予備試験に合格する以外で司法試験を受験するには、法科大学院に通わなければなりません。
しかし、社会人の方など、必ずしも平日に法科大学院に通う時間がとれない方もいらっしゃるかと思います。
だからといって諦めるのはまだ早いのです。
実は法科大学院には、夜間にも授業を開講しているところもあるのです。
そこで、今回は法科大学院の夜間コースをご紹介します。
目次
夜間のコースのある法科大学院一覧
法科大学院の夜間コース一覧
- 日本大学大学院 法務研究科
- 筑波大学法科大学院
- 福岡大学法科大学院
- 琉球大学法科大学院
夜間のコースとはいっても、特別なカリキュラムがあるわけではありません。
夜間のコースとはつまり、平日夜に開講する授業を履修しつつ、通常よりも長い年数をかけて法科大学院を修了することができる長期履修制度をいいます。
夜間のコースがある法科大学院は、日本大学法科大学院・筑波大学法科大学院・福岡大学法科大学院・琉球大学法科大学院の4つです。
(福岡大学法科大学院と琉球法科大学院のみ、「夜間コース」という名称を用いています。)
※なお、以前は募集を行っていた甲南大学法科大学院は2019年度以降募集を停止。
成蹊大学法科大学院は2021年度に廃止されています。
ここでは、簡単に各法科大学院の特徴をご紹介します。
日本大学大学院 法務研究科
水道橋駅にキャンパスを構えるロースクールです。
令和元年度司法試験では、14名が合格するという実績を有しています。
1学年の人数は60人程度であり、今回紹介するロースクールの中では比較的規模が大きいといえます。
日本大学法科大学院の令和4年の司法試験は、受験者数75名、合格者数34名、合格率32.0%という結果でした。
■日本大学大学院 法務研究科
住所:東京都千代田区神田三崎町2-3-1(日本大学法学部キャンパス内)
最寄り駅:各線水道橋駅から徒歩4分 各線神保町駅から徒歩5分
公式HP:https://www.law.nihon-u.ac.jp/lawschool/index.html
筑波大学法科大学院
筑波大学法科大学院は筑波ではなく東京の茗荷谷にあります。
筑波大学法科大学院は夜間コースのみを設置していることが大きな特徴です。
したがって入学者は基本的に社会人です。
1学年45名程度の学生が在籍しており、そのほとんどは未修者です。
筑波大学法科大学院の令和4年の司法試験は、受験者数55名、合格者数18名、合格率32.7%という結果でした。
■筑波大学法科大学院
住所:東京都文京区大塚3-29-1(筑波大学東京キャンパス文京校舎)
最寄り駅:東京メトロ丸ノ内線 茗荷谷駅から徒歩3分
公式HP:https://www.lawschool.tsukuba.ac.jp/
福岡大学法科大学院
上記の2校と異なり、福岡大学法科大学院は東京ではなく、福岡県福岡市にあります。
ほとんどすべての入学者が法学未修者であることが大きな特徴です。
そして夜間コースは未修者コースのみに設置されています。
平日受講できるコマ数が1時限のみであり、また土曜は午前中の2時限のみ授業を開講しているため、修了までに5年の期間を要します。
福岡大学法科大学院の令和4年の司法試験は、受験者数21名、合格者数4名、合格率19.0%という結果でした。
■福岡大学法科大学院
住所:福岡県福岡市城南区七隈8-19-1(七隈キャンパス内)
最寄り駅:福岡市地下鉄七隈線 福大前駅から徒歩8分
公式HP:https://www.ilp.fukuoka-u.ac.jp/
琉球大学法科大学院
平成31年度(令和元年)より、既修者コースでのみ夜間コースが設置されています。
大学卒業後3年以上経過している社会人であり、さらに昼間就労している有職者のみが対象です。
琉球大学法科大学院の令和4年の司法試験は、受験者数29名、合格者数4名、合格率13.8%という結果でした。
■琉球大学法科大学院
住所:沖縄県中頭郡西原町字千原1番地(千原キャンパス内)
公式HP:http://web.law.u-ryukyu.ac.jp/
夜間コースのある法科大学の司法試験合格率一覧【令和4年】
夜間コースのある法科大学院の令和4年度司法試験受験者・合格者・合格率を紹介します。
合格率が大きい大学から順に紹介します。
大学名 | 受験者数(人) | 合格者数 (人) | 合格率 |
---|---|---|---|
筑波大学 | 55 | 18 | 32.7% |
日本大学 | 75 | 34 | 32.0% |
福岡大学 | 21 | 4 | 19.0% |
琉球大学 | 29 | 4 | 13.8% |
令和4年度司法試験で合格率が最も高い夜間コースのある法科大学院は、筑波大学の受験者数55人に対し、合格者数18人、合格率は32.7%です。
続いて日本大学の32.0%、福岡大学の19%、琉球大学の13.8%となっています。
令和4年度の法科大学院全体における司法試験の平均合格率は37.7%のため、筑波大学の司法試験合格率32.7%は低くない数字と言えます。
社会人で司法試験合格を目指す方は夜間コースのある法科大学院に進学することも検討するのはいかがでしょうか。
夜間コースの基本情報
夜間コースの時間割
大学院によりますが、夜間コースでは、大体平日18時頃からの1~2コマと、土曜日の授業を履修することになります。
したがって、社会人の方はプライベートの時間がほとんど取れなくなってしまうでしょう。
在学年数
平日に履修できる授業が少ないため、在学年数は通常より長くなります。
基本的には既修者であれば3年、未修者であれば4年ということになります。
もっとも、福岡大学法科大学院の夜間コースは5年間のコースになります。
学費
学費は、夜間の授業しか受けないからといって特別に低額になるということはないようです。
なお、福岡大学は夜間コースの学費を通常のコースと比べて低廉に設定していますが、在籍年数が長くなるため、結果的には通常のコースの学費とあまり変わりません。
入試
入試問題は夜間コースに特別のものが用意されているわけではありません。
未修者は小論文、既修者は法律論文の試験を受験することになります。
夜間のコースに入学して司法試験に合格するのは厳しいルート
結論からすると、夜間コースに入学することはあまりおススメできません。
まず、夜間コースは仕事をしながら法科大学院に通うということになるため、プライベートの時間がほとんど取れません。
そして、筑波大学法科大学院のように、夜間に特化した法科大学院で、ある程度人数もいるところは別かもしれませんが、夜間コースは基本的にはイレギュラーなコースです。
そのため、必ずしも最良の教育が受けられるとは言い切れません。
高い学費を払い、少ない時間を削り忙しなく勉強したとしても、結果を出すのはかなり難しいといえるでしょう。
実際に、夜間のロースクールを修了した場合の司法試験の合格率はかなり低いです。
だからといって社会人の方に法曹の道を諦めろといっているわけではありません。
司法試験を受験するためには、法科大学院を修了する以外にも、予備試験に合格するという方法があります。
予備試験は最終合格率が3%という非常に厳しい試験です。
したがって、時間が取れない社会人は尚更目指すべきではないと思うかもしれません。
しかし、予備試験は司法試験と異なり受験資格の制限がないため、誰でも受けることができます。
予備試験合格者の司法試験合格率は80%程度にものぼります。
つまり、予備試験であれば、社会人にも等しく受験のチャンスがあり、かつ合格すれば司法試験合格に一気に近づけるのです。
※関連コラム:予備試験とは?
現在では予備試験も過去問の蓄積があり、独学でも合格することが可能です。
また、予備校であれば予備試験受験に関する充実したノウハウを有しています。
そして、忙しい社会人にとっては仕事の合間を縫って法科大学院に通うより、自宅での独学や、予備校のオンライン授業の方が時間を有効活用出来るといえます。
夜間コースを検討されている方は、予備校や独学での予備試験受験についても前向きに考えてみることをおススメします。