ウソか本当か?「恐怖の略奪者」バイキングを巡る6つの通説

どくろの杯から「血のワシ」の儀式まで、膨らんだバイキング伝説

2023.01.08
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ポーランドのボリンで開催されたスラブ民族とバイキングの祭りで、バイキング時代の衣装に身を包む再現役者たち。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
ポーランドのボリンで開催されたスラブ民族とバイキングの祭りで、バイキング時代の衣装に身を包む再現役者たち。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 角がついた兜をかぶって略奪を繰り返し、どくろで酒を飲み、おそろしいいけにえの儀式を行った野蛮人。かつてヨーロッパ北部を席巻したバイキングには、そんな恐怖のイメージが付きまとう。だが、それらは彼らの本当の姿なのだろうか。

 バイキングにまつわる誤った伝説は少なくない。歴史に登場してから1000年以上の時を経てもなお、バイキングは私たちの想像を掻き立て、オペラ、映画、小説、漫画、ビデオゲームの題材になってきた。ところが、そのおかげでフィクションとノンフィクションの区別が難しくなっている。

 研究者たちは今も、古代の遺物からバイキングたちの真実を探ろうとしている。2021年10月に学術誌「Nature」に発表された論文では、バイキングがアメリカ大陸の土を踏んだ最初のヨーロッパ人である証拠が示された。コロンブスの”新大陸発見”より400年以上前のことだ。また、同じく「Nature」に2020年9月に発表された研究では、バイキングの遺骨のDNAを解析した結果、その集団には多様な民族が混じり合っていたことが明らかになった。(参考記事:「バイキングの豊かな多様性、大規模DNA分析で明らかに」

 2022年には、スウェーデンのストックホルム郊外で埋蔵品が発掘されるなど、古代のバイキングは今も人々を魅了してやまない。まだ謎も多いが、歴史の空白部分を埋める仕事は考古学者たちに任せるとして、ここではバイキングに関して長年信じられてきたいくつかの通説について、真相を解いてみたい。

通説1:バイキングは単一の集団だった

 よく、バイキングは単一の集団だったと思われているが、どちらかといえば、彼らにはいくつもの小集団があり、それぞれに指導者がいたというのが正しい。現在のスカンディナビア地方に住んでいたそのうちの一部が、他の集団と組んで組織的に他国を襲撃していた。

「バイキング」という言葉は、人々を指すというよりも、むしろ行動を指している。200年間続いたバイキングの時代、北欧に住んでいたほとんどの人々は、漁業、農業、交易、工芸に従事していた。英オックスフォード・ブルックス大学の学者であるブライアン・マクマホン氏は、「The Viking: Myth and Misconceptions(バイキング:神話と誤解)」と題された記事のなかで、「『バイキング』に行くとは、男たちが若いときに名誉と戦利品を得るためにすることであり、一生涯他国の襲撃に携わる者はほとんどいなかった」と書いている。

「バイキング」という言葉は古ノルド語で、「海賊」または「略奪者」を意味している。マクマホン氏によると、「襲撃と略奪のため海外へ出ていく者」という意味だという。「アイスランドの首都レイキャビクという地名にも含まれている『Vik(ビク、バイク)』は、湾や小川を意味します。レイキャビクは、西暦870年頃にスカンディナビア人が初めて定住した場所です」

 スウェーデンの歴史家フリッツ・アスケベリ氏は、異なった見解を示している。古代北欧文化に関する著書のなかでアスケベリ氏は、「vikja」という動詞には「壊す」、「ひねる」、「逸脱する」といった意味があり、バイキングとは通常の社会規範から逸脱し、自分の家を捨てて、名誉と戦利品を求めて航海に出た者たちのことであると書いている。

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