事例で学ぶ!プラスチック加工における事故原因を検証するための重要なポイント (2/2)

事例 プラスチック事故の仮説と検証方法

事例 プラスチック事故の仮説と検証方法

事故の原因究明から対策までの流れを5つのステップに分け、各ステップの概要と重要なポイントを見ていきましょう。

<図2>
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仮説1 成形工程で樹脂が分解し、強度が低下した

コップに飲み物を入れた際に、持ち手が取れてしまった場合、分解の要因としては、酸素などが存在しない状態の中で強く加熱することによって起こる熱分解、原料となる合成樹脂と水との反応によって起こる加水分解、他の樹脂の混合による熱分解の主に3点が考えられます。

【検証方法】

平均分子量測定(粘土法、GPC法)、熱分解性評価(DSC(示差走査熱量測定))、TG法(熱重量測定))、混入樹脂の分析(赤外分光分析法)、MFR測定などがあります。

GPC法とはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使った分析法で、合成樹脂など高分子の分子量分布および平均分子量を求めることができます。また、TG法(熱重量測定)では、測定試料(サンプル)の酸化、熱分解、脱水などの重量変化、耐熱性の評価や反応速度の分析に利用することができます。一方、MFR測定とは、メトロフローレイト(MFR)を測定することです。MFRは溶融樹脂の流動性の大きさのことで、この値から分子量の大きさを推定することができます。GPC法に比べ測定が簡便なため、熱可塑性樹脂の品質管理のための典型的なインデックスです。

仮説2 分子配向が影響した

容器部分に一様にヒビが入っている場合、分子配向によって配向に直角方向に弱く割れたという仮説です。合成樹脂は成形加工を行う際、延伸することで各種特性を獲得します。その際の延伸温度や速度の違いが、プラスチック成形品の特性に影響を与えます。また、脆弱性の要因にもなります。したがって、延伸によって生じる分子の配向性を評価することが重要です。

【検証方法】

強さの異方性の測定、加熱収縮率測定、偏光ラマン測定などがあります。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、偏光ラマン測定により分子配向性を評価できます。偏光ラマン測定とは、照射レーザーやラマン散乱の偏光方向を変えて測定することで、分子配向の方向などを評価できる測定法です。

仮説3 残留応力により割れた

未使用のまま保管していたのに、持ち手が割れていた場合、合成樹脂を射出成形する際には、その過程で、成形品内部に応力が発生し残存します。それが残留応力です。残留応力は成形品の性能や耐久性に影響するため、それを把握することは極めて重要です。残留応力による割れとしては、ストレスクラックやソルベントクラック現象があります。

【検証方法】

溶剤浸漬法や試片切削法による残留応力測定があります。付着物のソルベントクラック試験も有用です。 溶剤浸漬法は、特定の応力によりプラスチック成形品にクラックを発生させる薬品にプラスチック成形品を浸漬し、クラックの発生状況を観察することで、残留応力レベルを測定する方法です。一方、付着物のソルベントクラック試験とは、種々の薬品や溶剤、油と残留応力との相互作用によってプラスチック成形品の表面にクラックが発生するか否かを調べ、薬品に対する強度を評価するというものです。

プラスチック材料・加工についての基礎知識

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