これは「分断」というよりも、パラレルワールドといったほうがよいのかもしれない。
同じ時間、同じ場所でありながらも「コロナの存在しない世界」と「コロナの存在する世界」があるらしいのだ。
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第8波はいま拡大を続け、12月以降1万人を超える方が新型コロナで亡くなっている。ここには隔離期間を過ぎ亡くなる呼吸器障害や心不全、衰弱の進行した要介護高齢者は含まれない。総死亡者も6万人を超えたが、実際にはもっと多くのコロナ関連死(超過死亡)があるはずだ。
感染者増加⇒重症者増加、病床が回転せず、救急医療は逼迫、救急隊到着まで1時間以上かかることも、搬送先が県外になることも珍しくない。僕の担当患者も重症感染症で入院調整を試みるも22病院に断られ断念、在宅で抗菌薬投与をしながら翌々日ようやく搬送先を確保できた。
引用ツイート
白石 淳, 救急医 / Shiraishi Atsushi, MD, PhD
@shiraishia_md
なんともならん。患者が激増しているのに、ベッドと看護職員が足りない。急性期病院だけではない。その退院後の受け皿になる二次病院や高齢者施設をクラスタが襲い、ベッドと職員を減らした。患者は動けない。すでに入院している患者も、救急要請している患者も。動くべき先がない。
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メディアは無関心だ。全国旅行支援は再開され、年明けの新橋にはコロナ前と変わらず密な居酒屋で新年会を楽しむ人々。銀座も新宿も商業施設は混雑、飲食店はいまはどこも予約でいっぱいだ。政府は外ではマスクを外せと啓発、学校給食の「黙食」も解除されつつある。
一方、医療や高齢者ケアの現場は緊迫が続く。コロナ対応する医療機関は慢性的なキャパシティ超過にバーンアウトしつつある。発熱外来は混雑、苛立つ患者が医療者をさらに疲弊させる。入院病床ではスタッフの感染により病棟単位での閉鎖も目立ち、手術の延期など通常診療にも深刻な影響が出始めている。
ケアの現も深刻だ。介護職の多くは、私生活を含め慎重な行動を強いられている。それでも高齢者ケアの現場はクラスターが多発、介護・看護職員の感染によるマンパワー低下の中、感染した高齢者のケアをなんとか継続しようと必死だ。精神科病棟も密かに厳しい状況になりつつあるらしい。
要介護高齢者の多くがワクチン5回接種を完了している。しかしコロナに感染すると、10人中6人は軽微な症状で済むものの、4人は衰弱が加速、うち1人は酸素投与が必要な状況になる。4人のうち2人は回復するが、2人はそのまま衰弱が進行し、明らかに死期が早まる。インフルエンザはここまでひどくない。
返信先: さん
ワクチンでコロナ肺炎は激減した。しかし、新型コロナ感染症が特に高齢者にとっては脅威であることには変わりはない。超過死亡を加味すると60歳以上の実際の致死率は3.14%とする試算も。30人に1人が死ぬ計算だ。20代までの死亡も116人、インフルエンザで若者は死なない。mhlw.go.jp/content/109000
マスクはしている。アクリル板もある。だけど、もはやコロナはただの風邪、大したことはない。多くの人はそう考えている。ワクチンを打った基礎疾患のない多くの若年層については確かにその通りかもしれない。だけど、感染防御のガードが下がったことで、感染の波は医療や介護の現場にも押し寄せる。
これまでは医療を守るために協力してくださった市民の間にも、コロナで死ぬのは、どうせ近い将来死ぬ運命にある高齢者、高齢者の死因が一つ増えたと思えばいいじゃないか、そんな割り切った意見も聞かれるようになった。
それでも重度化した感染者には医療が求められる。医療を選択しない高齢者にもケアは必要だ。誰も見殺しにはされない。忘年会を楽しむ若年層も自身や家族がコロナに感染すれば、必要な医療やケアを要求する。そして医療や介護の専門職は、要求されなくとも、目の前の「いのち」に真摯に向き合い続ける。
厳格な制限は必要ない。だけど医療崩壊をさせない程度には感染拡大を抑制する。これが私たちが学んできたコロナ対応の基本でなかったか。
「コロナのない世界」のツケを払い続けているのはコロナから目をそらすことを許されない医療と介護。しかし現場はこれ以上の負荷には耐えられない。
重症化する若年層の多くはワクチン未接種者。悪化した時に入院治療を希望するくらいなら、まずはワクチンを接種しておいてほしい。
米国では12月に入ってオミクロン派生株XBB.1.5が急拡大、すでに日本にも上陸している。オミクロン対応型ワクチンが、重症化・死亡リスクを下げる効果が期待されている。
ワクチンの接種回数が3回未満、または前回接種から半年以上経過している人は、ご自身の重症化を防ぐためだけではなく、医療を守るためにも、ワクチン接種を強くお願いしたい。重症化率が下がったとはいえ、感染者が増えれば、当然重症化する人も増える。ワクチンは医療現場の負担を軽減できる。
介護の現場も深刻だ。介護は医療よりも長時間の密着したケアが求められるにも関わらず、それに相応の評価が存在しない。施設や在宅でのケア提供体制が崩壊すれば、感染した高齢者はコロナ病床に入院するか、その場で放置されるかのいずれかだ。前者は医療崩壊に拍車をかけ、後者は死亡者を増やす。
いま介護の現場は専門職の使命感だけで支えられていると言っても過言ではない。みんな家族がいる。中には高齢者や基礎疾患のある人もいる。特に介護職には自身が高齢で基礎疾患をもつ人も多い。同僚が感染で離脱していく中、現場を守るために長時間・高頻度のシフトを緊張感の中で支え続けている。
このような状況でも「コロナのない世界」から戻っていただけないのなら、自分や家族が感染した時、あるいはコロナ以外の疾患や事故に遭遇した時に、これまで当たり前だった医療やケアが受けられない可能性があるということは受容していただくしかない。
経済活動は制限しない、子どもたちに普通の学校生活を。大変結構だ。その方向で進めてもらって構わないと思う。
しかし「コロナのない世界」のツケを医療介護の現場に一方的に後始末を押し付ける前に、それに伴う痛みについて国民にきちんと説明すべきだ。その方が医療介護の専門職も割り切れる。
そして「コロナのない世界」の住民の方々も、今は少しだけ立ち止まって、この状況について考えてもらえないだろうか。
ある日突然「コロナのある世界」に強制的に押し戻され、厳しい選択を迫られることになる前に。
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