司法試験を受験するためには原則として法科大学院を卒業する必要があります。
しかしいざ法科大学院入試の対策を始めようと思ってもどのような対策をいつから始めるべきなのかがわからず不安な人もいるのではないでしょうか。
そこでここでは法科大学院の入試の内容や難易度、勉強のスケジュールについて解説していきたいと思います。
目次
法科大学院の入試内容
法科大学院には通常、下記の2コースが存在します。
①未修コース
②既修コース
「未修コース」は大学院以前に法律を勉強してこなかった人向けのコースで、通常3年間かけて法律の基礎の基礎から学びます。
「既修コース」は大学院以前に法律を学んだことがあり、法律の基礎の基礎の部分は身についている人向けのコースで、このコースは2年の短縮過程となっています。
入試の内容は未修と既修で異なるため、以下に分けて詳述します。
①未修コース
未修コースの入試は基本的には「志願理由書」「小論文」「面接」になります。
志願理由書は、就活でいうESのようなもので、志望動機や目指す法曹像について記述し願書と共に大学院に提出することになります。
小論文については、時事問題や与えられた資料を読み取って自分の意見を記述するものが多いです。
ここは基本的には法律の知識は不要です。
面接については実施していない大学院もありますので、受験予定の大学院の入試要項を確認してください。
※関連コラム:法科大学院受験の面接とは?質問内容と対処法を紹介
②既修コース
既修コースの入試は「志願理由書」「法律に関する試験」になります。
志願理由書については、未修コースと基本的には相違ありません。
法律に関する試験は、基本7法について基礎的な知識が身についてるのかを問われる試験です。
基本的には論述試験で具体的な事案が与えられ、そこに含まれる法的問題を論ずることになります。
大学院によっては、上3法に民訴、刑訴を加えた5科目のみである大学院や、行政法を除いた6法のみの大学院もあるので入試要項は要確認です。
法科大学院の入試日程
入試日程は大きく分けて私立の大学院と国立の大学院で異なります。
私立法科大学院は、およそ7月~9月の間に試験日が設定されています。
ロースクールによっては複数回の試験日程が用意されている場合もあるので募集要項をチェックしてみてください。
なお学校によって試験日程が異なりますので、複数の私立を受験することが可能です
国立法科大学院は、およそ10月下旬から1月上旬に開催されます。
国立については基本的には試験日程がかぶっているので、受験できる国立大学院は1校です。
募集要項については通常、遅くとも試験日程の半年前には公開されますので早めに募集要項を確認しておきましょう。
学生がストレートで法科大学院受験(既修)に合格するために
ここでは法学部の学生が法科大学院の既修コース(2年短縮コース)に合格するためにはどのようなスケジュールで勉強を進めていくべきなのか、そのスケジュールの一例を紹介したいと思います
既修コースの筆記試験の難易度
多くの法科大学院の入試問題では入門講義段階で学習するレベル、判例百選掲載判例のうち基本判例レベルの問題が多く出題される傾向にあり、その部分について十分な論述ができれば十分合格レベルに達することはできます。
したがって基本レベルの知識を正確にインプットし、それを使って典型的な事例問題を解決できるようになることが重要です。
既修コースに対する対策
既修コース合格のためやるべきことは、大きく分けて3つあります。
①基本知識のインプット
②問題集・演習書によるアウトプットの訓練
➂過去問演習
①基本知識のインプットのポイントはできる限り素早くインプットを終了させることです。
法律はその全体像が見えて初めて理解可能な分野も多くあるためわからないことがあっても立ち止まらず、まず一周入門講義を受けてしまう(独学の人は入門書または薄い基本書を読んでしまう)ことが肝要です。
②問題集・演習書によるアウトプットの訓練のポイントは繰り返しの演習をすることです。
繰り返し演習することで①で身に着けた知識が具体的な事案でどのように使われるのか理解することができ、断片的であった知識がつながっていきます。
➂過去問演習では①②によって身に着けるべき「基本知識」が身についているのかをチェックします。
ここで穴をみつけられたら①②に戻ってその穴をつぶしましょう。
合格までのスケジュールは?
入試対策は早く始めることに越したことはありません。
遅くとも受験予定の年の年明けまでには対策を始めましょう。
ここでは年明けから対策を始める場合を例にとってスケジュールを紹介します。
ポイントは私立の入試に照準を合わせることです。
春休み中 | 基本知識のインプットを行う |
4~7月 | 問題集や演習書を反復する |
7月~8月 | 過去問演習をする |
私大入試後 | 国立に入試に対して体制を立て直す (=過去問演習や、私大入試を経て発覚した苦手分野の克服) |
※関連コラム:法科大学院(ロースクール)入試の対策・試験科目・勉強方法を解説
社会人が働きながら法科大学院受験に合格するために
先のとおり、法科大学院未修コースの入学試験では、小論文対策、志望理由書の作成、面接試験の対策をしなければなりません。
社会人の方は、学生の受験生と比較すると時間的な余裕が少ないため、試験日の半年前には遅くとも準備を開始するのが理想です。
小論文対策
小論文については、各大学院の出題傾向に合わせ、その年に意見を述べさせられる可能性が高い範囲についての知識を蓄えることから、実際に小論文を時間以内に書ききる訓練等の必要です。
また、小論文書き方にもある程度のコツがあるため、備校等の添削をうける機会を作ることが望ましいです。
そのため、小論文対策にはかなりの準備期間が必要になります。
※関連コラム:法科大学院の小論文とは?基本情報と準備が必要なこと・学習スケジュール
志願理由書対策
志願理由書は、願書と共に小論文試験の1か月程度前に法科大学院に提出します。
この志願理由書は多くの大学院では一次審査(いわゆる足切り審査)に用いられるため、丁寧に作成しなければなりません。
そのため、予想以上に時間がかかるのが一般的。
直前期は志願理由書の対策に時間が割かれる可能性が高く、それ以前から十分な小論文対策をしておいた方が良いでしょう。
※関連コラム:法科大学院の志望理由書とは?求められる内容と準備・スケジュール
面接対策
面接試験は小論文試験と同日もしくは近接した日程で行われることが多いため、小論文式試験の対策と並行して行う必要があります。
もっとも、面接で聞かれる内容は志願理由書で書いたことや小論文対策として学んだ内容と重複する場合も多いため、面接独自の対策のために費やす時間は比較的短く済むと思われます。
具体的な学習スケジュール
以上勘案すると以下のようなスケジュールで学習を進めていけると理想であると考えます。
試験6~4か月前 | 小論文対策:主に大学院の出題傾向の分析と、小論文を作成するのに必要となる知識を身に着けること |
試験4~2か月前 | 小論文対策:小論文を実際に書き、添削をうけることを繰り返す 面接対策:小論文で書いた内容を口頭でも説明できるようにしておく 志願理由書対策:志願理由書のアウトラインを作成する |
試験2~1か月前 | 小論文対策:小論文を実際に書き添削をうけることを継続する 面接対策:志願理由書の内容を口頭で説明できるようにしておく 志願理由書対策:志願理由書を作成し、願書と共に提出する(提出前に一度添削を受けるとよい) |
試験1か月前~試験本番 | 小論文対策:小論文を実際に書き添削を受けることを継続する 面接対策:予備校の先生やチューター、志望する大学院に入学した先輩等の協力を仰ぎ、実際の面接のデモンストレーションをしてもらう |