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To the end of the world

To the end of the world - 70の小説 - pixiv
To the end of the world - 70の小説 - pixiv
7,826文字
ザップと一般人彼女シリーズ
To the end of the world
ザの恋人が拉致られる話。名前変換あり。

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2021年8月15日 13:40

 今日も今日とてヘルサレムズ・ロットはいつも通り騒がしい。通りを一本越えれば違法魔導薬物をキメて暴れるヒューマー、二つ隣のブロックでは職務質問に引っかかりHLPDから逃げ回る異界人。一歩踏み出す場所を間違えるだけでいつ死んでもおかしくないこの街で、人間界と異界のバランスを保つために日々暗躍(最近はそうでもないとかなんとか)している組織がある。名をライブラ――先日ひょんなことからレオナルド・ウォッチが所属することになった秘密結社だ。

「ザップさん、携帯鳴ってますよ」
「放っておきなさいよ、どうせ借金返済の催促か五股に気づいて怒り狂ってる女からなんだし」
「そうだと思いますけど、なら尚更出とかないと後で面倒っすよ。俺巻き込まれたくないですもん」
「オメーらなァ……!」

 日課の「クラウスを殺そうとして数倍で返り討ちにあう」から復活したザップが拳を震わせた。その向こうではクラウスが趣味のオンラインプロスフェアーに勤しみ、スティーブンはギルベルトに淹れてもらったコーヒーを飲みながら何種類もの朝刊を読んでいる。当たり前のことだが、この場にザップの味方は一人もいない。
 レオとチェインに悪態を吐きながらポケットから携帯を出したザップが顔をしかめた。「知らねえ番号だな」「出ても出なくてもヤバそうっすね」「うるせーぞインモウ」ちらっとレオから見えた番号に覚えはなかったが、珍しいことにニューヨーク都市圏の市外局番からだ。この街が霧けぶる異境都市になってから、固定電話などという人間界の発明はすっかり数を減らしてしまったはずだ。(というかレオは未だに生きている回線があることに驚いた。)
 考えるのも面倒だったのか、ザップはそのまま電話に出た。レオはてっきり誰かの罵声が聞こえてくると思ったのだが――恐らくザップも同じように考えて携帯を耳から離している――そんなことはなかった。

「もしもォし、……はい? ……まあ、そうスけど…………ハ?」

 若干ザップの声色が変わったような気がして、レオは携帯ゲーム機から顔を上げた。「いや、なんもきてないっすね……はあ、わかりました」と、珍しく丁寧な対応をしているザップに気づき、チェインも何事かと振り返っている。

「こっちでも捜してみます。わざわざどうも」

 ピ、と電話を切ったザップにレオは「どうかしたんすか?」と声をかけた。画面をタップして「なんもねえよ」と言いながらも、再び携帯を耳に当てたザップの表情は珍しく険しい。電話の相手は出なかったらしく、舌打ちしたザップが「旦那、スターフェイズさん、悪いんだが今日は午後から休みにしてくれ。ちょっくら用事ができた」と言うと、ようやく奥にいたクラウスとスティーブンが視線を上げた。

「おいおいザップ、遅刻しておいてそれはどうなんだ?」
「構わないが、緊急事態かね? 『捜す』と聞こえたが……」
「や、大丈夫す。俺個人の問題なんで」

 「そんじゃ」また明日、と言いかけたザップの肩を、いつの間にか目前に近づいていたクラウスが強い力で掴んだ。真剣な表情で「我々は仲間だ。君の問題は我々の問題、よければ力を貸そう」と言うクラウスは、心の底からそう思っているのだろう。しかしその背後にいるスティーブンやチェインがどう見ても違う意見なのは、レオにも(きっとザップにも)よくわかった。
 だが、ライブラの長が世界一の頑固者なのはここにいる誰もがよく知っていること。ザップは思いきり顔を歪めてから、諦めたように口を開いた。

「……彼女が行方不明ンなったらしくて」

 ――静寂。まるでライブラ本部の時が止まったかのようだった。ぱちぱちと瞬きをしたクラウスが、ザップの肩を掴んだまま僅かに首を傾げた。

「……彼女?」
「はい」
「……誰の?」
「俺の」
「……すまない、もう一度頼む」
「だぁぁぁあああッから俺の! 彼女が! 行方不明なんだって!」

 終わらない問答にいよいよザップがキレた。「揃いも揃って『キョトン』じゃねえよシバくぞ! 昼休み終わっても帰ってこねえからってあいつの勤め先から電話かかってきたんだよ!」と騒ぐザップに、ようやくレオたちはハッとなる。
 いやでも、だって、なあ。レオはいつもバーガーを詰め込んでいる口をあんぐりと開けてザップを見た。
 あのザップに“恋人”がいたなんて、一体誰が想像できたというのだろう。

「ザップさん彼女いたんすか!?」
「お前、本命の恋人がいてよくあれだけ他の女を作れるな……」
「これ以上ないってぐらいマイナスの好感度が更に下がったわ……マントル突き抜けて反対側の宇宙までいったわよ……ホント最低……」
「っるせえなあいつと付き合ってから他の女には手出してねえよ!」
「嘘だ! 絶対に嘘だ!」
「ンだコラクソ童貞がアレコレ言ってんじゃねえぞ!」
「それ関係ねえだろ! ハラスメントのオンパレードだぞ!」

 レオはゲームを放り投げてザップと取っ組み合いを始めた。するとクラウスがレオたちの間に入って――本当に綺麗に割って入られた――「すまない、少し驚いてしまった」とザップの肩に手を置いた。

「しかし、そういうことなら尚更、力にならせてくれないだろうか。君の大事な人は、我々にとっても大事だ」

 レオにプロレス技をキメていたザップが「旦那……」とクラウスを見つめた。クラウスはちょうど背を向けているので気づいていないが、生憎レオにはスティーブンとチェインの「マジでやるのか?」「こいつに手を貸すなんて絶対嫌だ」という顔がはっきりと見えている。レオもうっすら「クラウスさんを騙す作戦じゃ……」と思っている。
 しかしながら、このライブラという天秤の主はクラウス・V・ラインヘルツだ。最終的に何を“はかり”に乗せるか決めるのはクラウスだった。

「さあ、君の恋人を一刻も早く見つけよう」

 世界を救う仕事の前となんら変わらない真剣な表情で言うクラウスに、ザップは短く息を吐いて頷いた。



「…………ん……」

 ナマエが瞼を上げると、真っ暗闇だった。カビと埃の臭いが充満する空気に顔をしかめたナマエは立ち上がろうとして、手足を椅子に縛りつけられていることに気づいた。訳が分からない状況にナマエの心臓が早鐘を打ち始める。顔に恐怖を滲ませながら周囲を見回しても、まだ暗闇に目が慣れておらず何もわからない。
 ここは何処だ、どうしてわたしはこんなところに……?
ナマエはパニックを起こしそうな頭で必死に記憶を遡った。

 今日のナマエはどうしても餃子が食べたい気分だった。しかし一から作るのは面倒だし、ここ最近デリバリーを頼みすぎて出費がかさんでいる。同棲中――と言えば聞こえはいいが、勝手に家に上がり込んできた――の恋人は今日は「フライドチキン食いてえー」などとほざいていたが、食費を出さない人間にメニューを決める権利はない。
 
ナマエは様々な事情と私情を考慮して、冷凍餃子が妥当な妥協点だと考えた。そして定時で真っ直ぐ帰宅したいがために、昼休みに会社近くのスーパーへ外出した。無事に冷凍餃子をゲットし、帰りに近道をしようとやや危険指数が高めの道を走り抜けようとして……そこからの記憶がない。

「へっへェ、目が覚めたかネエチャン!」

 埃っぽい電球に灯りがつき、俯くナマエの目に五つの影が映った。びくりと肩を震わせ、ナマエは恐る恐る顔を上げる。ヒューマーが二人、異界人が三人。全員見たことのない顔だった。

「ホントにこいつがザップの女かァ?」
「そーだ、俺はこの女がザップと仲良しこよしキャッキャウフフしながら歩いてんのを見た!」
「それなんの証拠にもなんねーだろ」
「ただのセフレかもしんねえぞ」
「それだとザップ釣れねーぞ、どうすんだ」

 ――あのクソ種吐き男。目の前の人間がそう心の中で呟いていることを、ナマエを連れ去った男たちは知る由もなかった。
 彼らの会話から推察するに、どうやら自分はザップの私怨に巻き込まれて拉致されたらしい。しかも「セフレ」などというこの世で最も憎む言葉の一つを使われている。
 そんな
ナマエに気づく筈もなく、男たちは未だに頭を突き合わせて会議をしていた。

「くっ……今度こそザップから金を取り返せると思ったのに!」
「あいつ妙な技使えるからって毎回踏み倒しやがって……!」
「俺なんて前に彼女取られたんだぞ、ゼッテェ許せねえ……!」

 その後もザップにされた数々の所業を口にしながら、五人はとうとう泣き出してしまった。そんな彼らを唖然として見ていたナマエは、いつの間にか握り締めた拳を緩めていた。……なんていうか……この人たち……。

「……か、可哀想……」

 ぽつりと漏れた呟きは小さかったが、しっかりと廃墟に響いた。咽び泣いていた男たちが一斉にナマエの方を見る。
 引き攣った顔で身構える
ナマエに、ザップ被害者の会が近寄った。



「ここであってんだな?」
「多分ですけど……あの路地裏にあったオーラはここで途切れてます」

 その後ザップたちは、レオの「神々の義眼」を使いナマエの足取りを追っていた。やってきたのは郊外の朽ち果てた雑居ビル。ナマエが働く会社の近くで見つけた痕跡を辿ってきたので間違いないはずだが、レオは実際に彼女と会ったことがない。絶対とは言い切れないことをザップも重々承知していた。
 スティーブンが「中には?」と聞くと、レオは廃墟の“中”を見ながら「えぇと……六人。一人が椅子に座ってて、五人に囲まれてます。結界とかはなさそうです」と答えた。「なら私が様子見を」と前に出かけたチェインの行く手を阻むように、ザップは勢いよく飛び出した。

「待て、ザップ! 無暗に動いては……!」
「ウルッセェ俺の女が危ねえんだぞ悠長に待ってられっか!」

 クラウスの制止を振り切って斗流血法・カグツチを発動したザップは、真正面からビルへ突っ込んだ。轟音とともに土煙が舞い、人陰を確認したザップはカグツチの刀身を斬り込もう――として動きを止めた。

「あ、噂をすればクソ種巻き散らかし借金製造ギャンブル中毒クズ男」
「だァァれがだよ!」

 振り返ったナマエの周りに、見覚えのある人間と異形の民が泣きながら座り込んでいた。ザップの顔を見た男たちが「出た、出やがった人でなし!」「オメー彼女にまでメチャクチャしてるじゃねえか!」「可哀想だぞ大事にしろよ!」とやいやい言い始め、彼女も「そうだそうだ! 詳しく聞いたけどこの人たちも可哀想だぞ、最低!」と椅子に縛り付けられたまま野次を飛ばした。

「ア゛ァアン!? 外野が口出してんじゃねえよてかテメェらなんで結託してんだ!」
「お前が人類史上最低のクソでクズだからだよ!」
「そう、そうなんだよ! よく言ってくれましたありがとう一ツ目さん!」
「礼言ってる場合かお前からオロすぞ
ナマエ!」

 言い争うザップたちにようやくライブラが追いついた。カグツチを使うこともなく素手で誘拐犯たちと取っ組み合いながら、椅子に縛られたナマエに唾を飛ばされているザップは、視界の端でレオとスティーブンが何か話していることに気づく。
 なになに? 「……なんか、これ助けなくてよかったんじゃ……?」「言うな少年」ドン引きの表情のレオと額を覆うスティーブンの唇を読んだザップは、さらに頭に血が回った。そして増大した怒りは勿論、
ナマエに向けた。

「それが助けに来た彼氏に言うセリフかよ!? 人でなしはオメーだろ!」
「来るのはわかってたから話聞いて待ってたんでしょブワァアカ!」

 「早く助けろ!」とナマエが叫んだ。一瞬目を丸くしたザップは「っンとオメェはよ……!」と舌打ちした。大きく踏み込んで血液を伸ばし、ナマエが固定されている椅子を引き寄せる。
 男たちが反応する間もなく
ナマエの縄を切ったザップは、空中に投げ出された恋人を片手で抱きとめた。「目閉じて耳塞いでろ」というザップの言葉通りに、ナマエがぎゅっと目を瞑る。耳に両手を押し当てたナマエを見てから、ザップはライターに火をつけた。



「なんッで自分拉致った奴らと仲良くなってんだよオカシイだろ! お前はバカか!」
「はぁあ~? ザップにだけはバカとか言われたくないんですけど?」
「ンだとテメェこっちは仕事そっちのけで助けてやったっつうのにその態度たァどういうこった」
「助けて“やった”だあ? ザップのせいで拉致られてんだからザップが助けるのはどう考えても当たり前でしょ頭働かせよ単細胞」

 「クズ! ヤリチン! 人でなしのろくでなし!」次々とナマエの口から出てくる罵詈雑言の羅列に、ザップは煙草の煙を吐き出しながらぐぬぬと唸った。言い返したいところではあるが、間違いなく彼女の言い分は正しい。それでもやはり言われっ放しでは腹が立つのが人……否、ザップ・レンフロという生き物である。応戦しようとしたザップは、ふと目の前の彼女の手が震えていることに気づいた。
 ……そうだった。ザップはようやく思い出した。
ナマエはさっきまで「拉致」されていたのだ。ザップと渡り合えるほど気が強いとはいえ、ナマエはライブラとは無関係の一般人。なのにナマエは今日、普通に生きていれば遭遇しえない経験をしてしまった。それは誰のせいか? 考えるまでもなく、このザップ・レンフロが原因である。

「……悪かった」

 「俺のせいですまねえ」小さい声ながらも、ザップはナマエの目をしっかりと見て言った。一瞬キョトンとしたナマエははすぐに満足げな笑みを浮かべると、「そーだそーだ反省しろ」とザップの脛を蹴った。

 レオたちが近づいてくるのに気づき、「っ痛えな調子乗んなタコ!」とナマエの足から逃れつつザップが顔を上げた。ナマエもザップの硬い脚を蹴るのをやめ、足を止めたレオたちに向き直る。

「ライブラの皆さんですよね? この度はうちのバカのせいで職務中にご迷惑をおかけしました」

 物凄い(それはもう本当に強い)力で頭を引っ掴まれ、ザップはナマエと並んで頭を下げた。ギチギチと無理やり顔を動かして視線を上げたザップは、嘲笑うように自分を見下ろしているレオとチェインを見て威嚇の意をこめて歯を鳴らす。そしてクラウスの隣にいるスティーブンの表情を見て凍りついた。
 クラウスが「いえ、貴方がご無事で何よりでした」と言い、ようやくザップは頭を上げることを許された。隣に立つ
ナマエをクラウスがじっと見つめた。

「……もしや、以前に……?」
「ええ、そうです。お久しぶりです、ミスタ・ラインヘルツ、ミスタ・スターフェイズ」

 にこりと笑ったナマエを見て、スティーブンが思い出したように「……ああ、『××××』のときの?」と手のひらを打った。チクショウ思い出しやがったか。内心舌打ちしたザップは、頭の上にクエスチョンマークを浮かべてチェインにアイコンタクトを送るレオに気づく。チェインはレオの視線に気づいているようだったが、まるっと無視してナマエを眺めていた。

「あの事件が縁でザップと?」
「まあ、それもありますけど……本当はもっと違う形でご挨拶したかったんですが、すみません」
「いえ、またお会いできてよかった」

 「このような目にあった直後に言うのも申し訳ないのですが、ザップをよろしくお願いします」深々と頭を下げたクラウスに、ナマエが慌てて「こちらこそ、これからも果てしなくご迷惑をおかけすると思うので、ボロ雑巾の如く使い倒してやってください」と言った。ザップが反論しようと口を開いた――瞬間、鋭い眼光で睨まれてザップは口を噤んだ。般若の顔の後ろに「今日のテメェに発言権があると思うのか?」という文字が見えたからだった。
 ザップは仕方なく息を吐くと「……じゃあ旦那、俺はこいつ送ってくるからよ」と言った。すると
ナマエが「え、いいよ会社戻るから。ザップも仕事中でしょ?」と言ったので、ザップは「ハァ?」と表情を歪めた。

「バッカかオメェさっきまで拉致られてたんだぞ!? 今日ぐらい休めや!」
「これは非常に稀なことですが、今のはザップの言う通りですよ」
「スターフェイズさん本音漏れてますよ、俺に聞こえてますよわざとスか?」
「ザップ、今日は君も帰りたまえ。彼女のそばにいてやりなさい」
「マァジィ? さっすが旦那ァ~話がわかる! あざす!」

 予想外のクラウスの言葉に、ザップが喜びの声を上げた。こういうのなんだっけか、「タナボタ」って言うんだっけかナマエの国では。ザップは故郷の諺を説明しようと奮闘していたナマエを思い出しながら――そして諺の意味を考え、絶対にナマエには言わないでおこうと心に決めて――「えっ駄目ですよそんな!」と断ろうとする彼女の手を掴んだ。
 「っるせーさっさと帰んぞ」とザップは
ナマエを連れて歩き始めた。一瞬驚いたような顔をしてから、ナマエは「すみません、今日は失礼します。本当にありがとうございました」とクラウスたちに言ってザップの横に並んだ。

「……ねえザップ」
「あンだよ」
「手繋ぐの、いいの?」

 ハッと気づいたザップが手を解こうとするよりも早く、ナマエの指がザップの武骨な指の間にするりと入り込んだ。普通の手繋ぎから所謂「恋人繋ぎ」になり、ナマエはしてやったり顔でザップの隣を歩いている。
 そんな
ナマエとは裏腹に、ザップの表情は険しかった。背後でニヤニヤしているであろうレオが目に浮かぶからだ。それでもザップは、繋いだ手を解かなかった。

「……ザップのその腐り切った性根が変わるなんてあり得ないからさ」
「おー急に喧嘩売ってきたなどうした買うぞ」
「またこういうことがあるかもしれないけど。てかあるんだろうけど」

 新しい煙草に火をつけたザップの手を握る力が少し強くなった。煙を吐きながら隣を見下ろすと、同じく煙草を取り出しているナマエと目が合った。ふわり、ナマエが微笑む。

「助けに来てよね、ずっと。今日みたいに」

 「頼んだぜ」とナマエが煙草をくわえながらザップを肘でつついた。それからポケットを探り「あれ、ライターないわ。ちょっと火貸して」と繋いでいない方の手をザップの前に差し出した。
 ザップはしばらく目を瞬いて
ナマエを見つめていた。それからフと笑うと、紫煙をくゆらせてナマエの顔を覗き込んだ。

「……永遠の虚の底だろうがどこまでも追っかけてやっから、今日みたいにイイコで待ってろよ」



「おはようございますザップさん!」
「お、オウ……なんだその満面の笑顔は……気持ち悪りいな……あ旦那、スターフェイズさん、これ
ナマエからっす。昨日の詫びにって」
「ほお、君の彼女はしっかりしているんだなザップ」
「気を遣わせてしまって申し訳ない……お礼の品は何にしようか」
「クラウスさんがまた返したら永遠にループしませんか?」
「ザップさん、これ俺からのプレゼントっす。よかったら家に飾って……ブクク」
「ハ? なんだただの写真貰っても嬉しくね……テメェこのクソインモウ野郎!」

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