こんにちは、あがたです。
突然の…寒気、それから大雪。日本の、日本にお住まいの皆さん…いかが、どうでしたか?大丈夫でしたか。うちは家の中より冷蔵庫の方が暖かくなりました。




 さて最近は多くの"例のアレ向け"東方ボイスドラマが投稿されるようになりましたね。

(先日投稿された百合つくし兄貴の新作東方ボイスドラマ)
この作品は、今までにはないアニメタイプの画期的なボイスドラマであり、またこのブログ、この記事を作ろうと思い立ったきっかけでありました。
 最近の例のアレコンテンツに影響され、多くの創作意欲溢れる例のアレ民が現れてくれるのは嬉しい限りです。需要に見合った供給が行われて初めて健全な創作活動が成り立つと言っても過言ではありませんから、新しい原典を作ろうという試みは大変有益なものであると思います。

 では今回は、実際に次に覇権を握るクッキー☆、もとい東方ヴォイスドラマはどんな要素を持っているべきか、という点について、他の例のアレコンテンツも絡め考察していきたいと思います。よろしくおねがいします。


●はじめに 例のアレにおけるコンテンツの意義を考察する

 例のアレに向けられる東方ボイスドラマの評価を考えるには、前提として例のアレにおいて望まれるものとは何かと考える必要があります。
 前回の記事で述べましたが、例のアレを構成する要素は「闇鍋」、「文化の象徴」、「アングラ」、「退廃的」の主に4つに分類しました。また、例のアレの歴史には「掃き溜め」「侵略」「文化」という3つの過程があるとも述べました。今回はこれらの要素を用いて、例のアレにおける人気作品を解きほぐして行こうと思います。

 例のアレランキングに載る作品としては、最近のものでは「バーチャルユーチューバー」「オルガ」少し遡って「NYNICG」「眼力先輩」「ゆうさく」などが見られると思います。
 また古いものから遡ると、「チャージマン研」「レスリング」「エア本」「ゼERO」「淫夢」「クッキー☆」「syamu」「唐澤貴洋」「tehu(偽)、たれぞう、岩間などの変人晒し系」「BME」などが挙げられます。
これらの作品は一体何が魅力で、どう例のアレ民に評価されたかというのが今回直接扱うテーマであります。


●主張


 結論から言うと、例のアレの動画に必要なのは「投稿者の能力」です。当たり前ですが、投稿者のセンスがなければ何にもなりません。しかし、それは単に「作品を作る技術」のみを指すものではありません。
そこに加えて必要なのは、時流を掴むセンス、そして場合によっては自分自身の作品を時流とする爆発的内容です。

 例のアレのコンテンツとして多くの人の目に留まるには、それ自体が炎上する、ブームに乗っかる、あるいはあくまで例のアレは材料と割り切って自己主張の強い作品を投稿するなどが挙げられます。
 しかしただ炎上する、ブームに便乗する、自己主張するというだけでは一時的にランキングに乗れても毎日投稿される他作品に押され、ランク100以下に埋もれ、面白くはあるが界隈へもたらす影響力に欠ける作品として落ち着きます。(もちろんそういう動画でも楽しんで視聴することはできます。頂点を掴み流れを作ることだけが創作ではありません。)

 しかしながら、最近になって我こそはと見られる「クッキー☆という界隈の流れを爆発的に変える」ことを試みる多くのボイドラ投稿者たちの登場に見られるように、例のアレ民のそういった願望もまた強固なものであるはずです。

 そういった人々がより効率よく界隈をコントロールする方法を考察し、また指摘を受け共に議論していくのが本記事の目的であります。

 ということで、これから例のアレの流行作品の傾向を分類していきましょう。


●1.例のアレコンテンツの原典

 現在の例のアレに欠かせないのは「淫夢」「クッキー☆」「syamu_game」などのコンテンツであり、その全ての作品に「例のアレ向けとしては作られていない原典」があります。
少なくとも、例のアレ向けとして作られたモノが例のアレの中で消費されるコンテンツですら、必ずこれら「本来は関係のない元ネタ」を素体にしているというのはほぼ例外のないことです。(鋼兵、ニコ騒ぎなど例のアレ民が炎上してネタになる場合も本人から望んでということはまずありません。)

 なぜ、このような傾向があるのか。それはやはり、例のアレが「掃き溜め」であり、また他コンテンツを「侵略」することで拡張してきたからでしょう。
そもそも掃き溜めとしての例のアレは受動的に、侵略者としての例のアレは能動的に外部からのコンテンツを受け取っているに過ぎません。掃き溜め、侵略でそれぞれ方向性、規模の差はあれど、最終的にそれを文化として昇華、独特の言語を成立させるのが例のアレ独特の構造であるというのは前回述べた通りであります。

 では、その取り入れられる文化の条件とは何か。それはやはり、他に行き場のないコンテンツ、つまり「あまりにも過激すぎる」、あるいは「今までに無いモノでどのタグにも置きにくい」ものであるなどが条件として挙げられます。共通点として、強い刺激物であるということも述べられます。
強い刺激物である、過激で今までにないものというのは、必ず多くの人の目に止まるものです。「見世物小屋」的であると言えるでしょう。アングラ的側面です。
そしてそれは必ず「それ単体がセンセーショナルで、面白いものである」ということを意味しているのです。
現在では、主に「ホモと見るシリーズ」の一分野として見られます。
例として古典的なものでは「レスリング」「エア本」、他には「真夏の夜の淫夢」「クッキー☆Kiss」「syamu_game」などの現在一般的なもの、最近のものでは「岩間」「拳で」「オルガ」「バーチャルユーチューバー」などがあります。

 しかし、現在一般的なものに比べ、最近の物、及び古典的な物は語録、BB、MADとしてあまり定着しない傾向にあります。
 現在一般的な淫夢、クッキー☆、syamuなどが強固なのは、その地位を「侵略」によって得たものであると言うのが大きいでしょう。積極的に拡張する故に、その知名度は高く、また素材供給、発掘が安定しています。
 対して、古いもの、あるいは侵略衝動が落ち着いた時期である最近のものは、一つの作品、あるいは一つの人物を扱って終わる傾向にあり、特に例のアレ民による積極的拡張が見られないというのが彼らの定着を妨げるボトルネックとなっているようです。場合によっては淫夢やsyamuの一部として飲み込まれる場合もあるでしょう(ピネガキなど)。

 つまり、現在の例のアレは淫夢を中心とし様々な炎上コンテンツが逐次消費される、淫夢民を中心とした広く受動的な文化圏であると言えます。


●2.例のアレにおける「二次創作」の文化

 1で述べた通り、例のアレには全てに「元ネタ」があるわけですが、ではその元ネタからどのような作品が生み出されるかというと、非常に説明しにくいものです。
というのも、例のアレ投稿者は非常に個性豊かであり、各々異なる強みがあり、最近の人物だけでも「しりり」「阿刀田」「ミネソタ」「ばとじっぷ」などの象徴的存在にまで至る大手投稿者が見られるわけです。また、他ではあまり見られないようなエログロナンセンスを強く含む退廃的な作品を生み出せる投稿者がいることも特徴でしょう。
つまり、例のアレでの元ネタを持つ投稿作品はあくまで元ネタの風味を活かし、大半を投稿者自身の作風で埋めていることになります。

 例えばしりり兄貴単独でも、凄まじいスピードの投稿テンポによってMAD、「イチゴョ」、「しりり☆」、「ホラゲー紹介淫夢実況」など多種多様な作品を生み出しています。
 一方で阿刀田兄貴は現在ではクセのある声優を提供する「元ネタ」投稿者のように見えますが、その作風には「クッキー☆」本家からのネタが多く見られ、また非常にセンセーショナルな作風によって声優の特色を更に倍増させる、いわば「生産」ではなく本来のクッキー☆の面白さの「増幅」という形を見ることが出来ます。
 ミネソタ兄貴は人権を完全に無視した作風によるブラックな笑いを生み出し、ばとじっぷ兄貴は語録洪水と「ウンチーコング」を併用した賑やかな作品が特徴です。

 その他中小規模の投稿者であったり、あるいは初投稿でランキングに登ってくる投稿者たちも必ずと言っていいほど「光る物」があるわけです。
(それだけでも記事を一つ作れるでしょうが、それは本来の趣旨ではありません。)

 つまり、例のアレにおける作品投稿とは、あくまで「原作」を重視する他コンテンツよりも、遥かに投稿者の持つセンスの表現が優先されるものであり、実力主義的な構造によって成り立っています。


●3.例のアレで息づく「キャラクター」

 2で挙げた傾向の他に、例のアレでは定期的に「空前のブーム」とも言われる特定のキャラクターの押し売りやランキング占領が起こることが挙げられます。
例のアレにおけるアイドル的キャラクターと言えば現在主要なものでは「野獣先輩」「syamu_game」「UDK姉貴」などが見られます。彼らは投稿者たちの作品を彩る、強い特徴を持った人権を無視して使い放題の人材として有名です。

 しかしそれとは別に、今ランキングにあるものでは「オルガ」が挙げられます。
「オルガ」は一時的にランキングを埋め尽くしていますが、しかし批判などが多く、投稿者自身のセンスのみで成り立つ2で述べた特性とは矛盾する傾向も多々見られます。
また、同様の流れが「眼力先輩」「ゆうさく」「NYNICG」などにも見られ、最初は有力あるいは高品質な投稿者による作品であったとしても、それに追随する動画は正直なところ二番煎じ的な面が強く出ることがあります。

 これは、ニコニコ動画そのもののシステムによる影響が大きいであろうと予想されます。タグ検索、あるいは他媒体からの流入による「視聴数が特定のタグにおいて一時的に増幅する」という特性によるものでしょう。
 しかしながら例のアレという、常に他の炎上コンテンツからの突き上げや、持続力の高い淫夢コンテンツからの圧力などがあるカテゴリタグでは、これらのコンテンツは一定期間を経て他のコンテンツに成り代わられ、また今までのキャラクターと同じように投稿者たちの素材という地位に落ち着くことになります。
また、こういった流動的な要素が例のアレの「闇鍋」という形を維持していると言えるでしょう。

 つまり、例のアレにおける「キャラクター」とは、炎上コンテンツの人物、次にブームの主役、最後に投稿者たちのための素材という道を歩む、現代情報化社会の生きた精肉であると言えるでしょう。


●今例のアレで評価される作品を作るには、今後例のアレというコンテンツを続けていくためには

 例のアレというコンテンツの性質は以上で述べたようなものになります。

 一般的コンテンツはあくまで原作>二次創作という構図があるのに対し、例のアレは2で述べた大手投稿者たちのようにその壁を超え自分自身の作品を一つの流れとして押し上げることを可能にしています。
 これは例のアレのコンテンツは特定の誰かが支配するものではなくその場その場で一番面白い、あるいは話題性のあるものが受け入れられるという形で動いているからです。

 そして、後続である我々が何の利益もない例のアレというコンテンツに「成功」を求めるのは、まさしくそういった「誰もが一次創作であり二次創作である」という、商業コンテンツに埋め尽くされ著作権で縛られたこの現代社会において唯一の躍動感のある意味を感じているからでしょう。

 そういった中で、例のアレを存続させ、力強い創作活動を巻き起こすことを望む創作者に求められるのは、まさしく「純粋な実力」であり、また「時流を嗅ぎ分ける鼻」であり、そして「その時流を塗り替える爆発性」です。
 特に3つめに関しては、非常に難しい要件です。多くの人の心に訴え、これの後を追いたいと思わせ、またそういう人々に様々な発想の余地を与える。そういった、例のアレ以外のコンテンツでも求められるであろう能力が求められます。

 「闇鍋」を勝ち抜き「象徴性」を手に入れ、さらなる「アングラ」、「退廃的」な作品を産み出す鋒となる。そのためには、大手投稿者たちのように界隈の内外を問わず根気よく努力し、誰も到達できないような極致を目指す必要があるのです。

 その際、単に例のアレのネタを含むだとか、あるいは単純に面白い作品を作るだとかだけではなく、誰にも真似出来ず、多くの人を魅了する独創性、力強さを得る必要があるでしょう。

 また、最初に述べたように東方ボイスドラマによる革命を望む投稿者が見られるようになりましたが、そういった原典の創作的なアプローチをする際はもちろん「生贄」を用意しましょう。
ユニークで、刺激的で、他に誰もおらず、しかも親しみやすい。誰もが知っている茶色いアイツのような、そんな人物が求められることでしょう。