ひどい話だと思う。
2006年8月31日から9月3日の期間、joyが公演しました『ETERNITY』に関しまして、お詫びと訂正がございます。
本公演で上演しました戯曲は、三谷幸喜氏の『東京サンシャインボーイズの罠』という作品です。私達はそれを無断で改題し、内容を一部変更した上で、公演許可の申請をせずに上演致しました。三谷氏は氏の全ての作品に於いて、上演許可を出しておられません。また、団体の大小に関わらず、上演の申請につきましても、一貫してその姿勢で対応しておられます。私達の行いは、職業俳優として絶対にしてはならない行為であり、また三谷氏、三谷氏の意思を尊重して三谷氏作品の上演を自粛してこられたアマチュアおよび職業的な演劇人、そして私たちのファンの皆様の気持ちに背くものでありました。今回、私たちは自らの行為を恥じ、著作権について改めて調べ直し、自分たちの認識の甘さを痛感致しました。著作権侵害行為と認識した上で、連絡をせず公演を行ったのは、どうしてもこの作品を演りたいという身勝手な思いと、三谷氏作の戯曲は上演許可が下りないという事実の認識、延いては著作権侵害という事に対する軽視からでした。
(後略)
joy 櫻井孝宏・小林貴祐・尼子真理
この公演は3000円というチケット代を取っていたそうです。
パルコの三谷幸喜ページにはオンラインショップがあって、そこでDVDが注文できるわけだが、その注文ページに必ずあるリンク、「作者からのお願い」から一部引用させていただく。
どんなにDVDで好きな映画やドラマを観ても、台詞を全部書き出して、自分らで再現して、勝手に登場人物を演じたりして、上映会を開いてお金を取ろうなんて思ったりはしないわけでしょう。だったら、なんで演劇だけはそれがありだと思うのかなあ。手軽に出来るから?それは演劇に対して失礼ってもんです。
そんなわけで、このDVDは、決して一般の上演を前提としていないことを、どうかご了承下さい。この物語が、僕の知らないところで上演されるケースのないことを切に望んでいます。
三谷幸喜
上演されたサンシャインボーイズ休団前の最後の作品、そして伊藤さんがいない今あのメンバーで見る最後のサンシャインボーイズ作品となった「東京サンシャインボーイズの『罠』」は12年前に上演された。脚本としては出版されていない。『罠』に限らず、三谷さんは決して舞台脚本の出版をしない。唯一の例外が岸田戯曲賞を受賞した「オケピ!」だ。白水社に「賞をとったら脚本を出すのが恒例」と言われて承諾した。しかし、重版はしていない。オケピ!が(出せば売れるだろうに)絶版状態になっているのはそのためだ。
『罠』の脚本を、どうやって手に入れたのかはわからない。もしかしたら、当時の演劇雑誌に三谷脚本がいくつか載ったものもあったようだから、この作品についてもそういった雑誌が存在しているのかもしれない。そうではなくて、NHKで当時「エルサレムバージョン」と「オリエンタルバージョン」の混合キャストで放映された『罠』から、台本を起こしたのかもしれない。それはわからない。
しかし、「三谷氏は決して上演許可を出さないけど」「どうしてもこの芝居をやりたかったから」「黙ってやった」「ごめんなさい」というこの論旨には正直脱力というか、やるせなさを覚えずにはいられない。なんでそんなことが許されると思ったのかな?それこそ三谷さんの言葉じゃないけど「演劇に対して失礼ってもの」だと思うよ。
先に上演許可を願い出ていれば絶対に、100%、許可は下りなかっただろう。それはもう絶対なのだ。高校生が演劇コンクールで全国大会に勝ち進んで、そこで三谷作品を無許可でやっていた事がばれて、大会事務局が三谷さんにお伺いを立てに行って、それでも許可は下りなかったんだぞ。高校生だよ!とうぜん、お金は取っていない。そして三谷さんが許可をしない時点で、その高校はコンクールから消えざるを得ない。それでも、たとえ「高校生のやることに、そんな厳しくしなくても」と、自分が非難されかねないような場合でも、NOと言ってきたひとなんだから。
それがわかっているから許可はとらずにやる、そしてその後で謝罪する。それってどうなのかなあ?謝罪したから、それでいいってことなのかな。でもそしたら、今までたくさんの劇団や団体が、真っ正面からぶつかって断られてきたり上演中止になったりしたのはなんだったのって、今度は三谷さんが対処を迫られることにならないか?謝りました、あとはおまかせしまーす、みたいな、そういうのって・・・どうなのかな?
今までにも確かに、無許可で上演してるんじゃないかな、と思われるものはあった。でもやったあとで「やりましたーごめんなさーい」と堂々と公言したのは初めて見たよ。でもって「わかっていてやりました」と公表したうえ、著作権違反事実の重さをかみしめたというのなら、せめて回収したチケット代金はすべてお客さんに返すとか、そういう具体的なアクションを上の謝罪文で示すべきなんじゃないのかな、と思うんですけども。これじゃあ三谷さんサイドに丸投げじゃないか。三谷さんはなんにもしないと思うよ、今までだって「お願い」することはあっても無断上演した人に対して具体的なアクションはおこしていないし、そんなことしたくもないんだろうと思うしさ。
上演許可を決して出さない、という三谷さんの姿勢に対する評価ってのはそれぞれ違うだろうと思います。でも、作者である三谷さんがダメだと言っている以上、ダメなものはダメなはずだ。頑固でも何でも、それが三谷さんの想いなら、三谷さんの作品が好きだからこそ、三谷さんの「お願い」は尊重したいと思う。それが敬意ってものじゃないのかなあ。
勝手なことを最後に付け加えさせてもらえれば、いち三谷ファン、いち東京サンシャインボーイズファンとしてはさ、折角三谷作品のDVD化も普通になってきて、「笑の大学」までDVD発売されて、次はいよいよTSBかなーなんて、夢を見ていた部分もあるので、こういうことがあるともうますます映像化が遠のいてしまうような気がして悲しい。いや、関係無いだろうとは思うけれども。
ともあれ、やりきれない話です。