銅の種類・特徴・用途とは~非鉄金属早わかりガイド③

はじめに

この記事では、代表的な非鉄金属材料である銅の種類・性質・用途を紹介します。これまでの記事で、非鉄金属材料・加工方法の基礎知識や、材料選定のポイント、アルミニウム材料について分かりやすく紹介していますので、そちらも合わせてご参考ください。

また、以下の記事では金属材料やプラスチック材料について、種類や性質、用途についてご紹介しています。こちらも合わせてご参考下さい。

銅および銅合金の概要

銅(copper)は、金属材料を見渡しても、熱伝導性・電導性・加工性・展延性に優れているため、様々な電気・電子製品の部品材料として多用されています。特に、銅の電気抵抗は導電率を表す国際基準(IACS)となっています。
工業用として利用される銅合金(copper alloy)では、Cu-Zn系(黄銅: brass)が主要でありますが、さらに種々の第3元素を加えて強度特性、被削性、耐海水性、接合性などを改善した合金が用いられています。

展伸用銅合金の特色と、用途例

<表1>に主な展伸用銅合金の特色とその用途例を、また、<表2>にそれら機械的性質を示します。

<表1>主な展伸用銅合金の特色と用途例
名称 主要合金 特色および用途例
無酸素銅 C1020 電気・熱の伝導性、展延性、絞り加工性に優れ、溶接性・耐食性・耐候性がよい。還元性雰囲気中で高温に加熱しても水素ぜい化を起こすおそれがない。電気用、化学工業用など
タフピッチ銅 C1100 電気・熱の伝導性、展延性、絞り加工性に優れ、溶接性・耐食性・耐候性がよい。電気用、蒸留がま、建築用、化学工業用、ガスケット、器物など
りん脱酸銅 C1201 展延性・絞り加工性・溶接性・耐食性・耐候性・電気・熱の伝導性がよい。P量が少ないと還元性雰囲気中で高温に加熱しても水素ぜい化を起こすおそれがない。ふろ釜、湯沸器、ガスケット、建築用、化学工業用など
丹銅 C2100 色沢が美しく、展延性・絞り加工性・耐候性がよい。建築用、装身具、化粧用ケースなど
黄銅 C2600 展延性、絞り加工性に優れ、めっき性がよい。端子コネクタなど
C2680 展延性、絞り加工性に優れ、めっき性がよい。スナップボタン、カメラ、魔法瓶などの深絞り用、端子コネクタ、配線器具など
C2720 展延性、絞り加工性がよい。浅絞り用など
C2801 強度が高く、展延性がある。打ち抜いたまままたは折り曲げて使用する配線器具部品、ネームプレート、計器板など
快削黄銅 C3560 特に被削性に優れ、打抜き性もよい。時計部品、歯車など
C3710 特に打抜き性に優れ、被削性もよい。時計部品、歯車など
すず入り黄銅 C4250 耐応力腐食割れ性、耐摩耗性、ばね性がよい。スイッチ、リレー、コネクタ、各種ばね部品など
アドミラルティ黄銅 C4430 耐食性、特に耐海水性がよい。厚板は熱交換器用管、薄板は熱交換器、ガス配管用管など
ネーバル黄銅 C4621 耐食性、特に耐海水性がよい。厚板は熱交換器用管、薄板は船舶海水取入れ口用など
アルミニウム黄銅 C6140 強度が高く、耐食性、特に耐海水性、耐摩耗性がよい。機械部品、化学工業用。船舶用など
楽器弁用黄銅 C6711 打抜き性、耐疲労性がよい。ハーモニカ、オルガン、アコーディオンの弁など
白銅 C7060 耐食性、特に耐海水性がよく、比較的高温の使用に適す。熱交換器用、溶接管など
(JIS H 3100-2000より抜粋)
<表2>展伸用銅合金の機械的性質
合金番号 質別 主要組成(1)
mass%
厚さ
mm
引張強さ
MPa
伸び
%
曲げ角度(2) 硬さ
HV
C1020 O Cu>99.96 0.3~30 195< 35< 180°
H 0.3~10 275< 180° 80<
C1100 O Cu>99.90 0.5~30 195< 35< 180°
H 0.5~10 275< 180° 80<
C1201 O Cu>99.96 0.3~30 195< 35< 180°
H 0.3~10 275< 180° 80<
C2100 O Zn:5.0 0.3~34 205< 33< 180°
1/2H 0.3~20 265~345 18< 180°
H 0.3~10 305< 180°
C2600 O Zn:30.0 1.0~30 275< 40< 180°
1/2H 0.3~20 355~440 28< 180° 85~145
H 0.3~10 410~540 180° 105~175
C2680 O Zn:34.0 1.0~30 275< 40< 180°
H 0.3~10 410~540 180° 105~175
C2720 O Zn:37.0 1.0~30 275< 50< 180°
H 0.3~10 410< 180° 105<
C2801 O Zn:39.5 1.0~30 325< 40< 180°
H 0.3~10 470< 90° 130<
C3560 1/4H Zn:35.0
Pb:2.5
0.3~10 345~430 18<
H 0.3~10 420<
C3710 H Zn:39.1
Pb:0.9
0.3~10 470<
C4250 O Zn:9.25
Sn:2.25
0.3~30 295< 35< 180°
1/2H 0.3~20 390~480 15< 180° 110~170
H 0.3~10 480~570 180° 140~200
C4430 F Zn:27.45
Sn:1.05
30> 315< 35<
C4621 F Zn:36.4
Sn:1.1
0.8~20 375< 20<
C6140 O Sn:2.5
Al:7.0
Mn<1.0
4~50 480< 35<
H 4~12 550< 25<
C6711 H Zn:34.82
Pb:0.55
Sn:1.1
Mn:0.53
0.25~1.5 190<
C7060 F Fe:1.4
Mn:0.6
Ni:10.0
0.5~50 275< 30<

注(1)中間値Cu:残 (2)厚さ:2mm以下  (JIS H 3100-2000より抜粋)

 

 

銅合金鋳物の特色と、用途例

Cu-Sn合金系(青銅: bronze)は、古くから用いられていた鋳物用銅合金でありますが、耐食性、特に耐海水性や耐摩耗性に優れているので船舶用部品等に広く用いられています。<表3>に主な銅合金鋳物の機械的性質と特色およびその用途例を示します。
また、銅合金鋳物の典型的な適用例となるエンジンやコネクタ部品を<写真1>に示します。

<表3>主な銅合金鋳物の機械的性質と特色および用途例
記号(旧記号) 主要合金元素量
mass%
引張強さ
N/mm2
伸び
%
ブリネル
硬さHB
合金の特色および用途例
CAC101
(CuCl)
Cu>99.5 175< 35< 35<(1) 鋳造性がよい。導電性、熱伝導性および機械的性質がよい。羽口、冷却板、熱風弁、電極ホルダーなど
CAC103
(CuC3)
Cu>99.9 135< 40< 30<(1) 銅鋳物の中では導電性および熱伝導性が最もよい。転炉用ランスノズル、電気用ターミナル、一般電気部品など
CAC202
(YBsC2)
Zn:24.0~34.0
Pb:0.5~3.0
195< 20< 黄銅鋳物の中で比較的鋳造が容易である。電気部品、計器部品、一般機械部品など
CAC203
(XBsC3)
Zn:30.0~41.0
Pb:0.5~3.0
245< 20< CAC202よりも機械的性質がよい。給排水金具、電気部品、建築用金具、一般機械部品、日用雑貨品など
CAC301
(HBsC1)
Zn:33.0~42.0
Fe: 0.5~1.5
Al: 0.5~1.5
Mn: 0.1~1.5
430< 20< 強さ、硬さが高く、耐食性、じん性がよい。船用プロペラ、プロペラボンネット、軸受、弁座、レバーアーム、ギァ。船舶用ぎ装品など
CAC303
(HBsC3)
Zn: 22.0~28.0
Fe: 2.0~4.0
Al: 3.0~5.0
Mn:2.5~5.0
635< 15< 165<(2) 特に強さ、硬さが高く、高荷重の場合も耐摩耗性がよい。低速高荷重の摺動部品、大形バルブ、ステム,ブシュ、ウォームギア、スリッパー、カム、水圧シリンダ部品など
CAC304
(HBsC4)
Zn:22.0~28.0
Fe:2.0~4.0
Al:5.0~7.5
Mn:2.5~5.0
755< 12< 200<(2) 高力黄銅鋳物の中で特に強さ、硬さが高く、高荷重の場合にも耐摩耗性がよい。低速高荷重の摺動部品、橋梁用支承板、軸受、ブシュ、ウォームビア、耐摩耗板など
CAC403
(BC3)
Sn:9.0~11.0
Zn:1.0~3.0
245< 15< 耐圧性、耐摩耗性、機械的性質がよく、かつ、耐食性がCAC402よりもよい。軸受、スリーブ、ブシュ、ポンプ胴体、羽根車、バルブ、歯車、電動機器部品など
CAC502A
(PBC2)
Sn:9.0~12.0 195< 5< 60<(3) 耐食性、耐摩耗性がよい。歯車、ウォームギア、軸受ラブシュ。スリーブ、一般機械部品など
CAC503A Sn:12.0~15.0 195< 1< 80<(3) 硬さが高く、耐摩耗性がよい。摺動部品、油圧シリンダ、歯車、製紙用各種ロールなど
CAC701
(AlBC1)
Al:8.0~10.0
Fe:1.0~3.0
Ni:0.1~1.0
Mn:0.1~1.0
440< 25< 80<(3) 硬さ、じん性が高く、曲げにも強い。耐食性、耐熱性、耐摩耗性、低温特性がよい。耐酸ポンプ、軸受、ブシュ、歯車、バルブシート、プランジャ、製紙用ロールなど
CAC703
(AlBC3)
Al:8.5~10.5
Fe:3.0~6.0
Ni:3.0~6.0
Mn:0.1~1.5
590< 15< 150<(2) 大形鋳物に適し、強さが特に高く、耐食性、耐摩耗性がよい。船用プロペラ、羽根車、バルブ、歯車、ポンプ部品、化学工業用機器部品、食品加工用機械部品など
CAC801
(SzBC1)
Zn:9.0~11.0
Si:3.5~4.5
345< 25< 湯流れがよい。焼なましぜい性が少ない。強さが高く、耐食性がよい。船舶用ぎ装品、軸受、歯車など
注(1)(10/500) (2)(10/3000) (3)(10/1000) (JIS H 5120-1997より抜粋)
<写真1>銅合金鋳物(イメージ)
<写真1>銅合金鋳物(イメージ)

まとめ

ここでは、代表的な非鉄金属材料である銅について解説しました。他の記事では、非鉄金属材料・加工方法の基礎知識に加え、アルミニウム、その他非鉄材料(チタン・マグネシウム・ニッケル・鉛)について分かりやすく紹介していますので、そちらも合わせてご参考ください。

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