テキサス大学オースティン校の大学院生Yuchen Guoさんを筆頭とする研究チームは、今から約110億年前の初期宇宙にすでに棒状構造を持つ渦巻銀河が存在していたとする研究成果を発表しました。研究チームが利用したのは「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡を使って取得された観測データです。
Sponsored
こちらの画像は、2つとも今から約107億年前(赤方偏移z=約2.136)の銀河「EGS-23205」を捉えたものです。左の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡で取得されたEGS-23205の姿ですが、円盤状の構造をしているようには見えるものの、棒状構造があるかどうかははっきりしません。いっぽう、ウェッブ宇宙望遠鏡で取得された右の画像を見ると、銀河の中心を貫く棒状構造と、湾曲した渦巻腕(渦状腕)を持つ渦巻銀河であることがわかります。
研究チームは今回、国際的な研究チーム「CEERS(Cosmic Evolution Early Release Science Survey)」がウェッブ宇宙望遠鏡を使って取得したデータに含まれる数百個の銀河を対象に、棒状構造を持っていそうな銀河を視覚的に数十個選び出して分析を行いました。その結果、今から約110億年前(z=約2.312)の銀河「EGS-24268」や前述のEGS-23205など、約80億年以上前に存在していた棒状構造を持つ銀河が合計6つ見つかったといいます。
関連:観測史上最も遠い天体「CEERS 93316」をジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測!(2022年8月)
渦巻銀河の棒状構造は、星の材料となるガスを銀河の中心領域に運び込むことで、銀河の進化に重要な役割を担ったと考えられています。研究に参加したテキサス大学オースティン校のShardha Jogee教授は、棒状構造の働きをサプライチェーンに例えて説明しています。
「製品の原料を港から内陸の工場へと運ぶように、棒状構造は銀河の中心領域へと強力にガスを輸送します。中心領域では銀河の他の部分と比べて10倍から100倍のペースでガスが新たな星へと変換されているのです」(Jogeeさん)
初期宇宙の銀河における棒状構造の発見という今回の成果についてJogeeさんは、初期の時代に銀河の星形成を加速させた新たな経路が銀河の進化モデルに追加されたことを意味すると指摘。研究チームは棒状構造の存在量を正しく予測するために今後も分析を続けるということです。
Source
- Image Credit: NASA/CEERS/University of Texas at Austin, Guo et al.
- UT Austin - James Webb Telescope Reveals Milky Way-like Galaxies in Young Universe
- Guo et al. - First Look at z > 1 Bars in the Rest-Frame Near-Infrared with JWST Early CEERS Imaging (arXiv)
文/sorae編集部