昨年11月末に発表された月刊ホビージャパン主催の『第25回全日本オラザク選手権』で金賞を受賞したモデラーのヨッシーさん(@uta_12241129)。実に9度目の挑戦で大きなタイトルを手にしたというが、そこに至るまでには辛酸を舐めた時期もあったという。苦しい時期を乗り越えて手にしたものは、“オラザク金賞”という栄冠だけではなかったという同氏が得たものとは?
【別カット】「ガンプラとは思えん!」上から見たらさらにスゴイ! ド迫力の “オラザク金賞受賞作”
■“切手サイズ”を受け入れた日も…苦しみ、悩み9回目のチャレンジで金賞に
――まずは、『第25回全日本オラザク選手権』で金賞を受賞おめでとうございます。率直な感想をお聞かせください。
【ヨッシー】うれしいです。一言でいえばもうこれです。シンプルすぎますかね。
――これまでに何度も挑戦されてきたと伺いました。
【ヨッシー】はい。私が初めてオラザクに挑戦したのは、第17回大会からですので、9回目の挑戦でした。一次通過は何度かしましたが、切手サイズ(一次予選通過できなかった応募者全員の作品が、切手サイズで雑誌掲載されることからこう呼ばれる)もあり苦い思いもたくさんしました。そのなかで、第20回で「サンダーボルト部門 銀賞」、第21回で「ガンプラ部門 銅賞」と着実に前に進みながら、今回金賞を受賞することができました。
――改めて今回受賞された「機動戦士ガンダム第42話『ア・バオア・クー』より」は素晴らしい作品かと思うのですが、どのようにして制作されたのでしょうか?
【ヨッシー】MG 1/100ジオングを作ってみたいなと思っていたんですが、いつの間にか店頭から消えてしまい…。そうなると余計ほしくなるのが人間の性で、行きつけのお店を頼ってなんとか手に入れることができました。実際作るまでの間にいろんな構想が浮かんで。『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の世界観が大好きなのですが、サイコザクのあのバカでかいロケットをジオングに付けたらスゲーだろうなとか。で、サイコザクを購入し、「自分流のパーフェクトジオングにしよう!脚なんかいらん異次元な雰囲気のジオングを目指し、ジオラマ仕立てにしよう」と、目標を定め、制作を始めました。あのバカでかいロケットを背負った時点で、動きのあるポージングや躍動感あふれるジオラマは無理だなと思い、基地とか工廠(軍需工場)にして動きは、周りで働くジオン整備兵に任せました。
■アナログ手法で制作も、失わなかった巨大感へのこだわり
――非常に細かいところですが、本作のタイトルにもある通り、ジオングは42話で初登場し、未完成(脚がない)ながら、戦場に出ます。本作でのジオングは、交戦後のようなウェザリングが施されているようにも見えるのですが、どのような物語をイメージされたのでしょうか?
【ヨッシー】ジオングは試作機が3機作られており、それぞれア・バオア・クー内のドックに格納されていたといわれています。形状など詳細まではわかりませんが、私の勝手な設定では2号機、3号機は戦闘で受けた攻撃などで格納庫ごと大破しており、一番最初に作られた試作1号機のみが残っている。1号機なので何回も実践に近いような実験的なテストを繰り返しており、使用感やダメージが残ったまま。それにシャア大佐が乗るとなったので、推力を増大させるためのロケットは後付けしようという設定にしました。なのでロケットはダメージとか使用感のない仕様で制作をしました。アニメの物語との繋がりとかあまり気にしていないので気にいらない方もいると思いますが、それこそガンプラは自由なのだと…。“オラ設定”という造語があるぐらいですから、これでいいもいいのかなと(笑)。
――奥行きのある宇宙要塞「ア・バオア・クー」の格納庫に圧倒的巨大感のあるジオングが鎮座する。とにかくスケール感がありながらも、整備兵の動きなど細かいところまで実に丁寧に作られています。
【ヨッシー】ありがとうございます。ジオングの大きさとロケットの長さなどを考慮して大まかな大きさを決めていきました。奥行き・長さ・高さ、見せ方もいろいろ考えましたが大変そうなことばかりが想像できたので、一番シンプルに横からのアングルで切り出そうと決めました。
このデジタルな世の中ですがモデリングに関して私はまだまだアナログでして。段ボールで全体の収まる大きさをイメージしたり紙に書いて型紙をいくつも作ったりホント手作業です。電卓はよく使います(笑)。整備兵はビルダーズパーツ製の人形をたくさん使いました。ココって所の人はポーズを変更したり、もっと自然に見えるように加工したりしました。
――なかでも大変だったところは?
【ヨッシー】仮組を何回もしているのに、組付け時にアナログゆえに微妙な誤差が蓄積して干渉して入らないとか、たくさんあって汗をいっぱいかきました。あとは同じものを何個も何個も切ったり作ったりで、変化がなく飽き飽きすることが何回もありました。人形も塗装するのが大変でした…しんどくなるのは分かっていたので、一番最後にやらず途中で塗って気分転換に他の工作とかしたり、メンタルのマネージメントも大変でした。
――地道な作業のなかには、こだわりがたくさん詰まっています。
【ヨッシー】そうですね。ジオングはその見た目も他のモビルスーツ(MS)とは異なります。なので、異形のままもっとラストボス感をたっぷりに仕上げていくことにこだわりました。基地部分は、最新のロボットアニメにあるかもしれないような最新設備感ではなく、当時のガンダム感を残した少し古臭い設備(?)みたいな工場感を出したいと思って制作していきました。
■名モデラーの言葉を信条に「哀愁を感じるモビルスーツはかっこいい」
――そのこだわりが圧倒的なクオリティにつながったわけですね。互いに切磋琢磨していた模型サークル「烏製作隊」の仲間はもちろん、多くの人々から賞賛の声があがりました。
【ヨッシー】たくさんのお祝いコメントなど頂いてホントうれしかったです。なかでも、模型仲間のモデラーさんのコメントが印象に残って、うれしすぎてスクショしました。その中身は【かっこいいガンプラを作る人はいっぱいいますが人を感動させるガンプラを作る人はそうはいないと思います。しかもプロの人が感動するガンプラを作る人なんて更にすくないかと。ヨッシーさんはそれが出来る人なので。。。】というもの。自分が作ったもんで人を感動させることが出来たことがとてもうれしかったです。
――モデラーとして、最高の誉め言葉ですね。そんなヨッシーさんが、ガンプラを制作するうえで一番大切にしていること、信条をお教えください。
【ヨッシー】キットの良さも生かしつつ、自分の色も付けくわえていく感じの制作スタイルです。いつもゴテゴテとした印象になる傾向にあります。モデラーのらいだ~Joeさんが以前「僕はMSには哀愁を感じるんです。そういうMSはかっこいいです」と言っておられました。兵器として作られたが故に背負っているもの、操る人が背負っているもの、人型に作られたがためにいろいろなことが相まって哀愁をかもし出して感じてしまうのではないかと…。私もそういう作品を作れるように頑張ろうといつも心がけています。
私にとってガンプラは、ライフワークでもあり、楽しい仲間との繋がりを作ってくれるツールでもあり、自分を表現できる場所のような存在です。
――ありがとうございました。ちなみに、“オラザク”で得た賞金の使い道は?(笑)
【ヨッシー】これといった使い道は決まっていませんが、娘の大学合格祝いにいろいろプレセントするのに半分ぐらい消えそうです(笑)。
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