青森市長の小野寺晃彦(おのでら・あきひこ)氏(47)は、22日午後7時から青森市のホテル青森で記者会見を開き、任期満了に伴う6月の青森県知事選挙への出馬を正式に表明しました。冒頭、現職・三村申吾(みむら・しんご)知事の退任表明に触れ、その後は、新たに取り組みたい3つの政策と三村県政から継承したい3点について、およそ20分にわたって語りました。

【全文】
 21日、三村申吾県知事がご勇退を発表されました。改めてではありますが、5期20年にわたり、安定した県政を営まれてきたこと。また、国内はもとより海外に対しても青森の知名度を飛躍的に高めてくださったこと、そして、持前の明るいキャラクターで青森県民の心を本当に照らしてくださったこと。私自身も三村知事ご勇退という報道に接し、深く感謝を申し上げる次第です。本当にありがとうございました。その上で、これだけの功績を挙げてこられた三村県政が正しく引き継がれるとともに、知事の言葉を借りれば「新たな感性・新たな知見」を取り入れることが必要とおっしゃられました。7年間行動をともにさせていただいた私自身がその役を担いたいと思い、来たる6月の青森県知事選挙に出馬することを決意致しました。

 私は、幼少期は八戸市の旭ヶ丘団地におりました。旭ヶ丘幼稚園、旭ヶ丘小学校を卒業し、八戸三社大祭に慣れ親しんだものであります。そして、大館中学校から青森市立南中学校に転校し、青森高校を卒業しました。青森ねぶた祭とともに青春を過ごさせていただきました。青森県は、ともすれば津軽、南部、その地域バランスが問われます。私自身の生い立ちがその双方の目線を持つことができるのではと思います。また、私の初任地は福島県庁でした。また、10年、愛知県庁でも勤務させていただき、県全体の仕事をした経験もございます。さらに現在は県庁所在地の市長として、また、青森県市長会の会長市として、今年度は鰺ヶ沢や深浦、外ヶ浜町などの豪雨災害、また昨年度はむつ、風間浦、七戸などでの災害復興支援などに携わってきました。今年度三沢市で開催された「10市大祭典」も県全域を盛り上げる仕事であります。青森県全域でそうした目線で仕事をする経験は、しっかりと積ませていただいたと自負しております。その上で、私が就任のあかつきに新たに取り組みたいと思う政策は多々ありますが、出馬会見にあたり、大きく3点申し上げたい。

 1つは教育です。まず、小中学校の全県での無償化に取り組みたいと思います。2022年10月1日、青森市では小中学校の給食費の無償化に取り組みました。それに際して、青森市は青森県に対し、ぜひ県としても支援制度を設けていただきたいと要望したところであります。今回、青森県知事を目指すと公言した以上は、その支援制度の創設に取り組みたいと思います。ただし、大きな財源が必要です。また、実施主体である市町村のご協力も必要です。青森県の中期的な財政プランを検証した上で、初年度直ちに実施することが難しくとも、4年の任期中には実現したいと考えます。
 教育の2つ目に、高等学校教育ではICT教育の充実に取り組みます。青森市は、新型コロナ禍にあって全国最速で双方向型の遠隔授業を確立致しました。私は3人の子どもがおりますが、娘2人は小学生・中学生です。新型コロナ禍、直ちにパソコンを学校で配布し、遠隔授業にも取り組んでくれました。一方で、長男は高校生です。高校のICT教育は、今年の4月にようやくタブレットが配布されました。いまは、新学習指導要領の中でプログラミング教育にも取り組む必要があります。高等学校のICT教育の先例は熊本県にあると伺っています。熊本ではICTの教材開発コンテストを全県的に行っていらっしゃいます。青森市の取り組みは熊本ではすでに全県に広がっている。せひ青森県でも案を習って、高等学校のICTの充実に取り組みたいと考えます。

 政策の2点目は産業です。青森県は、農林水産業、また、観光業には力を入れてきました。これは大変素晴らしいことであります。一方で、青森県の皆さんは農業・観光業だけを行っているのではありません。たとえば、八戸では新産業都市として工業が盛んです。弘前市には国立大学弘前大学があり、医療関係の研究も大変進んでいます。青森県の起業創業の取り組みも大変力を入れていただいていますが、現在は、外郭団体である「21あおもり総合支援センター」が、その中心を担っていると承知しています。私たち青森市は、東青地域県民局に属します。この東青地区は、陸奥湾に寄港する北前船の歴史から商都として松前などとも交易で発展した街並みです。だから青森市は「あおもりスタートアップセンター」を設けて、商業にまた起業創業に力を入れることに取り組んできました。

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 同様に、中南地域県民局は、弘前大学があり、ここと連携することで医療であったりバイオであったり、そうした産業を育てていく芽が必ずあるはずです。そうした医療やバイオの専門家をお招きしてスタートアップセンターをつくる、そうした取り組み。
 同様に三八地域県民局では、ものづくりが盛んで、八戸工業大学をはじめ理系の大変優秀な方々がいらっしゃいます。こうしたものづくりの専門家をお招きして、三八地区の新たなスタートアップセンターをつくる。
 同様に西北地域県民局は、津軽平野で稲作の盛んな地域ではありますが、現在は洋上風力に大変な注目が集まっています。すでに秋田港・能代港では先行して洋上風力に関する産業化が進んでいる。こうした専門家を招いてのスタートアップセンターも考えられるでしょう。
 同様に上北地域県民局は、三本木大地が有する豊かな畑作の地域ではありますが、一方で十和田の現代アート、三沢の国際交流など、大変特色のある取り組みがある地域でもあります。こうしたアートや国際交流の専門家をお招きして新たな産業を創生していく、そうした取り組みもできるのではないか。
 そして、下北地域県民局は、皆さんご存じの「ジオパーク」として有名でありますし、最先端のエネルギー分野の専門家が集まっている地域でもあります。そうしたプロフェッショナルをお呼びしてセンター化していくことも考えたい。
 このような青森県の地域ですので6地域県民局それぞれの個性を生かした形での産業の創生にも取り組みたいと考えています。

 3つ目の政策を申し上げます。3つ目の政策は、「地域」であります。青森県は40の市町村で構成されますが、そのすべての市町村単位ごとに青森県版のタウンミーティングを実施したいと考えます。青森市は、約400の町会、そして40の連合町会を単位として1年にこのすべての40の町会単位を回る「青森市タウンミーティング」を実施しています。町会長や民生委員、地区・社会協議会の皆さまなどと毎年意見を交換するのみならず、聞いて通り過ぎるだけではなくて、毎年、できたこと、できなかったこと答えを返していく取り組みを7年間、続けてきました。青森県も広聴事業、たとえばホームページを拝見しても「こんにちは、知事です」ということで中学生に、「フレッシュトーク」ということで高校生に、成人には「元気まるごとトーク」ということで広聴事業を行っていることは承知しています。ただそれはいずれも単年度、散発的に行う形であり、毎年行っているものではありません。私自身が知事に押し上げていただいたなら、40市町村に毎年足を運び、市長村長や町会長、その代表、商工会の代表など、地域の皆さまとお話することが大切だと考えています。新型コロナ禍が理由でしたが、市町村長会議、知事と貴重な意見を交換する場が中止になったこともあります。40の市町村で構成される青森県のそれぞれの個性をしっかりとお伺いする機会を設ける。そしてそのときは、県庁においでいただくのではなく、こちらから足を運んで皆さんの意見を聞く、そうした機会をつくりたいと思います。
 地域の枠組みでは、2つ目の地域県民局、先ほど産業の分野でも申し上げましたが、地域県民局をもっと前面に押し出していくことに取り組みたいと思います。私ども青森市も東青地域県民局には、大変お世話になっています。除雪をはじめ地域振興をはじめ、お世話になる機会はありますが、決して全面に出てくる立場ではありません。6圏域の個性を全面に押し出し、県民局単位の予算や人事を工夫して、地域ごとの6圏域ごとの特色・活動が県民の皆さまの目に見えるような形で運営できないかと考えております。

 大きく3つの政策、新たに取り組みたいこと、これまでの青森市と青森県の関係から、また、青森市の取り組みからそれを敷延して広げて県全域で取り組みたいことを申し上げてまいりました。

 一方で、県政を引く継ぐことについても3点申し上げたいと思います。一つは、「攻めの農林水産業」です。青森は農業県であります。三村知事からも常々、「第一次産業が元気であることが青森の元気につながるんだ。第一次産業を大切になければならない」と教えていただいてきました。数々のトップセールスにも同行させていただきました。三村知事のような形でのトップセールスはできないかもしれません。それでも先頭に立って青森県の農産物をPRしていくこと、それは、国内・海外を問わず、しっかりと受け継ぎ継続していくことが必要だと考えます。「A―Premium」のような青森県が日本を代表するような取り組み、先進的な流通ネットワーク、また近年、青森県が取り組んでおられる冷凍食品に対する取り組みなども大変先見の明がある取り組みだと思います。「攻めの農林水産業」は、しっかりと引き継ぐべきものと考えます。
 
 2つに立体観光であります。昨日、空の便、大韓航空がチャーター便を青森に飛ばしてくださいました。この後も、エバー航空がチャーターを予定しています。これも三村知事が身を粉にして航空会社とのネットワークをつくってきたからであります。さらに国内便でも、三沢空港の便数の維持も大きな課題ですし、全国と挑戦して獲得した1便増便、こうしたものをさらに広げていく取り組みが必要です。名古屋空港、神戸空港とのネットワーク、大坂・福岡との交流拡大も空の立体観光としては続けていくべきものであります。海もそうであります。皆さまご存じのとおり、クルーズ船の今年の青森港への寄港数は、現時点で過去最大33件と青森県から伺っています。また、今年は八戸港にも寄港していただく予定があると発表されたと承知しています。クルーズ船の復活もインバウンドの獲得のためには、大変待たれるところです。それは、青森港、八戸港のみならず、弘前観光、また、十和田・奥入瀬などへたくさんのお客さまが特に海外のお客さまが来ていただける大切な機会であります。そうしたポートセールスもしっかりと続けていくべきであります。さらに、陸の観光、新幹線、そしてJRとの連携、これは青森市もとりわけ力を入れてきましたし、青森県もJRとの密接な関係でたくさんのお客さまが陸路・青森を選んでくださっています。現在、津軽地域14市町村で「クランピオニー」というDMOの取り組みがあることを承知しています。大変素晴らしい取り組みだと思います。こうした地域広域連携もその思いを引き継ぎながら立体観光の枠組みは、ぜひ続けていくべきものと考えます。

 3つに、行財政改革であります。昨日、知事がお話になっておられました。平成29年以降、6年連続の収支均衡予算。これは大変な取り組みであります。就任当時の状況から大きく回復し、いまは、青森県が均衡予算を組んでいる。これは、青森市の記者会見でも何度も触れたことがありますが、青森市はまだ至っていないレベルの水準であります。また、令和3年の県債残高は、1兆円を下回ったと伺っています。未来の子どもたちへの負債をしっかりと減らしていっている。この行財政改革は、現在の県政が大切にしていることの一つであります。冒頭申し上げました小中学校の給食費の全県無償化、そのためには財源が必要になります。そのため、しっかりと行財政改革の枠組みは引き継ぎ、強化していくことが求められます。大人が節約して子どもたちに還元する。その考え方で、行財政改革には引き続き取り組んでまいります。

 最後に、県民の皆さまにお伝えしたい私の政治姿勢、メッセージを申し上げさせていただきます。私は、「希望が輝く」とか「笑顔があふれる」といった美辞麗句を並べるタイプの政治家ではありません。逆にあしざまに県政を批判するような態度もとったことはありません。私は、現役の青森市長であります。自らの街で実施したことのない政策や、入る見込みのない税収を並べるようなユートピアを語るのではなくて、自分の街で実行していること、評価していただいていることを全県に広げていく、これを基本としてその実現を目指していきます。これまで県政を築き上げてこられた先達・先輩に敬意を払い、そして津軽・南部を垣根を越えて県議会の皆さま、そして40の市町村の皆さまと連携し、7年前の青森市と現在の青森市が大きく変貌を遂げているように幻想的な抽象論ではなく、これまでの実績を着実に広げる形できのうよりきょう、きょうよりあしたの青森県を良くしていくために身を粉にしたいと思っております。