法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

NPO代表の一方的な主張を信じられるのなら、本来それで終わっている話ではないか

そのようなことを、NPO若者メンタルサポート協会の小杉沙織氏のnoteと、それを信じて共産党を批判する反応群を見て思った。
カンパのお願いを申し上げます|小杉沙織【生きづらさを抱える若者へ贈るブログ】|note

温かなフォロワーさんに包まれていた
私のTwitterが急激に
誹謗中傷や嫌がらせと取れるようなものが増え激増し
中には共産党の候補者である女性から


「無償での活動はやりがい搾取」


という言葉まで投げかけられ始めました。

事務作業は私がほぼ全て行ない
運営で生じる色々な役割は
ボランティア相談員が有志でやらざるを得ない
それが現状です。


それを訴えても「やりがい搾取」と
ただ一方的に言われてしまうことが
この数日起きていて
急に増えだした誹謗中傷や嫌がらせは
そのほとんどが(9割が)共産党支持を名乗る人や
colabo擁護をしている人たち。

そして小杉氏は「ナニカグループ」なる陰謀論的な集団を対象にふくめた「措置費用」としてカンパを求めている。

暇空さんの言葉を借りますが、ナニカグループと呼ばれる人たち
また、共産党支持・colabo支持と名乗られる人たち
その他この件での誹謗中傷や攻撃に対する
措置費用

ここまで書きながら、実際のやりとりを確認するための引用もリンクもまったくおこなっていない。
殺害予告などは警察や弁護士に相談することを優先して詳細は隠しても不思議ではないが、公開された論争ならば相手側の主張も正確に引いてこそ自説に説得力が生まれるものだろう。


一方の要約で議論における正当性をうったえられても、全面的に信じることは本来ならば難しい。
しかしはてなブックマークを見ると、陰謀論的なコメントもふくめて頭から疑わないコメントが多くの人気を集めている*1
[B! 福祉] カンパのお願いを申し上げます|小杉沙織【生きづらさを抱える若者へ贈るブログ】|note

id:bbrinri 一万円カンパした/共産党統一教会で得た期待を完全に失ったよね。あの記者会見が失敗のお手本レベルでミスだった。監査請求の回答が出たときの反応や支える会の自演もだけど。

id:trmkna ナニカグループ以外を排除するのが目的、と看破した暇空の推理と一致する証言。NPOカーストによる椅子取りゲームとは言い得て妙。

id:ty356trt5 この様な真面目に活動されている団体から少しでも救われる方がいればと思い、微力ながらカンパさせていただきます。https://imgur.com/a/Cg2DdPv

id:nippondanji 若者を救うにのに大層なお金は必要ないけど、脅迫や誹謗中傷と戦うには必要ってことなんじゃないか。

しかしカンパの使用目的について小杉氏の説明を読むと、あまり考えが整理されているとはいえない。少なくとも「必要な費用としてのみ」*2という表現は不要だろう。

上記の弁護士費用・訴訟費用・その他本件に
必要な費用としてのみ使用させていただきます。

万が一、余剰金が出た場合は
当方の団体の活動費用として
私が責任を持ってNPO法人若者メンタルサポート協会に
寄付をし活動費として使用させていただきます。

何より、「最後に…」という小見出しで支援活動に費用がかからないという長い主張を読むと、あまりにも他の活動を批判するには根拠が薄弱と思わざるをえない。

毎年数千万円も何億も必要ありません。


週に数回、街で数名に声を掛ける活動で
年間数千万円かかるなんてこと
絶対にありません。

たとえばColaboのバスカフェ活動であれば、「カフェ」とついているように食料を配布しているし、さまざまな物品やWi-fiの提供もおこなっている。*3
また、「週に数回、街で数名に声を掛ける活動で年間数千万円」という数字は、人件費として単純計算してみても過大とは思えない。公務員が同様の活動をするなら、おそらくもっと手当が必要だろう。

生きづらさを抱える若者たちが必要としてるのは
国から何億も貰って建てるシェルターや
毎月家賃1200万の活動の先にあるのではなく
大人からの愛です。

シェルターの不要論をとなえているので、より費用がかかりかねないハウジング・ファーストのことかと思えば*4、ただの精神論だった。
もちろん精神的な支援も重要だが、ここまではっきり有形の支援を軽視する表現をされては、小杉氏が「やりがい搾取」の危険性に配慮できているとは信頼しづらい。


また、小杉氏のおこないたいらしい「告発」も、noteを読むかぎりは複数の伝聞証言くらいしかなく、「妨害」についても根拠ははっきり示されていない。

最後にはその団体を手伝っていたという子から



「あそこは助成金とメディアのネタになる子しか助けません」
「あそこはクズです、それで辞めました」


そんな話まで入ってくるようになったのです。


それからさらに私がテレビやメディアに出るようになると
明らかにその団体の代表がやってると思われる妨害が
色々と起こりだしました。
(その詳細に関してはこれから告発していきます)

以前に井戸正枝氏の指摘を紹介したように、被支援者から他の支援団体への批判を聞いたとしても、公開することには一定の慎重さが必要だろう。
異なる支援運動を「踏みつける側」に位置づけようとする運動家が、同日に他人をはっきり踏みつけていたのでどうしようかと悩んでいる - 法華狼の日記

DVや虐待を受けた人々の支援の現場にいると、「他団体に相談に行ったが受け入れられなかった」「思ったような支援を受けられなかった」などと言う人が少なからずいる。
そう言うと、新たな相談先が喜び、自分に対しての支援が厚くなるといった経験値、もしくは期待値が少なからずあるからだろう。
実際、最善を尽くしたとしても、相談者にとって最適な支援が提供できるとは限らないし、支援は相性の部分も多分にあり、時に他団体の方が良い場合もある。いくつか回って、結果、また戻ってくる場合も多いので、私の場合は追わない。
他で悪く言われても、当事者にとっては回復に向けてのプロセスのひとつで、内容がどんなに理不尽でも「それを含めて支援」であることも多いからである。
逆に言えば相談者から他の団体の悪評を聞いても鵜呑みにはしないし、それを垂れ流しもしない。
本当に心配な時にすべき対応はそれではないからだ。

この井戸氏のツイートにしても、支援対象者の問題という理解にならないよう注意して読む必要はある。あくまで一般論であって「Colabo」に問題がある可能性の直接的な否定ではないことも留意したい。

支援団体KAKEKOMIの代表をつとめる鴻巣麻里香氏も、被支援者からの被害証言を慎重にあつかうよう留意していた。もちろんこれも被害証言の主観的な事実を否定するものではないが。


あとついでに。「他の団体からこんなことされました」「あそこは何もしてくれなかった」という話は私もよく聞きます。ですがそれはきっと私たちも他で言われてることです。制度に隙間が多すぎて「願ったとおりにいかない」支援なんてザラですし、マンパワーも部屋数も限られてる
傷つけられ裏切られ続けてきた人たちと、ギリギリの条件環境で活動している私たち、その間のコミュニケーションにすれ違いや葛藤が生じることも多々あります。他団体についての訴えの中に明らかな暴力や搾取、権利侵害や違法行為なら然るべきところに調査を依頼すればいいしそうします
それ以外の「良くない評判をきいた」について私は基本的に関わりません。繰り返しますが、それはきっと私たちも他で言われてることだから。それをわざわざSNSで仄めかすようなことをしたのでは、それ自体が私たちへの信頼を下げる行為になります

支援団体に問題がある根拠がそれなりにあるなら、行政や警察に告発するなり、「貧困ビジネス」を批判しているメディアに告発するなり、他の方法を選ぶべきだろう、と思わざるをえない。
小杉氏の知った被害証言が客観的に認められるような事実でも、noteに書いているような段階では、むしろ告発の力を失わせかねない。もう少し考えてほしい。

*1:引用したのは、現時点の「人気コメント」の1位から4位まで。9位のid:findup氏をはじめ、全コメントを読むと小杉氏へ懐疑的なものも「やりがい搾取」を否定できないとするものも複数ある。

*2:太字強調は原文ママ

*3:ノンブル5頁。 https://colabo-official.net/wp-content/uploads/2022/07/colabo2021.pdf

*4:hokke-ookami.hatenablog.com