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ゴッズテイル ~サイコ男の異世界神話~ 作者:柴崎

第1章 ~エルフとの出会い~

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15 帰郷

2016.6.10





夕食を食べ終わり、昨日の話をもう一度聞く。


「故郷に帰りたい者はどれぐらいいる? 手を挙げてくれ」


俺が聞くと、20人ぐらいが手を挙げた。

人数的には半分以上だ。


「ふむ。じゃあちょっと、分かり易いよう右と左に分かれてくれ」


居据わり組と帰郷組に分かれて座ってもらう。

エルフのティアも帰郷を望んでいるらしい。

正直残念だが、仕方ない。


「帰りたい者の中で、もしかしたら故郷が無くなっているかもしれないとか、そういう可能性があるのはどれぐらいいる?」


約20人の中から、7人が手を挙げた。


「そうか。もしも帰ってみてどうにもならなさそうだったら、ここに住んでもいいからな」


故郷が無いかもしれない。

彼女らが実際奴隷になっている現状と、その発想がある時点で、既に9割方結果が決まっているような物だ。

流石にそんな場所に放り出していくことはできない。

俺は捨て犬を拾ったことはあっても、ペットを捨てたことはないのだ。


「まあ別の村や街に住む親戚を頼るという手もある。その時は餞別に金ぐらい持たせてやるから、頑張って生きてみろ」


俺の言葉を聞いて、何人かは泣き出した。

感謝なのか絶望なのか、正直言って判断がつかない。

俺は人間観察には自信があるが、なぜか『泣く』という心理状態だけは上手く見抜けないのだ。

居心地が悪いので、無視して話を進めることにする。


「それじゃあ明日は、1人1人どこに帰るのか教えて貰おう。次は居据わり組の方だが……」


俺は反対側に座っている一団に目を向ける。

孤児だった子供達は当然のこと、あの商館で服を着せられていなかった目の死んでいるメンバーが割と多い。


「お前たちは…………とりあえず今の所はでいいんだが、生涯をここで過ごすつもりがあると思っていいのか?」


「はい。ハネット様のお側に置いて下さい」


代表して1人の男が答えた。

この居据わり組のリーダー的な感じなのだろうか。


「そうか。悪いがお前たちの今後の話は、こっちのみんなを故郷に送り返してから決めることになる。それまではもう何日か暇だろうが、我慢してくれ」


俺は手を1度パンと鳴らして立ち上がった。


「さあ、それじゃあ今日は終わりにしよう。どっちの方も、心変わりした奴はいつでも言っていいからな」


焚き火を消してニーナと家に帰る。

明日からはまた新しいクエストだ。


「ニーナ。明日は朝食の後、すぐにみんなと打ち合わせに入る。お前には隣で助言を貰うつもりだから、そのつもりでな」


「はい、お任せ下さい。おやすみなさいませ、師匠」




家に入ってすぐにスタート画面に戻り、世界検索からとある世界にやって来た。


世界座標『00:00:00:00:01』。


プレイヤー間で『最初の世界』と呼ばれる世界。

今俺がいるのは、その世界に存在する惑星『ユグドラシル』。

俺の仕事場でもある。

ゲームを初めてプレイする時、レベル1のプレイヤーは強制的にこの星に飛ばされる。

そうして同じ初心者の間で仲間を作り、友情を育み、攻略のため試行錯誤し、喧嘩して、騙し合って、殺し合いになりながら成長するのだ。

俺はこの世界を定期的に訪れては、初心者やお得意様にポーションとかアイテムを売って金を巻き上げている。

今回は商売ではなく買い物に来た。

生きた淡水魚と釣竿の入手が目的だ。

俺が道を歩いていると、あの世界の現地人とは別の意味で人が離れていく。

俺のことを知っている1割ぐらいのプレイヤーは、俺に気付くとサッと目を逸らしてその場から離脱していくのである。

有名人は辛いね。


俺は店舗検索で魚を入手できそうな店を探し、数件回って一定量を確保した。

水瓶に魚を突っ込んで、それごとアイテムボックスに入れておく。

動物オブジェクトは、こうやって『○○入りの水瓶』とか『○○入りの檻』とかってアイテムにしないと、世界間の移動ができない。

釣竿の方は良さそうなのを1本だけ買った。

組み立てながら仕組みをよく調べ、アイテム作成で再現してみる。

量産はなんとかなりそうだ。

釣り堀はこれでオーケー。

次は農場から動物を連れて来よう。




すっかり深夜になっている元の世界に帰ってきた。

釣り堀に魚を放流し、柵と小屋で羊との触れ合い空間も作った。

とりあえずこれで思い付いた施設は全部作った筈だ。

後はまた、思い付いた端から作って行けばいいだろう。

家に再び帰り、今度こそログアウトした。









翌日。

今朝はニーナもちゃんと朝食の場にいる。

全員が食べ終わったのを確認し、早速指示を出した。


「じゃあ昨日言った通り、帰郷組とはどこに帰りたいのかの話し合いをする。居据わり組は昨日と同じで好きに過ごしていてくれ。そういえば、釣り堀の近くに動物を連れて来た。興味があったら見てみろ」


魚を放ったことは伏せておく。今は釣り道具を準備してやる時間が惜しい。

4人掛けのダイニングテーブルと椅子3脚を作り、その内の2脚にニーナと座る。


「よし、じゃあ最初はお前からだ。ここに座れ」


適当に一番近くにいた帰郷組の女性を1人座らせた。

彼女は俺とニーナを前にしてガチガチに緊張している。

まあそれは無視して、早速本題に入る。


「お前はどこに帰りたいんだ? 村か? 街か?」


「は、はいっ。あ、あの、村なんですけど、私の村には名前が無くて……」


そういやマップで見た時、北のあの村も『村』としか書いてなかったな。

村程度の規模だと、わざわざ名前を付けないんだろうか。

でも話す時に不便じゃないか?


「そうか。じゃあこの地図を見ろ」


俺は机の上にこの前作った地図を広げ、この集落の場所を指差す。


「ここが今俺達がいる場所で、ここがお前達を買ったゼ……ゼムルス?だ」


「師匠、ゼ()ムスです」


「ゼルムスだ」


無かったことにした。俺にしては頑張って思い出した方だ。


「どうだ? どこの辺りにある村だったか、分かるか?」


「え、えーっと……。あ、あの、すいません。都市ラハムの場所の近くなのですが……」


「ラハムなら、ここです」


ニーナが地図を指差す。グッジョブ賢者。


「あっありがとうございますっ。 だ、だったら、多分この辺りの村だと思います」


マップデータでその場所を確認したら、付近に村は1つしか無かった。多分ここだろう。


「よし、場所は分かった。……でな、これはちょっと聞くのは悪いんだが、どういう経緯で奴隷になったか聞いてもいいか?」


「は、はいっ」


村が襲われたとかの経緯だったら、色々と考えることもある。

他にも罪を犯して奴隷に落ちたなら、連れて行っても逆に村人たちから嫌がられるだろうしな。

そんな理由には気付いてないだろうが、命令だと思ったのか素直に語り出してくれた。

彼女は当時、村で採取した薬草を近くの都市に売るため、馬車で数日かけて移動していた。

しかしその道中で盗賊に襲われてしまい、奴隷に落とされたのだという。

知りたいのはその部分だけだったのだが、彼女は目に涙を浮かべて、それからどんな扱いを受けたかまで語り出そうとした。

当然止めたが。


「そうか。なら少なくとも、最後に見た時、村は無事だったんだな?」


「は、はい」


「じゃあすぐに送っても良さそうだな。残念ながら今日という訳ではないが、お前は比較的早く送ってやろう。なんなら明日かもしれない」


「あ…………あっ、ありがとうございます!」


「じゃあ最後に名前を教えてくれ」


俺は別の紙に、彼女の名前と地図の座標をメモしておいた。

一応ニーナにも紙とペンを渡しておく。彼女だったら全部頭の中に入っていそうだが。


「よし、じゃあお前も今から自由時間だ。行っていいぞ。次はお前、来い」


次に近くにいた女の子と交代させる。

こうして1人5分ぐらいの時間で迅速に聞き取りを進めていった。

1時間ぐらいして、エルフのティアの番が来る。


「よ、よろしくお願いしますっ」


面接かって。


「さて、ティアか。俺はエルフのことを何も知らないんだが、お前の故郷の場所って、俺が聞いても大丈夫な情報なのか?」


ニーナはエルフは閉鎖的な種族だと説明していた。

「エルフは人里離れた森の奥に、ひっそりと隠れて生きている」ってのはこの手のお約束パターンだ。

人間に見つかったら狩られるって話だったし、里の場所を人間に教えるってかなり不味いんじゃないか?


「そ、それは……」


「恐らく師匠の考えられている通り、エルフの視点から見れば、最重要機密でしょうね」


「やっぱりそうなのか?」


「は、はい……」


じゃあどうすんだ。適当に近くに放って帰るか?

お、結構良い案じゃなかろうか。


「じゃあとりあえず、お前の故郷の近くに送ろう。あとは勝手に歩いて帰ればいいさ」


「まあ、その辺りが妥協点ですかね」


「あ、あの」


何か言いたいことがあるらしい。

言い辛そうにしてる感じが、そこはかとなく嫌な予感をさせる。


「……なんだ?」


「じ、実は…………私、里の場所が分からないんです」


詰んどるやんけ!


「なんでだよ」


「た、多分、みんな別の場所に移動してると思うんです」


「……どういうことだ?」


詳しい話を聞いて意味が分かった。

外界との接触を持たない筈のエルフのティアが、今ここにいるということ。

つまり、元々住んでいたエルフの里は、人間に襲われたのだ。

天敵に場所がバレたなら、当然逃げる。

人間の方がエルフより圧倒的に数が多いらしいし、抵抗するなんて選択肢は無いようだ。

ティアを含む幾らかのエルフは逃げ遅れて捕まってしまったが、ほとんどの仲間は逃げ延びて別の森に住処を移している筈だという。


「なるほど。でも、仲間の所に帰りたいんだろ?」


「は、はい。出来ればですけど……」


「まあ出来ないことはないな」


「ほ、本当ですか!?」


マップデータをもうちょいちゃんと作れば、エルフの里の場所も分かるんじゃないだろうか。


「ただし当然のことだが。……俺が場所を探すんだから、新しい里の場所は俺にバレるぞ?」


結局最初の話だ。

ティアが故郷に帰るなら、人間である俺に仲間の情報を売ることになる。


「……あの、1つ良いですか?」


黙って聞いていたニーナが、久しぶりに口を開いた。


「ああ、いいぞ」


「あの、師匠はエルフの里の場所が分かったとして、そこに害を為すつもりなのですか?」


「いや、正直割とどうでもいいな。観光ぐらいなら興味もあるが」


ニーナは俺の答えを聞いて、ティアの方に向き直った。


「だそうです、ティアさん。師匠にだったら、教えても良いんじゃないですか?」


「…………」


「あのですね。師匠がいつも友好的な態度だから忘れているかもしれませんが、そもそも師匠は探せば見つけ出せると言っているのです。要するに、隠しても無駄です。あまりこの方のお力を舐めてはいけません」


なんか凄いことを言い出したぞ。


「結局師匠が本気になれば、私たちには抵抗することなんて出来ないのです。あれこれ考えるだけ無駄です。災害みたいな物なのですから」


「おい」


「す、すみません。悪い意味で言っているのではないのです。ただ、悩む必要は無いということが言いたいだけでして……」


俺に言い訳じみた事をして、こほんと小さく咳払いしてからもう1度ティアに向き直った。


「今あなたの前には、史上最強の大魔法使いが手を差し伸べて下さっているのです。そして手を取らないのは、自己満足にしかなりません。……どうせだったら、自分の利益を得ることをオススメします」


この状況を客観的に見れば、それは正しい認識だ。

どうせ俺の気分1つで、里の未来なんてどうとでもなってしまうのだ。

それならば、例え束の間でも良い方を選択した方が合理的だ。

……実際自分のこととして言われると、微妙な気分になる話だが。

大体襲ったりしないっての。そっちから攻撃して来ない限りはな。


「はい……いえ、大丈夫です。そうですよね」


ティアは真剣な表情になり、俺の目を真っ直ぐ見つめた。

その空色の美しい瞳に俺の姿が映っている。


「ハネット様は助けてくれました。私はあなたを信頼します。どうか、お力をお貸し下さい」


「……うーん。まあそれはいいんだがな」


俺の含みのある言い方に、ティアは表情を不安そうな物に変え、ニーナも「あれ?」という風にこちらを振り向いた。

流石にそんな言い方をされれば、1つ注意しておかなければならないだろう。


「誰かを信頼するな。他人ってのは信頼ではなく、利用する為にいるもんだ」


「…………」

「…………」


「大体お前たちは忘れているようだが、これはそもそも俺が俺の為にしていることだ。だから力を貸すなんて表現は正しくない。あと、俺はお前達を救ってやったのではなく、買い取っただけだ。「相手が勝手にやったこと」。そんな感じで、自分に都合の良いように考えろよ。じゃないといつか怪我するぞ」


誰かを信頼するというのは危険な行為だ。

今回の件で、人間に希望を見るようなことがあってはならない。

この世には善人がいるなんて勘違いをすれば、今後の人生で彼女たちが傷付くこともあるかもしれない。

裏切らない人間なんてのは、この世にいない。

なら人と人を繋ぐのは、利益という目に見える物だけでいい。

まあ信頼ってのは、裏を返せば誰かのせいにするってことでもあるしな。

とにかく色々な面から考えて、しないに越したことはないのだ。


「とにかく。今回の件は、俺という外部に与えられた物ではなく、お前の運が良かったから手に入った幸運なんだ」


「は、はい……」

「…………」


ティアはとりあえず頷いたという感じだが、ニーナの方は顔は無表情ながらも内心穏やかではなさそうだ。

いや、言いたいことがあるなら言えよ。聞くかどうかは別だが。


「まあとにかくお前を送るのは面倒そうだ。恐らく一番最後になるが、我慢してくれ」


「は、はい。大丈夫です」


「よし。じゃあ次」


こうして1時間ちょっとの時間をかけ、帰郷組19人全員からの聞き取りが終わった。

ニーナと相談しながら、更に1時間かけて19人の順番を決める。


「こんなもんか。それじゃあ早速明日から送って行こう。ニーナにもついて来て貰うぞ」


「はい。かしこまりました」


ニーナがいると、大抵の場合話し合いがスムーズに終わる。

一応の保険というやつだ。


帰郷組にとっては、今日がこの集落での最後の日となる。

昼と夜の食事は特別豪勢にしてやった。









翌日。

朝食が終わり、最初の1人を故郷に送る。

一応餞別として『コール』のスクロールを1本渡しておいた。

何らかの理由で集落に帰って来たくなった時の為だ。

その後3人までは、故郷の顔ぶれとの感動の再会で済んだ。

だが、4人目は駄目だった。

40代ぐらいの男性だ。

転移の前からその表情が不安そうだったので、なんとなく結果が分かった。

テレポートで彼の故郷だという座標に飛ぶ。


―――昔は村だった。


そう表現する他ないような光景が広がっていた。

一面の草原の中に、黒く焦げた家の残骸がポツポツと残されている。

ほとんどが土に還ってしまったのか、ほんの3~4軒分ぐらいのものだ。

もはや村がどれぐらいの規模だったのかすら分からない。

全てが終わったのは、もう何年も前のことだと分かる有り様だった。


「う……うっ……うううううううう゛ッ」


蹲って泣く彼の隣で、俺はただ無言で落ち着くのを待った。

ニーナも俺に倣って黙っている。

20分ほどして、嗚咽が止んだ。


「どうする? 知り合いを頼るか、あの集落に帰るか」


「……血縁は、この村にしかいませんでした。……ハネット様の集落に、置いて下さい」


「そうか」


3人で集落に帰ってくる。

彼が帰って来たのを見て、他のメンバーも結果を察したようだ。

何人かは不安の表情を強くしている。恐らく、同じ結果になる心当たりがあるのだろう。


こうして最初の1日で10人を送ってやった。

その中で、あの男性と同じく()()だったのは5人。

確かあの時手を挙げたのは7人だった筈だ。

ここから更に半分残っていることを考えれば、予想よりも2~3人多い。

思ったよりも集落の新住人が残ることになりそうだ。




2日目。

今日1日で、ティア以外の全員を故郷に送り終わった。

結局この村に残る事になったのは24人。

まず最初にいたのが全員で36人。

そこから孤児だった子供達が5人。

最初から居据わりを決めていた奴隷たちが12人。

そして故郷を失ったのが7人だ。

最後の故郷を失った者は10人にも及んだが、その内3人は他の場所に親戚がおり、そちらで一緒に暮らしていくことになった。偶然にも最初の予定である7人という数字に落ち着いたのだ。

無事故郷に帰れたのは、ティアを除けば僅か8人。

奴隷として買ったのが31人なので、実に4分の1ぐらいの確率。

それが現地の奴隷の現実。

まあ俺がいなければ、それどころかゼロだった訳だが。


「はぁ、いい加減お前達の今後のことは決めないとなぁ……」


夕食の最中に思い出した。

もはやここには正式な集落の住人しか残っていない。

明日最後のティアを送れば、本格的に仕事を用意してやる必要がある。


「面倒臭そうに言わないで下さい、師匠」


「だってなぁ。俺は1人でどんな問題でも解決できるから、仕事をやるって言ってもな」


「ならばなぜ師匠は住民を集めているのですか?」


「んー。道楽?」


「…………」

「……………………」


ニーナはいつもの呆れ顔。

まだ耐性の無いみんなは絶句していた。


「だって考えてみろよ。こんな所に1人で住んでて楽しいか?」


「それは確かに。では世界を巡ってみては? 住居はここから移せなくても、師匠自身は好きに動けるのですよね?」


「俺はおうち大好きな引きこもりだから、本当はなるべく家から出たくない」


「そ、そうだったのですか……」


「ああ。だから楽しいことは外に見つけに行くんじゃなく、手元に作る方が良い」


「それで人を集めていると」


「うむ。まさに道楽以外の何物でもないだろう?」


「そうですね……」


理由が思った以上に糞で呆れてるらしい。

まあ呆れられるような人間なのは自覚がある。


「仕事なぁ。……普通、村人の一生ってどんな感じだ?」


「継いだ畑を守るか、家事か……。腕に自信があれば傭兵でもしますかね。読み書きや算術などが出来れば商売もできるでしょうが、街や都市ならともかく村では稀ですね」


「それだ!」


「え?」


「仕事より先に、お前達にはやってもらわなければいけないことがあった」


俺はみんなを見回した。

ちゃんと全員聞いているな。


「お前達には、働くより先に、学を叩き込む」


「なるほど」


ニーナは納得したようだが、他のみんなは驚いているようだった。

識字率が高くなさそうだからな。

勉強できるってのが、結構凄いことなのかもしれない。


「まあとりあえずは、読み書きと計算だな。この中で、どちらかでも出来る者は?」


俺の呼びかけに3人がおずおずと手を挙げた。

全員文字が読め、その内1人は簡単な足し算引き算ならできるようだ。


「まあ計算の方はいいや。それじゃあ当面は3人に、他のみんなに読み書きを教えて貰おう。また明日、ティアを送ってから詳しい話は決める」


3人を平の先生とし、ニーナが教頭、俺が校長。そんな感じだ。

1日の前半を勉強、後半を休みにでもするか。


「とりあえず全員、読み書きと計算ぐらいはできるようになって貰わなきゃな。ニーナも手伝ってくれるよな?」


「当然です。お任せください」


まあ完璧にできるようになるまでは結構かかるだろう。

仕事の件はそれまで先延ばしだ。

その間になんか良い案が浮かぶのに期待する。

問題の先延ばしは俺の得意技なのだ。





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