Field
BUSINESS REPORT
DBJのテーマ
都市開発DBJ
DAISUKE ITO
伊藤 大介
PROFILE
アセットファイナンス部/2017年入行 ※取材当時
入行当初は企業金融第1部に配属。釣り具メーカーや食品会社など多様な製造業向けの投融資案件を担当して経験を積む。2019年、現部署に異動。需要が拡大する大規模物流施設のファイナンスを主に担当する。
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DBJのテーマ
DAISUKE ITO
伊藤 大介
PROFILE
アセットファイナンス部/2017年入行 ※取材当時
入行当初は企業金融第1部に配属。釣り具メーカーや食品会社など多様な製造業向けの投融資案件を担当して経験を積む。2019年、現部署に異動。需要が拡大する大規模物流施設のファイナンスを主に担当する。
切っても切り離せない都市開発とDBJ
―― 都市開発における課題について、どうお考えですか?
経済・社会活動の基盤である都市は、日本の国際競争力に広く影響を及ぼすものといえます。足もとでは、戦後整備されてきた全国の都市基盤が次々と更新期を迎えていますが、都市開発・再開発は非常に事業規模が大きく、多額の資金と多様なプレーヤーを必要とします。そのため、その更新を円滑に進めるためには金融市場・不動産市場の活性化が不可欠です。また、単なる更新では十分ではありません。少子高齢化やデジタル化といったメガトレンドを踏まえた次世代の都市を構築することが求められます。その中でも、特に社会的潮流であるESGやカーボンニュートラルは、都市開発分野においても重要なキーワードとして注目を集めています。実は世界のCO2間接排出量の約4割は不動産建築部門が占めているのです。ハード面だけでなく、ESGといったソフト面が不動産・都市の競争力を測るうえでより意味を持つ時代といえます。
さらに、社会構造の変化に合わせて都市や不動産に求められる機能自体も変化を続けていますので、たとえば交通や物流などを含めた都市機能のあるべき姿を、俯瞰的な視点に立って描いていくことが重要だと考えています。
―― DBJはこれまで、都市開発に対してどのような取り組みを行ってきたのですか?
DBJは、1960年代から高度・安定成長期の都市開発事業に対する長期ファイナンス、90年代には当時黎明期であった不動産証券化市場への参画、さらに2000年代初頭の国内REIT※市場創設後は、市場拡大に向けた投融資とともに自らも2016年に私募(非上場)REITを立ち上げました。このように、不動産市場の成長や変革に合わせてその金融手法を多様化させながら、都市開発事業を継続的に支援してきています。最近、都市部ではいくつもの大規模な再開発プロジェクトが計画されていますが、このような巨額の資金が必要となる再開発プロジェクトを手がける事業会社に対し、リスクマネーを供給することも重要な役割の一つです。
※REIT:不動産投資信託
―― 都市開発におけるDBJの特徴として、どのようなものがあるのでしょうか?
今述べたとおり、時代に先駆けて新たな金融手法に取り組み、現在では長期融資をはじめとして、仕組み金融(アセットファイナンス)、投資やアセットマネジメントまで、幅広い金融ソリューションを持ち合わせています。
また、大規模な都市開発・再開発のプロジェクトは、その多くが行政との連携のもとに進められていきます。このような開発スキームにおいて、中立的な立場で官と民との間に立ち、つなぐ役割を果たすことができるDBJの存在は非常に重要です。
―― いくつか具体的な取り組み事例を教えてください。
事業会社が取り組む都市開発プロジェクトにリスクマネーを供給した例としては、東京スカイツリーを核とした地域一体開発プロジェクトや、虎ノ門ヒルズエリアの再開発プロジェクトがあげられます。官民連携の一例としては、リーマンショック後の世界的な金融危機による国内金融市場の混乱・不動産市況の悪化を受け、国内上場REIT市場への資金供給を通じて不動産価格の下落を防ぐため、官民ファンド(不動産市場安定化ファンド)を創設したことが象徴的でした。
ほかにDBJならではの付加価値を提供した取り組みでいうと、「日比谷パークフロント」の再開発事業があげられます。これは不動産事業者と協働してオフィスビルを再開発したプロジェクトであり、このようにDBJ自ら不動産開発を推進するケースもあります。このビルでは、建物の内外に多くの緑を配置して生物多様性の保全に取り組んでいるほか、最適なBCP(事業継続計画)対策を備えているなど、これからのオフィスビルに求められる機能が多分に盛り込まれています。
―― そのほか、DBJならではの取り組みはありますか?
代表的な取り組みとしては、「DBJ Green Building認証」があげられます。環境・社会への配慮がなされた不動産(グリーンビル)の普及とその不動産を所有・運営する事業者の支援を目的として2011年に創設された制度であり、不動産分野におけるESG投資の拡大に大きく貢献しています。実は、先に述べた「日比谷パークフロント」は、DBJ Green Building認証制度において「国内トップクラスの卓越した環境・社会への配慮がなされたビル」として認証を取得しているオフィスビルなのです。
社会の変化とともに
都市に求められる新しい価値とは?
―― 最近の都市開発において特徴的な変化や傾向はありますか?
社会の変化に合わせた都市開発のトレンドというと、現在私が主に担当している物流施設が典型的な例でしょう。Eコマースの広がりとともに国内において物流の需要が急速に拡大しており、都市近郊に大規模で先進的な機能を備えた物流施設が次々と建設されています。このような物流施設開発はサプライチェーンの強化に加え、周辺地域の雇用創出にも貢献し、広義の意味では都市開発の一部を構成していると考えています。また、都市部においてもBCPへの対応を含めたインフラの再整備として、老朽化が進んだオフィスビル等をまとめて再開発するといった事例が増えています。
DBJが取り組む案件の種類も、かつてはオフィスビルや住宅といった伝統的な不動産が中心的でしたが、近年は人々の生活様式の変化に合わせ、物流施設やデータセンター、介護施設といった新しいタイプの不動産への取り組みを進めています。
―― 既存の不動産に関してはどうでしょうか?
足もとでは、コロナ禍などによる事業環境の変化とともに、事業の再編を進める企業が増加しています。このような動きの中で、自社で所有する不動産や土地を売却したり、あるいは資産としての価値を見直したりするなどのニーズが高まっています。DBJがもつお客様との幅広いネットワークと、これまで新たな金融手法のフロンティアを切り拓いてきた経験を活かしながら、不動産の流動化を活用して財務体質の健全化を目指すなど、既存の資産を有効活用する方法を積極的に提案しています。
ウィズ/アフター・コロナの
時代に向けて
物流の未来を見据えた取り組み
―― 伊藤さんが所属するアセットファイナンス部の役割を教えてください。
アセットファイナンス部では、高度な金融手法を駆使して、都市開発や不動産にかかる社会課題の解決を推進しています。その中で私は主に物流施設の案件に携わっています。
―― その物流施設とは、どのような不動産なのでしょうか?
分かりやすく言えば「倉庫」ですが、一般の方が想像するような平屋の空間ではなく、複層階からなる巨大な建造物で自動化など先進的な機能を備えた施設です。
国内でこのような物流施設が建設され始めたのは2000年代になってからですが、DBJでは物流分野における現在の社会ニーズや重要性を予見していましたので、その黎明期から民間の金融機関に先駆けて物流施設への投融資に取り組んできました。最近では、不動産分野の中でも特に成長領域として注目を集め、全国で多くの物流施設開発が進められています。
―― 物流施設における今後の課題は?
国内の物流施設については、すでに供給過剰ではないかという意見もありますが、DBJでは今後も需要が伸びる可能性はあると見込んでいます。その理由は、米国に比べると日本のEコマース普及率はまだ半分程度のため、市場のさらなる拡大が期待されるためです。また、日本の物流網のハブとして、既存の倉庫の老朽化対応や拠点分散などを踏まえたサプライチェーンの継続性の観点からも、さらなる開発が必要と考えています。
直近の課題としては、やはりコロナ禍の影響があげられます。私が担当した大規模物流施設の開発プロジェクトは、コロナが猛威を振るい始めた2020年冬にスタートしたのですが、先行きの不透明感から多くの金融機関は必ずしも融資に前向きでなく、資金調達が難航しました。そこで私は、その時点での物流施設の需給動向や今後の物流マーケットの可能性を分析し、ウィズ/アフター・コロナの時代においても物流施設の需要は伸びる余地が大きいという結論を導き出しました。そしてDBJが先頭に立ってアレンジャーとなり、複数の金融機関を集めたシンジケート・ローンを組成し、数百億円規模の融資案件をまとめました。これは目利き力を活かしてリスクテイクするDBJらしい取り組みだったと実感しています。
DBJにとって、“まちづくり”とは
―― 現在の課題に対して、どのように対応していますか?
昨今のサステナビリティへの関心の高まりとともに、企業におけるESGの取り組みに注目が集まっていますが、不動産分野は環境に与える影響が大きいにもかかわらず、国内における取り組みはまだ十分とはいえません。
この課題に対する次なる取り組みとして、DBJは事業会社とともに(株)Arc Japanを設立しました。Arc Japanでは、温室効果ガスや廃棄物の排出量等、国内の不動産における環境性能を“見える化”するためのデータプラットフォームを提供しています。これまでDBJ Green Building認証等で培った環境不動産のノウハウも活かしながら、新規事業の開発段階から深く関わっているところです。
―― 今後を見据えた先駆的な取り組みはほかにありますか?
最近、企業におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)への取り組みが注目を集めていますが、不動産分野においても最新のデジタル技術をいかに取り込むかが喫緊の課題になっています。DBJでは、この分野における最先端の情報やノウハウを獲得するためにProp Tech(不動産テック)に特化した米国のVC(ベンチャーキャピタル)に出資しています。今後は、このVCを通じて収集した知見を国内に環流させることで、日本の不動産ビジネスに新たな潮流を生み出したいと考えています。
―― 最後に、DBJだからこそ経験できる都市開発とはどのようなものか教えてください。
私たちは不動産の専門部署として、あらゆる不動産ファイナンスを担当していますので、オフィス、住宅、商業施設、物流施設やホテルなどといった各種物件の不動産流動化や開発事例等を、一気通貫してみることができます。さらに、投資案件やアセットマネジメント業務を通じて、事業者目線で不動産に携わる場面も増えてきています。
都市開発というと、ともすれば人々が生活する空間、身近な空間の創造のことばかりをイメージしてしまいがちです。これに対し、私が物流施設開発を都市開発の一部として捉えているように、社会の変容に合わせて人々がその時々に求める都市機能は何かと思いを巡らせ、整備していく。それこそが広義の意味での“まちづくり”であり、DBJの都市開発が向き合うテーマなのです。