法律、経済、会計等の高度な専門知識を駆使し、社会の動きを鋭敏に察知して、税のスペシャリストとして活躍できる国税専門官。
転勤の幅も狭く、勤続年数に応じて、税理士の科目免除も得られます。
その業務内容から「もっとも潰しの効く公務員」とも称される国税専門官。
以上から国税専門官を志望する受験生は決して少なくありません。
本稿では、国税専門官の仕事内容から試験科目、難易度、筆記試験・面接試験対策まで徹底解説します。
ぜひ参考にして、自信をもって国税専門官試験にチャレンジしてください!
目次
令和4年度(2022年度)国税専門官の試験日程
申込受付期間 | 3月18日(金)~4月4日(月) |
第1次試験日 | 6月5日(日) |
第1次合格発表日 | 6月28日(火) |
第2次試験日 | 7月4日(月)~7月15日(金)※土日除く |
最終合格者発表日 | 8月16日(火) |
国税専門官とは?
国税専門官とは、国税局や税務署において適正な課税を維持し、租税収入を確保するため、法律・経済・会計等の専門知識を駆使し税務のスペシャリストとして活躍する国家公務員です。
※関連コラム:国家公務員「専門職」とは?種類一覧・試験制度・日程・難易度を解説
所属官庁は財務省の外局である国税庁です。
国税専門官として採用された後は、税務大学校和光校舎(埼玉県和光市)において約3か月間の専門官基礎研修修了後、採用局管内の各税務署に配属されます。
このような研修や実務経験を得て、以下のいずれかの専門職に就きます。
- 国税調査官
- 国税徴収官
- 国税査察官
国税調査官
国税調査官は、各種税法に基づき、納税義務者である個人や会社等に対して、適正な納税申告が行われているかどうかの調査・検査を行うとともに申告に関する指導などを行います。
国税徴収官
国税徴収官は、定められた納期限までに納付されない税金の督促や滞納処分を行うとともに納税に関する指導などを行います。
国税査察官
国税査察官は、裁判官の許可状を得て、大口・悪質な脱税の疑いがある者に対して捜索・差押等の強制調査を行い、刑事罰を求めるため検察官に告発します。
※出典:国税庁HPの記載
国税専門官の待遇は?
給与
国家公務員の給与は身分保障の観点から、法律で定められていますが、国税専門官は、一般職の公務員より「専門職」ということから、基準となる給与が高めです。
もちろん職種による違い、勤務地による手当などから差は生じますが、参考までに国税専門官の初任給は以下の通りです。
※出典:国税庁資料より
採用区分 | 俸給月額 | 東京都特別区勤務の場合 |
国家公務員総合職 | 182,700円 | 219,240円 |
国税専門官 | 204,300円 | 245,160円 |
もっとも、勤務成績や昇任、移動などにより勤務年数を経るにつれ、個人差が生じてきます。
勤務地と転勤
最終合格者は採用候補者名簿に記載され、希望する国税局の採用面接を経て採用されることになります。
ただ、組織に努める場合の常で、必ずしも希望が通るとは限りません。
希望する国税局の志望者が多くて採用予定人数が埋まってしまうこともあります。
その場合、欠員が出た国税局から採用を打診されることもあります。
転勤は、原則として採用された全国12の国税局(事務所)管内に限定されます。基本的には、採用局管内で転勤します。
転勤のサイクルは2~3年で異動しているケースが多いです。
筆者の教え子の中には、勤務成績が優秀であることから大阪国税局管轄から本省(財務省)に異動になり、現場で培った経験や知識を政策立案に反映する業務を担うよう期待された方もいます。
意欲、適性、能力等に応じて、海外勤務となる場合もあります。
アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、中国、シンガポールなどで、主として海外税務情報の収集などの事務に従事したり、領事館や国際機関等でも活躍しています。
国税専門官の試験制度は?
国税専門官の受験資格
他の国家公務員同様、年齢制限と国籍要件(日本国籍を有していること)をクリアしていれば、学歴に関係なく受験できます。
採用予定人数と倍率(受験人数)
申込者 | 受験者 | 1次試験合格者 | 最終合格者 | 倍率 | 採用予定人数 | |
2021年 | 13,163 | 9,733 | 7,415 | 4,193 | 3.1 | 1,470 |
2020年 | 14,131 | 9,052 | 7,189 | 3,903 | 2.3 | 1,350 |
2019年 | 14,238 | 10,490 | 6,154 | 3,514 | 3.0 | 1,200 |
2018年 | 15,884 | 11,678 | 6,075 | 3,479 | 3.4 | 1,200 |
試験科目と出題数(2020年のデータ)
試験 | 試験種目 | 内容 | 配点 |
1次試験 | 基礎能力試験 (5肢択一) |
・一般知能 27題 |
2/9 |
専門試験 (5肢択一) |
〇出題数70題から40題解答 ・必須:2科目16題(民法・商法、会計学(簿記含む)) ・選択:9科目54題(各6題)から4科目24題選択 (憲法・行政法、経済学、財政学、経営学、政治学・社会学・社会事情、英語、商業英語、情報数学、情報工学) |
3/9 | |
専門記述※ | 5科目(憲法、民法、経済学、会計学、社会学各1題)のうち1科目選択 | 2/9 | |
2次試験 | 人物試験 | 人柄、対人的能力などについての個別面接 | 2/9 |
身体検査 | 主として胸部疾患(胸部エックス線撮影を含む。)、尿、その他一般内科系検査 | ※※ |
※「専門記述」は、第1次試験合格者を対象に評定した上、最終合格者決定に当たり、他の試験種目の成績と総合する
※※…合否の判定のみを行う
国家専門職は同じ日に一次試験が実施されるので、他の国家専門職(財務専門職、労働基準監督官など)とは併願できません。
ですが、国家一般職や地方上級など他の公務員試験と併願しやすいのが特徴です。
その理由は、一次試験の日程が異なることと、重複する試験科目が多いことです。
国税専門官の試験対策
筆記試験対策
国税専門官の試験科目の4つの特徴に応じて、筆記試験の戦略を考えましょう。
①基礎能力試験は一般知能のウェイトが高い
科目数の割に点数配分が少ない知識分野よりも、一般知能の勉強にエネルギーを割くべきです。
②専門試験の配点が基礎能力試験の1.5倍である
基礎総力試験は、4〜5割の得点で十分と考え、専門試験で6〜7割を取れるように勉強時間の配分を考えましょう。
また、英語が得意であれば、英語の2科目、IT知識に長けているのであれば情報系2科目を選択することをお勧めします。
いずれも、専門課程で勉強された方にとっては、難易度は決して高くないので得点源になります。
③専門科目の必須科目に商法、会計学が含まれる
併願を考えると、他の職と共通する科目の勉強をするのが鉄則ですが、国税専門官の悩みどころは、必須科目の商法と会計学です。
国税専門官が第一志望という方は、会計学は難易度も高くないので勉強したいところです。
ですが、商法は範囲が膨大な割に出題も2点ほどなので、捨て科目にしても良いでしょう。
④専門記述が課される
専門記述は、第1次試験合格者を対象に評定した上、最終合格者決定に当たり、他の試験種目の成績と総合するもので、合否に与える影響は非常に低いと考えて良いでしょう。
択一でしっかり基準点に達していれば、あとは面接勝負です。
よほど、面接試験で拮抗する受験生がいない限り、専門記述の出来不出来で合否が左右されることはないと言えます。
面接対策は何より重要
どこの人事担当者も異口同音に仰るのが、「人と話しができること」が大切だということです。
国税専門官も例外ではありません。
適切な課税のために情報収拾、立ち入り調査や指導、督促や滞納処分……いずれもコミュニケーション能力の有無がものを言います。
また、誰しも税金は取られたくないもので、国税専門官は職務上、話し相手から好かれることはあまりありません。
なので、強い精神力が要求されます。
よく、国税専門官は体育会系のノリの方が多いとされるのもこの辺りが理由なのではないでしょうか。
従って、自己分析をしっかりと行って、国税専門官の気質が合う、好きだと思われるならば、自信を持って面接に臨むべきです。
また、面接で多少厳しい対応をされても、めげたり、不機嫌にならないことです。
筆者の教え子に、どうしても国税専門官になりたいと受験できなくなるまで(年齢制限オーバー)頑張ると腹をくくった受験生の話をしましょう。
アルバイト先での評価も高く「正社員にならないか」と意誘いに「僕には片思いの相手がいますから」と何度か受験を繰り返し、いよいよ今年が最終!という年に面接までこぎつけました。
ところが、面接の終盤に「君、もういいよ」といわれ、最悪に落ち込んでいました……が、見事合格を果たしました。
“一念岩をも通す”の良い例ですね。
「自分に合う職場かもしれない、やりたい仕事がそこにあるかも」。
そう思われたなら、専門科目や、専門記述の有無だけで受験を諦めたりすることなく、臆することなくチャレンジしてください。
筆記試験のハードルなんて、世巷で噂されている以上に低いものですから。
国税専門官と税理士資格
最後に、国税専門官になると税理士試験の科目中、
- 勤続10年以上で税法3科目の試験が免除
- 勤続23年以上で会計学・税法の全試験科目が免除
を得られることを加筆しておきます。
士業としてフリーランスで働くことと、国家公務員として身分保障があることは、真逆の生き方と言えるかもしれませんが、将来の選択肢の一つとして頭の片隅に置いておくのも良いかも知れませんね。
最後に
いかがでしたでしょうか?国税専門官の仕事、待遇、国税専門官試験の概要等がお判りいただけたのではないでしょうか?
アガルートアカデミーでは、過去問等を徹底的に分析した上で、国税専門官試験対策を万全にしたカリキュラムをご用意しております。
国税専門官試験の最短合格を目指される方はぜひご検討ください。
アガルートアカデミー国税専門官対応講座
地方上級・国家一般職+専門職・裁判所カリキュラム
主要な公務員試験に加え国家専門職や裁判所などほぼすべての公務員試験に対応可能なカリキュラム