少子化を背景に、県内で小中学校の再編の動きが進んでいる。朝日、飯豊の両町は、小中学校9年間の義務教育を一貫して行う「義務教育学校」設置の方針を相次いで示した。両町とも全ての小中学校を1校に統合して開校させる考えで、実現すれば教育環境の大きな転換点となるが、学校教育に地域の協力が欠かせないことには変わりがない。地元住民らの理解を得ながら、時代と地域の実情に合った教育の道筋を定めたい。
義務教育学校は2016年4月、改正学校教育法によって制度化された。従来は「6・3」制となっている学年の区切りを「4・3・2」「5・4」などに変えることができ、中学校の学習を小学校に当たる学年で先取りするカリキュラムの編成も可能となった。中学校進学時にいじめや不登校が増える「中1ギャップ」や、子どもの心身の発達状況に学年の区切りが合っていないなどの課題に対応することが、制度化の背景にあった。
本県の義務教育学校は3校で、いずれも最上地域にある。制度化に先んじて15年4月に誕生した萩野学園(新庄市)と、ともに21年4月に開校した明倫学園(同市)、戸沢学園(戸沢村)で、このうち萩野学園と明倫学園は学年の区切りを「4・3・2」とするブロック制を導入した。戸沢学園は「6・3」制を維持しながらも、中学の教員が高学年児童も指導する一部教科担任制を導入し、学力アップに向けた工夫をしている。
新庄市教育委員会が開校5年の節目に合わせて萩野学園の児童生徒、保護者、教職員に対して行ったアンケートによると、中1ギャップに端を発する不登校、生徒指導に大きな問題行動はほとんどなく、上級生と低学年児童との関わりの面でもプラスの効果が目立ったとされる。一定の成果を上げているとみられるが、継続的な調査を進め、より長期的に見た場合の課題抽出が欠かせない。
義務教育学校について、朝日町は28年4月の開校を目指し、設置場所は朝日中敷地内を軸に校舎の新築も含めて検討する。飯豊町は26年度までに設置する方針を示しており、飯豊一、飯豊二両小と、飯豊中の校舎を使い、授業を行うことを想定。両町とも外国語教育などで未就学児施設との連携にも既に取り組んでおり、義務教育学校開校後は一貫教育をさらに進めるとしているが、学年区分などの詳細はまだ決まっていない。義務教育学校を巡っては、人間関係が9年間固定することでの弊害や、教師間の連携体制などが一般的に課題として挙げられており、それらの対策も含めて明確なビジョンを示すことが求められる。
飯豊町教育委員会は「『子どもは地域の宝』から『子どもは町の宝』という考えに発想を変え、さまざまな意見を受け止めてより良い学校にしたい」とし、保護者や町民対象の説明会を2月に開始する。朝日町教育委員会も「町民みんなで新しい学校をつくり、子どもを育てる意識が必要」とし、来年度の基本構想策定に向けて議論の手法を検討するとしている。教育環境の充実は定住人口の確保にもつながる。子どもたちの人格形成に大きく影響する貴重な9年間をより有意義なものにするため、議論を尽くしたい。
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