ニンテンドー・オブ・アメリカ(以下、米任天堂)は『スプラトゥーン2』北米公式大会の生配信を中止した。米任天堂は今月12月6日に『スプラトゥーン2』の公式大会Splatoon 2 North American Open December 2020を実施。4位までのチームは賞金やトロフィーを受け取ることができ、8位までのチームもマイニンテンドーポイントを受け取れるという大会だ。数多くの参加が申し込まれた人気大会となったが、直前になり公式配信が中止。参加者にも配信することを禁止していたという。Dot Esportsが報じている。
米任天堂は同大会の配信中止について、予期せぬ課題発生と説明しているが、実際にはある種の“抗議活動”が発生していたようだ。大会関係者であるSlimey氏がその抗議について伝えている。同氏によると、同大会に参加する『スプラトゥーン2』チームの30%近くが、#FreeMeleeに関連した名前をつけていたのだという。Meleetationであったり、FreeMelee 211であったり、Element fRee Meleeであったり。選手たちがさまざまなチーム名にて、#FreeMeleeを叫んでいたのだ。
#FreeMeleeとは、『大乱闘スマッシュブラザーズDX(以下、スマデラ)』に関する抗議活動。『スマデラ』の英語名は「Super Smash Brothers Melee」ということで、#FreeMeleeタグが作られている。アメリカでは、例年The Big Houseと呼ばれる大規模な大会が実施されている。『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズに焦点を当てた大会であり、高い人気 を誇っていた。今年は新型コロナウイルスの影響を鑑みて、初のオンライン大会への移行を発表。しかし、2001年に発売された『スマデラ』ではオンライン機能が実装されていない。そこで大会では、ニンテンドーゲームキューブのエミュレーターDolphinを改造したツールSlippi Onlineが使用されることとなった。
これで『スマデラ』でもオンライン大会実施が可能となったわけだが、この方式はゲーム内コンテンツとしてオンライン機能が備わっている『スマブラSP』などとは異なる非公式なもの。 米任天堂はThe Big House 2020の『スマブラ』コンペティションについて、ゲームの違法コピーと、SlippiというModが組み合わせて使用されているため、大会主催者に使用をやめるように求めたとのこと。大会側は拒否したため、米任天堂は知的財産・ブランドを保護するために大会中止要請をすることとなった(関連記事)。この任天堂側の決断に怒れるユーザーが、#FreeMeleeなるハッシュタグを作成し、抗議活動を展開しているわけだ。
任天堂は、同社タイトルの改造や無断使用について毅然とした態度をとっている。一方昨今ではコミュニティとの対話も重要視しており、非公式大会については、そうしたツールについて黙認するケースもある。しかしThe Big Houseは米任天堂が比較的手厚くサポートしてきた大会でもある。スポンサーも務めてきた大会にて、改造エミュレーターと正規ではないゲームが使用されるということで、止めざるを得なかったのだろう。
一方で、The Big House中止の波紋は大きく、コミュニティは米任天堂および任天堂に怒りのリプライを飛ばし続けている。『スプラトゥーン』北米コミュニティもまた『スマデラ』北米コミュニティをサポートしているといい、それゆえにThe Big House中止に抗議すべく、今大会のためにチーム名を変更するプレイヤーが続出しているようだ。#FreeMeleeに関する抗議チーム名が公式および関連した配信に映れば、その抗議活動を世界中のプレイヤーに露出することになる。そうした側面を懸念し、米任天堂は同大会の配信中止および配信差し止め要請をしたのではないかと言われているわけだ。
今回米任天堂の決断に、『スプラトゥーン』北米コミュニティは反発しており、Discordでは抗議の声が数多く寄せられているという。#FreeMeleeにちなんだ#FreeSplatoonなるタグも発生し、さらにSplatoon 2 North American Open December 2020決勝参加4チームが参加する大会The Squid Houseが開催され、大きな盛り上がりを見せているとのこと。同大会には、1万2000ドルの賞金が募金によって提供されるほどだ。
ただ、#FreeMeleeについては、#DontFreeMeleeなるカウンタータグも生まれており、任天堂側の決断を支持するユーザーも多い。The Big House中止により混沌を呈する北米『スマデラ』『スプラトゥーン』コミュニティ。近年その距離を縮めつつあった米任天堂と北米の熱狂的なコミュニティの関係は、どこへ向かうのだろうか。