中長期的なカーボンニュートラル実現という課題。
その着実な移行を支えるトランジション・ファイナンス。
小泉
環境負荷低減に向けて、海運業界においてDBJが取り組んでいるものの一つに「トランジション・ファイナンス」があるよね。もちろん最終的に目指す姿はカーボンニュートラルだけれど、一足飛びにそれを達成することはできない。そこで、ゴールまでの道のりを段階的に進んでいく、「移行=トランジション」の取り組みに対しても支援が必要になってくる。大手海運会社が内航に使用するLNGフェリー2隻に対し、DBJが国内初のシンジケーション式トランジション・ローン※を組成したのは、一つの好例かな。
※トランジション・ローン:「トランジション」に関する一定の要件を満たし、資金使途を特定したローン
鈴木
石油燃料後の新燃料・推進方式として、アンモニアや水素混焼、水素燃料電池等が様々取り挙げられているとはいえ、実証中の技術も多く、ネットゼロを達成できる船はいまだ社会実装されていない。そんな中で、従来型の重油燃料よりも3割ほどGHGの排出量が少ないLNGを燃料とする船は、まさにトランジションのための有効なソリューション。それをトランジション・ローンによって支援していくことは、目下、事業者から特に求められている取り組みだし、今後も地域の金融機関等と連携しながら推し進めていきたいね。
小泉
資金使途を限定したトランジション・ローンのほかに、資金使途を限定しないコーポレートファイナンスのような性質を持ったトランジション・リンク・ローンというものもある。お客様の取り組みに応じて、こうしたファイナンス手法を使い分けながら、海運業界の脱炭素に向けた移行戦略がいかにしっかりしたものであるかを外部にアナウンスすることで、他産業の取り組みの参考としてもらうことも、DBJが果たすべき大事な役割だね。
鈴木
同時に、そうした着実な移行を支えるアプローチとして、前例のないインフラ整備も必要だと思う。
小泉
たとえば鈴木君が担当として運営に携わっている、LNG燃料供給船を建造するプロジェクトかな。
鈴木
そう。2018年に設立されたエコバンカーシッピング(株)は、東京湾において船舶にLNG燃料を供給する企業で、DBJも資本参加している。ガソリン自動車の普及にガソリンスタンドが必要であるように、LNG燃料船の普及には、LNGバンカリング(燃料供給)拠点の整備が極めて重要。そこで同社は、LNGバンカリング船を建造することで、東京湾でのShip to Ship方式によるLNG燃料供給事業を展開しようとしているんだけど、これは同時に港湾としての国際競争力強化にも繋がると捉えている。
小泉
今後、LNG燃料船が世界中で普及したとしても、東京湾でLNG燃料を供給できなければ、外航商船が寄港しなくなってしまうかもしれないからね。
鈴木
それだけに港湾内のあらゆる場所で、あらゆる船に対応できるバンカリング船での燃料供給は、戦略的にも大きな意味を持っている。今はカーボンニュートラルに向けた移行期であるからこそ、僕たちは中長期的な視点に立ち、たとえ前例がなくても必要だと信じられるものに対しては、リスクマネーを含む適切な資金提供を通じて、そうした新しい取り組みを強力に後押ししていくことが重要だね。