2023.01.23
# ビジネス

ヨーロッパではありえない安さの「スシロー」から見える「日本人の給料が上がらない」ワケ

谷本 真由美 プロフィール

日本人の給料が上がらない理由が見えてくる

おもしろいと思ったのが、特にカルビーと湖池屋は良いじゃがいもを使っており、イギリスで四〇年以上前に食べた品質の高かった昔ながらのポテチの味がするというのです。そしてフレーバーは実にさまざまなものがあり、天然の塩を使ったものや梅のフレーバー、バター味など本当にありとあらゆるものがあります。

このさまざまな種類があるというのも家人的には驚くべきことでした。多種多様な商品を売るのには、それだけ多く開発しなければならない、パッケージや生産ラインも変更する必要があります。そういった新商品開発には多大なコストがかかるので、従来のものを淡々と売っていたほうが企業としては楽なのです。

 

ところが日本は多種多様な品種を次々に作り出して、期間限定でコンビニのような店に並べることができている。しかも値段はけっこう安いのです。

そのためにはコストを削減しなければなりません。開発コストやパッケージデザインのコストはある程度決まっているので、削るところはどこになるかというと運営コストや製造コストそして人件費などです。もちろん配送の効率化も必要でしょう。

企業としてはコストを削って利益を高めていかなければならないので、どこかを削らざるを得ないのです。ところが日本の消費者は商品の品質に対してたいへん厳しく、昔ながらの同じものを提供していてはなかなか買ってくれません。

だから企業としては無理をしても次々に新しい製品や多種多様なものを出していかなければならない。これが日本で消費者向けのビジネスをやる点でたいへん難しいところです。しかも値段を上げると日本の消費者は買う気がそがれてしまうので、他の国のように値段を吊り上げていくということもできないのです。

企業としては一定の間隔で新製品を市場に出さねばならない。しかし利益率を上げるのは簡単ではない。コストを削りまくって従業員の待遇は上げられない。

結果、低賃金の派遣社員や契約社員に我慢してもらうだけでなく、正規社員の給料も上げられないという構図になってしまうのです。

SPONSORED