「自分好みの味わい」を捉える判定表

苦味と酸味はわかりやすい指標ですが、当然それだけでは、自分好みの「世界一美味しいコーヒー」に出会うことは困難です。

そこで、本書では味わいの判定基準を4象限で示したいと思います。この4象限を参考に、みなさんが味わいを把握し、自分好みの味わいに効率良く辿り着けるようにしています。

本来であれば、コーヒーにはプロが使用する多様な指標が存在しますが、本書ではなるべく多くの人が共通理解を持つ味わいの表現を使用し、より簡易的に味わいを捉えられるように構成しています。自分好みの味わいを知るために参考となる、「味わいの道しるべ」として活用していただければと思います。

まず、図2をご覧ください。横軸を「酸味と苦味」、縦軸を「濃度の高低」でプロットしています。コーヒーの味わいに大きな影響を与えるのは「焙煎」であり、極端な言い方をすれば、焙煎次第でコーヒーは苦くもなり、酸っぱくもなります。

コーヒーの味はどう表す?<br />バリスタ秘伝の「味わい判定表」がすごい

苦さや酸っぱさは誰しもがわかる味わいの表現であり、少なくとも「このコーヒーはジャスミンのような香りがする」という表現より、客観的に判断できる指標です。

次に客観的に判断しやすい指標は「濃度感」です。濃度感は文字通り「濃いか薄いか」ですので、液体の濃度感も判断がつきやすい指標だと言えます。濃度感はコーヒーの味わいに大きく影響を与えますので、酸味と苦味に並び、重要かつ明確な指標となります。

そして濃度感と酸味と苦味の組み合わせによって顕著となるのが「後口」です。後口もまた味わいの指標として一般的ですので、後口を「キレ」「コク」「スッキリ」「まろやか」と分類しました。なお、どの味わいも適度に併せ持つのが中心の「バランス」です。

キレは酸味と濃度の高さ、コクは苦味と濃度の高さ、スッキリは酸味と濃度の低さ、まろやかは苦味と濃度の低さから生じると定義しています。

すなわち、酸味と苦味、濃度の高低の組み合わせ次第で、結果として生まれる後口の表現も変わるのです。例えば、コクがある後口のコーヒーが好きだ、という方は、(2)周辺を狙って味わいを修正する必要があります。

具体的には、焙煎度合いが深め(=苦味)の豆を選び、粒度を細かく(=濃度を高めて)することで、コクのある後口のコーヒーにグッと近づけることができるのですが、そうしたテクニックについては『世界一美味しいコーヒーの淹れ方』で詳しく説明しています。

前回説明した通り、生産国、品種などの6つの要素で味わいの印象は大きく変わりますが、それは突き詰めると、どのような「キレ」「コク」「スッキリ」「まろやか」感が好みなのか、という後口によって分別できます。

よって、味わいの判定基準は、この4つで考えるのが便利です。自分好みのコーヒーに出会うために最も重要なことは、自分自身の好みの味わいを言語化できるか否か、とも言えるでしょう。

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