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カテゎリヌ

2023幎1月
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カテゎリヌ「074䞭原䞭也の詩に珟れる動物たち」の蚘事

2013幎2月20日 (æ°Ž)

ひずくちメモ・鳥が飛ぶ虫が鳎く・䞭原䞭也の詩10「療逊日誌・千葉寺雑蚘幎」ほか

前回から぀づく

未発衚詩篇の残り「療逊日誌・千葉寺雑蚘幎」ず
「草皿詩篇幎」に出おくる鳥獣虫魚動物を芋たしょう。
あず篇です。

◇

療逊日誌・千葉寺雑蚘幎

「雚が降るぞえ」
隣りの、牛も、もう寝たか、
ちっずも、藁わらのさ、音もせぬ。

牛も、寝たよな、病院の、宵、
たんたら、らららら、雚が、降る。

草皿詩篇幎

「春ず恋人」
蜆しじみや鰯いわしを商あきなう路次の
びしょ濡れの土が歌っおいる時、

「倏ず悲運」
倧人ずなった今日でさえ、そうした悲運はやみはせぬ。
倏の暑い日に、俺は庭先の暹の葉を芋、蝉を聞く。

◇

動物だけを列蚘したすず、

牛
蜆しじみ
鰯いわし
蝉
――ずなりたす。

◇

草皿ずしお残された「晩幎の」幎の詩篇に
「蝉」が珟われるのも暗瀺的ですね。

蛙が声の限りを尜くしお鳎くのに䌌お
蝉が鳎いおいるほかになんにもない ず「蝉」の䞭で歌われた蝉が
ここにも登堎するのです。

この項終わり

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2013幎2月19日 (火)

ひずくちメモ・鳥が飛ぶ虫が鳎く・䞭原䞭也の詩・たずめらしきこず

前回から぀づく

「草皿詩篇幎―幎」篇
「ノヌト翻蚳詩幎」篇
「草皿詩篇幎―幎」篇を䞀気に読んでしたったので
ここですこし敎理しおおきたしょう。

◇

この䞉぀のカテゎリヌ分類を合わせた篇䞭に
動物に関する衚蚘が登堎する詩は篇ありたした。
篇の詩に耇数回の衚蚘があっおも篇ずいう蚈算です。
篇䞭の篇ずいうこずはおよそ割匷です。

この䞭から
生物孊的分類に入らない「幜霊」などを陀き
野兎色、鹿皮、蝊蟇口、銬車のような
動物が「喩ゆ」ずしお利甚されおいる衚蚘を陀き
自然の状態に人間の手が加えられた状態の
「也蚫ほしあわび」や「蛙焌蛀貝やきはたぐりなどを陀倖するず、

黒猫
䞉毛猫
サむオりが銬
癜銬
ずんが
蛙
小銬
矊
梟ふくろう
虫
蝉せみ
かねぶん
象
蝉せみ
雀
鶏にわずり
涌虫すずむし
烏からす
蜂
銬
野矊やぎ
こうもり
犬
猫
コオロギ
駱駝らくだ
兎
――ずなりたす。

動物が動物ずしお登堎しおいるものだけを採集するず
篇ずいうこずになりたす。
党䜓の割匷です。

「サむオりが銬」は単なる銬ずいうより
固有名詞のような銬なので茉せおおきたした。

※「サむオりが銬」は、人間䞇事塞翁が銬じんかんばんじさいおうがうたずいう故事熟語から取
ったものです。人間の幞䞍幞は予枬ができない。幞が䞍幞に、䞍幞が幞にい぀転じおしたうかも
わからないものだから、安易に喜んだり悲しんだりしおはいけないずいう「喩たずえ」です。

「黒猫」「䞉毛猫」の区別を排陀し「銬」ずしたり
「癜銬」「小銬」の区別を排陀し「銬」ずしたりするのも
ここでは無意味になるようなので茉せおありたす。

◇

詩人が鳥獣虫魚や花鳥颚月を詩の䞭に䜿うずき
それは思い぀きではなく
「詩の蚀葉」ずしお通甚するか吊か
熟考に熟考を重ねた結果の遞択であるこずが芋えおきたす。

䜿えば匷いむンパクトを䞎えたすし
詩の生呜に関わりたすから
生半可なたはんかには䜿っおいないのです。

蛙のような動物は
究極のずころ
䞭原䞭也ずいう詩人そのもののメタファヌにさえなるのですし
こうもりが幜霊のメタファヌになるように
ほかの動物たちの幟぀かにも
そのような重倧な圹割がありたす。

぀づく

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2013幎2月18日 (月)

ひずくちメモ・鳥が飛ぶ虫が鳎く・䞭原䞭也の詩「草皿詩篇幎―幎」ほか

前回から぀づく

䞭原䞭也の未発衚詩篇「早倧ノヌト」の次には
「草皿詩篇幎―幎」篇
次に「ノヌト翻蚳詩幎」篇
次に「草皿詩篇幎―幎」篇が配眮されおいたす。
これらに珟われる鳥獣虫魚動物をピックアップしおいきたしょう。

◇

草皿詩篇幎―幎

「䞉毛猫の䞻の歌える」
むかし、おたえは黒猫だった。
いたやおたえは䞉毛猫だ、

さは、さりながら、おたえ、遐日むかしの黒猫よ、

「Tableau Triste」
それは、野兎色のうさぎいろのランプの光に仄照ほのおらされお、

「青朚䞉造」
どうせ浮䞖はサむオりが銬
   チャッチャ぀ぎたせコップにビヌル

「脱毛の秋 Etudes」
女等はみな、癜銬になるずみえた。

僕は耐色の鹿皮の、蝊蟇口がたぐちを䞀぀欲した。

「秋になる朝」
ほのしらむ、皲穂にずんがずびかよい

◇

「野兎色」や「鹿皮」や「蝊蟇口」は
ここに入れないほうがよいかもしれたせんが
敢えお茉せたした。

ノヌト翻蚳詩幎

「蛙 声」
郊倖では、
倜は沌のように芋える野原の䞭に、
蛙が鳎く。
それは残酷な、
消極も積極もない倏の倜の宿呜のように、
毎幎のこずだ。
郊倖では、
毎幎のこずだ今時分になるず沌のような野原の䞭に、
蛙が鳎く。
月のある晩もない晩も、
いちように厳かな儀匏のように矩務のように、
地平の果にたで、
月の䞭にたで、
しみこめずばかりに廃墟瀌讃はいきょらいさんの唱歌しょうかのように、
蛙が鳎く。

蛙等は月を芋ない
 
蛙等は月を芋ない
恐らく月の存圚を知らない
圌等かれらは圌等同志暗い沌の䞊で
蛙同志いっせいに鳎いおいる。
月は圌等を知らない
恐らく圌等の存圚を思っおみたこずもない
月は緞子どんすの着物を着お
姿勢を正し、月は長嘯ちょうしょうに忙がしい。
月は雲にかくれ、月は雲をわけおあらわれ、
雲ず雲ずは離れ、雲ず雲ずは近づくものを、
僕はいる、歀凊ここにいるのを、圌等は、
いっせいに、蛙等は蛙同志で鳎いおいる。
 
蛙等が、どんなに鳎こうず
 
蛙等が、どんなに鳎こうず
月が、どんなに空の遊泳術に秀でおいようず、
僕はそれらを忘れたいものず思っおいる
もっず営々ず、営々ずいずなみたいいずなみが
もっずどこかにあるずいうような気がしおいる。
月が、どんなに空の遊泳術に秀でおいようず、
蛙等がどんなに鳎こうず、
僕は営々ず、もっず営々ず働きたいず思っおいる。
それが䜕の仕事か、どうしおみ぀けたものか、
僕はいっこうに知らないでいる
僕は蛙を聎き
月を芋、月の前を過ぎる雲を芋お、
僕は立っおいる、䜕時い぀たでも立っおいる。
そしお自分にも、䜕時い぀かは仕事が、
甲斐のある仕事があるだろうずいうような気持がしおいる。
 
「Qu'est-ce que c'est?」
 
蛙が鳎くこずも、
月が空を泳ぐこずも、
僕がこうしお䜕時い぀たで立っおいるこずも、
黒々ず森が圌方かなたにあるこずも、
これはみんな暗がりでずある時出っくわす、
芋知越みしりごしであるような初芋であるような、
あの歯の抜けた劖婆ようばのように、
それはのっぎきならぬこずでたた
逃れようず思えば䜕時い぀でも逃れおいられる
そういうふうなこずなんだ、ああそうだず思っお、
坐臥垞䜏ざがじょうじゅうの垞識芳に、
僕はすばらしい籐怅子ずういすにでも倚よっかかるように倚っかかり、
ずにかくたず矞恥しゅうちの感を抌鎮おししずめ、
ずもかくも和やかに誰圌だれかれのぞだおなくお蟞儀を臎すこずを芚え、
なに、平和にはやっおいるが、
蛙の声を聞く時は、
䜕かを僕はおもい出す。䜕か、䜕かを、
おもいだす。
Qu'est-ce que c'est?

「孟倏谿行」
瀬の音は、ずおに消えゆき
乗れる銬車、銬車の音のみ聞こえいるかも

◇

「蛙 声」
蛙等は月を芋ない
蛙等が、どんなに鳎こうず
「Qu'est-ce que c'est?」の篇は党文を掲茉したした。

蛙ずいう動物が
生物の蛙以䞊の意味をもっおいる端的な䟋ずしお。
象城ずいうこずを考える材料ずしお。
「圚りし日の歌」の最終詩「蛙声」ぞ繋぀ながる詩矀ずしお。

草皿詩篇幎―幎

ああわれは おがれたるかな
けなげなる小銬の錻翌

柄みにける矊は瞳

ずにもかくにも春である
闇に梟ふくろうが鳎くずいうこずも

「虫の声」
倜が曎ふけお、
䞀぀の虫の声がある。

歀凊、庭の䞭からにこにこずしお、幜霊は立ち珟われる。

「怠 惰」
倏の朝よ、蝉せみよ、

それどころか、  倏の朝よ、蝉よ、

目を぀むっお蝉が聞いおいたい――森の方  

「蝉」
蝉せみが鳎いおいる、蝉が鳎いおいる
蝉が鳎いおいるほかになんにもない

「倏過けお、友よ、秋ずはなりたした」
遠くの方の物凄い空。舟の傍そばでは虫が鳎いおいた。

暗い庭で虫が鳎いおいる、雚気を含んだ颚が吹いおいる。

秋が来お、今倜のように虫の鳎く倜は、

「燃える血」
鳎いおいる蝉も、照りかえす屋根も、

「倏の蚘臆」
倪っちょの、船頭の女房は、かねぶんのような声をしおいた。

「童 謡」
象の目玉の、
汜笛鳎る。

「いちじくの葉」
その電線からのように遠く蝉せみは鳎いおいる

蝉の声は遠くでしおいる

「朝」
雀が鳎いおいる
朝日が照っおいる
私は怿぀ばきの葉を想う

「倜明け」
倜明けが来た。雀の声は生唟液なた぀ばきに䌌おいた。

鶏にわずりが、遠くの方で鳎いおいる。――あれは悲しいので鳎くのだろうか

鶏ずりの声がしおいる。遠くでしおいる。人のような声をしおいる。

脣くちが力を持っおくる。おや、烏からすが鳎いお通る。

「朝」
雀の声が鳎きたした

「咏嘆調」
「倕空霜はれお、涌虫すずむし鳎く。」

「秋岞枅凉居士」
虫は草葉の䞋で鳎き、

草々も虫の音も焌朚杭も月もレヌルも、

――虫が鳎くずははお面劖めんような

「月䞋の告癜」
虫鳎く秋の歀この倜よさ䞀ず倜

「別 離」
裏山に、烏からすが呑気のんきに啌いおいた

「なんにも曞かなかったら」
蜂だずお、いぬ、
小暗い、小庭に。

「僕が知る」
かの銬の静脈などを思わせる

それはひょっずしたなら也蚫ほしあわびであるかもれない

「初恋集」
野原に僕の家うちの野矊やぎが攟しおあったのを
あなたは、それが家うちのだずしらずに、

「月倜ずポプラ」

朚この䞋かげには幜霊がいる
その幜霊は、生れたばかりの
ただ翌はね匱いこうもりに䌌お、
而しかもそれが君の呜を
やがおは芘ねらおうず埅構えおいる。
朚の䞋かげには、こうもりがいる。
そのこうもりを君が捕っお
殺しおしたえばいいようなものの
それは、圱だ、手にはずられぬ
而も時偶ずきたた芋えるに過ぎない。

「桑名の駅」
桑名の倜は暗かった
蛙がコロコロ鳎いおいた

焌蛀貝やきはたぐりの桑名ずは

「雲った秋」
棄おられた犬のようだずお。

犬よりもみじめであるかも知れぬのであり

猫が鳎いおいた、みんなが寝静たるず、

コオロギガ、ナむテ、むマス

むマハ、コオロギ、ナむテ、むマスネ

「砂 挠」
疲れた駱駝らくだよ、

疲れた駱駝は、
         己が圱みる。

「小唄二線」
象の目玉の、
汜笛鳎る。

「倏の倜の博芧䌚はかなしからずや」
女房買物をなす間、かなしからずや
象の前に䜙ず坊やずはいぬ

広小路にお玩具を買いぬ、兎の玩具かなしからずや

◇

「月倜ずポプラ」も党文掲茉したした。
「こうもりず幜霊」のメタファヌ喩は
「蛙」などず同じものです。
そのこずを考えるだけでも意味がありそうですから。

◇

「草皿詩篇幎―幎」篇たでを䞀気に
読んでしたいたした。

動物を詩の䞭に登堎させるず
それだけでむメヌゞのむンパクトが匷烈で
詩人は考え抜いた䞊で䜿っおいるこずが芋えおきた――ずいうようなこずは蚀えるでしょうか。

぀づく

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2013幎2月17日 (日)

ひずくちメモ・鳥が飛ぶ虫が鳎く・䞭原䞭也の詩「早倧ノヌト」から

前回から぀づく

䞭原䞭也の「未発衚詩篇」に珟われる動物鳥獣虫魚を
「早倧ノヌト」からピックアップしおいきたす。

「早倧ノヌト」には
幎から幎の玄幎間に䜜られた詩篇が収録されおいたす。
幎は昭和幎で䞭也歳
幎は昭和幎で歳、没幎です。

早倧ノヌト幎―幎

「干 物」
干物の、匂いを嗅かいで、うずうずず
秋蝉あきぜみの鳎く声聞いお、われ睡ねむる

「Qu'est-ce que c'est que moi?」
私のなかで舞っおるものは、
こおろぎでもない、
秋の倜でもない。

吹く颚を心の友ず
私がげんげ田を歩いおいた十五の春は
煙のように、野矊やぎのように、パルプのように、

支那ずいうのは、吊鐘の䞭に這入っおいる蛇のようなもの
支那ずいうのは、吊鐘぀りがねの䞭に這入はいっおいる蛇のようなもの。
日本ずいうのは、竹銬に乗った挢文句調、
いや、舌ッ足らずの英囜さ。

日本はちっずも悪くない
吊鐘の䞭の蛇が悪い

「现 心」
そなたは豹にしおは鹿、
鹿にしおは豹ひょうに䌌おいた。

汜笛が鳎ったので
冗談じゃない、人間の県が蜻蛉ずんがの県ででもあるずいうのかず、
昇降口では、二人の男が嬉しげに隒いでいた。

空は青く、风色あめいろの牛がいないずいうこずは間違っおいる。

䞃銭でバットを買っお
山の䞭は暗くっお、
顔には蜘蛛くもの巣が䞀杯かかった。

僕達の蚘臆力は鈍いから
あの頃は蚊が、今より倚かったような気がする。

南無 ダダ
怍朚鉢も流れ、
    氎盀も浮み、
 池の鯉はみな、逃げおゆく

月の光は音もなし
月の光は音もなし、
虫の鳎いおる草の䞊
月の光は溜たたりたす

虫はなかなか鳎きたする
月ははるかな空にいお
芋おはいたすが聞こえない

虫は䞋界のためになき、
月は䞊界照らすなり、
虫は草にお鳎きたする。

やがお月にも聞えたす、
私は虫の玹介者
月の䞖界の䞋僕げがくです。

「こぞの雪今いずこ」
鎉声あせいくらいは聞けもすれ、
薄曇りせる、かの空を

◇

文脈を排陀しお
動物だけを芋るず、

秋蝉あきぜみ
こおろぎ
野矊やぎ
蛇
è±¹
鹿
蜻蛉ずんが
牛
蜘蛛くも
蚊
鯉
虫
鎉声あせい
――ずなりたす。

぀づく

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2013幎2月16日 (土)

ひずくちメモ鳥が飛ぶ虫が鳎く・䞭原䞭也の詩「ノヌト小幎時」ほか

前回から぀づく

䞭原䞭也の「未発衚詩篇」に珟われる鳥獣虫魚動物を
ピックアップしおいきたす。

「ノヌト」には
東京に出おきおから䜜った詩が幟぀か蚘されおいたす。
ダダが残りたすが
明らかにダダを脱皮し぀぀ある詩矀です。

◇

「浮浪歌」
アストラカンの肩掛かたかけに
口角の出た叔父おじに぀れられ

「無 題」
緋ひのいろに心はなごみ
蠣殻かきがらの疲れ䌑たる

明らけき土の光に
浮揚する
   蜻蛉ずなりぬ

◇

ダダが動物の登堎で
ダダらしからぬものになっお
「たずもな詩」ができた感じがしたせんか

草皿詩篇幎―幎

「地極の倩䜿」
 蜂の尟ず、ラム酒ずに、䞖界は分解されしなり。倢のうちなる遠近法、倏の倜颚の小槌こづちの重量、それ等は既になし。

「無 題」
私は朚の葉にずたった䞀匹の昆虫‥‥‥
それなのに私の心は悲しみで䞀杯だった。

「屠殺所」
屠殺所ずさ぀じょに、
死んでゆく牛はモヌず啌ないた。
六月の野の土赫あかく、
地平に雲が浮いおいた。

  道は躓぀たずきそうにわるく、
  私はその頃胃を病やんでいた。

屠殺所に、
死んでゆく牛はモヌず啌いた。
六月の野の土赫く、
地平に雲が浮いおいた。
 
「倏の倜」
私の心はたず人間の生掻のこずに぀いお燃えるのだが、
そしお私自身の仕事に぀いおは䞀生懞呜緎磚するのだが、
結局私は薔薇色の蜘蛛くもだ、倏の倕方は玫に息づいおいる。

「聖浄癜県」
曇った寒い日の葉繁みでございたす。
県瞌たぶたに蜘蛛がいずを匵りたす。

「冬の日」
倖では雀が暋ずいに音をさせお、
冷たい癜い冬の日だった。

「秋の倜」
深い草叢くさむらに虫が鳎いお、
深い草叢を霧が包む。

◇

篇䞭の篇に動物が登堎しおいたすが
これが倚いずいえるのか少ないのか。
なんずもいえたせん。

「屠殺所」は党行を掲出したした。
こんな名䜜が早い時期に生たれおいるずいう䟋ずしお。

ノヌト小幎時幎―幎

「女 よ」
さお、そのこたやかさが䜕凊どこからくるずもしらないおたえは、
欣よろこび甘え、しばらくは、仔猫のようにも戯じゃれるのだが、

「冷酷の歌」
倕は泣くのでございたす、獣けもののように。
獣のように嗜慟しよくのうごめくたたにうごいお、
その末は泣くのでございたす、肉の痛みをだけ感じながら。

「雪が降っおいる  」
捚おられた矊かなんぞのように
  ずおくを、
雪が降っおいる、
  ずおくを。

「倏ず私」
真ッ癜い嘆かいのうちに、
海を芋たり。鎎かもめを芋たり。

◇

「ノヌト小幎時」はランボヌの圱響が挂うノヌトです。
ランボヌの散文詩「少幎時」を意識しお
ノヌトのタむトルを「小幎時」ずしたこずもそうですが
䞭の「頌歌」はランボヌの「感動センサシオン」のデフォルメずいっおもよさそうで
ほかにも圱響を感じさせる詩がいく぀かありたす。

「頌歌」をここに匕いおおきたす。

頌 歌
 
出で発たたん倏の倜は
霧きりず野ず星ずに向っお。
出で発たん、倏の倜は
䞀人しお、身も䞖も軜く

この自由、おおこの自由
心なき䞖のいさかいず
倚忙なる思想を攟ち、
身に沁しみるみ空の䞭に

悲しみず喜びをもお、
぀぀たしく、か぀はゆたけく、
歌はなん叀きしらべを

霧ず野ず星ずに䌎぀れお、
歌はなん、倏の倜は
䞀人しお、叀きおもいを
    䞀九二九・䞃・䞀䞉

぀いでにランボヌの詩「センサシオン」も匕いおおきたしょう。

感動
䞭原䞭也蚳

私はゆかう、倏の青き宵は
麊穂臑すね刺す小埄の䞊に、小草をぐさを螏みに
倢想家・私は私の足に、爜々すがすがしさの぀たふを芚え、
吹く颚に思ふさた、私の頭をなぶらすだらう

私は語りも、考ぞもしたい、だが
果おなき愛は心の裡うちに、浮びも来よう
私は埀かう、遠く遠くボヘミダンのやう
倩地の間を、女ず䌎れだ぀やうに幞犏に。

講談瀟文芞文庫「䞭原䞭也党蚳詩集」より
※ルビは の䞭に入れ、䞀郚、新挢字を䜿甚したした。線者。

◇

「山矊の歌」や「圚りし日の歌」などに収録された詩の
原詩第次圢態が「ノヌト小幎時」には倚々ありたす。
その間はざたにも名䜜がひっそり咲いおいるかのようなラむンナップです。
「朝の歌」以埌の詩ですから圓然のこずですが。

ぜひ、読んでみおください。

◇

以䞊を動物だけを列蚘しおおきたす。

アストラカン
蠣殻かきがら
蜻蛉
蜂
昆虫‥‥‥
牛
蜘蛛くも
蜘蛛
雀
虫
仔猫
獣けもの
矊
鎎かもめ

぀づく

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2013幎2月15日 (金)

ひずくちメモ鳥が飛ぶ虫が鳎く・䞭原䞭也の詩「ノヌト」ほか

前回から぀づく

䞭原䞭也の未発衚詩篇に珟われる鳥獣虫魚動物を芋おいきたしょう。

䞭原䞭也の詩で生前、没埌を問わず発衚された詩篇は「生前発衚詩篇」。
それ以倖は「未発衚詩篇」ずしおたずめられおいたす。

角川版党集は珟圚の第次党集を「新線䞭原䞭也党集」ずしおいたすが
創元瀟版党集を含めるず
戊埌に次の党集が発行されたした。

「新線䞭原䞭也党集」を新党集ず呌ぶ慣わしですが
この新党集の線集方針によっお
それたで「未刊詩篇」ずしお時系列に敎理されおいたものが
䜜品の残存圢態原皿甚玙の皮類など圢ごずに分類され
分類埌にその䞭で制䜜順時系列に配列されお
「未発衚詩篇」ずしお再構築されたした。

たずえば「早倧ノヌト」には
幎から幎に制䜜された詩篇が蚘されおありたす。
たずえば「草皿詩篇幎―幎」には
幎から幎に制䜜された詩篇がたずめられおいたす。
この䞡者を分解しお時系列で詩篇を配列した「未刊詩篇」旧党集の考え方を修正したのです。

◇

未発衚詩篇の制䜜は
䞭原䞭也の詩人掻動の党幎代にわたっお残されおありたす。

䞭には
なぜこの䜜品が発衚されなかったのかず思える
名䜜が犇ひしめいおいたすから
「山矊の歌」の詩人、「圚りし日の歌」の詩人ずいうむメヌゞではずらえきれない
別の詩人の盞貌かおを芋るこずができたす。

◇

「未発衚詩篇」は
京郜時代のダダむズム詩からはじたりたす。

ダダ手垖幎―幎

「ダダ音楜の歌詞」
りワキはハミガキ
りワバミはりロコ

オハグロは劖怪
䞋痢はトブクロ

ノヌト幎―幎

「想像力の悲歌」
その日蝶々の萜ちるのを
倕の颚がみおいたした

「春の倕暮」
ああ、案山子はなきか――あるたい
銬嘶いななくか――嘶きもしたい

題を附けるのが無理です
寺院の壁にトンボがずたった

テンピにかけお
テンピにかけお
焌いたろか
あんなヘナチョコ詩人の詩
癟科蟞兞を匕き廻し
鳥の名や花の名や
みたこずもないそれなんか
ひっぱり出しお曞いたっお
――だがそれ皋想像力があればね――
やい
いったい䜕が衚珟出来たした
自棄やけのない詩は
神の詩か
凡人の詩か
そのどっちかず僕が決めたげたす

酒
蜘蛛は五月雚さみだれに逃げ堎を倱いたした

犬が骚を  

叀る摺れた)
ガラスを舐なめお
蠅を気にかけぬ

ツッケンドンに
鳥の矜はね斜はすに空ぞ  

雀の声は䜕ずいう生唟液ナマツバキだ

成 皋
蛙が鳎いお
䞀切がオヌダンの悲哀だ

「真倏昌思玢」
畳をポントケサンでたたいたら蝿が逃げお
声楜家が珟れた 

「冬ず孀独ず」
私が路次ろじの角に立った時小犬が走った

◇

ここたでが「ノヌト」の䞭の京郜時代の䜜品です。

◇

「ダダ音楜の歌詞」の「りワバミ」は蛇のこず。
飲兵衛のんべえ酒奜きの倫婊のこずを「うわばみ倫婊」などず蚀うこずがありたす。

◇

テンピにかけおは党行を匕きたした。
「ぞなちょこ詩人」を
ろくすっぜ知らないのに鳥や花の名前を蟞曞から匕っぱるやからず批刀した詩です。
花鳥颚月ぞのダダむストのスタンスが述べられおいお面癜いので。

◇

前埌の詩句を排陀するず

りワバミ
劖怪
蝶々
銬
トンボ
é³¥
蜘蛛
犬
蠅
é³¥
雀
蛙
蝿
小犬
――ずいうような動物が珟われたこずになりたす。

぀づく

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2013幎2月14日 (朚)

ひずくちメモ鳥が飛ぶ虫が鳎く・䞭原䞭也の詩「生前発衚詩篇」から

前回から぀づく
 
䞭原䞭也が発衚公開した詩篇は、
詩集「山矊の歌」は生前発衚、
詩集「圚りし日の歌」は没埌発衚、
詩集のほかに新聞・雑誌詩誌に発衚された詩篇は「生前発衚詩篇」ずしお敎理されおいたす。

この「生前発衚詩篇」に珟われる動物を列挙しおいきたす。
短歌を陀きたす。

◇

「暗い倩候二・䞉」
犬が吠える、虫が鳎く、
   畜生ちくしょう おたえ達には瀟亀界も䞖間も、
ないだろ。着物䞀枚持たずに、
   俺も生きおみたいんだよ。

――やい、豚、寝ろ

赀ン坊の泣声や、おひきずりの靎の音や、
昆垃や烏賊するめや掟玙はながみや銖巻や、

「倏ず私」
真ッ癜い嘆なげかいのうちに、
海を芋たり。鎎かもめを芋たり。

「寒い」
小鳥も啌なかないくせにしお
犬なぞ啌きたす颚の䞭。

「童 女」
飛行機虫の倢をみよ、
クリンベルトの倢をみよ。

眠れよ、眠れ、よい心、
おたえの県たなこは、昆虫だ。

「秋を呌ぶ雚」
秋を告げる雚は、倜明け前に降り出しお、
窓が癜む頃、鶏の声はそのどしゃぶりの䞭に起ったのです。

「北沢颚景」
 僕は出掛けた。僕は酒堎にいた。僕はしたたかに酒をあおった。翌日は、おかげで空が真空だ
った。真空の空に鳥が飛んだ。
 扚さお、悔恚かいこんずや  十䞀月の午埌䞉時、空に揚あがった凧たこではない
か 扚、昚日の倕べずや、鎫しぎが鳎いおたずいうこずではないか

「ひからびた心」
ひからびたおれの心は
そこに小鳥がきお啌なき
其凊そこに小鳥が巣を䜜り
卵を生むに適しおいた

「雚の朝」
䞊草履うわぞうりは冷え、
バケツは雀の声を远想し、
雚は沛然はいぜんず降っおいる。

「道化の臚終Etude Dadaistique」
君ら想おもわないか、倜毎よごず䜕凊どこかの海の沖に、
火を吹く韍りゅうがいるかもしれぬず。

雲雀ひばりは空に 舞いのがり、
小児しょうにが池に 萜っこった。

どうぞ皆さん僕ずいう、
はおなくやさしい 痎呆症ちほうしょう、
抑揚よくようの神の 母無おやなし子、
岬の浜の 䞍死身貝ふじみがい、

「倏」
戞倖そずでは蝉がミンミン鳎いた。

「初倏の倜に」
オダ、蚊が鳎いおる、たたもう倏か――

◇

「童女」の「飛行機虫」がどのような虫かはわかっおいたせん。
ゲンゎロりずかアメンボの類であろうずいう読みがありたす。
「クリンベルト」もわかっおいない語圙ごいの䞀぀です。
グリヌン・ベルトずかクリヌン・ベルトずか。
想像しお読むほかに手はありたせん。

「道化の臚終Etude Dadaistique」の「䞍死身貝ふじみがい」は、
詩人独特の「喩」たずえですから実際には存圚しないものですが
「貝」ずいう動物であるこずは確かなので
ここには入れおおきたした。

◇

「生前発衚詩篇」は
昭和幎制䜜掚定の「暗い倩候二、䞉」が最も叀く
昭和幎制䜜の「倏日静閑」が最も新しく
この期間に䜜られた詩が時系列で通芧できるこずになりたす。
もっずも「穎あき状態」ではありたすが。

◇

死去する幎の昭和幎制䜜の詩「ひからびた心」や「倏」などには
たるで自己の死を予感しおいたかのような
死ずの芪近があっお息を飲たずにいられたせん。
ホラホラ、これが僕の骚だ、ずはじたる有名な「骚」が昭和幎の制䜜です。

◇

動物だけを列蚘すれば

虫
豚
昆垃
烏賊するめ
鎎かもめ
小鳥
飛行機虫
昆虫
鶏
é³¥
鎫しぎ
小鳥
雀
韍りゅう
雲雀ひばり
䞍死身貝ふじみがい、
蝉
蚊
――ずなりたす。

傟向があるかどうか。
鳥類が倚いような気もしたすが。

぀づく

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2013幎2月13日 (æ°Ž)

ひずくちメモ鳥が飛ぶ虫が鳎く・䞭原䞭也の詩「圚りし日の歌」から

前回から぀づく

䞭原䞭也の詩に珟われる鳥獣虫魚動物は
「圚りし日の歌」ではどのようであるかを次に芋おいきたす。
配列順に行行を远うだけで
新しい発芋に繋぀ながるこずもたたにはありたす。

◇

詩人自らが「圚りし日の歌」巻末の埌蚘で曞いおいるように
「圚りし日の歌」には「山矊の歌」以埌に発衚したものの過半数が収められおいたす。

ずいうこずは、「圚りし日の歌」の残りの半数近くは
「山矊の歌」以埌のものではなく
「山矊の歌」の䞭の詩篇ず同じ時期に䜜られたものずいうこずでもありたす。

たずえば「月」「春」「倏の倜」などはかなり叀くに䜜られた䜜品で
これらは倧正幎から幎の制䜜ず掚定されおいたす。

◇

「含 矞はじらい」
おりしもかなた野のうえは
あすずらかんのあわい瞫ぬう 叀代の象の倢なりき

「青い瞳」
陜ひは霧きりに光り、草葉くさはの霜しもは解け、
遠くの民家に鶏ずりは鳎いたが、

「䞉歳の蚘憶」
柿の朚いっぜんある䞭庭は、
土は枇杷びわいろ 蝿はえが唞なく。

皚厠おかわの䞊に 抱えられおた、
するず尻から 蛔虫むしが䞋がった。
その蛔虫が、皚厠の浅瀬で動くので
動くので、私は吃驚びっくりしちたった。

「春」
春は土ず草ずに新しい汗をかかせる。
その汗を也かそうず、雲雀ひばりは空に隲あがる。

倧きい猫が頞ふりむけおぶきっちょに
䞀぀の鈎をころばしおいる、
䞀぀の鈎を、ころばしお芋おいる。

「幌獣の歌」
黒い倜草深い野にあっお、
䞀匹の獣けものが火消壺ひけし぀がの䞭で
燧石ひうちいしを打っお、星を䜜った。
冬を混ぜる 颚が鳎っお。

獣はもはや、なんにも芋なかった。
カスタニェットず月光のほか
目芚たすこずなき星を抱いお、
壺の䞭には冒瀆がうずくを迎えお。

雚埌らしく思い出は䞀塊いっかいずなっお
颚ず肩を組み、波を打った。
ああ なためかしい物語――
奎隷どれいも王女ず矎しかれよ。

     卵殻らんかくもどきの貎公子の埮笑ず
     遅鈍ちどんな子䟛の癜血球ずは、
     それな獣を怖がらす。

黒い倜草深い野の䞭で、
䞀匹の獣の心は燻くすぶる。
黒い倜草深い野の䞭で――――
倪叀むかしは、独語どくごも矎しかった  

「冬の日の蚘憶」
昌、寒い颚の䞭で雀すずめを手にずっお愛しおいた子䟛が、
倜になっお、急に死んだ。

雀はどうなったか、誰も知らなかった。

「冬の明け方」
残のこんの雪が瓊かわらに少なく固く
枯朚の小枝が鹿のように睡ねむい、

烏からすが啌ないお通る――
庭の地面も鹿のように睡い。

「冬の倜」
かくお倜よは曎ふけ倜は深たっお
犬のみ芚めたる冬の倜は
圱ず煙草ず僕ず犬
えもいわれないカクテヌルです

「秋の消息」
陜光ひかりに廻めぐる花々や
物蔭ものかげに、すずろすだける虫の音ねや

「秋日狂乱」
ゞオゲネスの頃には小鳥くらい啌ないたろうが
きょうびは雀すずめも啌いおはおらぬ

蝶々はどっちぞずんでいったか
今は春でなくお、秋であったか

「倏の倜に芚めおみた倢」
グランド繞めぐるポプラ竝朚なみきは
蒌々あおあおずしお葉をひるがえし
ひずきわ぀づく蝉しぐれ

「雲 雀」
ひねもす空で啌なきたすは
ああ 雲の子だ、雲雀奎ひばりめだ

ピヌチクチクず啌きたすは
ああ 雲の子だ、雲雀奎だ

「初倏の倜」
たた今幎こんねんも倏が来お、
倜は、蒞気じょうきで出来た癜熊が、
沌をわたっおやっおくる。

薄暮の䞭で舞う蛟がの䞋で
はかなくも可憐な顎をしおいるのです。

「北の海」
海にいるのは、
あれは人魚ではないのです。

「閑 寂」
板は冷たい光沢぀やをもち、
小鳥は庭に啌いおいる。

土は薔薇色ばらいろ、空には雲雀ひばり
空はきれいな四月です。

「お道化うた」
星も降るよなその倜さ䞀ず倜、
虫、草叢くさむらにすだく頃、

「思い出」
煉瓊工堎は音ずおもなく
裏の朚立で鳥が啌いおた

鳥が啌いおも煉瓊工堎は、
ビクずもしないでゞッずしおいた
鳥が啌いおも煉瓊工堎の、
窓の硝子は陜をうけおいた

朚立に鳥は、今も啌くけど
煉瓊工堎は、朜ちおゆくだけ

「残 暑」
畳の䞊に、寝ころがう、
蝿はブンブン 唞うなっおる

芚めたのは 倕方ちかく
ただかなかなは 啌いおたけれど

「蜻蛉に寄す」
あんたり晎れおる 秋の空
赀い蜻蛉ずんがが 飛んでいる

「ゆきおかえらぬ」
さおその空には銀色に、蜘蛛くもの巣が光り茝いおいた。

「䞀぀のメルヘン」
さお小石の䞊に、今しも䞀぀の蝶がずたり、
淡い、それでいおくっきりずした
圱を萜ずしおいるのでした。
やがおその蝶がみえなくなるず、い぀のたにか、
今迄いたたで流れおもいなかった川床に、氎は
さらさらず、さらさらず流れおいるのでありたした  

「たた来ん春  」
おもえば今幎の五月には
おたえを抱いお動物園
象を芋せおも猫にゃあずいい
鳥を芋せおも猫だった
最埌に芋せた鹿だけは
角によっぜど惹かれおか
䜕ずも云わず 眺めおた

「月の光 その二」
森の䞭では死んだ子が
蛍のように蹲しゃがんでる
 
「春日狂想」
风売爺々あめうりじじいず、仲よしになり、
鳩に豆なぞ、パラパラ撒たいお、

銬車も通れば、電車も通る。
たこずに人生、花嫁埡寮はなよめごりょう。

「蛙 声」
倩は地を蓋おおい、
そしお、地には偶々たたたた池がある。
その池で今倜䞀ひず倜よさ蛙は鳎く  
――あれは、䜕を鳎いおるのであろう

その声は、空より来きたり、
空ぞず去るのであろう
倩は地を蓋い、
そしお蛙声あせいは氎面に走る。

よし歀この地方くにが湿最し぀じゅんに過ぎるずしおも、
疲れたる我等われらが心のためには、
柱は猶なお、䜙りに也いたものず感おもわれ、

頭は重く、肩は凝こるのだ。
さお、それなのに倜が来れば蛙は鳎き、
その声は氎面に走っお暗雲あんうんに迫る。
 
◇

「北の海」の「人魚」をここに茉せるのには躊躇ちゅうちょがありたしたが
半身が魚ずいうこずで入れたした。
「サむレン」を入れなかったのず矛盟するようですが
たいした理由はありたせん。
人魚は普通に「動物のような感じ」もあるかなずいう芪近感で。
死児の亡霊や劖粟などは採取したせんでした。

◇

「幌獣の歌」「蛙声」は党行を茉せたした。
タむトルに動物を䜿っおいるものはほかにもありたすが
内容にも詩人の「意味付䞎」が感じられるからです。

◇

ややめずらしいものでは
「あすずらかんず象」の出おくる「含 矞はじらい」
「蛔虫むし」の出おくる「䞉歳の蚘憶」。

「あすずらかん」はアストラカンで
ロシアのアストラハン地方で産出される子矊の毛皮のこずです。
詩人は「矊」には特別の関心をもち
第詩集のタむトルを「山矊の歌」ずしお
その䞭に章題「矊の歌」を蚭け
芪友・安原喜匘ぞの献呈詩を「矊の歌」ずしたした。

詩人が矊幎ひ぀じどしの生たれであり
「神の子矊」や「スケヌプ・ゎヌト」を名乗るのが気に入っおいたこずも知られおいたす。

「蛔虫むし」ずいうのは回虫のこずで
「蚘憶以前」であるはずの歳の時の隣家の匕っ越しが
寂寥ずか恐怖ずか入り混じっお蚘憶に残ったこずが詩になりたした。
回虫を詩のモチヌフに䜿うなんお
めったにお目にかかれたせん。

◇

前埌の詩句を排陀するず

あすずらかん
象
鶏ずり
蝿はえ
蛔虫むし
雲雀ひばり
猫
獣けもの
雀すずめ
鹿
烏からす
鹿
犬
虫
小鳥
雀すずめ
蝶々
蝉
雲雀奎ひばりめ
癜熊
蛟が
人魚
小鳥
雲雀ひばり
虫
é³¥
蝿
かなかな
蜻蛉ずんが
蜘蛛くも
蝶
象
猫にゃあ
é³¥
鹿
蛍
鳩
銬車
蛙
――ずいうこずになりたす。

぀づく

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2013幎2月12日 (火)

ひずくちメモ鳥が飛ぶ虫が鳎く・䞭原䞭也の詩「山矊の歌」から

「山矊の歌」の詩に珟われる鳥獣虫魚動物を芋おいきたす。

「深倜の思い」
虫の飛亀ずびかう梢こずえのあたり、
舐子おしゃぶりのお道化どけた螊り。
波う぀毛の猟犬芋えなく、
猟垫は猫背を向むこうに運ぶ。

「垰 郷」
怜えんの䞋では蜘蛛くもの巣が
    心现そうに揺れおいる

「凄じき黄昏」
――雑魚ざこの心を俟たのみ぀぀。

「逝く倏の歌」
山の端はは、柄すんで柄んで、
金魚や嚘の口の䞭を枅くする。
飛んで来るあの飛行機には、
昚日私が昆虫の涙を塗っおおいた。

「倕 照」
少児しょうにに螏たれし
貝の肉。

「枯垂の秋」
むこうに芋える枯は、
蝞牛かた぀むりの角぀のでもあるのか

「ためいき」
神様が気局きそうの底の、魚を捕っおいるようだ。
空が曇ったら、蝗螜いなごの瞳が、砂土すな぀ちの䞭に芗のぞくだろう。

「倱せし垌望」
今はた歀凊ここに打䌏うちふしお
  獣けものの劂くは、暗き思いす。

「みちこ」
午睡ごすいの倢をさたされし
牡牛おうしのごずも、あどけなく

「汚れっちたった悲しみに  」
汚れっちたった悲しみは
たずえば狐の革裘かわごろも

「無 題」
我利がり々々で、幌皚な、獣けものや子䟛にしか、
圌女は出遇であわなかった。おたけに圌女はそれず識らずに、

「曎くる倜」
その䞊に月が明るみたす、
ず、犬の遠吠ずおがえがしたす。

「秋」
秋蝉あきぜみは、もはやかしこに鳎いおいる、
草の䞭の、ひずもずの朚の䞭に。

草がちっずもゆれなかったのよ、
その䞊を蝶々ちょうちょうがずんでいたのよ。

あの人ゞッず芋おるのよ、黄色い蝶々を。

「修矅街茓歌」
私の青春も過ぎた、
――この寒い明け方の鶏鳎けいめいよ

いた茲ここに傷぀きはおお、
――この寒い明け方の鶏鳎よ
おお、霜にしみらの鶏鳎よ  
「矊の歌」
そのやさしさは氟濫はんらんするなく、かずいっお
鹿のように瞮かむこずもありたせんでした

「憔 悎」
青空を喫すう 閑ひたを嚥のむ
蛙かえるさながら氎に泛うかんで

◇

以䞊「山矊の歌」に登堎する動物です。
文脈を無芖しお
動物だけを列蚘しおみるず  。

銬
鰯いわし)
牡蠣殻かきがら
犬
小鳥
黒銬くろうた
軟䜓動物
虫
猟犬
蜘蛛くも
雑魚ざこ
金魚
昆虫
貝
蝞牛かた぀むり
魚
蝗螜いなご
獣けもの
牡牛おうし
狐
獣けもの
犬
秋蝉あきぜみ
蝶々ちょうちょう
鶏鳎けいめい
鹿
蛙かえる
――ずなりたす。

◇

なんず、「山矊の歌」の最終章の詩に
「蛙」が登堎しおいたした
「圚りし日の歌」の最終詩「蛙声」ずすでにかすかに呌応しおいたす

远蚘

埌で調べたしたら
「憔悎」は「山矊の歌」䞭で
最も新しい制䜜昭和幎月ずいうこずがわかりたした。

詩集巻末郚に
蛙声に擬ぎした詩人ずしおのメッセヌゞを盛り蟌むずいうポリシヌ線集意図が
「山矊の歌」の線集時に発想され
これは「圚りし日の歌」の線集にも生かされたのです。
そのこずを物語る蚌拠の䞀぀がここにありたした。

぀づく

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2013幎2月11日 (月)

ひずくちメモ鳥が飛ぶ虫が鳎く・䞭原䞭也の詩

䞭原䞭也の詩をただ読んでいない人
少しは読んだこずのある人
これから初めお読もうずしおいる人
もう䞀床じっくり読んでみたい人
読もう読もうず思いながらもきっかけを掎めなかった人
文庫詩集を買った人
本棚の奥にしたい蟌んである人
むかし教科曞で読んだだけの人




◇

ビギン・ワンスモア
ビギン・ビギナヌ

◇

こんな感じで「ひずくちメモ」を続けおいきたす。
「色の色々」「オノマトペ」に続いおは
「鳥が飛ぶ 虫が鳎く 䞭原䞭也の詩」ず題しお
䞭原䞭也の詩に珟われる動物を芋たす。

角川版党集の配列にしたがっお
鳥獣虫魚ちょうじゅうちゅうぎょを順にピックアップするだけのこずですが
気が向くたた赎おもむくたたに
感想を入れたり入れなかったりのメモに過ぎたせんから
お気軜お気楜にお読み䞋さい。

◇

ではさっそく「山矊の歌」から芋おいきたす。
珟代かな遣いで衚蚘したす。
珟われ方を芋るために
行単䜍で、時には連を䞞ごず取り䞊げるケヌスもあるでしょう。

◇

「春の日の倕暮」
銬嘶いななくか――嘶きもしたい

「サヌカス」
芳客様はみな鰯いわし)
  咜喉のんどが鳎りたす牡蠣殻かきがらず

「春の倜」
埋うずみし犬の䜕凊いずくにか、
  蕃玅花色さふらんいろに湧わきいずる
      春の倜や。

「朝の歌」
小鳥らの うたはきこえず
  空は今日 はなだ色らし、

「臚 終」
秋空は鈍色にびいろにしお
黒銬くろうたの瞳のひかり

「秋の䞀日」
軟䜓動物のしゃがれ声にも気をずめないで、
玫の蹲しゃがんだ圱しお公園で、乳児は口に砂を入れる。

◇

「秋の䞀日」の冒頭連に
こんな朝、遅く目芚める人達は
戞にあたる颚ず蜍わだちずの音によっお、
サむレンの棲む海に溺れる。
――ずある「サむレン」はギリシア神話やホメロスの「オデッセむア」に登堎する䞊半身が女性、䞋
半身が鳥の姿をした魔物女。「鳥獣虫魚」や動物の類ではありたせん。「セむレヌン」ずか「シレ
ヌヌ」ずかず蚳されるこずもありたす。りヌりヌりヌの音を出す消防車のサむレンの語源でもあり、
神話のサむレンは矎しい声で歌い、船人を誘惑したす。オデッセりスがサむレンの誘惑を避けるた
めに自分をマストに瞛り぀けお通り過ごしたずいう有名な話が䌝わりたす。

◇

初回なので今回はこれたで。

぀づく

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その他のカテゎリヌ

0001はじめおの䞭原䞭也 0011䞭原䞭也のダダむズム詩 001はじめおの䞭原䞭也ダダ脱皮 0021はじめおの䞭原䞭也長男文也の死ず詩人の死 011䞭原䞭也「山矊の歌」の䞖界 012䞭原䞭也「山矊の歌」の䞖界「少幎時」以埌 013䞭原䞭也「山矊の歌」の䞖界「汚れっちたった悲しみに  」の呚蟺 014䞭原䞭也「山矊の歌」の䞖界「矊の歌」から「いのちの声」ぞ 0168生きおいるうちに読んでおきたい䞭也の名䜜 0169折りにふれお読む名䜜・遞 017䞭原䞭也芞術論芚曞 018䞭原䞭也「生掻者」の詩矀 019䞭原䞭也「癜痎矀」のころ 021はじめおの䞭原䞭也圚りし日の歌 022䞭原䞭也絶唱「圚りし日の歌」 023再掲茉絶唱「圚りし日の歌」 024「圚りし日の歌」曇倩ぞ 031䞭原䞭也生前発衚詩篇 041䞭原䞭也未発衚詩篇のすべお 051䞭原䞭也が蚳したランボヌ 052䞭原䞭也ず「ランボヌずいう事件」 054䞭原䞭也ずベルレヌヌ 056䞭原䞭也ずラフォルグ 057䞭原䞭也ず「四季」 058䞭原䞭也の同時代 058䞭原䞭也の同時代䞉奜達治の戊争詩 058䞭原䞭也の同時代立原道造の詩を読む 058䞭原䞭也の同時代萩原朔倪郎「氷島」論を読む 058䞭原䞭也の同時代萩原朔倪郎ず北原癜秋 058䞭原䞭也の同時代諞井䞉郎 059䞭原䞭也の手玙終生の友・安原喜匘ぞ 061䞭原䞭也の春の詩コレクション 063䞭原䞭也の秋の詩名䜜コレクション 064面癜い䞭也の日本語 065䞭原䞭也・雚の詩の名䜜コレクション 066䞭原䞭也・朝の詩の名䜜コレクション 067䞭原䞭也・倜の歌コレクション 068䞭原䞭也・倕ゆうべの詩コレクション 071䞭原䞭也が䜿ったオノマトペ 072䞭原䞭也が䜿った色々な色 073䞭原䞭也の詩に出おくる人名・地名 074䞭原䞭也の詩に珟れる動物たち 075䞭原䞭也の詩に珟れる怍物たち 081さたざたな䞭也䜓隓・䞭也像 091䞭原䞭也の鎌倉 092䞭原䞭也の鎌倉2 110珟代詩の長女茚朚のり子の䞖界 111戊埌詩の海ぞ茚朚のり子の案内で山之口貘 112戊埌詩の海ぞ茚朚のり子の案内で岞田衿子 113戊埌詩の海ぞ茚朚のり子の案内で滝口雅子 114戊埌詩の海ぞ茚朚のり子の案内で石垣りん 115戊埌詩の海ぞ茚朚のり子の案内で谷川俊倪郎 116戊埌詩の海ぞ茚朚のり子の案内で高良留矎子 117戊埌詩の海ぞ茚朚のり子の案内で黒田䞉郎 121新川和江・抒情の源流 122新川和江の呚蟺朚原孝䞀 125新川和江・抒情の源流その埌珟代詩そぞろ歩き 131珟代詩の蚌蚀者・金子光晎を読む 190合地舜介の思い出シネマ通 191合地舜介の思い出シネマ通 199詩のこころ ニュヌス