おのゆりさん(小学4年生・神奈川県)からの質問に、「昆虫」の丸山宗利先生が答えます。(司会・石井かおるアナウンサー)

【出演者】
丸山先生:丸山宗利先生(九州大学総合研究博物館 准教授)
ゆりさん:質問者


――お名前を教えてください。

ゆりさん: ゆりです。

――ゆりさんは、どんなことを聞きたいですか?

ゆりさん: 去年の9月に、卵から育てたクロアゲハが羽化しました。殻から出るときに羽が曲がって飛べなかったので、おうちで飼っていました。3日くらいして、そのクロアゲハがレモンの葉に卵を産みました。1匹だけで飼っていたのに、なぜ卵を産めたのですか?

――丸山先生に聞いてみましょうね。お願いします。

丸山先生: はい。ゆりさん、こんにちは。
ゆりさん: こんにちは。
丸山先生: それは不思議なことがおきたねぇ。でもね、実はメスが1匹で卵を産んでしまうのは、昆虫ではそんなに珍しいことではありません。
ゆりさん: ふうん……。
丸山先生: メスのおなかの中ではね、交尾をしなくても、時間とともに卵が大きくなっていきます。虫によっては、産む必要がないときは、そのままおなかの栄養として吸収されてしまうこともあるんだけれども、どうしても産んでしまわないといけないようなのもいる。チョウやガがそのタイプなんだけど、特にレモンと一緒においてあると、メスはレモンのにおいに反応して卵を産むので、交尾をしていなくても、産んでしまったんだと思います。

ただね、オスがいないと卵はかえりませんから、普通の卵とは違います。卵、かえらなかったよね?
ゆりさん: はい。
丸山先生: うん。私たちが食べているニワトリの卵も、オスのいない状態でメスが1羽で産んだものです。温めてもヒヨコにはなりませんよね。だから普通の卵との大きな違いは、卵はふ化しない、幼虫は生まれない、ということですね。

ただね、オスなしで飼うのはかわいそう、ということでもなくて、今回は飛べなくなってしまったということがあったので、クロアゲハはそうやって大事に飼ってもらって、幸せだったんじゃないかなぁというふうに思います。クロアゲハの幼虫は、普通のアゲハより大きくてかわいいし、また飼ってみると、おもしろいんじゃないでしょうか。
ゆりさん: はい。

――そもそも卵から育てたって、ゆりさん、言ってましたよね。

ゆりさん: はい。

――難しくなかったですか?

ゆりさん: 庭にレモンの木を植えていて、そこに卵があったので、それを家に持ってきて、それで卵がふ化するのを待ちました。

――たまたま庭に卵を見つけて、観察したということですね?

ゆりさん: えーっと、チョウを飼いたくてレモンの木を植えました。
丸山先生: ふうん、すごいねぇ。実は僕もアゲハチョウの幼虫が大好きで、庭にユズとカボスとキンカンとか、アゲハチョウの幼虫が食べる木をいっぱい植えてるんです。

――柑橘(かんきつ)系の木というのは、チョウが卵を産みつける?

丸山先生: そうなんです。多くのアゲハチョウは柑橘系の木の葉っぱが好きなんですよね。

――ゆりさんも、それを知ってたということですよね。

ゆりさん: はい。

――じゃあ、ことしもまた産みつけられる可能性がありますね。

丸山先生: きっとレモンの木も大きくなっているだろうから、いろんなアゲハチョウがくるといいね。でもあんまり幼虫がたくさんいると、木が丸坊主になっちゃう。
ゆりさん: ふふふ。

――クロアゲハは、成虫になるとどんなものを食べるんですか?

ゆりさん: スポーツドリンクとかハチミツを水で薄めたものを飲ませていました。
丸山先生: ああ、そうだね、うんうん。糖分のあるものをあげると長生きしますね。

――スポーツドリンクとは、ちょっと意外な気がします。

丸山先生: 昆虫がちょっと弱っているときにあげると、元気になったりすることもあります。

――ゆりさんは、そういうことをどうやって知ったんですか?

ゆりさん: インターネットとかで知りました。
丸山先生: スポーツドリンクは、いろんな昆虫が結構好きで飲んだりするんです。

――そうなんですねぇ。ゆりさん、ほかに何か聞きたいことはありますか?

ゆりさん: きのう、越冬さなぎのナガサキアゲハがふ化してチョウになりました。
丸山先生: ほんと! すごいねぇ。ほかのアゲハチョウも飼ってたのね。
ゆりさん: はい。
丸山先生: ナガサキアゲハは大きくてりっぱだし、幼虫を飼っているときも楽しかったでしょう。
ゆりさん: はい。

――ナガサキアゲハは、どんなチョウなんですか。

丸山先生: ナガサキアゲハは、もともとは西日本、九州とか四国あたりにしかいなかったんですけれども、温暖化で分布を北のほうに伸ばしていて、今では関東地方でもよく見られるようになりました。普通のアゲハチョウと違って尾っぽに突起がなくて、羽が丸くて大きめの、きれいなアゲハチョウです。オスは黒くて、メスは白い模様が混じったりします。

――温暖化の影響が、そういうところにも出ているんですね。

丸山先生: そうですね。チョウはとてもわかりやすくて、どんどん北に上がっているものが多いです。

――ゆりさんのお庭にも、これまで見られなかったチョウがやってくるかもしれませんね。

ゆりさん: はい。

――これからも一生懸命観察して、またわからないことがあったら質問してくださいね。

ゆりさん: はい。

――きょうはどうもありがとうございました。

ゆりさん: ありがとうございました。

――さよなら~。

ゆりさん: さよなら~。
丸山先生: さよなら~。

【放送】
2022/04/24 子ども科学電話相談「昆虫」 丸山宗利先生(九州大学総合研究博物館 准教授)