Twitter上で野党批判を繰り返し、不正確な情報や誹謗中傷が問題視されていたアカウント「Dappi」の発信元が、東京都内のWEB制作会社だった問題。
立憲民主党参議院議員の小西洋之氏と杉尾秀哉氏が「Dappi」のツイートで名誉を毀損されたとして、WEB制作会社と社長ら役員2人に計880万円の損害賠償などを求めた訴訟の弁論が1月23日、東京地裁(新谷祐子裁判長)であった。
その投稿内容や頻度から、「Dappi」の運用は会社の業務の一環であったと指摘した両議員側に対し、会社側は改めて「業務と無関係」であると反論。いち従業員による私的な投稿であったというこれまでの主張を、改めて強調した。
フォロワー数17万人以上と、拡散力の大きいTwitterアカウント「Dappi」。
主に野党やマスコミ批判の文脈から、国会答弁を編集した動画や、DHCテレビ「虎ノ門ニュース」の動画、インフォグラフなどを公開。その発信内容には不正確な点や誹謗中傷と批判されるものもあり、問題視されてきた。
訴状などによると、「Dappi」は2020年10月、森友学園の問題に関連し、両議員について、産経新聞に掲載された門田隆将氏のコラム記事を引用しながら、「近財職員は杉尾秀哉や小西洋之が1時間吊るしあげた翌日に自殺」などとツイート。
これについて両議員側は、亡くなった職員に説明を求めたり面談を求めたりした事実はないとし、ツイートにより名誉を毀損されたと主張している。
発信元の回線を契約していたのは、東京都内のWEB制作会社。法人登記によれば、サイト制作やコンサルティング、インターネット広告の運営管理などを担っている。民間の信用調査機関によると、得意先の一つは「自由民主党」。政党支部や大臣経験者との取引も確認された。
同社の社長が、党本部事務方トップ・元宿仁事務総長の親族であることや、農水相や金融担当相を歴任した山本有二衆院議員(比例四国)と「友人関係」にあることが、BuzzFeed Newsのこれまでの取材で明らかになっている。
なお、両議員は一連の事案の発端となったコラム記事について、産経新聞と門田氏に対しても訴訟を起こしていた。
東京地裁は昨年11月の判決で産経新聞と門田氏に対して、「『つるし上げ』という集団的な批判や問責を行うことによって(両議員が)当該職員を自殺に追い込んだと受け止められるおそれがある」などと指摘。
両議員それぞれに110万円の損害賠償を支払うよう命じた。謝罪広告などの掲載は退けたが、同社と同氏は控訴しているという。
「会社にとって何のメリットもない」と反論
WEB制作会社を相手にした両議員側の裁判では、「Dappi」が会社の業務として運用されていたのか、いち従業員の私的な投稿だったのか、否かが争われている。
会社側のこれまでの主張によると、「Dappi」は従業員が会社の業務時間中に、会社からの貸与パソコンを使って投稿を「私的」に繰り返していたもので、ほかの従業員らが気がつくことはなかった、としている。
両議員側は、国会中継などを編集した「Dappi」の動画投稿などにかかる手間の多さや、平日デイタイムを中心にした投稿時間、事案の発覚後に注意があっても投稿が続いたことや、懲戒処分に至ったのが7ヶ月後だったことなどから、「業務として行っていた」ものだと指摘している。
これに対し、この日の裁判で会社側は改めて反論。投稿は「業務の合間に周りの従業員に気付かれずに行うことが十分に可能で、会社の業務と無関係であることは明らか」と強調した。
(1)動画の選定作業のために国会中継などをすべて視聴する必要はなく、業務の片手間にイヤホンで音声を聞き流しながらチェックすることもできる。投稿は比較的短時間ででき、その労力も限定的。会社の業務に支障をきたさない範囲で行なうことが十分可能だった
(2)発覚時に懲戒処分をしなかったのは「ここまで大きな問題になるとは考えていなかった」から。厳重注意をしており、その後も投稿が継続していたことは把握しておらず、報道対応などにより営業活動が害されることになったため処分したという経緯は不合理ではない
(3)投稿の中には、会社の業務に関連する投稿や、 会社の宣伝になるようなものはひとつもない。会社にとって何のメリットもないアカウントでの投稿を、業務として従業員に行わせるはずもない
そのうえで、「投稿が業務によるものだとの点に執拗に拘泥し続ける原告らの姿勢からは、訴訟の目的が他にあるのではないかとの違和感を覚えざるを得ない」などとも述べている。
社長の証人尋問も申請予定
一方、両議員側は、懲戒処分に関連する証拠資料として提出されていた投稿した社員とされる人物の給与明細について、氏名などの黒塗りを外したものを提出するよう改めて求めている。
両議員の弁護団によると、給与明細では、2020年12月〜21年2月までの間、月額110万円だった給与が処分により99万円に減給されていたことが明らかになっている。しかし、氏名は従業員の個人情報であることを理由に黒塗りにされている。
弁護団は一定程度の役職者である可能性も指摘。仮に会社側の主張通り業務と無関係の投稿だった場合には当該従業員が訴えの対象者となるとことからも、提出を求める方針だという。
また、次回の裁判までに同社の代表取締役社長の証人尋問も申し立てる方針だ。次回期日は3月17日に予定されている。