電力需要増 頼みは火力発電
2023年01月28日 07時00分読売新聞
(写真:読売新聞)
記録的な寒波で暖房需要が高まる中、一部電力会社は火力発電の臨時稼働に追われた。電力需要の急増に発電が間に合わなければ大規模停電になりかねない。天候に左右される再生可能エネルギーが増える一方で、発電量を調整しやすい火力発電に頼らざるを得ない状況になっている。
■準備
10年に1度とされる寒波に日本列島が覆われた25日、電力各社は、電力供給量の確保に追われた。東京電力と中部電力が共同出資する火力発電会社JERAは、休止中だった姉崎火力発電所(千葉県)の6号機(出力60万キロ・ワット)を臨時に稼働した。
この日、東京都中心部でも最低気温が氷点下を記録し、家庭や企業で暖房利用の急増が見込まれた。東電管内では需要のピーク時に、電気の供給力に占める需要の割合である使用率が89%まで上昇した。北海道、東北、中部、北陸の4電力の管内でも1月としては電力需要が過去10年で最も多くなった。
電力会社は、常に管内の電力需要に見合った電力を供給できるよう発電量を調整している。しかし、冬季は寒波や大雪によって想定外に電力の需要が増加するケースも多い。発電が追いつかなければ、大規模な停電を招くおそれもあり、今回は各電力とも「記録的な寒波の襲来が想定され、準備が間に合った」と胸をなで下ろす。
■教訓
電力各社はこの数年、苦い経験を繰り返してきた。
東電管内では冷え込みが厳しくなった昨年3月、暖房の使用が増えて電力需要が急増。同時期に起きた地震によって一部の火力発電が緊急停止しており、発電量に対する使用率が100%を超えた。東電と東北電の管内は、政府が「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」を発令し、他電力から電力を融通してもらう事態に発展した。
また、関西や九州、四国の各電力管内では2021年1月に、深刻な電力危機に陥った。降雪で再生可能エネルギーの中心となっている太陽光発電の出力低下に伴って、電力供給が大幅に減ったためだ。
太陽光や風力といった再生エネは、天候によって発電量が大きく左右される。経済産業省が27日発表した28日から1週間の電力需給は、全国的に予備率が10%を超え安定供給に必要な水準を確保できる見通しだ。だが、電力会社幹部は「雪が降れば太陽光の発電量は当然減る。常に厳しい需給状況にある」と指摘する。
電力供給の調整役を担う火力発電はCO2(二酸化炭素)の排出が伴い、脱炭素社会に向けては課題も多い。国内の電力の安定供給に向けた取り組みが待ったなしになっている。