカデミー会員)
- Robert Malenka(精神医学および行動科学の教授、全米科学アカデミー会員、全米医学アカデミー会員)
- Susan K. McConnell (生物学教授、全米科学アカデミー会員)
- William T. Newsome (神経生物学教授、全米科学アカデミー会員)
- Carla J. Shatz (生物学および神経生物学の教授、全米科学アカデミー会員、全米医学アカデミー会員)
- Kang Shen (生物学教授、ハワード・ヒューズ医学研究所研究員)
●【ねつ造・改ざんの具体例】
上記したので、省略。
●6.【論文数と撤回論文とパブピア】
★パブメド(PubMed)
2022年12月29日現在、パブメド(PubMed)で、マーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)の論文を「Marc Tessier-Lavigne [Author]」で検索した。この検索方法だと、2002年以降の論文がヒットするが、2002~2022年の21年間の187論文がヒットした。
2022年12月29日現在、「Retracted Publication」のフィルターでパブメドの論文撤回リストを検索すると、0論文が撤回されていた。
★撤回監視データベース
2022年12月29日現在、「撤回監視(Retraction Watch)」の撤回監視データベースでマーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)を「Marc Tessier-Lavigne」で検索すると、 0論文が訂正、0論文が懸念表明、0論文が撤回されていた。
★パブピア(PubPeer)
2022年12月29日現在、「パブピア(PubPeer)」では、マーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)の論文のコメントを「Marc Tessier-Lavigne」で検索すると、1999~2019年の17論文にコメントがあった。
エルク・スタイン(Elke Stein)は、17論文の3論文で共著者になっているが、「Elke Stein」で検索すると、8論文にコメントがあった。
8論文の内6論文がテシア=ラヴィーンと共著で2論文はテシア=ラヴィーンが著者に入っていない2021年と2022年の論文である。
●7.【白楽の感想】
《1》学長のネカト
リチャード・スミス(Richard Smith)が指摘しているが、マーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)は、スタンフォード大学・学長を辞任すべきである。こんな状況で、まともに学長の職責を果たせない。
また、学長のネカト調査は、学内の委員会では利害関係が強すぎて、まともに調査も判断もできない。
内部委員会ではなく、外部機関に調査を依頼すべきだ。
まだ調査は始まったばかりだが、スタンフォード大学は火消しと隠蔽に躍起である。理事会も十分機能する印象がない。多分、本件は、「大学のネカト調査不正」事件になるだろう。
と、スタンフォード大学の不手際を批判したが、振り返って日本はどうなっているか?
日本でも、東北大学、岡山大学など、学長のネカト行為をまともに調査・判断できなかった。
正義感の強い教授が捨て身の覚悟で正そうとしたが、報復的な激しい攻撃をされた。
その異常を知りながら、文部科学省も、学術会議も、関係組織も見て見ぬふりで、対処しようとしなかった。
それでゴチャゴチャになり、正義はどこかに飛んで行ってしまった。
日本は、学長ネカト事件の検証をしていない。その反省もろくにしていない。検証していない、反省していないのだから、改善策は提示されていない。(数年以内に)改善される見込みはゼロである。
だから、今後、学長のネカト事件があれば(あるでしょう)、また、紛糾し、権力闘争になり、正義はどこかに飛んで行ってしまう。
《2》悪い奴ほど偉くなるのはなぜ?
マーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)、Photo by Veronica Weber。https://paloaltoonline.com/news/2016/02/04/neuroscience-pioneer-tapped-to-lead-stanford
マーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)は、スタンフォード大学(Stanford University)の学長で生命科学界の権力者である。
「パブピア(PubPeer)」で問題視されている17論文は1999~2019年(39~59歳)に出版した。
つまり、カリフォルニア大学サンフランシスコ校・教員時代、スタンフォード大学・教員時代、ジェネンテック社時代、ロックフェラー大学時代、それにロックフェラー大学時代の約21年間の論文が問題視されている。
21年間と長い。誰か、早期にしっかりネカトを指摘すべきだった。
イヤイヤ、2015年と2018年に指摘したけど、無視されたんでした。つまり、本件は、「大学のネカト対応怠慢・不作為」事件でもある。
でも、その間、3回も移籍しているので、移籍にあたり、テシア=ラヴィーンの論文は精査されたはずだ。
だから、ネカトだと騒がなくても、その時、静かにネカト者と認定し、ネカト者の移籍を受け入れなければ、テシア=ラヴィーンは自然消滅していったハズだ。
それを、2つの著名大学の学長に就任した。
選考委員の目が節穴で脳は無能だったので、学長に就任させ、生命科学界の権力者に育ててしまった。
困ったもんです。
《3》7人の著名教授の意見
スタンフォード大学の生命科学系の7人の著名教授の2022 年 12 月 24 日の「意見」をそのまま受け取ると、「まともな」意見をを述べていると思える、と書いた。
しかし、7人共、スタンフォード大学の生命科学系の著名教授である。
7人全員、テシア=ラヴィーン学長と「強い」利害関係があると誰もが思うだろう。
「意見」は、事実や判断の適切さウンヌンより、テシア=ラヴィーン学長を擁護する意図が根幹にあるので、「権威」や「名声」で、疑惑をねじ伏せる意図が丸見えである。だから、その配慮もして、なるべく「まともな」意見をを述べているように思える、
この「意見」で、ネカトの疑念が晴れるかどうか、白楽は、わからない。
約21年間の論文が問題視されている説明は何もない。
研究で重要な成果を挙げた人が、ネカト者だったケースは、ゴマンとある。
そもそも論で言えば、研究で重要な成果を挙げた人は研究で多忙だった分、研究倫理の知識は少ないし、研究倫理で適切な判断ができていない。
さらに、研究で重要な成果を挙げた研究者は、称賛され、傲慢・尊大な研究人生を送っているので、むしろ、研究倫理を無視しがちな、アブナイ人たちである。
生命科学系の著名教授の「意見」はどうでもよく、研究倫理系の教授の「意見」を重視したいと思うのは、白楽だけではないと思うけど。
《4》メディアの威力
2015年と2018年にマーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)のネカトを指摘したけど、当時所属のロックフェラー大学とスタンフォード大学は指摘を無視した。
それで、2022年11月にテオ・ベイカー(Theo Baker)がスタンフォード大学の学生新聞「スタンフォード・デイリー(Stanford Daily)」の記事に掲載した時も、スタンフォード大学は甘く見ていたに違いない。
ところが、大炎上した。
この大炎上のメカニズムを白楽は十分把握できていないが、メディアの威力はスゴイと感じた。
日本でも2022年6月14日に毎日新聞が福井大学の友田明美・教授の査読偽装をスクープしたことで、大騒動になった。もし、毎日新聞が記事にしなければ、福井大学は友田教授の査読偽装を問題視しなかっただろう。
メディアの威力はスゴイと思うが、メディアが報道しなければ不正が更生されない社会システムは、マズイ、マズイ、マズイ。
学術界の自浄作用を期待する人もいるけど、自浄作用はありません。
マーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)。https://virtual.keystonesymposia.org/ks/sessions/505/view
ーーーーーーー
日本の人口は、試算では、2100年に現在の7~8割減の3000万人になるとの話だ。国・社会を動かす人間も7~8割減る。現状の日本は、科学技術が衰退し、かつ人間の質が劣化している。日本がスポーツ、観光、娯楽を過度に追及する現状は日本の衰退を早め、ギリシャ化を促進する。今後、科学技術と教育を基幹にし、人口減少に見合う堅実・健全で成熟した良質の人間社会を再構築すべきだ。公正・誠実(integrity)・透明・説明責任も徹底する。そういう人物を昇進させ、社会のリーダーに据える。
ーーーーーー
ブログランキング参加しています。
1日1回、押してネ。↓
ーーーーーー
●9.【主要情報源】
① ウィキペディア英語版:Marc Tessier-Lavigne – Wikipedia
② ◎2022年11月29日のテオ・ベイカー(Theo Baker)記者の「Stanford Daily」記事:Stanford president’s research under investigation
③ マーク・テシア=ラヴィーン(Marc Tessier-Lavigne)に関する「Stanford Daily」記事リスト:Search Results for “Three Tessier-Lavigne” | The Stanford Daily
④ 2022年11月29日のステファニー・リー(Stephanie M. Lee)記者の「Chronicle of Higher Education」記事:Stanford Is Investigating Its Own President Over Research-Misconduct Allegations
⑤ 2022年11月30日のジョセリン・カイザー(Jocelyn Kaiser)記者の「Science」記事:Stanford investigates potential misconduct in president’s research | Science | AAAS
⑥ 2022年12月6日のテオ・ベイカー(Theo Baker)記者の「Stanford Daily」記事:Stanford president addresses research misconduct allegations in letter to faculty
⑦ 2022年12月16日のジョセリン・カイザー(Jocelyn Kaiser)記者の「Science」記事:Stanford misconduct probe of president stumbles as new journal launches inquiry | Science | AAAS
⑧ 2022年12月19日のレオニッド・シュナイダー(Leonid Schneider)のブログ記事:Toppling Giants in Stanford – For Better Science
⑨ 2022年12月9日のスチュアート・バック(Stuart Buck)記者の「The Good Science Project」記事:Who Is Responsible For Research Fraud Anyway?
★記事中の画像は、出典を記載していない場合も白楽の作品ではありません。
●コメント
注意:お名前は記載されたまま表示されます。誹謗中傷的なコメントは削除します