阿弖流為(あてるい)没後1200年を、
地域再考のきっかけにしたい


 私たちのグループ「延暦八年の会」とは、蝦夷の頭領「阿弖流為」が「続日本紀」に初めて登場した年[延暦八年(789年)]にちなんでつけたもので、7人の有志で阿弖流為の研究活動などを平成元年から行っています。
 ご存じのとおり、阿弖流為は、坂上田村麻呂に投降し、京都で斬首されるまで朝廷に抵抗した日高見国のリーダーで、西暦2002年がちょうど没後1200年にあたります。私たちの会では、この機会を通じて、この地のために闘い、そして死んでいった阿弖流為を偲びながら、地域の歴史や文化に目を向け、未来の地域のあり方を考えていこうという活動を行うための準備を進めております。
 京都遷都1200年祭の折、坂上田村麻呂が建立した清水寺に、阿弖流為鎮魂の碑が立てられました。それをきっかけとして、清水寺と私たちとの交流が始まり、お互い行き来するようになったのです。かつては、宿敵同士だった阿弖流為と田村麻呂がもたらしてくれた、時空を超えた交流と言えるでしょう。
 時に、歴史は不幸な結末もありますが、その結果にこだわりながらも、地域の将来を考える上での価値ある資源として捉える方が、建設的だと思います。
 胆江地区には、歴史に名を馳せた多くの人物がいます。また名を馳せた人物ほどではないけれど、世の中に貢献した人物もたくさんいます。その人たちの功績をどう評価するかは、時代性や歴史認識によって色々変わってきます。ややもすると、飛躍したり歪曲したり、過大に評価をしたりしてしまいがちですが、事実は事実として、客観的かつ素直に見つめていく姿勢が大切だと思います。
 来る21世紀のため、私たちは正しく地域の歴史を見つめ、今日に活かすための努力をしていかなければならないと、つくづく感じます。

延暦八年の会会員とそのご家族に有志も加わり、京都清水寺にある「阿弖流為・母禮之碑」を訪ねました。左端手前が佐藤さん。

シリーズ17
[地域の歴史を学び、
現代に活かしていこう]


延暦八年の会会長
さとう
ひであき
佐藤
秀昭
さん


昭和14年水沢生まれ。昭和49年、詩集「毛越寺二十日夜祭」で第15回土井晩翠賞を受賞。昭和56年に20年間勤務した郵政省を退職後、岩手出版を設立。主に郷土の歴史・文化にスポットを当てた著書を出版している。
現在、高野長英記念館運営審議委員、アテルイを顕彰する会副会長、後藤寿庵の会幹事、北上川流域の歴史と文化を考える会副会長などを歴任。



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