※(22.10.09追記)外国人留学生30万人計画見直しによる更なる外国人留学生増加計画についてはこちらへ

 

お疲れ様です。藤村です。
最近また外国人留学生優遇ネタでこのブログに到達される方が多いようで、アクセスカウンターが異様な伸びをしています。

その中でも、本ブログが有馬哲夫氏に紹介されました。好意的に捉えてくれたのはありがたいのですが、正直類友でしょうという思いです。

 

 


さて、2022年版と称して、またファクトを整理したいと思います。総集編的になりそうですけど、参議院議員選挙も近いですしね。



① 「多くの」中国や韓国からの留学生が給付型奨学金をもらっている?
2020年、新型コロナの影響で留学生数がどっさり減りました。ここでは、2019年と2020年の数字を併記したいと思います。出典は日本学生支援機構。

(1)2020年
留学生全体数:279,597人、そのうち高等教育機関在籍数:218,783人。
国費留学生数:8,761人
⇒留学生全体のうち3.13%。高等教育機関在籍者数のうち4.00%

(2)2019年
留学生全体数:312,214人、そのうち高等教育機関在籍数:228,403人。
国費留学生数:9,220人
⇒留学生全体のうち2.95%。高等教育機関在籍者数のうち4.04%

何度でも質問しますが、一般的に3%、4%は「多い」ですか?「多い」とは言えませんよね。国費留学生は留学生の中でもほんの一部です。
国費留学生優遇説を唱えている人は大体、このパーセンテージには触れていません。ほれ、日本第一党チラシもこの通り。

パーセンテージを書くと、国費留学生が一握りの優秀な人だってのがバレちゃうからでしょう。

 

 


そして留学生向けの奨学金というと、「学生支援機構の私費留学生学習奨励費」もあります。
高等教育向けに月48,000円。支給は1年。2021年、9988人が採用されているようです。

 

 

ただとにかく、これらの枠は非常に少ないです。こういった奨学金を一切利用できない純粋な「私費留学生」が9割。莫大に存在します。

私費留学生は基本的に、学生支援機構の給付型・貸与型奨学金を利用することが出来ません。

私費留学生には基本的に、税金が投入されていません。自己負担、自己責任で日本に来ています。

 

特に鳴り物入りで作られた給付型奨学金も、留学生は対象外です。仮にも消費税増税で作られた制度で、留学生も消費税払ってるのにね・・・

 

こちらの記事でも言及しましたが、多くの留学生が長時間のアルバイトに従事しなくてはなりません。そしてそれは極めて大きな負担になります。せっかく留学しに来たのにバイト漬け、とはどうしたものでしょう?制度上の欠陥ですよね。



②「多くの中国や韓国」からの留学生が給付型奨学金をもらっている?
国籍内訳ですね。

まず前提ですが、そもそも日本は多くの留学生を中国などから受け入れています。2020年は、中国から121,845人(全留学生の43.6%)、韓国からは15,758人(5.9%)です。
ちなみにベトナム、ネパールからの受け入れも多く、それぞれ62,233人(22.3%)、24,002人(8.6%)。

で、中国や韓国などからの国費留学生受け入れはどうでしょう?
中国から834人(中国からの留学生のうち0.7%、全国費留学生のうち9.5%)韓国から565人(韓国からの留学生のうち3.6%、全国費留学生のうち6.4%)。

全国費留学生のうち、中国・韓国からのは16%ですね。
「国費留学生の多くが中国や韓国からの留学生じゃないか」と思っていたそこの貴方。
中国韓国以外が8割以上を占めているのです。落ち着いてくださいね。

③日本の学生向けの奨学金と比べて、沢山の奨学金や医療費補助など優遇制度がある?
制度面ですね。

 

国費留学生に採択されたら、授業料の免除、往復航空券、月117,000円(学部生など)、143,000円~145,000円(研究留学生など)といった待遇を受けることが出来ます。

後でも触れますが、それをしてでも優秀なグローバル人材に日本に来てもらうのは、とても大事なことです。その費用を惜しんでいいとは思いません。
 

で、それとは別に、制度面でもデマがかなり出回っています。先日も触れましたが、これとか。

 

 

特にこの中の、「渡日一時金25,000円」「宿舎費補助9,000円か12,000円」「医療費補助80%」。

先日Twitterで回ってきた署名?でもそれが触れられています。

 

 

しかし、それらはすでに14年前、15年前に無くなった制度です。

 

 

既に存在していない制度を持って「こんなに優遇されている!」と騒ぐのは、目障りなのでやめてね。

そして先述の日本第一党のビラも、よくわからないデマを流しています。

「日本人大学生の待遇」について、

「入学金…最大28万円免除」「授業料…最大54万円免除」「奨学金…月額29,200円~66,700円」とのこと。

でも正しくは、「入学金…最大28万円免除(国立)」「授業料…最大70万円免除(私立)」「奨学金…月額29,200円~75,800円」ですね。

多分勘違いなのでしょうが、でもこれがわかってないのって、よほど高等教育政策について知らないんだろうなって思います。日本第一党だしね、仕方ないよね。

 



ただ何度でも言いますが、日本の学生向け奨学金は不十分です。それと比べてどうこうという話ではなく、日本の学生向け・留学生向け両方の奨学金を拡充すべきなのです。

こちらの記事でも検証しましたが、日本の学生向け給付型奨学金も十分とは言い難い。せっせと学費を高くしてきたのは自民党です。政治を変えましょう。

④他の国では全て、留学生から高い学費を取っている?
何度か言及していますが、この記事が色んな所で流布されて、「留学生を自国生よりも優遇する国はない」「OECDの統計によると、欧米の大学の場合、外国人留学生は自国の学生に比べて平均約3倍の授業料を払っている」のフレーズが独り歩きしています。

 

先ほどの日本第一党のビラでも同様のフレーズ「外国人留学生は自国の学生に比べて平均約3倍の授業料を払っている(OECD統計)」が書かれていますが、オリジナルはその記事でしょう。

 

 

 

でも、「OECD統計」がどの統計なのか書いてません。出典をちゃんと書いていない、この時点で欠陥ビラです。知能が無いからね、しょうがいないね。

 

こちらの記事でOECDインディケータ―、わざわざamazonで買いました)検証した通り、「OECDの統計によると、欧米の大学の場合、外国人留学生は自国の学生に比べて平均約3倍の授業料を払っている。」は根拠なし、デマと言っても過言ではありません。計算式が意味不明です。

「OECDの統計によると、欧米の大学の中には、外国人留学生が自国の学生に比べて約3倍の授業料を払っている国もある。」なら正しいのですが、

おそらく例の記事の筆者、山田順氏が大げさにデマを書いてしまったのが、伝言ゲーム的に伝わってしまったのではないでしょうか。

 

連動して、日本第一党のビラもデマです。可哀そうに。哀れ哀れ。

 

⑤ 国費留学生なんて国益に繋がらない!やめるべきだ
国費留学生が学部生で遊んでばかりだろう、と思っている方も多いかもしれません。
ですが、国費留学生の8割は、「研究留学生」つまり大学院生です。
 

学ぶことが主眼になる学生と、研究が主な任務になる大学院生では、社会への直接貢献度も少し異なります。

私が工学系の大学院修士・博士課程にいたときも、エラく優秀な中国からの留学生の先輩がいました。研究室のボスよりも研究ができるんじゃないかと思うほどで、定期的に論文発表もしていました。とどめに半年分飛び級して、2年半で博士課程を卒業していきました。ほんといみわからん。

そう、あの先輩は「大学院生時点で」日本の学術を支える一員だったのです。

 

Twitterを見ていると、ただの一人でも中国韓国からの国費留学生がいるのが我慢ならない、との思いを持っていらっしゃる方は少なくないと思います。日本第一党のビラも同様の趣旨ですよね。
ですが、優秀な留学生を招くことは、間違いなく日本の国益に直結します。


「世界大学ランキング最新版 日本から116校がランクイン、ベスト200は中韓下回る」
世界大学ランキングでも、日本は中国・韓国の後塵を拝すところが結構あります。

他の国から超優秀な学生(というか大学院生)に是非来てもらって、一緒に研究して、論文書いて、日本で教鞭とったり、日本で研究したり、持ち帰って日本との懸け橋になってもらう、というのが、日本の国益にならないはずがないじゃないですか。


じゃあわざわざ国境を越えて来てもらうにはどうするか?せめて経済支援はしっかりしないとならないわけです。彼らが自国のいい大学に行く以上の魅力を打ち出す努力を、決してやめてはいけないのです。

他国から優秀な学生(というか大学院生)を呼ぶのに、金がかからないわけがないのです。

「あまりにも異常な日本の論文数のカーブ」
「これはやばすぎる:日本の工学系論文数はすでに人口5千万の韓国に追い越されていた!!」
先日の記事でも言いましたが・・・

日本の論文数はまだ世界シェアの上位を占めています。占めていますが、これは貯金を食いつぶしているようなもの。日本の基礎的な研究力はどんどん地盤沈下しています。
優秀な留学生に来てもらって、日本の学術レベルをあげて・・・って、とても日本の国益になるじゃないですか。なるんですよ。



おわりに
この世には、大量の外国人留学生デマが流れています。Twitterで万近くの「いいね!」がつき、脳みそに「よくわかんないけど★デマを流していいや★☆」というカビが生えている連中であふれています。

挙句国会質問で日本の恥をさらしたり、国政選挙の争点に持ってこようという政党もあるほどです。日本の恥をさらすのが日本の国益に繋がると勘違いしているんですよね。

まずはファクトを確認することから始めましょう。

そして最後にひとつ、お願いです。
このブログ、本当にたくさんのアクセスを頂いています。ありがとうございます。

でもコメントを残す方はほぼゼロです。

アクセスカウンターばかりが回って、でも読者の反応が無いと、一体読者はどんな感想なんだろう?と不思議に思ってしまうんです。
「このブログで誤解が解けました」「まあまあためになりました」「なかなかやるじゃん」「自分はそうは思いません」「こんなデータがあるからここが間違ってるよ!」「反日サヨクくたばれ」、なんでもOKです。でもできるだけ、反論は「論」でお願いします。