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2023年1月13日 (金)

私の本棚 9 追補 鳥越 憲三郎 「 中国正史 倭人・倭国伝全釈」1/2

 中央公論新社  2004年6月
私の見立て ★★★☆☆ 労作 必読 批判部分 ★☆☆☆☆ 2023/01/13

◯追補の由来
 最近、さるブログ記事の「倭人伝」現代語訳の偉業を目にしたが、足どりの乱れが先人の偉業をたどっていると見えたので、原文参照に従って、鳥越憲三郎氏の名著に到達した。

*鳥越氏「魏志倭人伝」解釈の弱点
 要するに、当該ブログ記事筆者は鳥越氏の解釈に、忠実に追従しているが、同氏は、言外に示されるように、専門外の中国史料の見識が乏しく、一方、明言されているように専門としている国内史料と東南アジア諸国調査成果に依存しているからこそ、先行諸兄姉と同様に「誤謬」の可能性があり、当該分野に精通した先賢諸兄姉の意見を仰ぐ趣旨と、本書の深意を理解すべきである。

 この点は、冒頭の鳥越氏「倭人」観表明に公明正大に明示されて、氏の「倭人伝」観の根幹であるので、論義の対象外であるが、氏の「誤謬」の由来を明示している。
 いずれにしろ、氏の論考に対する無検証の追従は氏の本意でなく不適当である。つまり、ここでは、同氏の論法を非難しているのでない。誰にも弱点はあるから、支持か否かを問わず、新たな所論提示の適格な評価には、追試、検証が不可欠である。

*追従記事の批判
 言うならば、『先賢諸兄姉の誤謬をなで切りにする鳥越氏の「誤謬」』を拡散したのは、当該ブログ記事筆者の不徳の致すところであり、鳥越氏を非難するものでは「一切」ない。
 ここでは、氏の「倭人伝」初心者「誤謬」を批判しているだけである。

*原文批判
 と言うことで、氏の著書に忠実に追従したブログ記事に、逐条批判を行うが、個人批判ではないので、ブログの特定は避ける。
 願わくば、追従者諸兄姉が、趣旨ご理解の上、御再考いただきたいというものである。

 対象は、原文の「卑弥呼以死…告諭壹與」の段落である。

・冢(つか) 墓
コメント
*誤解。文字どおり解すれば、倭人伝に書かれている「封土」、つまり、大地に穴を掘って棺を納めて埋葬した後、地を覆って盛り土しているのである。念のため、子供に言うような念押しをすると、「大作冢」とは、大勢が寄っての意であり、「大冢」と言う意味では「全く」ない。
 いずれにしろ、盛り土は、高くもなければ、石積みしていないので堅固でもない。冢の「高さ」(丈度)を書いていない以上、言うに足りる「高さ」はなかったのである。誠に明快では無いだろうか。

・徇葬(じゅんそう)者 王の死にしたがって死んで葬られる者。
コメント
*誤解。まずは、意味不明である。多分、「強制的に後を追わされるが、生き埋めにはしなかった」という意味だろうか。
 いずれにしろ、「殉死」は、ほぼ強制殺戮だから、氏の解釈は、「倭人」の葬礼を野蛮の極みと弾劾しているのに等しいことになり、それは、魏志巻末に於かれた「倭人伝」の位置付けに於いて、甚だしく異様である。つまり、陳寿が、そのような記事をここに置いて、魏志全巻を台無しにすることはあり得ない。少なくとも、「倭人伝」を貫く「礼」に篤い蛮夷との趣旨に反している。

 そもそも、そのような「思い込み」を排除し、原文、つまり「倭人伝」に書かれている文字を、『初級者にふさわしい謙虚な態度で、字義に忠実に、「素直に」、「普通に」、「するりと」解釈する』と、「徇」とは葬儀に「従う」、つまり、葬礼に参列した者の意と解すべきと思われる。それなら、徇葬者が何百人いようと、異議を言う筋合いはない。故人の遺徳を湛えるのだから、たとえ、「倭人伝」の原史料が、徇葬者 「 十人」を「百人」と言い整えていたとしても、それが「史実」であり、史伝の正道である。

 またもや、子供に説教するような書きぶりになってしまったが、「徇」は「殉」と異なる文字であるから、何としても、同じ意味ではないのは、「初歩的」(elementally)な事項である。

 当たり前のことを殊更言い立てるのは、誠に恐縮であるが、古代史書は、古典に精通した史官が、原史料を元に、門下生、同僚、先輩の批判を仰いで推敲しているから、稚拙な誤記はないと見るべきである。

                                未完

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