幾何学の世界で、有名な、ある問題があります。

問題。「定規とコンパスだけで、任意の角を、三等分しなさい。」

注意。「任意の角」とは、ありとあらゆる角度の事を言う。


詳細な、証明は知りませんが、これ、「不可能」だそうです。

既に、3の倍数を含む、45°、90°、120°などは可能です。

しかし、例えば、44°、95°、123°などの微妙な角には、適用できません。

このため、特定の角でできたからと言って、問題を解いた事にならないのです。


この問題を教わったのは、私が、小学校4年生ぐらいの時。

皆、必死こいて、解いていましたが、誰も解けず。

「正解が存在しない、問題が存在する。」

教師としては、それを教えたかったようです。


しかし、クラスメイトに一人、皆を嗤っている、男の子が居ました。

彼の名前は、「港 賢一郎」。

どうも、塾で教わり、この問題が、正解の無い問題だと、判っていたようです。

皆、頭抱えて、悩んでいる時に、1人で偉そうにしていました。


私は、馬鹿なので、3等分できるケースを見つけて、「解けた!」言いました。

しかし、彼、港君は、嘲笑っていました。

それを見た、教師が、一言。

「既に、答えを知っていて、その上で何かを言うのは、非常に簡単なこと。」

「問題は、何故、答えが出せないのかを、自分の頭で、考える事です。」


彼、港君は、その後どうなったか?

彼は、教育の道を志していたようです。

少なくとも、小学校6年生あたりまでは、本気で考えていたようです。

しかし、両親の反対に遭ったらしく、経理・会計の道へ。

成人式の時、彼に、今、何をしているのかを尋ねました。

「1年目には、教育学部に合格していたが、浪人して、経済学部に行ってる。」

私としては、引っかかりを覚えながらも、そんなもんか、と聞いていました。

ところが、別の人にその事を言うと・・・、

「え? あいつ、会う度に、違う事言ってるぜ? 嘘ばっかりだよ。」


彼は、結局、自分の頭で考え続けるという事を、教わらなかったのです。

普通の人は、長い学校生活のうちに、時間をかけて習得します。

しかし、彼は、塾で教えてもらえたために、そのチャンスが奪われた。

今、私も、彼も、同年齢のはずです。

しかし、他の人に尋ねても、誰も、彼の事を覚えていない。

この世から、かき消えてしまったかのような・・・。


皆さんも、子供の教育には、注意を払って下さい。

ポイントは、私が教わった通りです。

正面からぶつかって、大間違いを、堂々と語る、馬鹿な子供。

どちらかというと、そっちのほうが、好ましいようです。

彼に、比すれば。
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