Colabo仁藤夢乃さんの「キモイ」は女性を守るセンサー 少しでもマシな世界になりますように

おんなの話はありがたい

北原みのり

2023/01/11 16:00

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

 仁藤さんのそもそもの原点は、東日本大震災後のボランティア活動だ。大学生だった仁藤さんは、宮城県石巻市の避難所で長期滞在し、避難所で出会った高校生たちの声を聞いてきた。高校生たちの「何かしたい」という思いを支援しようと、地元の製菓会社にかけあい、女川高校の生徒たちと「たまげ大福だっちゃ」という和菓子のプロデュースに奔走した。「たまげ大福だっちゃ」は、2011年の9月に発売されたが、被災地の高校生が自ら復興支援にたちあがったこの活動を、多くのメディアが希望として報道したものだった。Colaboは、このプロジェクトをきっかけにつくられた。

 仁藤さん自身が、街をサバイブしてきた女の子だった。「15歳でも働けるよ」と街で男に誘われ、はやり始めていたメイドカフェでアルバイトをしたこともある。「ずっと、身を守ることばかり考えていました」と取材中に話してくれたことが、私の心には残っている。そういう仁藤さんの人生を変えたのが、フィリピン旅行をしたときに見た日本人の買春男性たちだった。彼らは、かつて渋谷で女子高校生だった自分に声をかけてきた男たちと同じ顔をしていたという。なぜ渋谷で起きていることと、フィリピンで起きていることが同じなのだろう。社会の仕組みを知りたい。そういう思いで必死に学び、大学卒業間際の3ケ月間で書き上げたのが『難民高校生』(英治出版)だ。手にした印税75万円を頼りに、大学卒業後も就職ではなくColaboの活動を続けてきたのだ。

 仁藤さんが大学を卒業した翌年、2014年にアメリカ国務省は、日本のJKビジネスが人身取引の温床になっているとの調査報告を発表している。当時、秋葉原を中心にJKを売りにした散歩や、添い寝、マッサージなどの店が次々にオープンしていた。「観光の仕事」というアルバイトかと思って応募したら、男性客に「性器触ったらいくら?」「キスはいくら?」などと聞かれる、男たちが交渉できる店だったりすることは、よくある話、だった。そういうなか、仁藤さんは夜の街に出かけては、「帰るとこある?」「ご飯食べてる?」と女の子たちに声をかけ始めた。時には自宅に泊め、食事を作り話を聞き、必要な支援につなげることもあった。警察に保護された女の子を迎えに行ったことは数え切れない。

NEXT

「キモイ」というセンサー

1 2 3

あわせて読みたい

  • モテテク指南の女児向け雑誌が密かに炎上 専門家が語る男を立てる「さしすせそ」の問題点

    モテテク指南の女児向け雑誌が密かに炎上 専門家が語る男を立てる「さしすせそ」の問題点

    週刊朝日

    5/20

    YouTuberワタナベマホト問題、女の脇が甘い?「デジタル性暴力の典型的なやり口」と被害者支援団体

    YouTuberワタナベマホト問題、女の脇が甘い?「デジタル性暴力の典型的なやり口」と被害者支援団体

    dot.

    1/30

  • 誹謗中傷から殺人予告まで…差別と闘う苦しさ 被害者が声をあげなくてもいい社会に

    誹謗中傷から殺人予告まで…差別と闘う苦しさ 被害者が声をあげなくてもいい社会に

    AERA

    2/6

    “国語専門塾”で同年代と悩み共有も 「1人じゃない」居場所

    “国語専門塾”で同年代と悩み共有も 「1人じゃない」居場所

    AERA

    9/24

  • 「ヤバイよ」藤田ニコルでは防げない 悪質化するJKビジネス

    「ヤバイよ」藤田ニコルでは防げない 悪質化するJKビジネス

    週刊朝日

    7/23

  • 別の視点で考える

    この人と一緒に考える

    メルマガの登録はこちら

    独自の視点の最新ニュースをお届け!

    AERA dot.をフォロー

    話題のニュースで
    世の中を一緒に考えていきませんか?

    いま読まれています

    • Colabo仁藤夢乃さんの「キモイ」は女性を守るセンサー 少しでもマシな世界になりますように

      Colabo仁藤夢乃さんの「キモイ」は女性を守るセンサー 少しでもマシな世界になりますように

    • 2つの理由から「セックスレス」になり、離婚を考える38歳女性に鴻上尚史が丁寧な分析で浮き彫りにした「最重要」課題とは?

      2つの理由から「セックスレス」になり、離婚を考える38歳女性に鴻上尚史が丁寧な分析で浮き彫りにした「最重要」課題とは?

    • 来季は“崖っぷち”の選手も 期待外れだった選手たち【ワーストナイン2022 セ・リーグ編】

      来季は“崖っぷち”の選手も 期待外れだった選手たち【ワーストナイン2022 セ・リーグ編】

    • 家康はなぜ「松平」姓を捨てたのか?2年で将軍職を譲った理由は?徳川家と江戸時代をめぐる5つの疑問

      家康はなぜ「松平」姓を捨てたのか?2年で将軍職を譲った理由は?徳川家と江戸時代をめぐる5つの疑問

    • あおり運転加害者に「500万以上の高級車」が多い理由 加害者の根底にある“勘違い”とは

      あおり運転加害者に「500万以上の高級車」が多い理由 加害者の根底にある“勘違い”とは

    トレンド