1 新世界
2017.5.29(※重要)
この作品は現在修正中です。初見の方は修正完了後に読む事をオススメします。
世界観の説明回です。
面倒だったら読み飛ばして下さい。
2016.12.22 内容を微修正しました。
――惑星『フロンティア』。
その星に存在する唯一の生命体達が――3人の男達が、雑談している。
フロンティアには大気が無い。
そのため3人が現在いる部屋は、空気で満たされ密閉されている。
――部屋。部屋とは言っても、そこは50m×50mという広さを誇る。
なんなら体育館の方が呼び名としては相応しいかもしれない。
そして広くするという労力はかけてあるのに、その中には一切の装飾が無い。
ただ広いだけの空間。
まるで地下を適当にくり抜いたかのような住居だ。
もっとも事実として、谷底の崖に穴を開けて空間を作り扉で塞いだだけであり、その表現はまさしく正解だったりする。
大きなテーブルとそれを囲む3人を部屋の中心にして、壁際には様々な設備が備えられている。
目まぐるしく表示されている情報が変わり続ける掲示板であったり、専用の器具で散らかされた薬の調合台であったり、何かの事務手続きに使うらしきカウンターであったり。
およそ彼らが活動するための最低限の機能だけを揃えた、機能性を重視した…………いや、機能性以外は全ておざなりな部屋というのが正しいだろう。
そんな「適当」という一言こそが最も相応しい部屋。
そこに住まう3人の間には、何やら暗鬱とした雰囲気が漂っていた。
1人は漆黒の禍々しい軽装鎧を着込み、その所々からは真紅の妖しい光が揺らめく。
腰には30cmほどの片刃のナイフが鞘に納められている。これが彼のエモノらしい。
もう1人は美しい青色を基調にした重装の鎧姿。
背中には形の違う2本の剣が交差するように背負われている。
最後の1人はとにかく白い。
白い髪に白いローブ、これまた白いゆったりとしたズボンに、靴だけは茶色い。
そしてその上から更に白い外套を着込み、至る所が金と宝石の装飾で飾られている。正気を疑う派手さだ。
彼らの左の二の腕にはそれぞれ順に、炎の背景に黒い竜が描かれた物、紫の盾に複雑な文様が掘られた物、黄色で描かれた魔法陣のような物、といったエンブレムが縫い付けられている。
最初に口を開いたのは、ナイフ使いの黒竜のエンブレムの男だ。
「いやぁー……ちょっとさっきのは無いわぁ……」
その抽象的な感想に同意だったのか、続いて白い男も喋り出す。
「マジで何やねん、あのカス共は。対戦であんなあからさまにチート使うとか、馬鹿かっつーの」
「ごめん、運営への報告ってどっからやるって言ってたっけ?」
双剣を背負う青い男は、何かの作業にもたついて会話に参加する余裕が無いらしい。
「『設定』から『通報』タブの2番目」
「ちょい待って、ちょい待って。 えーっと、あーこれか」
「一応証拠ムービーは撮っといたが、俺らの通報で本当に処分されるのかね」
「……微妙なんだよなぁ~! ランキング最上位の奴らとか、数字がどう見てもチートなのに未だにランキングにのさばってるしな。つーか流石に俺より作物収穫ランキング高い奴らは全員チートだろ」
「フッ、それは間違いないな。……とりあえず『好ましくないプレイヤー』に突っ込んどいたから、今日の奴にはもう当たることは無いとは思うが……」
「こんだけ証拠集めたし、流石に処分されると思うが……うーん……」
「なあ、これって最後『同意して送信』で良い?」
怒り3割、呆れ7割といった様子の2人に、遅れて処理を済ましたらしい1人。
「まあ今日はもう寝るかなぁー。流石に萎えるわ」
「俺も明日仕事あるから寝るわー」
「おう、おやすみー。俺は起きたの昼だし、もうちょい畑の世話でもしてから寝るかな」
「安定の理由で羨ましいなぁおい。そんじゃおやすー」
「おやすみー」
「んー。おやすー」
別れの挨拶を済ませた2人の体が、幻想的な光の粒子となってフワリと消失した。
「はぁ……」
部屋に残された最後の1人も、遅れて部屋から退席した。
――惑星『ハネットファーム』。
星一つの地表が丸ごと
その星の支配者である白い男が、誰もいなかった筈の自室に突如として現れた。
先ほどと一転して男の視界に入ったその部屋は、一言で言って豪華絢爛。
真っ白な石を鏡のように極限まで磨き抜いた床に、同じく輝くように白い壁には上から金細工まであしらわれている。
普段意識して見上げることは無いが、天井を見上げれば美しい文様が刻まれており、壁との繋ぎ目は精緻な装飾が被せられ、見えないように工夫されている。
そしてその天井から垂れ下がり、部屋を煌々と照らしている巨大なシャンデリア。
無数のクリスタルを全て均一になるよう削って造られたそれは、部屋と同じく一目で莫大な資金を投資して作られたと分かる品だ。
その眩い光が白い部屋に反射し、相乗効果でもはや部屋自体が輝いているかのようだ。
フロンティアのあの部屋とは比べることすらおこがましい、究極の美で彩られた空間。
そんな誰もが息を飲み佇んでしまうだろう場所。
しかしその部屋の支配者は、輝きの光景を前に、何の感動も得ていない。
頭の中を占めるのは、『チーター』に手も足も出ずに蹂躙されたという事実のみ。
ただ、そうでなくとも彼にとってこの家は見慣れた我が家だ。反応は変わらないだろう。
部屋の扉を乱暴に開け、先ほどと同じシャンデリアがこれでもかというぐらいに並ぶ、長い長い廊下を1人歩いていく。
雲のようにフワリと柔らかい真っ赤な高級絨毯が敷かれているが、それの価値を意に介さずガシガシと大股で踏みつけ進んでいる。
階段から1階に降り、すぐ目の前の玄関から自動で開く巨大なドアを潜り外に出る。
外から見れば、それは家と言うより宮殿か城と呼ばれるべき代物だった。
数十メートルもの庭を横切り、最強クラスのゴーレムが守護する塀の門から敷地外まで出る。
瞬間、一面に広がる黄金に、初めて心を奪われる。
それはアイテムの大量生産を趣味とする彼が、丹精込めて作り上げた、麦畑だ。
丸々と太った実の自重で、首をもたげさせる小麦。
それが地平線まで……いや、更にその果て、大地の終わりまで続いている光景を前に、やっと気分が落ち着いた。
(まあチート使っても、これを再現しようとは思うまい……)
その自慢げな表情のまま、男が腕を一振りした。
すると目の前に広がる麦たちの実が一斉に落ち、まるで黄金の旋風のように一陣となって纏まって行き、一か所に集まりだした。
空間に突如開いた七色の穴を目掛けて、黄金の濁流が流れ込んでいく。
これは今惑星規模で起きている現象だ。その穴を目的地に、世界中から麦が集められているのである。
「……『アイテム作成』」
男はその神話の光景と言うべき超常現象を見慣れた物のように眺めながら、自分の背後に出現した豪奢な椅子に腰かけた。
(さーて、ボックス何ページ分の小麦になるかな……)
◆
(あの糞チーターめ……絶対殺す)
チート。つまりは『改造』。
ゲームのプログラムに介入、または改造し、制作者の意図せぬ動作をさせることで自分の好き勝手にやる行為。
チートを行ってゲームをプレイする者は、蔑称としてチーターと呼ばれる。
この低次世界体験型オンラインゲーム――『ザ・ワールド』には、プレイを始める前に利用規約への同意を求められる。
当然チートは規約の違反行為だ。
違反者は期間を設けしばらくアカウントが停止されるか、罪状が重いとそのアカウントで永久にログインできないよう処理される。
――だが、実質的にランキング上位はチーターに独占されている。
チーターを見つけたら一応ゲームの運営会社に通報できるのだが、そのチーターにどういった処理が行われたかは通報者には公開されない。
そのため、そのチーターがちゃんと処罰を受けたのかすら分からず、現状的にも半ばチートへの対応は形骸化していると言っても良い。
代わりにプレイヤーの集まる掲示板では、出会ったチーターの名前や行為を晒し者にするためのスレッド……いわゆる『チート晒しスレ』が立てられ大繁盛している。
ちなみに俺もその晒しスレによく名前を上げられており、割と有名人である。
ただし俺のは相手からしたら腹立つ戦い方でも、あくまでゲーム本来のシステムからはみ出さない『真っ当なプレイ(自称)』であり、断じてチートではない。
負けた奴が負け惜しみにチートだ何だと喚いているだけである。
晒しスレでも俺の名前は出さないようにとわざわざ注意書きに書いてくれているぐらいだ。
それでも注意書きを読まずに書き込む馬鹿が、俺に負けた腹いせに名を書き込むのだが。
ちなみにそういった公の場で悪意を持って俺をチーター呼ばわりした奴等には、見つけ出し『お仕置き』をして回ることにしている。
人を的外れな理由で侮辱しようと言うのに、それを
話が逸れたが、とにかく最近はチーターが増えてきたのだ。
まあザ・ワールドはサービス開始から既に10年強経っているので、運営側のその辺の対応がいい加減なあなあになって来るのも分かるが。
俺がプレイし始めた初期から中期にかけては、ちゃんと対応がされていたのかチーターも今ほどいなかった気がする。
というかチーターなんて話に聞くけど会ったことは無い……そんな存在だった。今は何回か会ったが。
(とりあえず、次あいつらと予定が合うまでに奴の詳細を調べておく。そんでもって3人がかりで奇襲をかまして奴をぶっ殺し、所持アイテムと金を全部剥ぎ取った上、拠点を破壊。ついでにクランに所属してたら、そのクランメンバーも見せしめに皆殺しにしてやろう……)
奴が運営に正式処分される前に、自分でも復讐しておかなくては。
いや、別に俺は、チートが悪だから怒っている訳ではない。
事実はともかく、チートが運営にバレれば処罰が下ると明言されているのだから、それでもチートをしている奴というのは覚悟を持ってチートをしているのだ。……まあ例えしていなかったとしても、そう見られても仕方ない行いな訳である。
自分で責任を取るならチートもすればいい。
そのチーターに被害を受けるプレイヤー達のことなんて、俺の知ったことではない。
俺が怒っているのは……。
……当然。今回被害に遭ったのが、俺だからだ。
他の奴が苦しむのはどうでもいいが、俺を苦しませるのは許さん。
(お前が喧嘩を売ったのはあの『FFF』であり……この俺だ。最大の後悔を味わうがいい)
害悪クランの1つとして有名な俺達のクラン――プレイヤーが何らかの目的で集まった団体のこと――『FFF』は、数人の仲間とチームを組む……いわゆる『パーティー』を組んでの対戦ばかりしているクランだ。
クランメンバーは全員がリアルでの友人。というか幼馴染だ。
小学生の時から週末は必ず10人一緒に遊び、このザ・ワールドなどは中学2年の時から23歳になる今までずっとプレイしてきた。
……このメンバーも、今はもう俺を含めて3人しかいない。
他のメンバーは別に辞めた訳でも仲違いした訳でもないが、大学に行ったり社会に出たりで最近は滅多にこのゲームに姿を現さない。
中には他に熱中しているゲームがあって、そっちに移っただけの奴もいるが。
とにかくプレイ開始から9年経った今。
常時残っているのはこの俺ハネットを含め、リーダー、クラツキのこの3人だけだ。
この2人も立派な社会人であり、バイトの俺ほど時間に余裕があるわけでもない。
結果的に俺はほとんどの時間が1人だ。
その間は延々と畑を耕したり、回復ポーションなどの消耗アイテムを作って初心者に売りつけたりしている。
ザ・ワールドは無限の遊び方を提供している事を売り文句にしたゲームだ。
当然1人でも遊べるのだが、俺は戦闘が面倒臭いので昔から仲間任せのパーティープレイ専門であり、1人でのプレイ……ソロプレイは、まずしない。
「潮時……かもな」
アイテムボックスに集まっていく小麦を眺めながら、珍しく口に出して独り言を呟いた。
そうだな。そうだ。
最古参とは言えないが、このゲームとの付き合いも10年に近い。
他のクランメンバーも俺とは違い、全員で集まる時以外はソロでプレイしていた筈なのだ。
いい加減、解禁しよう。
このゲームを、遊び尽くそう。
それは、俺と言う人間にとっていつも通りの、ただの思い付き。
思い付いたらすぐにやってみないと気が済まない、熱しやすく冷めやすい人間の典型的な特徴。
俺は椅子から立ち上がり、多過ぎて未だに麦を回収しきれていないアイテムボックスを前にして、次に育てる作物だけ先に考えておく。
――これが終わったら、ソロプレイに挑戦してみよう。
◆
今から少しばかり昔の話。
――人類はついに、高次元に片足を突っ込んだ。
簡単に言えば、これまで1つ上だった次元に干渉できる存在になった。
俺は一般人な上に学も無いので詳しい理屈も仕組みも知らないが、高次の存在となった人類は、それまで自分たちが住んできた低次の存在を好き勝手に出来るようになった。
例えるなら、漫画の中のキャラクターが現実に飛び出す方法を見つけたので、今度は自分が作者となり漫画を描けるようになった……みたいな話だ。たぶん。
それから時代は更に変わり、技術が一般人の手に渡るぐらい使い古され、このザ・ワールドというゲームが出来た。
ジャンルは『低次世界体験型』オンラインゲーム。
低次元の無数の世界に侵入し、その世界の住人になったかのように体験できるゲームだ。
好きな漫画の世界の中に入れるようなもんだな。
現実のように体験できるのに、何をしても許される
売れるに決まってる。発案者は思い付いた時にほくそ笑んだだろうな。
最初の低次世界体験型ゲームとなったザ・ワールドは、爆発的な大ヒットを記録して1年でゲームの史上最高売上を叩き出した。
……そういえば、その史上最高売上という宣伝文句に釣られて買ったんだったなぁ。
◆
ハネットファームの全域にジャガイモを植え、通称『スタート画面』と呼ばれる場所まで戻ってきた。
今俺は、どこまでも続く果ての無い真っ暗な空間に立っている。
地面も無いのになぜか立てる。つーか疲れるから座ろう。
このスタート画面だと魔法やスキルが使えないので、いつもの椅子が出せない。
仕方ないので地べた(?)に直接座る。
ここは『世界』を検索する前……つまり世界が無い状態。無の空間だ。
ゲームを起動した時と、プレイ中に新しく世界を検索し直す場合、一度ここに立ち寄るのがシステム上のルールである。
俺は目の前に表示されたパネル――とは言っても実際空中に現れている訳ではなく、プレイヤー本人にしか見えない――から、いつもの『続きから』ではなく『世界検索』を選んだ。
攻略サイトを見ながら、侵入したい世界の条件を設定し、その条件に最も近い世界を探す。
(とりあえず難易度は『ノーマル』が安定かなぁ……)
サクサク進めたいので本当は『イージー』にしたいが、普段俺はノーマルでランキングに参加している。
イージーにしてしまうと、この世界での行動はイージーランキングの方で計算されてしまい、俺の本来のノーマルランキングには反映されなくなってしまうだろう。
総移動距離ランキングとかキル数ランキングとかはどうでもいいが、作物収穫ランキングが反映されないのは、困る。
ちなみに『ハード』以上は選択肢にすら入らない。自分から難易度上げるとか意味が分からない。
文化レベルという項目は『旧時代:中世』にしておく。
俺は若干、『旧時代』オタクだ。
まだ人類の科学技術が本格的に発展していなかった頃……もはや文献や創作でしか情報の残っていない時代。
正確には違う世界な上にゲームなので、俺らの歴史とは結構差異があるのだろうが……。
とにかく攻略を一番楽しめそうなのは、この辺の時代な気がする。
俺は今まで『現地人』――いわゆるノンプレイヤーキャラクター(NPC)――の存在しない惑星と世界ばかりを選んできた。今回が『現地』との初邂逅となる。
長時間攻略サイトと睨めっこして、さっきやっと、この文化レベルに決めたのだ。
その他の項目は、普段世界検索する時にテンプレを決めているので、慣れた手つきでさっさと決定していく。
最後に2~3回に渡って条件が間違ってないか確かめる。
俺はしょっちゅううっかりミスをやらかすので、こういう時やり過ぎなぐらい警戒することにしている。
マジでこんだけ確認しても、後からミスが発覚することもゼロじゃないからな。
俺は世間も信用していないが、自分も信用しないのだ。
ミスが無いことを確認し、検索を始める。
条件を付けて最低限まで絞り込んでいるというのに、候補の世界が200個近く出てきた。
(いつも思うが、多過ぎだろ……)
途端に面倒臭くなってきたので、俺が好きな数字である『12』にあやかり上から12番目の世界を適当に選…………いや、下から12番目にしよう。
並び順が上に近いと、似たような考えのプレイヤーと被って介入される可能性が高まる。
別プレイヤーに所持世界へ介入されると、せっかく育てた世界を荒らされてしまうかもしれないのだ。
まあ下からにしたら下からにしたで、全く同じ思考回路の奴と被ったりするんだけど。
このまま世界に侵入してもいいが、俺はオプションをゲームが始まる前に弄っておくタイプだ。
これまた慣れた物で、テンプレ通りにこの世界の各オプションの数値を弄っていく。
(む、『現地言語の翻訳率』か……)
現実の国によってすら言葉が違うのだ。当然現地のNPC達とは言葉が通じないのだろう。
ゲームの方でそれを自動で翻訳してくれるらしいのだが、どうやらこの項目はその翻訳のレベルを決める欄らしい。普段は関係無いので無視していた。
攻略サイトを見ると、どうやら現地人と交流してロールプレイを楽しむプレイヤー達の間では、翻訳率は最高の『100%』ではなく『75%』前後にするのがテンプレらしい。
翻訳率が低すぎると会話が出来ないし、高くし過ぎると全員が同じ口調に聞こえて味気ないのだそうだ。
ここは俺も先人達の知恵にあやかり、75%に設定しておこう。
偉大なる人柱達に敬礼である。
最後に残ったその項目も設定し終え、地面から立ち上がる。
ついに世界に侵入する。
初のソロプレイ……しかも現地NPC達との交流を図るロールプレイだ。
久しぶりにワクワクする。
暗黒だけの世界に突如眩い光源が生まれる。
その光源から強烈な光がみるみる溢れ出し、視界の全てが埋め尽くされていく。
(とりあえずこの世界でも畑は作るから、整地が楽な平原とかに出ると良いな~)
新しい世界に期待を膨らませながら光に包まれる。
黒い世界が白い世界に塗り替えられ、一瞬自分と世界との境界線が分からなくなる浮遊感のような感覚に包まれ…………。
数秒して、足に確かな地面の感触を感じる。目的の世界に辿り着いたらしい。
――目を薄く開けると、杉っぽい木々に迎えられた。
(はい、森で~す。ありがとうございました~)
プレイ初日に海のど真ん中に投げ出された時よりはマシだが……平原が良いって言ったのに。いや言ってないけどさ。
ああ、あと寒い。
寒いのは畑作りには向かないが、個人的には暑いより好きなので微妙な所だ。
まあこのゲームだと、プレイヤーは極端な暑い寒いはほとんど感じないので意味無いけどな。
(うん、良い点無いな。最悪の立地条件だ)
とりあえず空を塞ぐ邪魔な木々を、無詠唱の爆破魔法でぶっ飛ばした。
「『フローティング』」
日光を遮る天井が無くなり、明るくなったそこから空へと飛び立つ。
周りを囲む木々から抜け出し、少し高度を取って周囲を見渡した。
……………………。
(しかもめっっっっっちゃ山じゃねーか!!)
こうして幸先悪く俺のソロRPGが始まった。
どうやら最初は山を削る作業から始めることになりそうだ……。
まあいいけどさ……。
次話からの作中世界はゲームですが、現実世界でもあります。
パラレルワールドに近いですが、プレイヤー達は完全にゲームだと思って遊んでいます。そういう教育を受けるからです。