アルミニウムの種類・特徴・用途とは~非鉄金属早わかりガイド②

はじめに

この記事では、代表的な非鉄金属材料であるアルミニウムの種類・特徴・用途を紹介します。これまでの記事で、非鉄金属材料・加工方法の基礎知識や、材料選定のポイントについて分かりやすく紹介していますので、そちらも合わせてご参考ください。

また、以下の記事では金属材料やプラスチック材料について、種類や特徴、選定のポイント等の基礎知識を紹介しています。こちらもご参考下さい。

アルミニウム(Al)が持つ、8つの優れた特徴

アルミニウム(aluminum)の原料は酸化アルミニウムAl2O3(アルミナ)であり、地中埋蔵量は酸素や珪素に次いで多く、鉄の2倍ほどです。しかし、アルミニウムが金属として用いられるようになったのは、電解精錬法が確立された20世紀になってからです。現在のように多量に用いられるようになったのは、アルミニウムが以下8つの優れた特性を持っているからです。

比強度:比重が2.7で、鉄(7.8)や銅(8.9)の約1/3であるのに対し、添加元素を加えて合金にすると強さが倍増するので比強度が高くなります。いずれの合金も添加元素量は10mass%以下であるので、比重はほとんど変りません。
耐食性:大気中でも表面に強固で安定な酸化皮膜を形成するので耐食性に優れています。人工的に酸化皮膜をつくるアルマイト処理により耐食性が向上するとともに着色や模様を描くことができます。
加工性:延性が高く、塑性加工に適し、生産性に優れています。
鋳造性:融点(660℃)が低く、共晶合金にするとさらに融点が下がり、流動性が良好です。
電気および熱伝導率:電気伝導率(37.7m/Ω・mm2)は同じ質量で銅の約2倍、熱伝導率(237W/m・K)は鉄の約3倍です。
光・熱の反射率:鏡面にしたアルミニウム表面では放射エネルギーの90%以上を反射します。
色彩:純白色で塗装を必要とせず、毒性もないので、日用品や食品・医薬品の包装等に使用できます。
その他:非磁性で、真空特性(真空中でもガス放出率が低い)に優れ、低温ぜい性が生じません。また、使用済み製品を再溶解してリサイクルする時の使用エネルギーは電解精錬で使用するエネルギーの3%で済みます。

アルミニウム合金は、展伸用合金と鋳物用合金の2つに分類ができる

アルミニウム合金(aluminum alloy)は、塑性加工に適する「展伸用合金」と金型鋳造やダイカスト用の「鋳物用合金」があります。更に<図1>に示すように、そのまま製品とするものと時効処理などの熱処理施するものに分類できます。

<図1>アルミニウム合金の種類
<図1>アルミニウム合金の種類

展伸用アルミニウム合金:非熱処理型として3000系(Al-Mn合金)、4000系(Al-Si合金)、5000系(Al-Mg合金)がありますが、いずれも合金元素の添加量は1~3mass%程度であり、アルミニウムの軽量性は変わらず、絞り加工性や溶接性も良好です。
熱処理型展伸用アルミニウム合金:2000系(Al-Cu-Mn合金)、6000系(Al-Mg-Si合金)、7000系(Al-Zn-Mg合金)があります。

また、実用合金はJISで規格化されており、<図2>に示すような記号表示法があります。

<図2>アルミニウム合金のJIS記号表示法
<図2>アルミニウム合金のJIS記号表示法

「調質」は塑性加工と熱処理で行い、組織や機械的性質を調整することです。特に、時効処理は溶体化処理後、そのまま室温に保持して時効硬化する自然時効と高温で保持する人工時効があります。<表1>にこれら調質記号の表示法を示します。

<表1>JIS表示の調質記号(JIS H 0001)
記号(1) 処理法
F 圧延や押出しで製造したままのもの
T1 (TA) 熱間加工後冷却、自然時効したもの
T2 (TC) 焼なましたもの(鋳物のみ)
T3 (TD) 溶体化処理後、加工硬化したもの
T4 (TB) 溶体化処理後、自然時効したもの
T5 (TE) 熱間加工から焼入れ後、人工時効したもの
T6 (TF) 溶体化処理後、焼もどししたもの
T7 (TM) 溶体化処理後、安定化処理したもの
T8 (TH) 溶体化処理後、冷間加工と焼もどししたもの
T9 (TL) 溶体化処理後、焼もどして冷間加工したもの
T10 (TG) 熱間加工後冷却、冷間加工し人工時効したもの

 

展伸用アルミニウム合金の特徴と用途

<表2>に主な展伸用アルミニウム合金板材・棒材などの機械的性質を、また<表3>にそれらの合金の特性と用途例を示します。

<表2>一部の展伸用アルミニウム合金板材の機械的性質
合金記号 材料形状 質別 厚さmm 断面積(1)
mm²
0.2耐力
MPa
引張強さ
MPa
伸び
備考(通称等)
1070 P、BE H112 15< 55<
2014 P O 0.5~1.3 110> 215> 16<
T4 0.5~6 245< 410< 14<
BE、S T6 160> 410< 470< 7<
2017 P O 0.5~25 110> 215< 12< ジュラルミン
T4 0.5~1.6 195< 355< 15<
BE、S T4 700> 215< 345< 12<
2024 P O 0.5~13 95> 215> 12< 超ジュラルミン
T4 0.5~6 275< 430< 15<
BE、S O 125> 245> 12<
T42 160> 285< 390< 10<
5083 P H112 4~6.5 125< 285< 11<
BE、S H112 200> 110< 275< 12<
7003 BE、S T5 *12~25 235< 275< 10< 超々ジュラルミン
7075 P O 0.5~13 145> 275> 10<
T6 0.5~1.0 460< 530< 7<
BE、S O 200> 165< 275< 10<
注(1) 径または最小対辺距離の範囲を対象 (JIS H 4000-1999より抜粋)

 

 

<表3>展伸用アルミニウム合金の特性と用途例
合金記号 主要合金元素(1)
mass%
特性および用途例
1070 Al>99.7 純アルミニウムのため強度は低いが、成形性、溶接性、耐食性がよい。反射板、照明器具、装飾品、化学工業用タンク、導電材など
1100 Al>99.0 強度は比較的低いが、成形性、溶接性、耐食性がよい。一般器物、建築用材、電気器具、各種容器、印刷板など
1200 Al>99.0 強度は比較的低いが、溶接性、耐食性がよい。熱交換器など
2014 Cu:4.9
Si:0.8
Mn:0.8
Mg:0.5
強度が高い熱処理合金である。合せ板は、表面に6003をはり合わせ耐食性を改善したものである。航空機用材、各種構造材など
2017 Cu:4.0
Mn:0.7
Mg:0.5
熱処理合金で強度が高く、切削加工性もよい。航空機用材、各種構造材など
2029 Cu:4.9
Mg:1.5
Mn:0.6
2017より強度が高く、切削加工性もよい。合せ板は、表面に1230をはり合わせ耐食性を改善したものである。航空機用材、各種構造材など。
3003 Mn:1.2
Cu:0.12
1100より若干強度が高く、成形性に優れ、耐食性もよい。飲料缶、屋根板、ドアパネル材、カラーアルミ、電球口金など
3203 Mn:1.2
Cu:0.12
5052 Mg:2.5 中程度の強度をもった代表的な合金で、耐食性、成形性、溶接性がよい。船舶・車両・建築用材、飲料缶など
5056 Mg:5.1
Mn:0.12
Cr:0.12
耐食性、被削性、陽極酸化処理性がよい。光学機器・通信機器部品、ファスナなど
5083 Mg:4.45
Mn:0.6
Cr:0.15
非熱処理合金中最高の強度をもつ合金の一つであるが、合せ板は、表面に7072をはり合わせ、耐食性を改善したものである。航空機用材、スキー用材など
6061 Mg:1.0
Si:0.6
Cu:0.2
Cr:0.2
耐食性が良好で、主にボルト・リベット接合の構造用材として用いられる.船舶・車両・陸上構造物など
6063 Mg:0.7
Si:0.9
6061より強度は低いが、耐食性、表面処理性もよい。熱交換器部品など
7N01 Zn:4.5
Mg:1.5
Mn:0.5
強度が高く、耐食性も良好な溶接構造合金である。車両その他陸上構造物など
7003 Zn:5.8
Mg:0.8
7N01より強度は若干低いが、耐食性、表面処理性もよい。溶接構造用材など
7075 Zn:5.6
Mg:2.5
Cu:1.6
アルミニウム合金中最高の強度をもつ合金の一つであるが、合せ板は、表面に7072をはり合わせ、耐食性を改善したものである。航空機用材、スキー用材など

注(1)合金組成は中間値 (JIS H 4000-1999より抜粋)

 

時効硬化性合金:A2017はジュラルミン(duralumin)としてよく知られた合金です。
A2024合金:Mn量を減らし、代わりにMg量を増加したもので、超ジュラルミン(super duralumin)と呼ばれています。
7000系の合金:ジュラルミンの欠点であった耐食性や時期割れを改良したもので、超々ジュラルミン(extra super duralumin)と呼ばれ、航空機以外に自動車などの輸送用機器材料として広く用いられています。

自動車用エンジン部品として多く採用される、アルミニウム合金鋳物の特徴と用途

<表4>に主なアルミニウム合金鋳物として、金型鋳物および砂型鋳物(F材、AC1B、AC5A O材)の化学成分と機械的性質を示します。

<表4>アルミニウム合金鋳物(代表例)の化学成分と機械的性質
種別記号 主要合金成分
mass%
調質(1) 金型鋳物 砂型鋳物
引張強さ
MPa
伸び
硬さ
HB
引張強さ
MPa
伸び
硬さ
HB
AC1B ・Cu:4.5
・Mg:0.25
T4 230< 8< ~95 290< 4< ~90
AC2A ・Cu:4.0
・Si:5.0
F 180< 2< ~75 150< ~70
T6 270< 1< ~75 230< ~90
AC5A ・Cu:4.0
・Ni:2.0
・Mg:1.5
O 180< ~65 150< ~65
T6 260< ~100 230< ~90
注(1)F材は、製造のまま、O材は、軟質

 

また、ダイカスト成形に適したアルミニウム合金ダイカストがあり、ADCの記号で表示されています。<表5>に、主なアルミニウム合金ダイカスト(aluminum alloy die castings)の特色と使用部品例を示します。

<表5>アルミニウム合金ダイカストの特色と使用部品例
記号 合金系 特色および使用部品例
ADC1 Al-Si系 耐食性、鋳造性がよい。耐力が幾分低い。自動車メインフレーム、フロントパネル、自動製パン器内釜。
ADC2 Al-Si系 耐食性がADC6に次いでよく、鋳造性もよく、じん性が大きい。
ADC3 Al-Si-Mg系 衝撃値と耐力が高く、耐食性もADC1とほぼ同等で、鋳造性がADC1より若干劣る。自動車ホイールキャップ、二輪車クランクケース、船外機プロペラなど。
ADCS Al-Mg系 耐食性が最もよく、伸び、衝撃値が高いが、鋳造性が悪い。農機具アーム、船外機プロペラ、釣具レバーなど。
ADC6 Al-Mg-Mn系 耐食性はADC5に次いでよく、鋳造性はADC5より若干よい。
ADC7 Al-Si系 ADC1よりじん性、耐食性およびかしめ性がよいが、鋳造性が若干劣る。
ADC8 Al-Si-Cu-Mn系 ADC10より強度があるが、鋳造性がADC10より若干劣る。
ADC10 Al-Si-Cu系 機械的性質、被削性、鋳造性がよい。自動車エンジン部品、二輪車用ショックアブソーバ、エンジン部品、ケース類、農機具用ケース類、VTRフレーム、カメラ本体、電動工具、ミシン部品、釣具、ガス器具、床板、エスカレータ部品など多くのアルミニウム製品。
ADC11 Al-Si-Cu系 機械的性質、被削性、鋳造性がよいが、かしめ性がADC10より若干劣る。
ADC12 Al-Si-Cu系 機械的性質、被削性、鋳造性がよい。使用部品例はADC10と同じ。
ADC14 Al-Si-Cu-Mg系 耐摩耗性がよく、湯流れ性がよく、耐力が高く、伸びが劣る。自動車自動変速機用オイルポンプ、二輪車用インサート、ハウジングクラックなど。
(JIS H 5302-2000より抜粋)

また、ダイカスト製品の典型的な適用例となる車載部品を<写真1>に示します。

<写真1>ダイカスト製品(イメージ)
<写真1>ダイカスト製品(イメージ)

まとめ

ここでは、代表的な非鉄金属材料であるアルミニウムについて解説しました。他の記事では、非鉄金属材料・加工方法の基礎知識に加え、銅、その他非鉄材料(チタン・マグネシウム・ニッケル・鉛)について分かりやすく紹介していますので、そちらも合わせてご参考ください。

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