男が痴漢になる理由

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この前の選挙のとき、友人がセクハラを受けました。
ネットで仲良くなった男性に選挙の話をしてみたところ、「最近セックスしてる?俺とどう?気持ちいいから」といった言葉を投げつけられたそうです。


彼女はそれでも話を続け、最終的には僕(大西)に投票してくれることになったと言っていました。
ちなみに理由は「千葉大卒(高学歴?)だから」とのことだったと。


どんな1票も1票であることに変わりはないし、彼女の頑張りには本当に感謝しています。


でも、気持ち悪い。


なんで会ったこともない相手に性交渉を持ちかけられるのか、その神経。
それを相手がどう受け止めるのかがわからないのか、あるいはわかってやっているのか。


セクハラをする人は、学歴やその他様々なモノサシで「人間に序列をつけたがる」傾向があるように感じます。


関連して、この本を読みました。




痴漢を主題に書かれていますが、セクハラをはじめ性暴力全般にかかわる問題かと思います。


「露出の多い女性は痴漢されたい、されても仕方ない」
「最初は嫌がっても痴漢されているうちに気持ち良くなる」
「ちょっと触るくらいなら。もっとひどいことをしているヤツはたくさんいる」
「女性は痴漢されたいという願望を持っている」
「露出の多い女性は性欲が強い」
「隙の多い女性は痴漢されても仕方ない」
「今週も1週間仕事を頑張ったから痴漢してもいい」
「こんな惨めな気分になったのは女性のせいだ。だから痴漢する」
「女性は痴漢されることで性的満足を得る」
「相手から近付いてきたんだから痴漢してもいい」
「この路線は痴漢が多いから、自分もやっていい」
「まだ目標人数に達していないから、もう1人くらい触らないと」
「女性の10人に1人は痴漢されることを望んでいる」
「自分も被害にあったことがあるから痴漢するのは仕方ない」
「妻とセックスレスだから痴漢するのは仕方ない」
「スイッチが入り、気づいたら触っていた」
「ちょっと触ったくらいで、女性も何か減るわけじゃない」


逮捕された痴漢たちが言っていた言葉。吐き気がしますね。
極度に歪んだ認知。


で、ここからが大事です。
なぜここまで歪んだ認知を彼らは持ってしまえるのか?


この本に書かれている一番大事な点は、『痴漢(セクハラを含む性犯罪・性暴力)の動機は、性欲だけではない。女性に対する支配欲である』ということです。





社会生活の中で生まれるストレスに対し、「自分より弱いものを支配し、征服し、思い通りにすることで優越感にひたり、心を安定させる」。
これが痴漢やセクハラ、性犯罪の強烈な動機になっています。いじめと同じ構図ですね。


女性が嫌がり、追いつめられ、傷つけられているからこそ優越感も高まり、気分が高揚するんだと。
被害者からすれば身勝手の極みと言える発想です。


よく言う「痴漢するくらい性欲がたまってるなら風俗に行け!」論が無意味なのも、ここに理由があります。
風俗では相手は嫌がってくれないから支配欲が解消されず、満たされないんでしょう。筆者が指摘しているように、風俗に通いながら痴漢をする人間もたくさんいます。


「男性は女性よりも上に立つ存在である」という、歪んだ価値観がこの国には蔓延しています。
普段は隠している人でも、ストレスがたまったり自分が弱っているときに、この価値観は顔を出してきます。
その価値観が土壌となって「女性を傷つけて支配したい。そのくらいやってもいい、相手も何か減るもんじゃないんだし」という、本来あってはならない発想を受け入れてしまい、なし崩し的に認知を歪ませていきます。


それを根本的に乗り越えていくためには、「女性と男性は対等である」「女性の尊厳を傷つけることは許されない」という、当たり前と言えば当たり前の、新しい価値観を獲得していくことが必要です。


筆者は、痴漢は依存症であり治療の対象だと言います。
そして歪んだ価値観を変えていくために長い時間をかけ「あなたの言葉を被害者が聞いたらどう思うだろう?」と問いかけ続け、「生き方の回復」をめざすのだと。


僕の友人を傷つけた、どっかの誰かさん。
あなたも生き方を回復し、人の尊厳を傷つけずに生きられる人間になってほしい。これ以上あなたによって傷つけられる人が増えないように。