8 弟子ができた日
2016.6.9
第1章スタートです。拠点作り編になります。
2016.9.23
挿絵を追加。
「……これが転移……
「ああ。もう南の山の中だ。あれが一応、この数日だけ使ってる仮の家だ」
転移初体験に感慨深そうなニーナを、仮の我が家に招いた。
俺に促されたニーナは、家の外観を見て帽子の下の目を細める。
「先ほどの倉庫と同じで、見たことも無い建築様式ですね」
「俺の故郷風……ってのが一番近いかな」
「故郷風」と表現したのは、内装が靴を脱がない西洋式だからだ。
「故郷の」と表現するなら、玄関で靴を脱ぐタイプの場合だろう。いや、無駄な使い分けか?
「ああそうだ。ドアはこうして取っ手を回しながらじゃないと開かないから」
「こうですか?」
俺はまず最初に、ドアの違いから教えた。
村の家屋のドアは木の板にそのまま取っ手を付けるか、穴を空けただけだったからな。
どうせこの家は明日の昼までの命なので、鍵のことは無視でいいだろう。
最後に残っている3つ目の部屋にニーナを案内する。
「さて、そんじゃこの部屋を今日1日お前の部屋にする。ちょっとベッド……寝台も置いておくか」
この部屋にデフォルトで備え付けてあるのは、ソファーと机の一式だけだ。
とりあえず拠点作成から簡素なパイプベッドを追加で出してやる。
ちなみに俺は寝なくていいので、向こうの部屋はデフォの家具だけだ。
「こ、この部屋と寝台を使っていいのですか?」
「ああ、勿論だ」
何やらニーナは部屋全体と俺が出してやったベッドに目を丸くしている。
多分現地人から見ると、俺らの生活水準が高過ぎるんだろう。
「あ、そうだ。電気……灯りの点け方を教えておこう」
まだ明るいが、今はほとんど夕方だ。
俺はニーナに見えるようにして、壁のスイッチをカチカチ押した。
「おお……これはどうなっているのですか?」
天井で光ったり消えたりする電灯を見上げて、ニーナが言った。
「一応言っておくが、炎の光でも魔法の光でもない。魔力じゃなく、電気という自然の力で点いてるんだ。この辺の俺の知識には、興味があるか?」
「はい。是非に」
即答だ。やはり知識面での食い付きが凄いな。
夕食でも食べながら話してやるか。
「じゃあ夕食を食べながら話そう。とりあえず俺の部屋の方に来い」
俺の部屋にはダイニングテーブルがある。食事をするならそっちの方が良いだろう。
部屋にニーナを招き、椅子に着かせた。
外の気温は20度以下の筈。先にちょっとあったかい物でも出すか。
とりあえず料理スキルで2人分のホットココアを出す。
コーヒーとかお茶よりもウケが良いだろう。
俺が何も無い所から物を出すのに慣れてきたのか、それとも信頼の証なのか。ニーナはあまり警戒せずに、素直にそれに口を着けた。
「うわ……これは、甘いです」
「悪い、甘いのは苦手だったか?」
「いえ、砂糖と甘い物は、普通は高級品ですので。 とても美味しいです」
なるほど。砂糖は一応存在するが、高級品なのか。
なら現地人たちは、さぞかし甘味に飢えているだろう。
甘いことを表す『甘露』という言葉は、たしか本来は、神々が飲むと言われる甘い不老不死の霊薬のことだ。
その天上の霊薬が甘い味という設定にしてあることからも、昔の砂糖が貴重だった時代、人々が甘みという物にどれだけ強く焦がれていたのかが分かる。
ニーナは想像した値段のせいか最初は遠慮している風だったが、俺がガブ飲みしてみせるとやっと口を着け始めた。
「さて、普通お前たちはどういう物を食べているんだ?」
「そうですね……。まず庶民なら、野菜を入れた塩のスープにパンでしょうか。余裕がある日はスープに肉が入ることもあります。手に入るなら果物を添える場合もあるでしょう。続いて蓄えがある者ならば、そこに肉料理なども入り、スープももう少し良い物に変わってくるでしょうか」
現地ウィキは抜群に役に立つなぁ。
知識はもちろんだが、頭の出来も確実に俺より良いだろう。ちゃんとこちらの質問の意図を察して答えてくれるから楽だ。
まあ今聞いた感じだと、とりあえずスープ、肉料理、パン、果物ってとこでいいか。
俺は料理スキルを使いながら、手で撫でるような動作で机の上をゆっくりと払う。
その手が通り過ぎた場所から、2人分の料理が続々と出現した。
今夜のメニューはベーコン、ジャガイモ、玉ねぎのコンソメスープに、鶏もも肉のソテー、そして一応簡単な葉野菜とミニトマトのサラダも添えておき、デザートにカットしたリンゴも用意した。
この世界の香辛料のレベルが分からなかったので、一応刺激が少なく作りがシンプルな料理ばかりを集めておいた。
「……凄いです。 まるで貴族の食事ですね」
「あれ? さっきのは庶民の話じゃなかったか?」
「種類だけ見ればそうかもしれませんが……この料理たちは、使われている材料の量が一般的な物と桁違いです」
「そうなのか。普通はもっと質素だということか?」
「はい。昔上位貴族の夜会に招かれた時に出された食事と、そんなに変わりません」
「ふむ……食べるのに問題があるという訳ではないんだな?」
「はい。……あの、まさか毎日このような食事を?」
「そうだな。そっちに問題が無いなら、このくらいの食事を出そうと思っている」
「それは……それは、夢のようですね。 私だけこんな思いをしては、世の中の人たちに悪い気がしてしまいます」
「お前貧乏なの?」
思わずツッコミを入れてしまった。
賢者とか言われて王様とかからも依頼が来るとか言ってたのに、意外と儲かってないんだろうか。
「えっ? …………ああ、いえ。税で暮らす貴族ほどではありませんが、お金に困ったことは無いですね。依頼の報酬がありますので。その私が貧しく見えるということは、師匠があまりにもお金持ちなのだと思います」
「うーん……まあそうなのかもな。俺はまだこの辺の物の価値も分かってないから何とも言えんが、それなら俺が途轍もなく金持ちだという可能性もあるよな」
「はい。それに師匠のお力ならば、この先お金で困るようなことは絶対にないでしょうね」
「そうか。賢者様のお墨付きなら安心だ。だからお前も安心して食ってくれ。俺も冷める前に食べるとしよう」
その後は、ニーナにナイフとフォークの持ち方を説明したりしながら、食事を楽しんだ。
「そうだ、それで何から聞きたい?」
食事を全部食い終わってから当初の予定を思い出した。
普通に美少女との食事というシチュエーションを満喫してしまっていた。
知ってるか? 美少女は飯食ってるだけで可愛いんだ。
水を飲んで一息着いていたニーナは、少しだけ考えて俺への最初の質問を決めた。
「―――師匠は、どこからやって来られたのですか?」
「すまん。それは説明するのが難し過ぎる」
いきなり絶対に上手く説明できない話題が来た。
「ゲームの外から来ました」とか、説明しようとしたら一晩かかりそうだし、別の世界から来たとか言ったら確実に警戒される。
この話題の返答を決めとくのは今後の課題だな。
「とにかく、俺は力は強くても普通の人間だってことと、この大陸の出身ではないということだけ、覚えておいてくれ」
「そうですか……分かりました。では、その空中から物を出すのはどういった魔法なのですか?」
「ふむ。……これは簡単に言えば、空間を繋げる魔法だ。遠くにある俺の倉庫と、この手の中を繋いでるんだ」
そんな感じで適当な説明をし、俺は空中に手を突っ込みアイテムボックスからMPポーションを取り出してみせた。
これは魔法じゃなくシステム的な物だし、遠くの倉庫というのも嘘だ。実際にはボックスはすぐ隣の部屋に置いてある。
つーかボックスは誰かに開けられたりしないよう、次から地下に置いとくか。
操作を誤り小麦とかが大放出されたらやばい。多分この山のサイズが数倍になるぐらい出る。
「これについては、あくまで別の場所に保管されている物を一瞬で持ってきているだけで、今この場で生み出しているという訳ではない。転移の魔法みたいなもんだな。……ただし、さっきの料理と、家を建てた魔法があっただろ? そっちの2つはその場で物を生み出している魔法だ」
拠点作成には金を消費するし、料理スキルとアイテム作成スキルには、発動の際ボックスから素材アイテムを消費している。
ニーナへの説明はどれも厳密には真実ではない。
……が、理屈が違っても起きる結果は変わらない。
ゲームシステムを、適当に現実っぽく変換して説明すればいいのだ。
「それらの魔法は、私でも使えるようになりますか?」
「……実を言うと、その辺の話で1つ黙っていることがある」
「なんでしょう?」
「俺はお前に、魔法自体を教えてやることは出来ない」
「……え?」
当たり前だ。
だって俺達プレイヤーは、魔法を覚えるのなんてパネルに指で触れるだけでいいんだから。
このゲームの世界で、現地人達がどうやって魔法を覚えてるのかなんて知らない。
仕組みさえ分かれば、プレイヤーの視点からアドバイスぐらいは出来るかもしれんが。
「ある事情から、俺は誰かに直接魔法を授けることが出来ない。俺がお前にしてやれるのは、経験による魔法の上手い使い方を教えてやることと、習得の手助けとなる知識を教えてやることだけだ。俺から何かを学ぼうというのなら、お前はお前自身の力で俺から何かを得なければならない」
「…………なるほど。師匠、それはごく普通の師弟の在り方だと思います。そんなに私に気を遣う必要はありません。……師匠は、別に私に厳しくするためではなく、何か止むに止まれぬ事情があるからそう言っているのですよね?」
「ああ。俺も出来れば新しい魔法をポンポン授けてやりたんだがな。俺に出来る限界は、なるべくお前が俺の魔法を再現できるよう、助言を与えるぐらいだろう」
「いえ、それなら十分ではないですか。師匠という完成形を手本にすることができ、助言まで頂けるというのです。あとは私が自分の才を示すのが筋でしょう」
いや、まあニーナがそれで良いってんならいいんだけどさ。
なんか騙してたみたいで悪いじゃん?
一応、「嫌になったらいつでも出て行って良い」って言ったのは、その辺を考慮してたんだけどさ。
「そうか。お前がそう言ってくれるなら助かるよ。それで、他には?」
「魔法以外ということでしたら、先程の『デンキ』という物の話などが聞きたいです」
「ああ、そうだな。ではその辺の『世界の仕組みの知識』を教えよう」
「はい」
なんだろう、なんというか、目に力が宿ったな。
まあ賢者というのは知識を蓄えることに一家言有るのかもしれない。
それかもしかしたら、ニーナ自身が魔法使いとしてより賢者としての面が強いのか。
俺はまず、電気が雷を構成する力(エネルギー)であること、金属を伝わる性質を持つことを説明した。
それから天井で今も光っている電灯の解説。
金属を伝わる性質を利用した電線の存在、スイッチという機構により電線の繋がりを操って電気の流れを操作していることを説明してやる。
「まあこの電灯やその他の家具は、魔力で動くという魔具の、電気版みたいなもんだな」
「なるほど……これは確かに、凄まじい技術です。師匠の故郷では、この電気を使うことで魔具のような物を大量に生活に投入しているということなのですね」
「ああ。そしてこの電気を生み出すのにも、火や水や風という自然界に存在する力だけを使っている。自然の力なら、魔法使いの実力と人数に左右される魔力と違い、安定して力を供給し続けることが出来るからな」
ニーナは俺の言葉に、目から鱗が落ちたような顔をしてしきりに頷いている。
俺の口なら意外と簡単に騙せるな。
実際には現実に魔力なんてもんが存在しないだけだ。
でもそれをストレートに言ったら、現に魔法使いである俺の事が説明できない。
俺のリアル詐欺師スキル、ここに極まれり。
本当は俺だって面倒なので「このボタン、押す、点く。もう一度押す、消える」という具合に使い方だけ教えたいんだが、こいつも俺から説明してやらなきゃ、本当は凄く気になるのに遠慮とかしそうだからな……。
俺は相手に思ったことや気持ちをはっきり口に出して欲しいタイプだ。
というのも、俺自身が相手のことを信用できない人間だから。
日々の中で「こいつ本当は何か思ってることがあるんじゃないだろうか……」と考えてしまって怖い。だから思ったことを隠さずズカズカ言ってくれる人の方が好ましい。
俺の方がそれを求めているのだから、その関係を作る為なら少しぐらいはこちらも面倒を被らねばならないだろう。
一応俺なりの『何でも聞いてくれていいよアピール』なのだ。
色んなことを説明しなきゃならんだろうな、と思っていると早速1つ思い出した。
「あ、そうだ。 とりあえずお前、今すぐ風呂に入れ」
「フロ? もしかして、お風呂があるのですか?」
「そうだ。よかった、風呂はこの辺にもあるんだな」
「いえ、普通は王侯貴族しか入れない、贅沢の極みです。手間と燃料がかかり過ぎますから。私は魔法で水と火を出せるので、たまに入っていますが」
「なるほど、やっぱりそういう感じなのか。そんじゃこの家備え付けの風呂を沸かすから入ってくれ。ちょっとついて来い」
俺はニーナを連れて風呂に向かった。一応ボディーソープとかの説明をした方が良いだろう。
脱衣所のパネルでお湯を沸かす操作をしてから、風呂に備え付けてある2本のボトルをニーナに見せた。
「こっちの桃色の方が体を洗う石鹸。 そしてこっちの青い方が髪を洗う石鹸だ。 つーか石鹸って分かるか?」
「はい。 これもこの大陸ではかなりの高級品です」
「そうなのか……。まあとにかく、風呂に入る前にまずは髪、体の順でよく洗え。その辺の桶は使っていい。ちゃんとしっかり泡立つまで石鹸を使うんだぞ。湯船に浸かるのは体を洗ってからだ。一応この順番は俺の故郷のしきたりだ」
俺はザラザラのボディータオルにボーディーソープを垂らし、泡立ててみせながら説明する。
もしかしたら女性には、もっと肌触りの柔らかいボディータオルが良いのかもしれない。
だが彼女がいたことの無い俺では、実際は分からん。
まあ今日1日ぐらいは、これでガッツリ体の汚れを落として貰おう。
「あ、あの、それは分かりましたが…………その、もしかして、私が臭いからでしょうか?」
「ぶっちゃけるとそうだ」
「すっ、すいません……」
ニーナは恥ずかしいのか、心なし小さくなった。穴があったら入りたいって感じだ。
「いや、俺の故郷では全員が毎日風呂に入るんだ。そこで育った俺の価値観からすると、『ちょっと風呂に入った方がいいな』と思っただけだ。こちらの文化との仕方ない差なのだから、あんまり気にするな」
「は、はい。気を遣わせてしまってすいません」
そういう彼女はまだ微妙な顔だ。
流石に女の子だけあってショックが拭い去れないらしい。
「気にしなくていいと言ってるんだ。大体お前は自分で風呂に入ってるからか、他の女の子達より遥かに綺麗だ。髪も割とサラサラだし」
フォローを入れたら彼女の目がチラっと俺を見上げた。
やっとこっちを見たな。
俺としっかり目が合って、今度こそ俯いてしまう。特徴的な耳が真っ赤だ。
照れてるんだとしたら可愛いな。風呂に入って綺麗になれば、もっと可愛くなってしまうだろう。
「とにかくそういうことで。服は……まあ今日俺が新品に直してやったから大丈夫かもしれんが、上がったら一応、こいつに着替えておけ。体を拭く物も一緒に置いておく」
アイテム作成スキルで、スウェットの上下一式とバスタオルを出した。
両方脱衣所の棚に置いておく。
下着は……いや、考えないでおこう。
「俺は自分の部屋にいる。上がって着替えたら明日からの予定でも話そう」
「…………は、はぃ……」
消え入りそうな声だった。
プレイヤーは一旦ログアウトしてログインし直すとアバター(キャラクター)がリセットされる。風呂に入る必要がないわけだ。
ニーナを待っている間、一瞬「脱衣所に忍び込んで下着でも見てみるか?」という邪な欲求が生まれた。
まあ当然無視だ。
これが普段爽やかなイケメンだったらまだ黒歴史ぐらいで済むかもしれんが、俺達底辺の人間がやるとただただキモイだけだ。
これ以上人間としての何かが失われれば、ただでさえアレな俺は何も残らず消滅するだろうしな。
待つこと1時間ぐらいして、やっとスウェット姿のニーナが出て来た。
多分俺に言われたのを気にして神経質に隅々まで体を洗ったのだろう。我が弟子はそういう可愛いとこある。
腰まであった2本の緩やかな三つ編みが、今はストレートに纏められ左の肩から正面へと回されている。
少し濡れて青く光っているのと相まって、何とも魅力的だ。
ゆったりしたスウェット姿なのも個人的には素晴らしいと思いますね。
女の子は露出が多けりゃ良いという物じゃないですよ。
「……あの、どうでしょう」
「ああ、可愛いね」
「!?」
「待ってる間に思ったんだが、トイレを説明してなかった。 またついて来てくれ」
「えっ? あ、はい……」
ついでにトイレの隣の洗面台で、歯磨きのことも教えておいた。
部屋に帰って話の続きをする。
「さて。明日の予定だが、まずは昼にこの山を消す」
「とても『明日の予定』とは思えない言葉ですね……」
「……まあ言われてみると確かに凄い字面だな。だがこれぐらいで驚くな。あくまでこれは初期段階。その後は整地して新しい家を建てた後、何より真っ先に畑を作る」
「畑に何かあるのですか?」
「俺の趣味だ」
「え?」
むしろどっちかと言えば畑の方がメインだ。
敷地と家なんて、畑の横におまけで用意するようなもんだろう。
「とりあえず畑が完成したら後は丸々暇になる。そしたらお前の魔法の修行でもしよう」
「本当ですか? 何をするのでしょう」
「まあ初日だから、お前がどれぐらいの魔法使いなのかを確認しよう。今後の方針はその結果から考える」
「はい。明日はどうぞよろしくお願いします」
「おう。……さて、もう10時前か。明日に備えて今日は寝よう。お前も色々あって疲れただろう?」
現地は照明が無い。本来寝るのはもっと早い筈だ。
今の時点でも夜更かしなんじゃないだろうか。
「いえ、師匠の
「気にするな。それじゃあ、部屋に戻りなさい」
「はい。ではおやすみなさいませ、師匠」
「ああ、おやすみ」
寝る挨拶までしたのに、ニーナはなぜか俺の前から動かなかった。
まだ何か言いたいことがあるのか。
「ん? どうかしたか?」
「…………あの」
「ああ……」
なんだろう。よっぽど言いにくいことなんだろうか。
それからもう5秒ぐらいして、彼女はやっと口を開いた。
「その………………これからよろしくお願いします。 師匠」
何回言うねん。
やたら真剣に溜めまで作って出たのが何度目か分からない言葉で苦笑が漏れる。
「ふふ…………こちらこそよろしく頼むぞ。我が弟子よ。……はよ寝ろ」
俺はニーナの低い頭をポンポン撫でてから彼女を見送った。
―――さて、明日は畑作り。待ちに待った、決戦の日よ!!
2016.9.23
挿絵のニーナの髪型がストレートではなく三つ編みなのはぶっちゃけ作画ミスです。