3.ロシア空軍機損失とその影響
ウ軍参謀部が発表する航空機の損失データを月ごとにグラフにすると、侵攻当初1か月間の損失は、約100機と大きかった。
しかし、その後から現在までは極めて少ない。月間10~20機以下になっている。
ヘリについても、損失が大きかった当初の1か月は約120機で、その後は10~25機で推移している。
露航空機(戦闘機・攻撃機等)の週・月ごとの損失数

露空軍機の損失が1~2か月後から少なくなったのは、侵攻初期に大きな損失を被ったためである。
戦闘機・攻撃機がウクライナ領内に侵入しての攻撃では、防空ミサイルの攻撃を受け、損害を多く出してしまった。
それを恐れて、ウクライナ空域に侵入することに消極的になり、攻撃方法を変更したのだ。
露の空軍機の侵攻開始から1か月後には101機、2か月後には177機、10か月後(12月23日まで)には283機の損失を出した。
1か月間で10か月間の36%、2か月間で63%だ。
その後は、危険を冒してまでウ軍陣地の上空を飛行して攻撃することはなく、地上軍の作戦の直接支援する近接航空支援もしていない。
ウ軍の防空ミサイルの射程外から長射程のミサイルを発射して攻撃を実施している。
その結果、空軍機投入数(空海軍の戦闘機・攻撃機)に対する損耗率は、地上軍兵器と比べてやや少なく約35%(283機損失)である。
保有機数に対しては、約30%だ。
投入数に爆撃機を入れなかったのは、戦闘で損失を受けていないためである。
空軍の残存戦力は、投入戦力の約65%、保有機数の70%が温存されている。
とはいえ、露航空戦力はもともと中国やNATO(北大西洋条約機構)などに面する地域に配備しなければならないのだが、その多くを抽出してウクライナ方面だけに対し、その戦力の約30~35%を配備している。
その上、高価な実戦機の損失は、かなりのダメージを受けているといってよい。