皇室を皇室たらしめる「越えてはならない一線」/倉山満
日刊SPA! / 2023年1月16日 8時52分
◆あらゆる権力者が乗り越えられなかった皇室の掟
皇室における掟は先例である。先例の積み重ねが伝統である。あらゆる権力者が乗り越えられなかった掟が、皇位の男系継承だ。どの先例に従うかを議論すべきだ。
皇室の長い歴史において、皇室に入り込もうとした一般人が二人いる。
一人は、奈良時代の弓削道鏡。第48代称徳天皇に取り入り、宇佐八幡宮から「次の天皇は道鏡にせよ」との神託を得る。しかし和気清麻呂が神託を改めて確認すると「我が国は君臣の別がある」との正しいお告げが下った。単純な手口は、あっさり破られた。
◆30年かけて近づいていった足利義満でさえも……
もう一人は、室町幕府三代将軍足利義満。義満は皇室の先例を熟知し、徹底的に隙を突いた。皇室における先例は杓子定規に再現するのではなく、大枠を守りつつ「准じる」形で時代に合わせていく。義満も大枠では先例を守りつつ、徐々に皇室に入り込むべく30年かけて近づいていった。自らが法皇のように振舞い、妻を准母に立て、息子を親王の儀式で元服させ、あと一方で息子を天皇の位に就ける寸前まで迫ったところで、急死した。義満の手口は巧妙で、妻を准母に立てる際、二つの先例を立てて「不吉だ」と言い切った。本当は不吉でもなんでもない先例がもう一つあったのに。
女系論にも、道鏡的手口と、義満的な手口がある。道鏡的な女系論とは、「男女平等だから女系にしよう」「外国が女系天皇だから世界の潮流に合わせよう」式の単細胞な主張だ。「関係ない」「お前が合わせろ」で終わりである。一方、女系論の中にも博識な論者が少なくない。
先例を熟知して蹂躙する手口、機会があれば公開しよう。
【倉山 満】
’73年、香川県生まれ。憲政史研究者。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、「倉山塾」では塾長として、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交についてなど幅広く学びの場を提供している。主著にベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』や、『13歳からの「くにまもり」』を代表とする保守五部作(すべて扶桑社刊)などがある。『沈鬱の平成政治史』が発売中
―[言論ストロングスタイル]―
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