オウム被害の滝本弁護士はなぜLGBT条例に反対か(2022年7月6日配信『産経新聞』)
- 2022/07/06
- 18:32
滝本太郎(たきもと・たろう)弁護士 オウム真理教被害対策弁護団に加わるなど同教団をめぐる裁判に長年関わり、脱会した元信者を支援する「カナリヤの会」の活動も続ける。65歳。 =令和4年6月、神奈川県大和市(菅原慎太郎撮影)
ちょっと待って!埼玉県LGBT条例案 滝本太郎弁護士インタビュー
性的少数者(LGBT)運動が盛り上がる中、埼玉県議会で自民党議員団が提出したLGBT条例案が議論を呼んでいる。男女の性別は生まれつきの性別ではなく、本人が決めるべきだという「性自認」の考え方などが「極端だ」と指摘されているためだが、中でも弁護士の滝本太郎氏は「女性の権利を侵害する」「性の無政府主義だ」と強く批判する。オウム真理教などカルト問題をライフワークにしてきた滝本弁護士が今なぜ、LGBT条例案に厳しい言葉を語るのか。真意を聞いた。(菅原慎太郎)
「女性の権利を侵害する」
――条例案に批判的な理由は?
「性別は自分で決めることができるという性自認の論理は問題がある。『多様性を尊重』『差別してはならない』というのは一見、いいことを言っているようだが、現実的には『女性』と自称する男性も社会は女性として扱わなければならないということ。例えばその人が女性トイレに入るのも認めなければならないということになる。これは女性の権利を無視し、安全・安心を脅かしている」
「海外ではトランスジェンダー女性(生まれつきの性別は男性、性自認は女性)が女子スポーツで他の女性選手を上回る成績を記録したり、女性刑務所で性トラブルを起こしたりしていることが問題となっている。同種の条例は他の自治体にもあるが、4月には英国で首相が問題是正に乗り出す姿勢も示しており、埼玉県議会は条例制定すべきではない。おそらく最終的には国の法律を作ろうというのが、性自認を掲げる『トランスジェンダリズム』の運動だろう。しかし、行き着く先はフェミニズムの終焉(しゅうえん)。昔は女性トイレはなかったが、女性運動でできた。そうした女性を守る仕組みが次々となくなれば、フェミニズムの成果も理念も骨抜きになる」
性自認の論理は「性の無政府主義だ」
――トランスジェンダリズムは「右派・保守派が批判している」といわれるが、フェミニズムはどちらかというと左派的な思想。政治の左右は関係なく批判すべき問題ということか
「本当にそうだね。これが大問題なのは、女性・男性の定義を変えてしまうから。自分で性別を決められることになると、生まれつきの性別を原則とする今の医療や統計、社会制度はめちゃくちゃになる。『性の無政府主義』だ。最後は崩壊せざるを得ないと思う」
――性同一性障害(最近は「性別不合」とも呼ばれる)の人たちは、こうした運動をどう考えるか
「私が知る団体の人たちは『迷惑な話だ』と言っていた。例えば性同一性障害の男性は自分に男性器があることに身体違和があり、これに苦しむ。その治療として性別適合手術があるのだが、トランスジェンダーの人には身体違和がない場合が多い。しかし、こうした運動は性同一性障害も『広義のトランスジェンダー』と呼び、一緒のものとして運動する。性同一性障害の人も考えはさまざまだが、運動が崩壊したとき、反作用で性同一性障害への偏見が強まることが心配」
――条例案には同性婚のような同性パートナーシップも盛り込まれている
「同性愛は自由だし、ほかに迷惑をかけるわけでもない。私は同性婚は認めていいと思う。ま、これについては、性自認の論理に反対する仲間の中でもみんな意見が違うけど」
――同性婚を認めないのは憲法違反と考えるか
「それについては違憲だとは思わない。憲法はもともと同性婚を想定していなかったし、婚姻を『両性の合意』で成立すると定める。男女がカップルになるのが自然だからでしょう。ただ、法律で同性婚を認めることは憲法は禁止していないと思う。同性愛では子供ができないから結婚は認められないというが、高齢者の夫婦も子はできない。子供ができようとできまいと、兄弟姉妹の間の結婚を認める人はいないだろう。同性婚への違和感が低くなってきたのなら法律で認めてもいいのでは」
カルトと闘った弁護士がなぜ?
――あなたは無差別テロや坂本堤弁護士殺害事件などを起こしたオウム真理教と闘い、自身も命を狙われた弁護士。カルト問題に詳しいイメージだが、なぜ今回のような問題に取り組むようになったのか
「友人の坂本弁護士が突然いなくなったことをきっかけにオウム事件と関わった。以来、カルト問題に対応することになったが、カルトは外部の人間との議論を遮断するなど、さまざまな問題があることを知った。昨年8月、性自認の問題点に気づき発言を始めたところ、いきなり『差別だ』『黙れ』と議論を封じようとする人たちがいた。これはおかしいと」
――LGBT問題に深く関心を持ったきっかけは
「昨年5月に、自民党の『LGBT理解増進法案』の国会提出が見送られたこと。私は性的少数者への『理解増進』の理念はいいことだと思うから、反対する自民党議員には批判的だった。ところが、その後、インターネットやSNSで、『法案』を支持する人たちには法制化すればトランス女性も女性トイレに入れると『公認』されると考える人が結構いることに気づき、これは問題だと」
「私もトランスジェンダーに同情するし、尊重すべきだと思う。仕事で差別されたり、日常生活で揶揄(やゆ)されたりすることはあってはならない。しかし、トイレなど女性スペースに入れるようにするかは別問題で、慎重な議論が必要だ。そう思ったから、同じ考えの女性たちと『女性スペースを守る会』という団体をつくったが、反発を受けている。メンバーは氏名をネット上で明かされる『身バレ』攻撃や電話などの嫌がらせを受けている。私は弁護士としてその防波堤役をしているつもりだ」
◇
■埼玉県のLGBT条例案 性の多様性尊重を理念に、自分を男性と認識するか女性と認識するかなどの「性自認」や性的指向による不当な差別的取り扱いを禁じる。県議会で審議中で7日に採決の見通し。
埼玉LGBT条例案、自民党内に広がる余波(2022年7月6日配信『産経新聞』)
埼玉県議会最大会派の自民党議員団が提出した性的少数者(LGBTなど)への理解増進を図る条例案は7日の本会議で採決され、可決、成立する見通しだ。地方議員が主導した動きではあるが、自民党を支える「岩盤保守層」の反発が根強い政策課題だけに、党所属国会議員らも神経をとがらせている。
自民党は昨年、同様の趣旨の法案の国会への提出を目指したが、党内保守派の懸念を背景に意見調整が難航し、提出を見送った経緯がある。
条例案をめぐり焦点になっているのは「性的指向または性自認を理由とする不当な差別的取り扱い」の禁止を掲げている点だ。何が「差別的」なのかが明示されていないため、女性の権利侵害などを招きかねないという意見もくすぶる。
国会への法案提出をめぐる党内の議論でも、ほぼ同じ内容の文案に批判が集中した。党関係者によると、党本部側では現在、「性的少数者への理解促進」を進める方向で仕切り直しの議論が進んでいる。
昨年の議論を蒸し返すかのような県議会の動きに、懸念を抱く党所属国会議員は少なくない。党県連に対しては、党本部の特命委員会の幹部を務める国会議員から、条例案の内容と検討の経緯に関する問い合わせもあったという。
党本部側での議論との不整合が生じることを懸念した県連側は、条例案の審議入り前、県議会会派の幹部に「もう少し時間をかけて検討してほしい」と伝えた。しかし、方向性が変わることなく審議は進んだ。
県連所属国会議員の一人は「『差別禁止』と『理解促進』は異なる。差別禁止が徹底されると、女子トイレなどの女性スペースが守られないのではないか」と懸念を口にした。(中村智隆)
埼玉県議会で自民がLGBT条例案 実は「反対87%」パブコメ結果を完全無視の内幕(2022年6月24日配信『デイリー新潮』)
条例案には「性自認」という文言への疑問などが寄せられたが…
参議院議員選挙が公示され、全国で熱い舌戦が繰り広げられる中、埼玉県議会で圧倒的多数を占める自民党会派が、今月29日にもいわゆるLGBT条例案を提出する。条例案には「何人も、性的指向又は性自認を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない」などの禁止条項が盛り込まれている。自民党埼玉県連は、条例案策定に反映するために「条例骨子案」を示し、事前に県民から広く意見を募集した。【椎谷哲夫/ジャーナリスト】
【写真】大阪「LGBTの駆け込み寺」に集う人々
ところが、今になっても、その結果は公表されていない。今回の意見募集は国の行政機関が行政手続法に基づいて行う意見公募ではないものの、公党が公募したものであり、県民からすればその意味合いは、いわゆるパブリックコメント(パブコメ)と変わらない。
取材を重ねるうちに分かってきたのは、寄せられた意見の圧倒的多数が条例骨子案に反対という結果だった。筆者が入手した内部資料によると、今回のパブコメには4747件が寄せられ、「反対」が全体の87%近い4120件を占めたのに対し、「賛成」はわずか508件しかなかった。
関係者によると、反対の意見を出した人の中には性的マイノリティの人も少なくなく、「性自認」という文言への疑問や、「不当な差別的取り扱いをしてはならない」などの表記に対する懸念が多く寄せられたという。
しかし、議会に提出される条例案にはこうした声はまったくといっていいほど反映されていない。拙速を懸念する県議の意見が条例制定を急ぐ執行部に押し切られる形になったと見られ、議会最終日(7月7日)に可決される可能性が出ている。
条例案が性犯罪の温床となるおそれ 「無い」ではなく「小さい」!?
初めに断っておきたいが、筆者は性的マイノリティへの「差別」や「偏見」は憎むべきものであると考えている。実際にLGBTの当事者である友人や知人もおり、人々の理解を進めるための法的措置自体を否定するつもりはないことも付しておきたい。
埼玉県議会の自民党会派が議会に提出する予定の条例案の名称は「埼玉県の多様性を尊重した社会づくり条例」。内容は骨子案とほぼ同じで、「多様性に係る理解増進」という表現が「多様性を尊重した社会づくり」に変わった。
その中で議論になっているのは、第4条の「差別的取扱い等の禁止」の中にある「何人も、性的指向又は性自認を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない」との規定だ。
内部資料によると、県議団の幹部らは慎重派を説得するためもあって、パブコメで指摘された懸念に反論する“想定問答”を作成した。
「(性自認)定義が曖昧で、性自認の申告がそのまま認められると犯罪に悪用される恐れがある」などの懸念に対しては、「自己申告のあった性自認をそのまま認めなければならないという内容規範ではない」などとした上で、「条例案が性犯罪の温床となるおそれは小さい」としている。これについては、「温床となるおそれは無い」となっていないことについて不安視する声もある。
また、「性自認」の定義については、「自己の性別についての主観的な認識を『性自認』と認定した」とする見解を示している。法務省は「性自認(性同一性)とは、自分の性をどのように認識しているのか、どのような性のアイデンティティ(性同一性)を自分の感覚として持っているかを示す概念」とホームページで定義しており、「主観的な認識」という文言までは使っていない。
「(パブコメ結果を公表せず)理解が進んでいないから条例が必要だ」とうそぶく県議
寄せられたパブコメでは、条例の「不当な差別的取扱い」の表記について、「対象とされる範囲が不明確で、憲法で保障される表現の自由を侵害する恐れがある」との懸念が出されたほか、「女性であると性自認している戸籍上の男性が、更衣室などの女性用スペースに入ることを禁じるのは条例違反か」などの疑問も提示された。
これについては、「条例案は具体的な施策の内容を規定するものではなく、県の施策の基本方針を明示するもの」とし、「(何が不当な差別的取扱に当たるかは)県が具体的な施策を実施する中で示される」と説明している。これについては、県議からも「県に丸投げで良いのか。条例案を作った側の明確な見解が必要ではないか」と危惧する声が出ているという。
ところで、自民党埼玉県連がネット上で意見を募集したのは今年4月1日から5月2日の約1カ月間。案内文には「多くの県民の皆様のご意見を反映するため、下記の通り県民コメントを募集いたします」と記されたが、寄せられた意見の数や内訳などの一切が秘匿されたままだ。
今回の条例案策定に関与した県議は「これまでにもこうした意見募集は行ったが、結果を公表したことはない。今後も公表の予定はない」と一蹴。さらに、「(反対が多い)パブコメの結果によって、この問題に対する理解が進んでいないことがわかった。条例制定の必要性がはっきりした」と言明している。
これについて、ある県議の後援者は「意見募集の文面には、『意見を考慮して条例案を策定する』とまで書かれており、意見を出した人の多くは、その結果を知りたいはずだ。これでは、自分たちに都合の悪い結果が出たから発表しないと思われても仕方ない」と訝る。
元議長は国の「LGBT法」に慎重な国会議員を「差別主義」
今回の埼玉県議会に提出される条例案については、国のLGBT法制定に向けた動きとの関連も指摘される。
立憲民主党や共産党などは平成28(2016)年に「LGBT差別解消法案」を国会に提出した。法案は「(性的少数者が)日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去」を目指すものだった。
これに対し自民党も、令和3(2021)年、稲田朋美衆院議員を委員長(当時)とする「性的指向・性自認に関する特命委員会」が、独自に「LGBT理解増進法案」をまとめた。
稲田氏は野党との合意を取り付けるため、立憲民主党などの求めに妥協する形で、超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」において、法案の「目的」などに「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されない」との文言を入れることで合意した。
稲田氏にとっては自信を持って合意した内容だったが、自民党内では、「差別」という曖昧な定義を根拠にした訴訟が乱発する懸念があるとの指摘や、「性自認」の文言自体に異論が出たため「党三役預かり」となり、通常国会への法案提出が見送られた経緯がある。
今回の埼玉県議会自民会派の条例案も、第4条に「性的指向及び性自認を理由とする不当な差別は許されない」と明記しており、昨年のこうした稲田氏らの動きと軌を一にしているとの見方もある。
県連関係者によると、今回の条例案策定を主導したのは国政進出を目指しているという元議長の田村琢実(たくみ)県議で、昨年7月に「稲田朋美 埼玉後援会」を立ち上げ、自ら代表に収まっている。
田村県議は、昨年5月に自民党の理解増進法案の提出が見送られた際、自身のブログでこう怒りを表した。
《選択的夫婦別姓問題と酷似するLGBTQへの理解不足が生む現状に、吐き気すら感じる》《裁判が乱立することを念頭に置く方は、「差別しますよ」と言っているようなもの》《他人の人権を侵害していることに気付かない保守を自称する政治家達。早く自分の「差別主義」に気付き、多様性を認める寛容な社会づくりを目指して欲しい》――。
「女性スペースを守る会」は女児や障害者の性暴力被害を懸念する要請書
今回の問題では、「女性スペースを守る会」が21日に自民党埼玉県連の柴山昌彦会長(衆議院議員)と小谷野五雄幹事長(県議)宛てに、条例案の提出を見送るよう要請書を提出している。守る会は、LGBT法案の中の「性自認」について「女性の権利を守る立場からも慎重な議論が必要」との立場で昨年9月に結成された。
要請書では、「性自認」は女性の安心安全という権利法益と衝突するとした上で、男性器があるトランス女性の性的指向が女性に向いている場合も多いと指摘。女性用のスペースの入り口では、外見からは性自認が真実であるかや性的指向を確認することはできず、人権上も許されないため、いかがわしい目的の男性が女装して入りやすくなると説いている。その結果、警戒心が薄く抵抗力の無い女児や障害のある女性が性暴力被害に遭いやすくなるとしている。
また、パブコメの賛否の状況や内容の分析を発表もせずに条例案を提出することは、意見を出した県民を愚弄するものだと批判。「性自認」という概念の法令導入が進んでいたイギリスでは、女性スポーツや刑務所などで混乱や悲劇が続き、今年4月にボリス・ジョンソン首相が“正常化”をめざして舵を切る旨の発言をしたことも指摘した。要請には昨年12月結成の「性別不合当事者の会」も加わった。
「守る会」事務局の滝本太郎弁護士は、「パブコメの最中に条例推進派が『差別を煽る反対意見で荒れており、反対意見だらけになると条例制定が遠のく可能性がある』との趣旨のツイートを流し、賛成コメントを求めているのがわかった。情報が漏れていた疑いがあったが、県連や推進派の県議らは何ら説明していない」と話す。
参考:LGBTの呼称について、法務省はホームページ(HP)では次のように説明している。
《性的指向及び性自認(性同一性)に関して、いわゆるLGBTなどと呼ばれることがありますが、それらは、一般的に次のことを指しています。
L:女性の同性愛者(Lesbian:レズビアン)
G:男性の同性愛者(Gay:ゲイ)
B:両性愛者(Bisexual:バイセクシャル)
T:こころの性とからだの性との不一致(Transgender:トランスジェンダー)》
椎谷哲夫(しいたに・てつお)
1955年、宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒、同大学院社会科学研究科修士課程修了。元中日新聞社(中日新聞・東京新聞)編集委員。警視庁、宮内庁、警察庁、海上保安庁の担当などを経て関連会社役員などを歴任。著書に『皇室入門』(幻冬舎新書)、『夫婦別姓に隠された“不都合な真実”』(明成社)など。
議第十五号議案
埼玉県性の多様性を尊重した社会づくり条例
(目的)
第一条この条例は、男女という二つの枠組みではなく連続的かつ多様である性の在り方の尊重について、その緊要性に鑑み、性的指向及び性自認の多様性(以下「性の多様性」という。)を尊重した社会づくりに関し、基本理念を定め、県、 県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、性の多様性を尊重した社会づくりに関する施策の基本となる事項を定めることにより、性の多様性を尊重した社会づくりに関する取組を推進し、もって全ての人の人権が尊重される社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一性的指向自己の恋愛又は性的な関心の対象となる性別についての指向をいう。
二 性自認自己の性別についての認識をいう。 三パートナーシップ・ファミリーシップ互いを人生のパートナー又は家族として尊重し、継続的に協力し合う関係をいう。
(基本理念)
第三条性の多様性を尊重した社会づくりは、全ての人があらゆる場において性の多様性を尊重され、安心して生活できるよう、行われなければならない。 2性の多様性を尊重した社会づくりに当たっては、性の多様性に関する理解の増進、相談体制の整備及び暮らしやすい環境づくりに関する取組が行われなければならない。
(差別的取扱い等の禁止)
第四条何人も、性的指向又は性自認を理由とする不当な差別的取扱いをしてはならない。
2 何人も、性的指向又は性自認の表明に関して、強制し、又は禁止してはならない。 3何人も、正当な理由なくアウティング(性的指向又は性自認に関して本人の意に反して本人が秘密にしていることを明かすことをいう。)をしてはならない。
(県の責務)
第五条県は、第三条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、 性の多様性を尊重した社会づくりに関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。 2県は、前項の施策を実施するに当たっては、市町村、関係団体等と相互に連携
を図るものとする。
(市町村への支援)
第六条県は、市町村が性の多様性を尊重した社会づくりに関する施策を実施するため、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。
(県民の責務)
第七条県民は、基本理念にのっとり、性の多様性に関する理解を深めるとともに、 県が実施する性の多様性を尊重した社会づくりに関する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の責務)
第八条事業者は、基本理念にのっとり、性の多様性に関する理解を深め、その事業活動を行うに当たって性の多様性に配慮した取組を行うよう努めるとともに、 県が実施する性の多様性を尊重した社会づくりに関する施策に協力するよう努めるものとする。
(基本計画)
第九条県は、性の多様性を尊重した社会づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するための計画(以下この条において「基本計画」という。)を策定するものとする。
2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。 一性の多様性を尊重した社会づくりに関する基本方針
二 性の多様性を尊重した社会づくりに関する具体的施策
三 前二号に掲げるもののほか、性の多様性を尊重した社会づくりに関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 県は、基本計画を定め、又は変更したときは、遅滞なくこれを公表するものとする。
(性の多様性への配慮)
第十条県は、基本理念にのっとり、県が実施する事務事業において、性の多様性に合理的な配慮をしなければならない。
(制度の整備等)
第十一条県は、基本理念にのっとり、パートナーシップ・ファミリーシップに関する制度その他の性の多様性を尊重した社会づくりのための制度を整備する等必要な施策を講ずるものとする。
(啓発等)
第十二条県は、性の多様性に関する県民等の理解を深め、暮らしやすい環境づくりを推進するため、必要な啓発、制度の周知等を行うものとする。 2県は、学校の授業その他の教育活動において、性の多様性に関する理解を深めるため、学校の設置者と連携し、必要な施策を講ずるものとする。
(人材の育成)
第十三条県は、性の多様性を尊重した社会づくりを担う人材を育成するための研修の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。
(相談体制等の整備)
第十四条県は、性の多様性に関する相談体制を整備するものとする。 2県は、性の多様性を尊重した社会づくりに関する施策を総合的かつ計画的に実施するために必要な体制を整備するものとする。
(財政上の措置)
第十五条県は、性の多様性を尊重した社会づくりに関する施策を推進するため、 必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 附則 1この条例は、公布の日から施行する。 2県は、社会状況の変化等を踏まえ、必要に応じこの条例について見直しを行うものとする。
令和四年六月二十九日提出
埼玉県議会議員小島信昭
同神尾髙善
同立石泰広
同田村実
同齊藤邦明
同須賀敬史
同小久保憲一
同宇田川幸夫
同渡辺大
同細田善則
同澤圭一郎
同小谷野五雄
同中屋敷慎一
同白土幸仁
同横川雅也
同梅澤佳一
同新井一徳
同岡地優
同荒木裕介
同新井豪
同岡田静佳
同内沼博史
同飯塚俊彦
同松澤正
同吉良英敏
同美田宗亮
同藤井健志
同木下博信
同関根信明
同松井弘
同千葉達也
同高橋稔裕
同阿左美健司
同杉田茂実
同小川直志
同石川誠司
提案理由
性の多様性を尊重した社会づくりに関し、基本理念を定め、県、県民及び事業者の責務を明らかにするとともに、性の多様性を尊重した社会づくりに関する施策の基本となる事項を定めることにより、性の多様性を尊重した社会づくりに関する取組を推進し、もって全ての人の人権が尊重される社会を実現したいので、この案を提出するものである。
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