受験資格がなく誰でも受験が可能、独立開業がしやすく、社会人(40歳以上)が合格者の半数以上を占める行政書士試験。2021年の試験では、受験申込者数が61869人(実際の受験者数が47870人)という人気資格です。
他方、近年の合格率は約10%で、難関資格といわれています。
誰でも簡単には合格できないからこそ価値ある行政書士。
このコラムでは、行政書士試験の出題範囲、配点、出題形式、各科目の攻略法など効率よく一発合格するための情報を一気に公開します!
目次
行政書士試験の出題範囲と出題数
毎年11月に試験が実施される行政書士試験。試験時間は合計で3時間です。
関連コラム:行政書士試験日はいつ?日程・申込方法・試験の基本情報を解説!
一体どんな科目がどういう割合で出題されるのか、ご紹介しましょう。
行政書士試験の出題内容ポイント
- 法令科目と一般知識がある
- 配点の8割以上が法令科目
- 合格基準点がある
出題科目 | 出題数 | 配点 | 基準点 |
---|---|---|---|
【法令科目】 ・基礎法学 ・憲法 ・行政法 ・民法 ・商法 | 46題 | 244点 | 122点 |
【一般知識】 ・政治・経済・社会 ・情報通信・個人情報保護 ・文章理解 | 14題 | 56点 | 24点 |
合計 | 60題 | 300点 | 180点 |
法令科目の出題割合が圧倒的に多い
行政書士試験は大きく分けて「法令科目」と「一般知識」の2分野があり、それぞれ46問(配点:244点)、14問(配点:56点)の合計60問(300点)が出題されます。
配点でいえば、法令科目が全体の8割以上を占めます。
合格基準点がある
行政書士試験の大きな特徴は、競争試験ではなく、合格基準点を超えれば合格できるという点です。
合格するには、次の3つ全てを満たす必要があります。
①法令科目で122点以上得点すること
②一般知識で24点以上得点すること
③合計で180点(6割)以上得点すること
また、注意点が3点あります。
●先ほど、法令科目だけで全体の8割以上を占めると申し上げました。しかし、例え、法令科目で満点を取ったとしても、一般知識で24点に満たなければ不合格となってしまうことに注意が必要です。
●①122点+②24点=146点 ③180点−146=34点なので、この34点をどの分野・どの科目から取るかの戦略が必要となります。
●ただ、仮に一般知識で56点満点を取ったとしても、合格基準点180点には、法令科目で残り124点、つまり合格基準点(122点)以上を取らなければならないので、実質的に合否を左右するのは、法令科目の得点になります。
行政書士試験の出題形式
行政書士試験は3時間の試験時間のなかで、3つの出題形式に回答しなければなりません。ここでは、出題形式ごとの特徴と対策についてご紹介しましょう。
行政書士試験の出題形式ポイント
- 5肢択一式・多肢選択式・記述式がある
- 5肢択一式の対策が基本
- 部分点を狙える多肢選択式と記述式
5肢択一式対策
5つある選択肢から1つ妥当なもの(妥当でないもの)を選んでマークシート用紙にマークする出題形式が一般的です(サンプル問題はこちら)。ですが、妥当なもの(妥当でないもの)を2つ選んだ場合の正しい組み合わせを選ぶ形式(組み合わせ問題と呼びます)もあるので注意が必要です。つまり、単純5択とは限らないわけです。
もっとも、出題形式の中で圧倒的に問題数が大きいのは5肢択一式なので、学習する際にも5肢択一式の過去問や予想問題が中心となります。
5肢択一式の過去問集を活用した効果的な時短学習方法は、過去問を「解くもの」から「読むもの」に変えてしまうというものです。そのためのポイントは以下の2点です。
①正しい選択肢は暗記用に活用する
正しい選択肢についても、条文・判例が登場する場合は、テキストの該当ページを書き込んだり、条文を読んでみることが大切です。
②誤りの選択肢は正しい選択肢に直してみる
知識をインプットする場合、一番実践的な形は、本試験で出題される形で頭に入れることです。なので、条文やテキストの記述内容を丸暗記するよりも、択一の文章を暗記に活用する方が格段に効率的なのです。
また、誤りの選択肢のどこが間違っているのかを探すことで、本試験ではどこで引っ掛けてくるのかがわかります。さらに、正しい選択肢に直すことで知識の定着が図られます。まさに、「誤りの選択肢こそが教えてくれる」です。
その際も、条文・判例・テキストページをメモしておくといいでしょう。
多肢選択式対策
20の選択肢から空欄ア~エに当てはまる語句を選ぶ形式で、憲法で1問、行政法で2問出題されます(サンプル問題はこちら)。
「20も語句が並べられると、混乱しそう!」と思われるかもしれませんが、心配はいりません。
繰り返し使われる語句には同じ記号(ア〜エ)を当てはめてくれているので、それがヒントになります。ある種、知識よりは現代文の穴埋め問題のような感覚で解くことも可能だからです。
また、5肢択一式は、正解すれば4点、不正解だと0点ですが、多肢選択式は1問あたり8点と配点が高いばかりでなく、正解した分だけ得点になるのです。
インプットの内容としては、特別なものはないので、5肢択一式対策と兼ねて学習すれば逆に得点源になるので安心してください。
また、空欄を補充する際のテクニックは、文章理解の「空欄補充」のものが活用できますので、文章理解対策を併用すると効果的です。
記述式対策
設問に対する解答を40字程度で記述する形式で、行政法で1問、民法で2問出題されます(サンプル問題はこちら)。
「行政書士が難しいのは記述式があるから」とお考えでしょうか?
心配無用です。
まず、「記述式」であって論文試験ではありません。しかも40字程度です。Twitterの3分の1にも満たない字数です。
出題のされ方は、トラブル解決のために採り得る手段・法律用語の説明・制度の説明、等です。実際の出題は過去問を読んでみて確認しましょう。
記述式の学習のスタートは、一通り5肢択一式の学習が終ったゴールデンウイークあたりからでOKです。
採点のされ方は、1問あたりの配点が20点で部分点があります。
なお、合格発表後に「解答例」は公表されますが、具体的な「採点基準」は公開されません。
行政法と民法と合わせて60点。記述式も得点源にしてしまいましょう。
ただし、誤字脱字は減点対象になります。行政書士として書類作成のエキスパートになるための試験ですから当然ですよね。
パソコンやスマホに慣れきった生活ですっかり漢字を忘れてしまってませんか?(かくいう筆者も手書きだと漢字に全く自信がありません。)
なので、今日から予測変換に頼ることのない生活を始めてみてください。
記述式について詳しくはこちら
「法令科目」徹底解説!
法令科目対策
行政書士試験の本丸は何といっても、法令科目です。
合格すれば、すぐに登録して行政書士として活躍できるのですから、実務に耐えうるだけの法律知識があるかを試されるのも当然です。
ですが、法律は生きた人間社会を規律するルールに過ぎません。大人になって、社会との接点がある方ほど楽しく学べます。科目によっては最初はとっつきが悪いと感じる科目でも、知れば知るほど、「ああ、そうなのか。だからなのか」と膝を打ちたくなるような感動をしばしば体験できます。
なので、法律=難しい、といった先入観を捨てて、楽しみながら学習していってください。
法令科目攻略ポイント
①学習順序は、 民法⇒行政法⇒憲法・基礎法学⇒商法・会社法
②一気に全体を学習する
③過去問は情報源(出題のされ方・引っかけのポイント・頻出分野等)として活用する
①法令科目の学習順序
法令科目を学習するには効率の良い順序があります。
まず民法、次に行政法、その次に憲法・基礎法学、最後に商法という順番がおすすめです。
商法は民法の特別法で、民法の基礎知識が必須の科目です。なので、商法は民法の学習が1通り済んでから始められると良いでしょう。
※法改正などにより予備校の配信スケジュールがずれることがあります。その場合は配信スケジュールに準拠してください。
②一気に全体を学習する
法律は、様々な制度が有機的に絡まっているものです。
例えば、民法は最初に民法総則を学びますが、民法総則は民法全体に共通して問題になる項目を扱っています。なので、最初はやや抽象的な内容であったり、まだ勉強してない不法行為に基づく損害賠償請求・相続などに触れざるを得ないような場面があります。
なので、多少途中でわからないことがあっても、立ち止まることなく、どんどん先に進んでください。そして全体を一気に概観することです。
すると、驚くなかれ、最初のころわからなかったはずの項目が、「あ、そうか。そういうことだったんだ」と腑に落ちることが沢山でてきます。
法律の学習は、壁のペンキ塗りと同じで、最初は粗くても全体を塗り切ることが大事なのです。
もちろん1回塗っただけでは完璧には塗れません。繰り返していくことで奇麗に塗りあがっていくのです。それもなるべく期間を空けずに繰り返すことが大事です。
③過去問は情報源として活用する
全ての資格試験に共通する鉄則が「過去問に始まり過去問に終わる」です。
では、資格試験での過去問学習はなんのためにするのでしょうか?
「学習した内容がきちんと頭の中に入っているか、確認するため」は、間違ってはいませんが、ほんの一部の理由です。
過去問は情報源として活用するためにあるのです。
例えば、みなさんが「来年の行政書士試験の問題を作ってみてくれ」と言われたら、まず、何をされますか?
過去にどんな問題が出題されたかを調べようとはされませんか?
少なくとも、昨年出たのと同じ内容は出さないでおこう、とか、例年出題されているのと同じくらいの難易度の問題を出そう、とか、考えられると思います。
試験委員の先生方も同じです。
過去の出題傾向から大きく外れた出題はしにくいものです。
なので、「過去問には試験情報が詰まっている」そう考えて、過去問を徹底的に潰して読んでいってください。
科目別対策
ここでは法令科目の科目別対策について、おすすめの学習順序でご紹介していきます。
民法
民法は、5肢択一式が9問(36点)、記述式が2問(40点)出題されます。その為、配点が300点満点中76点と行政法(112点)に次いだ配点となっており、行政書士試験において民法は、合否を左右する重要科目にあたります。
また近年、行政書士試験の法令等科目は難化傾向であり、民法は特に難化傾向が顕著です。そのため、効率的な学習と対策が必要になります。
効率的な民法学習のポイントは「骨太な学習」です。
どの分野も、必ず「幹」となる知識があって、細かな知識は枝葉のようなものです。
なので、まず、「幹」をつかむことが重要です。
そうすれば、民法なりの常識、世界観のようなものが身について、多少知識的にうろ覚えであっても、問題文を読んで「この選択肢が正しいんだろうな」の判断が功を奏するようになります。
「幹を知り、メリハリをつけた学習」これが民法学習の鉄則です。
また、記述式対策として、基本的な用語や制度について簡潔に書けるように、漢字を手書きで正確に書けるよう日頃から訓練しておくことも大切です。
民法の攻略法詳しくはこちら
行政法
行政法は、5肢択一式が19問、多肢選択式が2問、記述式が1問と、点数の高さも出題形式のバリエーションの多さも群を抜いている科目です。
行政法を制するかどうかが行政書士の合否を大きく左右するといって良いでしょう。
行政法は、対象となる法令の数が多く、憲法や民法に比べてとっつきが悪い科目です。
しかし、一旦狭い間口をくぐり抜ければ、一番得意科目になりやすい科目でもあります。
学習のコツは、できるだけ具体的なイメージを持つことです。
例えば、実際にスピード違反で取り締まりにあい、免許停止処分を受けた、罰金を支払うように命じられたとしましょう。免許停止処分になる前の手続き(聴聞など)、罰金の法律的意味、間違った免許停止処分を受けてしまった場合の救済方法……というように、できるだけ身近な例を考えることです(免許停止にはならないに越したことはありませんが)。
そうすれば、自然と理解が深まる上に、合格後、行政を相手に様々な手続きに関わる自分の姿もイメージできて、モチベーションアップにも繋がり、学習効果も上がり、と良い事づくめです。
そして、過去問が一番情報源として威力を発揮するのが行政法です。出題数の多い行政法は過去問すなわち情報が山ほどあるわけです。
その意味でも、学習のしやすい科目といえますので、ぜひ得意科目にしてください。
行政法の攻略法について詳しい解説はこちら
憲法
憲法は5肢択一式が5問、多肢選択式が1問出題され、人権と統治の2分野があります。
人権は基本的人権といって、思想良心の自由(憲法20条)・表現の自由(憲法21条)、学問の自由(憲法23条)等、国家権力による侵害からいかにして個人の権利を守るかといった観点から規定されたものを学びます。
人権は圧倒的に判例の知識が出題されます。
実際の判決文は非常に長文ですが、試験に出題される部分は決まっています。なので、過去問を読みながら、判例がどのように出題され、どこで引っ掛けてくるのかをつかむことが効率的勉強の近道です。
統治は条文知識そのものがズバリ出題されることが多いです。条文知識を繰り返してこくしていくことが王道です。もっとも、「司法権」の分野は、重要な判例が多いです。
憲法の攻略法について詳しい解説はこちら
基礎法学
基礎法学は5肢択一が2問出題されます。
法学一般の幅広い知識の中から出題されるので、手を広げないことが重要です。
ただ、1問は過去問の焼き直しのような問題が出題される傾向にあるので、過去問でしっかり情報をつかんでおくことが重要です。
法令科目を全て学習すると、法律そのものがどういう構造なのかや、基本原理も自然と身につくので、法令科目の最後に学習すると効率が良いでしょう。
基礎法学の攻略法について詳しい解説はこちら
商法・会社法
商法・会社法は、5肢択一式で5問出題されます(商法1問・会社法4問)。
基礎法学同様、範囲が膨大な割には出題数が多くないので、ついつい放置しがちな科目です。
ですが、「商法」の分野は、範囲も少ないですし、「会社法」は「株式会社の設立」「機関」が理解もしやすく、頻出分野でもあるので、2問は獲得するつもりで学習しましょう。
将来会社設立手続きや、コンサルティングの業務を行うときに必ず必要となる知識ですから、合格後のご自身をイメージしながら学習していきましょう。
商法・会社の攻略法について詳しい解説はこちら
「一般知識」徹底解説!
一般知識攻略ポイント
- 基準点突破を忘れない
- 出題傾向を知る
- 文章理解は得点源
一般知識はつかみどころがなく、どこから手を付ければ良いのかわからなくなりがちな科目ではあります。
ですが、法令科目の学習に終始してしまって、一般知識で合格基準点をクリアできなければ、せっかくの苦労も水の泡です。
56点(14題)中、確実に24点(6題)取れる分野をきっちりとおさえましょう。
一般知識(全体)の攻略法について詳しい解説はこちら
政治・経済・社会
政治・経済・社会からは、28点(7問)出題されます。
幅広く出題されますが、各国の政治制度、日本の選挙制度、国際問題、金融政策、財政問題、環境問題、社会保障制度、労働問題など、過去に頻出の分野がありますから、まずはこれらについて、幹の部分としてテキスト・過去問を押さえましょう。また、行政書士業務に関する出題もあります。
まず、過去の出題傾向を1通りした上で、日頃からニュースに対してアンテナを張っておき、気になったニュースに関してはネット検索するなどして基本的な知識を身につけておく事です。
こういった時事問題こそ、予想問題や模擬試験といったプロの力を利用するのが合理的な学習方法といえます。
政治・経済・社会の攻略法について詳しい解説はこちら
情報通信・個人情報保護
情報通信・個人情報保護からは4問(16問)の出題があります。
「情報通信」では、情報・通信技術に関する基本的な用語知識が出題されていて、用語の意味を知っているだけで正解肢にたどり着ける問題がよく出題されます。
「個人情報保護」の分野は、個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、情報公開法、公文書管理法といった法律の条文知識が問われるので、法令科目と同じくテキスト・条文・過去問を中心とした学習が有効です。
出題の基本的事項に関連するものが大半で、比較的点を取りやすい分野です。
情報通信・個人情報保護の攻略法についてはこちら
文章理解
文章理解からは3問(12点)出題があり、内容は現代文だけで、英文の出題はありません。
近年は、「空欄補充型」の出題のみとなっています。空欄補充はテクニックが比較的使いやすいですから、苦手な人は早めに着手して得意科目にしましょう。
近年の難易度は低めで得点しやすい分野といえますので、一般知識の得点源としてください。目標は3問全問正解です。
文章理解の攻略法について詳しい解説はこちら